日本のエンジェル投資・ベンチャー採用のあり方

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Ⅰ 日本とシリコンバレーのベンチャー/スタートアップ企業

1990年代後半から、アメリカのシリコンバレーで多くのベンチャー企業が急成長して来ています。

イノベーション企業TOP25①(Jena McGregor, “The World’s Most Innovative Companies in BusinessWeek.” April 24, 2006. p63-76)日本はたったの3社

それと比較して、日本では、ベンチャー企業の数そのものは少なくないものの、成長が伸び悩んでいます。つまり、日本ではベンチャー企業が生まれないのではなく、ベンチャー企業が成長しやすい環境が整っていないということが考えられます。

その原因は主に「ヒト」と「カネ」が集まらないことです。

【ベンチャー企業の現状と課題】ベンチャー企業の抱える課題 企業時の課題として「資金調達」「人材の確保」が上位2つの課題となっている (出典http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g70928a05j)

【ベンチャー企業の現状と課題】ベンチャー企業の抱える課題
企業時の課題として「資金調達」「人材の確保」が上位2つの課題となっている
(出典http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g70928a05j)

 シリコンバレーのベンチャー企業は「ヒト」と「カネ」が集まり、成長しやすい環境なのでしょうか?

答えは「イエス」です。

その背景にあるのは、エンジェル投資家と企業家の関係です。
シリコンバレーと日本におけるベンチャー企業が「ヒト」と「カネ」を集める環境を比較していきましょう。

財務コンサルティング 経営の活用基本

財務コンサルティング 経営の活用基本 (出典: trunk-bs.com)

カネ(資金調達)

・シリコンバレー

エンジェル投資家という言葉を聞いたことがあるでしょうか?エンジェル投資家とは、創業間もない企業に対し資金を共有する裕福な個人のことです。シリコンバレーではエンジェル投資家が多く存在し、彼らのほとんどは過去に起業経験がある人たちばかりです。そのため、創業して間もないベンチャー企業の事業内容を吟味し、時にはブラッシュアップすることが出来ます。最終的に事業内容に見込みがあると判断すれば、積極的に出資します。つまり良い事業内容であれば、資金はいくらでも集まる環境なのです。

・日本 

日本において、創業間もないベンチャー企業に対する出資者は銀行などの金融機関がほとんどです。金融機関が出資者である場合、問題点が2点あります。

1点目は、「貸し渋り」がよく起こるということです。金融機関は投資に関する判断を下す際、費用対効果が見込まれることが必須であるため、リターンを得られない可能性がある企業に対しては出資をしにくいという現状があります。スタートアップしたばかりでリターンを得られない可能性が大きいベンチャー企業に対しては積極的に投資出来なくなってしまいます。

2点目は、シリコンバレーにおける元起業家のエンジェル投資家と違い、ほとんどの金融機関の出資者は起業の経験がないため、当然のことながら事業内容の吟味やブラッシュアップが出来るとは言い難いです。エンジェル投資家と同じような目利きで事業を判断して出資の可否を決めることは不可能でしょう。

以上2点により、日本のベンチャー企業は思うように資金調達が出来ない状況になってしまっています。

 

ヒト(人材)

・シリコンバレー

シリコンバレーにおいては、ベンチャー企業に人材は集まりやすい状況です。その要因に「優秀な人は新卒でベンチャーに参画する」という風習があることと、「ベンチャー企業が優秀な人材を集めることの出来る仕組み」が整っていることが挙げられます。具体的には、ベンチャー企業と人材が自由にコンタクトや情報交換をし合い、採用を積極的に行うことの出来るプラットフォームが存在するということです。(後ほどシリコンバレーに存在するAngelList社の採用プラットフォームについて紹介します。)

・日本

一方、日本では、「優秀な人は新卒で大手企業に入社する」ことが当たり前です。

STUDENTS LAB 【大学生の就活事情】 「大手企業」と「ベンチャー企業」ならどっちがいい? (出典: http://lab.oceanize.co.jp/which-company/)

STUDENTS LAB 【大学生の就活事情】 「大手企業」と「ベンチャー企業」ならどっちがいい?
(出典: http://lab.oceanize.co.jp/which-company/)

 近年では変わりつつあるものの、未だその風習は根強く残っています。さらにベンチャー企業に優秀な人材は集まりにくいという現状があります。日本のベンチャー企業が自主的に人材を集めようとする際は、リクルートやインテリジェンスを始めとする人材紹介会社を利用しますが、その際に問題が2点あります。

1点目は、紹介フィーが高いということです。一般的には紹介フィーは雇った人材の年収の35%となっており、これは資金繰りが難しいベンチャー企業にとって、人材集めが困難となっている大きな要因の1つであることが考えられます。

2点目は、人材エージェントを通しての紹介であることです。ベンチャーの経営と事業内容を理解できる人材エージェントは稀で、そのような人材エージェントを通しているため、スムーズに採用を行えず、自由に情報の交換なども行えません。そもそも、日本ではその人材エージェントが優秀な人材を確保していても、多くの紹介フィーを得られる大手企業にその人材を紹介しがちです。

まとめ

上記したシリコンバレーと日本におけるベンチャー企業への「ヒト」と「カネ」が集まる仕組みの比較をまとめると以下のようになります。スクリーンショット 2015-12-21 17.35.48

このようにシリコンバレーでのエンジェル投資家や効率の良いプラットフォームを提供し、ベンチャー企業を支える企業の1つにAngellist社がある。Angellist社のCEOであるNaval氏のインタビューを元に、シリコンバレーのベンチャー企業を支えるビジネスモデルとそれが具体的にどのようにベンチャー企業の成長につながっているのかを見ていきましょう。

 

