困った人に食糧やお米を与えるよりもお米の作り方を教えるほうが良い。
ビジネスでも、現場の一人一人がコンサル的なモノの考え方を身に着けることは大事だと思うのでコンサルティングスキル、ビジネススキルを教えていきたい。

株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズCEO 高田貴久氏

ビジネススキルの体系化と普及を目指して成長を続けるプレセナ・ストラテジック・パートナーズ。

2006年創業ながら、クライアントには日本を代表する大企業が名を連ね、リーマンショック時には他の教育事業社は次々と契約を打ち切られる中、プレセナは成長を続けた(創業以来8期連続伸長)。

一流のクライアントから成長のために必要なパートナーとして認められ、強固な信頼を勝ち取っていた証だ。

プレセナを率いる高田社長の経歴は異色だ。東大理Ⅰ中退、京大法学部卒業(2回留年)、コンサルティングファーム、事業会社勤務の経験。エリートだが、挫折をたくさん味わっている。就職失敗、コンサルティングファームでの苦悩など。

自分が苦労したからこそ、同じ苦労をさせないように、ビジネススキルを暗黙知から形式知に変え、わかりやすく教える。そして企業の発展と個人の成長に貢献したいと邁進する高田社長に迫りました。

高田貴久氏

CEO
高田貴久氏

1973年11月、大阪府出身。東京大学 理科Ⅰ類 中退、京都大学 法学部 卒業
世界最古の戦略コンサルティングファーム、アーサー・D・リトル(ジャパン)においてプロジェクトリーダー・教育担当・採用担当を努める。クライアントであったマブチモーター株式会社へ転職。社長付 兼 経営企画部付・事業基盤改革推進本部 本部長補佐として、改革を推進。ボストン・コンサルティング・グループを経て、2006年にプレセナ・ストラテジック・パートナーズ設立。

株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ

株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ
https://www.precena.co.jp/

設立
2006年02月
社員数
61名(2018年現在)

《 Mission 》
『ビジネススキル』の体系化と普及を通じ、企業の発展と個人の成長に貢献します。
《 事業分野 》
教育・Edtech
《 事業内容 》
ビジネススキル研修サービス 主に以下4つのドメインでサービスを提供 「経営/事業相談事業」 「教材開発/社内講師育成事業」 「ビジネススキル研修」 「アセスメント」

「結局良いって何なの?悪いって何なの?」苦労した新卒時代

アマテラス:

プレセナ・ストラテジック・パートナーズ様(以下プレセナ)の起業の背景を教えてください。

株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ CEO 高田貴久氏(以下敬称略):

実は元々起業志望ではありませんでした。起業までの背景は長くなりますが大学時代からお話します。大学は理系でした。最初に入ったのが東大理一。その後退学して、京大法学部に入学しました。
大学時代は勤労学生として車に熱中していました。国際関係に興味があったため留学生寮に住み込みとして、留学生のお世話をするような仕事をして、電話の取次ぎなどをお手伝いしていました。

就職活動では新卒で商社に内定をもらったものの、諸事情により就職浪人を経験しました。そうこうして学卒で25歳という立場になったのですが、どこを志望しても履歴書で落ちてしまったんですね。新卒の年齢じゃなくなっているので、私が悪いのですが。そんな時に、外資コンサルティング会社に勤めている友人から「コンサル会社って年齢関係ないよ」と言われたのがきっかけで、コンサルティング会社に入社しました。

最初はアーサーディーリトルという外資系コンサルティング会社に入社しました。ここでならメーカー系のコンサルティング会社なので、自分が昔からやりたかった技術・理系的な仕事ができるのではないかと思いまして。
ですが、その程度のモチベーションで外資系コンサルに入社したので、非常に苦労したわけです。もう入った瞬間から、何も分からなくて、“ええ?日本語喋ってるのこの人たち?”みたいな状況でした。

例えば、以下の様なやりとりがありました。
“明日までにベンチマークしてマテ作って”
“ベンチマークしてマテ作るって何ですか?”
“高田君の資料全然ダメだよ”
“すいません、ダメって、何がどうダメなんでしょうか?”
“見りゃ分かるだろ、全然だめだよ”
“えっ?”
そういう状態なのですね。

その当時は本当に心が折れそうになりながら頑張りました。大学に入るまでは「自分はやればできる」と思っていたのですが、コンサルになってからは仕事に全くついていけないし、もう情けなくて。初めての大きな挫折でした。

