O:derで事業者もユーザーも便利な世界を実現する

株式会社Showcase Gig代表取締役 新田剛史氏

前回のインタビュー(2014年)から3年、Showcase Gigは日本国内ではまだ市場がなかった領域であり、同社が特許も保有しているモバイルオーダープラットフォーム“O:der(オーダー)”の市場浸透に向けて模索を続けてきました。
その間、2016年から2017年ごろにかけて、アメリカ・中国などでは飲食店における事前注文決済(モバイルオーダーサービス)が爆発的に普及、日常の光景となり、それを受けて問い合わせも急増、ついに国内でもO:derに急成長の兆しが見えてきました。

そんなShowcase Gigの新田社長に、この3年間での変化や今後の展望、今のShowcase Gigに参画する魅力などに迫りました。

新田剛史氏

代表取締役
新田剛史氏

上智大学法学部卒業後、東京ガールズコレクションのプロデューサーを経て、 株式会社ミクシィ入社。ソーシャルビジネスの責任者として、数々のヒットサービスを手掛ける。2012年、株式会社Showcase Gig設立。モバイルウォレットサービスO:derを開発し、外食・小売り向けのソリューションを提供している。

株式会社Showcase Gig

株式会社Showcase Gig
https://www.showcase-gig.com/

設立
2012年02月
社員数
40名(2018年4月時点)

《 Mission 》
「実消費のデジタライゼーションにより生活利便性を向上させること」
《 事業分野 》
IoT
《 事業内容 》
モバイルペイメントプラットフォーム開発・運営
デジタルサービス構築コンサルティング・企画・開発
実店舗の開発・運営

O:derを普及させるのは途方もない道のりだと気付かされた3年前

アマテラス:

前回のインタビューは、3年前(2014年)でした。今から振り返ると3年前はどのような時期でしたか?

株式会社Showcase Gig 代表取締役 新田剛史氏(以下敬称略):

2014年6月は世界でも先駆けて、実店舗におけるO:derの導入が実現したタイミングでした。

当時、O:derのようなサービスは、国内はもちろん、世界的にもほとんど存在しませんでした。実際にO:derを体験した人や、お店側から「これは凄い。今後のスタンダードになるだろう」といった意見を頂いたり、数多くのメディアにもそのような形で取り上げていただいたりと良い兆しがありました。何か扉が開いたような時期でした。

と同時に、ネットと違ってリアル店舗に浸透させるサービスの場合はハードウェアとの連携や、店舗の設計までも変えていく必要があることを実感し、「リアルな世界を変えていくことは途方も無いことだ」と感じさせられた時期でもありました。
正直、「O:derの普及には少なくともあと数年はかかる」と2014年時点でも思っていました。

O:der普及の時機を待つ間、新規事業に取組む

アマテラス:

3年前からどのように事業を進めてきたのですか?

新田剛史:

アメリカのメディアでも「モバイルオーダーサービスは2016~2018年頃に伸びる」と出ていましたが、日本での普及はもう少し時間が掛かると思いました。そこで、O:derの普及までに時間が掛かり過ぎることもあり、他のサービスを開発することにも着手しました。

様々な新規プロダクトを試してみて、中には売上が伸びたサービスもありました。それが順調に売り上げを伸ばしたことで、コア事業ではないにもかかわらず、億単位の投資も行いました。

そんな中で資金調達を何度か行ったのですが、「これはピボット(事業転換)しているのですか?」と聞かれたりもしました。私たちはO:derというプロダクトの研究開発も止めていませんし、継続的に事業を進めてきましたが、確かに端から見るともう別の会社になろうとしているように見えたのかも知れません。

アマテラス:

具体的にどのような新規サービスを展開したのですか?