Ⅱ AngelListの事業内容

AngelListは、2010年にサンフランシスコを拠点として始まった会社です。最初はスタートアップと投資家向けのメーリングリストとして創業しました。

AngelList:https://angel.co/

現在は、ベンチャー企業、エンジェル投資家、入社希望者だけのSNSのようなサービスを提供しています。ただ、普通のSNSと違う点は、お互いのプロフィールを公開することが可能で、そこで連絡から採用まで自由に行うことが出来る”プラットフォームとしてのSNS”となっています。エンジェル側であれば、過去にどのような企業に投資をしてきたか、入社希望者であれば経歴やスキル、マインド、企業側は過去にどのような投資家が出資してきたかや事業内容などの内部情報を双方向に公開しています。

例えば、サイトでスタートアップのプロファイルを作り、投資家がそれを発見したとします。そして、紹介画面を見てボタンを押せば、互いにメールのやり取りが出来るようになります。人材の場合は、スタートアップ企業が起業家やデザイナー、開発者を探しているとして、マッチする良い人材を発見すると、プラットフォーム上でコンタクトして実際に会うことも出来ます。紹介は基本的にどちら側からでも出来るようになっていて、お互いが了承すれば、電話でも喫茶店でも自由に会うことが可能です。

(出店: http://www.social-recruiting.jp/archives/13188)

(出店: http://www.social-recruiting.jp/archives/13188)

 利用者は年々増えていき、インタビュー当時(2013年9月10日)では、18,000人の資金提供者、100,000社のスタートアップ企業が登録しています。また、毎週2,000件ほどのスタートアップ企業に人材の紹介を行っています。

このような仕組みは従来ではありえなかったことで、このようにダイレクトにベンチャー企業、エンジェル投資家、入社希望者が情報を自由に交換し、やりとりが出来る仕組みによって、創業間もないベンチャー企業でも、事業内容が面白ければ、エンジェル投資家からの出資を受け、人材もスムーズに確保しやすいということです。つまり、「ヒト」と「カネ」がスムーズに集まり、数多くのベンチャー企業が成長する絶対的な支援になっています。間違いなく、シリコンバレーでのベンチャー企業急成長の背景として、AngelListのような企業、そしてサービスが大きな影響を与えていると考えらます。

Ⅲ 今後の展望

シリコンバレーにおけるベンチャー企業の急成長の背景や要因、またAngelListの事業内容を理解いただけたでしょうか。

ここで私たちが考えるべきことは、日本においてベンチャー企業が育つためには何が必要か。もう少し掘り下げると、日本のベンチャー企業にも「ヒト」と「カネ」が入るようになるためにはどのような何が必要か、ということです。

繰り返しになりますが、問題意識として、日本は大企業に資金と人材が集まり、ベンチャー企業には資金も人材も集まりにくいということが挙げられます。

その他にも日本特有の文化として「出る杭は打たれる」や「同調文化」の風習があります。これらを否定している訳ではありませんが、現在の「ヒト」と「カネ」が集まらないことによるベンチャー企業の成長低迷にさらなる拍車をかけてしまい、悪循環になってしまっているように思われます。

しかし、一旦ベンチャー企業に「ヒト」と「カネ」が集まりやすい仕組みが構築されて普及し、「ベンチャーで働くことに対するポジティブなイメージ」を作り上げることが出来れば、自然と人材や資金が集まります。それに伴い、ベンチャースタートアップのハードルが下がり、成功確率もあがります。そして、ベンチャー企業への入社や転職が珍しくない、むしろ当たり前という文化になってしまえば、周りの人間も徐々にベンチャー気質に近づいていき、好循環を作り出すことが出来ます。そのような好循環を作り出すことが、現代の日本のベンチャー企業が求めることであり、もっと言えば日本を成長させていくことなのではないでしょうか。

最近は大手企業の市場における優位性が数年前に比べて下がっています。これまでは法人向けのIT業界においても大手が圧倒的に優位でベンチャー企業では太刀打ち出来ませんでした。しかし現在は、仮に条件が同じであれば、時代の変化に沿ってフレキシブル且つスピーディな対応をすることの出来るベンチャーが有利になってくるでしょう。なぜなら、変化が激しい時代ではスピードが求められ、それと同時に新しいものを生み出すクリエイティビティ、イノベーションが求められます。それらが出来る企業が成長し、世界で戦っていくことが出来る世の中になっています。ベンチャー企業を成長させることが日本を成長させるための一番有効な手段なのかもしれません。

Ⅳ 日本におけるAngelList!?

少し話は戻りますが、AngelListのようなサービスが日本でも浸透していくことが、上で述べた今後の展望につながるためのファーストステップであることは間違いありません。

アマテラスCEO藤岡清高氏とAngelListのCEO Navel氏です。(シリコンバレーにて)

アマテラスCEO藤岡清高氏とAngelListのCEO Navel氏です。(シリコンバレーにて)

アマテラスCEO藤岡清高氏とAngelList COO Kevin 氏です。(AngelListのサンフランシスコのオフィスにて)

アマテラスCEO藤岡清高氏とAngelList COO Kevin 氏です。(AngelListのサンフランシスコのオフィスにて)

 「日本からGoogle、Facebookを100社創出する」これが弊社(アマテラス)の経営理念です。

弊社のビジネスモデルは、日本でもシリコンバレーにおけるAngelListを目指しており、「優秀な経営幹部人材と優良ベンチャー企業を直接つなぐプラットフォーム」(アマテラスオンライン)を運営しています。(https://amater.as/)このアマテラスオンラインを始めとし、日本のベンチャー企業にも「ヒト」そして「カネ」が集まるようになれば、日本に「変革」がおきるのではないでしょうか。

<参考文献>

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