同期は既に社会人3年目として活躍していて、給料も上がっています。「俺だけなんでこんなことしているんだ」と思いながら、それでも後はないのでひたすら頑張っていました。。頑張った甲斐もあって自分がある程度できるようになってからは、新しく入ってきた人に教える立場になりました。例えば“3C分析”を教えるのであれば、3Cって市場と競合と自社とで分ければいいってものではなくて、良い3C分析と悪い3C分析って何が違うのとか。良いプレゼンと悪いプレゼンは何が違うのかとか、良いものと悪いものの差がわからないと改善のしようがない、ということを、身をもって体感していたので。「結局良いって何なの?悪いって何なの?」それを教えて欲しいとずっと思っていました。

アマテラス:

アーサーディーリトルに4年弱在籍してからマブチモーター(以下マブチ)に転職していますがその背景は?

高田貴久:

アーサーディーリトルで、マブチをお客さんとして担当させていただきました。マブチの現場に行くと、“やっぱり君たち新卒コンサルは特殊だ”とか、“君たちは現場知らない“とか言われるわけです。それで”現場ってどういうこと?“と思うわけですね。その事業会社で働いている人も、そのすべての仕事をやっているわけではないので、例えば、事業会社の企画にいる人間ってそれが本当に現場なのか、と個人的には思ったのです。そのような経緯があり、事業会社で実際に働いてみたい、という思いでマブチの経営企画に転職しました。
オーナー社長が基本的には戦略を考えて、オーナーが指示命令するという会社でしたが、転職3日後に当時新聞を賑わした“社長宅放火殺人事件”が起こり、オーナーが急にいなくなったので、みんな「どうしようどうしよう」ってなってしまい、その時初めて戦略とか事業計画でも作ならいと、となりました。

オーナー社長がゼロから会社を作ったので、会社のことは全部オーナーの頭の中に入っているわけです。

(社員)“この設備買うので3億5千万円ですが、、”
(社長)“高い、もうちょっと安くなるやろ”

とか、

(社員)“中国のどこどこに工場を出そうと思います”
(社長)“よっしゃ行け!”

みたいにオーナーの経験と勘で意思決定ができる世界。
でもオーナー社長がいなくなって2代目のサラリーマン社長がオーナー社長と同じことを周りから期待されるのですが、それは難しい。

ここは経営企画が頑張らねばということで、計画経営をやろうというコンセプトで色々と社内の仕組み作りに取り組みました。その時に、実は新卒コンサルの苦労と同じ苦労をみんなでしていました。事業計画なんか作ったことがない。事業計画作っても社長にこれダメだ、って言われて何がダメだか全くわからない。良い事業計画と悪い事業計画と何が違うのかわからない。などなど。結局そのGood or Badの違いがわからないわけですね。「あっ、これはアーサーディーリトルと同じ状況だ」と思いました。例えば「事業計画ってこういうものですよ」とか、「戦略作るってこういう事やるんですよ」とか、分析も「良い分析と悪い分析こう違うんですよ」と教えて回りました。

“何だ一緒じゃん” って思ったわけですよ。コンサルって特殊だって言われてきましたが、事業会社で戦略を作って、企画を作って、会社経営していくときに考えることと一緒だと思ったのです。

それまでは、自分がコンサルとしてやってきたことは特殊というかニッチというか世の中の重箱の隅をつつくようなことをやっていたのでは、と思っていましたが、どうもそうじゃないと思い始めた。これ本流かも、これ要るなってその時すごく思ったのです。

更に、トップダウンで仕事を進めることと、ボトムアップで仕事を進めることの両方がある事に気づきました。コンサルにいた時は資料を作ってお客さんを説得して「これやって下さい」という世界でした。一方で、事業会社の経営企画の立場で仕事をするようになると、社長とか役員とかがわかっていなくても、ボトムアップで仕事が進んでいくこともわかってくる。一生懸命資料を作って、上層部を説得することは時間の無駄になることも多いことも、その時すごく痛感しました。

私がマブチにいた時に思ったことは、「やっぱり企業は現場ありき」だと。人がいて、人が仕事をしているから企業だ、という事をすごく感じました。

アマテラス:

マブチには3年間在籍して退職し、ボストンコンサルティンググループ(BCG)参画後に起業独立されていますがその経緯は?