新田剛史:

デリバリープラネット(https://www.delivery-planet.jp/)というアプリを作りました。
デリバリープラネットは、ゲームをしながらポンタポイントがたまったり、パズルゲームからピザや寿司等が注文できたりするサービスです。ポンタ関連のシリーズは他にも何個か出しました。

さらに、これは今も継続していますが、BtoBビジネスを強化し、様々な大企業、例えばJR九州との共同でアプリ(http://www.jrkyushu.co.jp/app/lp/)の開発も行いました。
ゲーミフィケーション要素を入れたアプリで、このアプリから列車の予約もできます。毎日タップするとスタンプが貯まったり、GPSを用いた機能で各駅にチェックインすると何か貰えたりもします。このサービスもユーザー数は順調に増えています。

大企業との協業の難しさ

アマテラス:

新規事業では多くの大企業と組まれていますが、大企業との協業でぶつかった壁などがあれば教えてください。

新田剛史:

今でこそ大分良くなっていますが、私たちがプロダクトをローンチした2013年~2014年というのは、スタートアップと大企業のコラボレーションという意味でも黎明期で、特に大企業側もどのようにスタートアップと向き合って良いか、わかっていない時期でした。

例えば、打合せだけは長期にわたって何度も行うものの、開発は一向に進まない。その間、こちらの資本金は減っていくし、受託ビジネスの営業をしていた方がいいのでは、というプロジェクトもありました。

途中で気づいたのは、それを否定するわけではないですが、私たちスタートアップと比べて、大企業はどれだけ時間を使っていても「死なない」ということでした。
つまり、こちらにとっての半年間は生きるか死ぬかであり、資金が尽きたら倒産しますが、彼らにとってはそうではない。それを気づいてから、無駄な打合せはしない等を強く心掛けました。

こうした経験から得られたものもありました。
協業する企業の見極めに注力した事で、三井住友カードや東芝テックと実のある提携をすることが出来ました。東芝テックとは連携してプロダクトを作りました。世界一のPOSレジメーカーと共同プロダクトを作るということは、どこのスタートアップも未だにできてない事です。

アマテラス:

大企業と連携できるベンチャーがあまり多くない中、御社はなぜ様々な企業とアライアンスを組むことができるのですか?

新田剛史:

前述のような「失敗」の経験に加え、Showcase Gigの現在のコアメンバーは、大企業経験者が多いことがあると思います。
大企業での経験があった上でスタートアップに参画すると、大企業とスタートアップ、双方の感覚が持てるように思います。ですので、私たちは小さい企業のスピード感、大きい企業の論理を携えて、スタートアップ的プロダクトに向き合う事が出来ています。

2017年から新たな組織体制に進化

アマテラス:

2014年の前回インタビュー時は社員数13名でしたが、現在は40名程の組織となっていますね。組織的な成長を実感することはありますか?

新田剛史:

「おいしそうな話」が来た際の捌き方を多くの社員が覚えました(笑)。
「これはちゃんと収益になる話/ならない話」、「すぐに収益にならなくても中長期のKPIに寄与する話」というのを正確に振り分けられるようになりました。「お金にならないからやらない」ではなくて、中長期でKPIに寄与するのだったらやるべきで、そこのカテゴリー分けを出来るようになったのは会社としての成長です。

さらに、組織体制でも成長がありました。
2014年時点では全く組織が出来ていませんでした。13名程の組織で、仕方がないことだったのかもしれませんが、マネージャークラスや部長クラスといったレイヤーもなく、オールフラットでした。2016年に人数が30名程度まで増えた頃に「これでは上手くいかないな」と感じる出来事がありました。

会社が出来て1-3年、人数も数名から30名くらいであれば、一気に成長もしますし、勢いも出てきます。しかし、それを超える規模になり、年数が経過すると、勢いだけではもたなくなります。社長一人のマネジメントにも限界がありますし、それではゴーイングコンサーン=継続企業にならない。
そこで、設立から5年が経過した2017年からを第二創業と位置づけ、組織作りに着手しました。

O:derを「当たり前のサービス」に

アマテラス:

今後のO:derの展望について聞かせてください。

新田剛史:

2017年からやっと以前とは全く違う兆しが見え始めました。そこで、O:derチームの配置人員も増やしました。以前の状態だと「これはいつモメンタム(勢い)が来て、どう伸びるのだろう」という気持ちがありましたが、今は伸びに対して人員が追い付かない状態です。

2013年からO:derを運営していますが、長い助走期間を経て、ようやくここから2-3年で国内に浸透させて行けるかな、と感じています。2018年では各企業での実験導入が進み、2019年からは「当たり前のサービス」として拡げたいと思っています。

デジタル×アナログで世界を便利にする

アマテラス:

新田さんはなぜアナログな世界を便利にする所に情熱を燃やすのですか?

新田剛史:

昔からネットがすごく好きで、情報を集めるとかにしても「ネットって凄いな」と思っていました。
2000年頃には今の『食べログ』の前身とも言える、『東京グルメ』という個人が運営しているランキングレビューサイトがありました。飲食店情報が大量にあり、それに加えてレビューがあるなんて最高だなと思っていました。しかし、友達に言っても「そんなサイト知らない」、「どこでそんなお店を知ったの」といった反応でした。「皆も使えばいいのに」と思っていました。

そんな経験から、「ネットやデジタルって便利なのに皆あまりにも知らないから、教えてあげよう」と思うようになりました。未だに「アプリって何ですか?」という人もいますし、特に飲食店とか事業者の人にはそういった方が多いです。「そことデジタルを組み合わせたら、こんなに便利になるのに」とか、「それをデジタルにしたら、ビジネスになるのに」といった気持ちが強くありました。そこが「アナログな世界を便利にしたい」と思った原点です。

私自身、雑誌編集・ライティングといったアナログな仕事とミクシィでのデジタルな仕事、双方の経験があります。ですので、アナログとデジタル両方のロジックがわかります。両方のロジックがわかる人がそこを宣教師的にやっていくべきで、何かそれはボランタリー的な意味も含めて「やりたい」という思いが強いです。

世の中を変えていく主体になれる

アマテラス:

最後にこのフェーズのShowcase Gigに参画する魅力を教えてください。

新田剛史:

様々な仕込みが終わり、あとは伸びるしかない時期に来たと感じています。
2013年に立ち上げたO:derは、そこからは5年を経て、当初の計画通りに東芝テックとのPOS連携や、カード会社とのアライアンス等が決まってきてやっと伸ばせる下地が整いました。今参画してもらえれば、世の中を変えていく側面に関われると思います。

また、今後は比較的近い時期でのIPOを計画しているので、そこに参画できる面白さもあると思います。まだ幹部クラスから現場クラスまでオールポジション入る余地はありますし、頑張った人に対してはしっかり成果を見て報いていきたいと思っています。

更に、スタートアップとして大企業と協業する楽しさもあると思います。
先述したように、大企業からの問い合わせが現在殺到しています。大企業ではデジタル化やセルフ化が課題になっているので、私たちのところへ相談にくるのです。
私たちが数人の会社だったら、そのような相談へ対応も難しかったと思いますが、現在は話を受けて捌ける体制が出来てきているので、問い合わせにしっかりと対応することができます。
スタートアップと大企業との協業をやってみたい人からすると、大企業側でやるよりは遥かに楽しいと思います。

アマテラス:

貴重なお話ありがとうございました。

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アマテラス編集部

「次の100年を照らす、100社を創出する」アマテラスの編集部です。スタートアップにまつわる情報をお届けします。

株式会社Showcase Gig

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https://www.showcase-gig.com/

設立
2012年02月
社員数
40名(2018年4月時点)

《 Mission 》
「実消費のデジタライゼーションにより生活利便性を向上させること」
《 事業分野 》
IoT
《 事業内容 》
モバイルペイメントプラットフォーム開発・運営
デジタルサービス構築コンサルティング・企画・開発
実店舗の開発・運営