高田貴久:

もともと、マブチには最初から3年間という約束で契約社員で入社しました。
3年経過したタイミングで正社員になるか、それとも外に出るかという話になり、悩みましたが、これまでの経験を活かしてまたコンサルティング会社に戻ってみようと思いました。
それで、BCGに入り、再びコンサルをやりはじめたのですが、「コンサルは違う」と感じてしまうんですね。やっぱり私はトップダウンで経営者を理屈と情報、ファクト&ロジックで説得してモノを進めるというやり方が合わなかった。分かっている現場の人や、やる気のある現場の人がいっぱいいるので、その人たちに直接言って進めてもらったほうが早いと。そう思って独立を考え始めました。

独立に踏み切った理由は大きくは二つあります。
理由の1つ目は、一度好きにやってみたかった。
コンサルにいた時もそうだし、マブチにいた時もそうなんですが、結局誰か意思決定者がいるわけです。その人がわかってくれないと話が進まない。それで、私はこれ絶対やった方がいい、間違いないからって一生懸命説明するんですよ。

けど、
“うん、君の説明よくわかんないな”
“いえいえ、あなたの方が分かってないです”
みたいな感じです。
それが本当に嫌で、絶対に自分が言っていることは間違ってないと思っていた。だから、本当に一回好きにやらせてほしいと思っていました。

そして、理由のもう1つが、ここから30年頑張るとしたら、自分のハコに努力を貯め込みたいという感覚です。結果的に転職を何度も経験して、アーサーディーリトル、マブチ、BCGと転職するたびに、過去を捨てているのです。全部。折角その会社で作りあげてきた人脈や、色々な成果、例えばアーサーディーリトルの時は会社のホームページを作ったり、新卒採用セミナー立ち上げたり、色々なことをやってきましたけど、転職したら全部捨てることになるのです。それが勿体ないなと。そして会社勤めをして60歳、70歳になった時に、会社から“はい、さようなら”って言われたら終わるわけですよね。学生時に2回留年した話とかも思い出して、やっぱり会社って冷たいと思うんです。会社の都合で動くという当たり前の話を感じるわけです。

「それってどうなんだろう」とすごく思っていまして、例えば私は留年を確かに2回しているのだけど、留年する前日の私と、留年した次の日の私って何にも変わっていないです。ただ、留年しましたというだけで、会社は大きく態度を変える。当たり前ですけど、何か納得いかなくて、だって同じ人間じゃん、と思うわけですね。それが会社の都合でいいようにやられると。

更に、自分の人生30年位経って、会社から“はい、さようなら”って言われたら「たまったものじゃない」と。なので、自分の納得いく組織、納得のいくハコを造って、ここから後30年間の自分の努力をそのハコに注ぎ込もうと。それで他の社員の30年間の努力もそのハコに注ぎ込んでもらって、社員の努力が社員に報いる形にしておきたいと思うのです。プレセナの社員もみんな頑張って働いてくれているので、今蓄積している努力で、20年30年経った後に食べていけるという状態を目指したいと思っています。

ちょっと長くなりましたが、これが生い立ちを含めた起業の背景です。

アマテラス:

では現在の教育事業を選んだ理由は?

高田貴久:

コンサル的なものの考え方は、非常に役に立ったと思っています。なので、そのコンサル的なものの考え方を世の中に広めたいと思いました。
今の自分で出来る事、やりたいことは何だろう?と思った時にモノの考え方を体系化して普及させていく、これをやりたいと。

アマテラス:

最初は仲間はどうやって集められたんですか?

高田貴久:

私はコンサル志望の人向けに勉強会とか合宿をやっています。もう12年位やっていますが、その合宿に来ていた仲間で、気が合いそうな人に個別に声をかけて「会社やるんだけどやらない?」と誘いました。そうしたらアクセンチュアにいた二人が手を上げて「やりましょう」と。当時は教育事業といっても何をやるかきっちり定まっていなかったのですが、「とりあえず一緒に何かをしたい」という想いを持ってくれていました。どちらかと言うと、何かお祭り騒ぎが好きな人だったから、「何か面白そう、やってみましょう」みたいな感じで来てくれたのだと思います。

取締役 鈴木氏(以下敬称略):

私はそのお祭り騒ぎが好きな人が声をかけてくれて、それが多分設立直後ぐらいでした。

高田貴久:

もう一人は女性です。彼女はアクセンチュアのマネージャー手前ぐらいだったのですが、アクセンチュアつながりで参画してくれました。彼女は慶応ビジネススクールに通いながらの勤務だったのですが、首席を取って卒業しました。 最初はそんな数名でのスタートでした。

アマテラス:

プレセナの事業内容や社会的意義を教えてもらえますか?

高田貴久:

プレセナは“ビジネススキルの体系化と普及を通じ、企業の発展と個人の成長に貢献します”と言っていますが、実は若干後付でして、最初は“ビジネススキルの”部分を“コンサルティングスキル”と言っていました。自分がコンサルとして学んだものの考え方や行動の仕方、こういったものは事業会社の人にも役に立つし、知らなくて苦労している人が多いよね、と。

コンサルって出来上がった物を売るだけなので成果物は渡しますけど、コンサルティングの仕方は教えないんです、当たり前ですけど。でも、海外支援でも、食糧、米を与えるだけじゃなくて、コメの作り方を教えた方がいいと思うんです、そうするとずっと食べ物に困らないじゃないかと。だから、現場の一人一人が、そういうコンサル的なモノの考え方を身につけることは大事だと思うので、それを教えることを目指したいと思いました。

ダイバーシティが重要と言う人がいますが、そのダイバーシティって何ですか?ということです。何かわけわからないじゃないですか。何となく勘と経験でそのうち出来るというような“俺は10年海外に駐在していたから海外の事は俺に任せろ”という人がいますが、それは長いことやっていれば何となく出来るような世界であって、新しい人は同じようにはできないじゃないですか。だからその勘と経験で何となく出来る世界観ではなくて、それって何なの?というのをちゃんと分かるような形にして説明してくれと。そういうことをやりたい会社なんです。暗黙知化されているものを形式知化するという。

そして、“コンサルティングスキル”が“ビジネススキル”に置き換わった理由は、コンサルじゃないスキルもいろいろあるからです。
例えば最近ですと、グローバルスキルなどがそれにあたります。

アマテラス:

ビジネススキルと言ってもとても幅広いですが、どんな範囲でしょうか?

高田貴久:

立ち位置は経営スキル、経営に関する研修をしています。経営者、事業部門、人事部門があり、その中には経営や教育、人事考課・採用の課題がある。更に、大企業、中堅起業、ベンチャー企業と分けた時に、プレセナが得意としている領域は事業部門や人事部門が係る経営に関する教育です。ですので、マナーやコミュニケーション系の研修とはイメージが違います。

あくまで立ち位置は経営です。経営に役に立つことをやります。

一番取り組んでいる領域は「問題解決」ですが、その目標管理PDCAが回っているなかで、例えば年次目標を適当に書くのではなくて、真面目に問題解決を考えた上で、そこで出てきた対策案を年次目標に書きなさい、というイメージです。経営を良くしていくという活動の中に、教育的要素を織り込んでいく、そんな会社ですね。

アマテラス:

主なターゲット層は企業のどのような方ですか?

高田貴久:

企業の中堅幹部層、30代、40代の方々を主にターゲットにしています。なぜ我々がそこをターゲットにしたかというと、同じぐらいの年の講師の話が一番響くからです。例えば私達に、60歳の講師の先生が出てきてね、戦略とは・・ってやられたら、時代違うよと思っちゃうわけです。

かといって、私達に対して、20代前半の講師が出てきたら、あなたに言われたくないよとなるわけです。だから、同年代の講師が一番響くんです。当時私が起業した時31歳ですから、やっぱり自分の近い年代で、丁度ここだったというのが一つです。

もう一つは、人材を育成しようとした時に、
①業務
②ナレッジ
③ビジネススキル
④マインド

4つのポイントがあります。
仕事でアウトプット出そうと思ったら、①業務を知らないとできない。
ただ、業務と言ってもそのベースにある根源的な②ナレッジ、③ビジネススキルがないと使いこなせない。スキルがあったって④マインドがダメだったら、仕事する気にならないという話。

結局、業務はその会社の人しか教えられないですよね。会社に長くいて実務に詳しい人。だから業務系の研修と言うのは内製が多いですね。だから、例えば銀行で金融取り扱いの研修をやりますというと社内の人が講師をします。

で、マインド面も役員さんとか、その会社の役員が、ウチの会社はこうだ、みたいな話は社内の人が教えた方がいいです。

つまり、①業務と④マインド面の教育は他社にアウトソースすることが難しい。で、②ナレッジ、③ビジネススキルを必要としている層がニュートラルです。例えば、一般的なプレゼンテーションのやり方は誰にでも当てはまるわけですよね。問題解決の方法論も誰にでも当てはまるわけですね。だから、普遍的に教えられるコンテンツです。

ロジカルプレゼンテーションのスキルとか、そういう普遍的なビジネススキルが必要なのがいわゆる中堅層です。この層の人たちは業務もある程度できる、毎日やっているので。しかもマインドもある程度ある。頑張らなきゃと思っています。“俺たちが次世代を背負う”と思っている。ただ②ナレッジ、③ビジネススキルが不足していることが多い。この図の真ん中が抜けている。たまたま私達が提供している科目が、中堅層に受けました。なので最初からここを狙ったわけではなくて、ふたを開けてみたらここばっかり仕事が獲れました。ニーズがあったということですね。

プレセナが特に注力しているのは、身につけたナレッジを使いこなすための、思考方法や行動方法について学習する「③ビジネススキル」層です。「③ビジネススキル」は②ナレッジに比べると即効性がありませんので、中長期的な視野で人材育成を検討されているお客様にご利用頂いています。また「業務ノウハウや基礎知識はある程度保有しているが、頭の中が個別バラバラで体系化されておらず、うまく使いこなせていない」といった受講者にとって最も価値を発揮しますので、知識教育が豊富な企業様においても新規で導入頂く機会が増えています。

アマテラス:

御社の強み、ビジネス教育をしている他社との差別化について教えてもらえますか?

高田貴久:

プレセナの強みは、
1)教材カスタマイズ力
2)教え方
3)自前講師
という3点だと思います。

まず強みの1点目「カスタマイズ力」というお話からします。
プレセナがターゲットにしている中間層は一番の優秀層です。ありものの研修パッケージを持ってきてもハマらないと思います。経験もありますし、業務も理解しているので、普通の研修だと、何か違う、「ウチの会社が抱えている問題はこういうのじゃない」ということに気付く層です。だから、中堅層は一番カスタマイズを要求されるところだと思います。

大手含め様々な研修会社がひしめく中でどうやって勝つの?と考えたら、最初の頃はとにかくカスタマイズしますとしか言いようがなかったですね。とにかくお客様の課題を真面目に聞いて真面目に教材を作って教える。

次に、強みの2点目「教え方」の話をします。
気づかせて教えるというところの方法論に特徴があります。私がひねくれていたのが功を奏していると思うのですが、ひねくれた受講者というのは、教えられた段階で、そんなの知ってます、出来ますと思っています。なので、私達はどうするかと言うと、全く何も教えない段階で事前課題とか出してやってみて下さいと。それでこんなの簡単だよ、はい出来ました、とアウトプットを持ってくるのですが、そこから講義をしてほら出来てないでしょと詰めるわけですね。もちろん嫌味なやり方はしてないのですが、それが受講者の気づきになります。しかもその出来てなかったところが何となくダメではなくて、このポイントとこのポイントがこういう理由で出来てないことがはっきりするので、やっぱり受講者は聞いてて“おおそうかっ!”となります。

プレセナではラーニングポイントという学びの要点が固まっているため、講師はラーニングポイントを武器に指摘ができるんですね。良くある話として、ラーニングポイントがはっきりしないで教えると、「いやあ俺はこう思うんだけどさあ、君のここって何かこうした方がいいよ」という話になり、受講者からしたら、「先生はそういうけど私は違うと思います」と水掛け論みたいになる。主観と主観のぶつかりあいになってしまう。

プレセナの場合は、ラーニングポイントを社内でブラッシュアップし、明確に定義している。このポイントはこういう理由で出来てないと言われるので気づきがある。私達は“慣れるより習え”なんですよ、完全に。何かいっぱいやればそのうち出来るじゃなくて分かるように説明してという考え方の会社ですね。

強みの3点目は自前講師の話です。

プレセナでは、コンテンツ開発、営業、講師、全て自前の社員でやっています。この全てを自前でやっているのはプレセナならではの強みと認識しています。
プレセナでなぜ全てのプロセスを自前でやっているかというと、お客さんのニーズを一番に考えた結果、自前でやるのが最も顧客ニーズに応えられるからです。

まず、プレセナのお客さんのニーズとは、
“ありきたりのパッケージではなく自社に合ったカスタマイズされた研修を求める”
ことですね。
このニーズに応えるために行き着いたのが自前主義、特に講師の自前化です。
最初の頃は外部講師を活用していましたが、外部講師に任せると、プレセナの強みであるカスタマイズされた柔軟な研修の変更に対応できないということがあります。外部講師をたくさん抱えるほど、細かな研修の変更に対応できなくなってくる。

また、講師によって質にばらつきがでて管理が大変です。いわゆるハイスペックな講師だと、主張が多くて、それでいて、高い報酬を求めてきて、さらには勝手にお客さんを奪って行くこともある。出来ない講師だと、1日の講義なのに、その講師に教えるのに4-5日もかかってしまって結果的にコストが高くついてしまうことも多いです。
要望通りにしっかり教えているか確認するために営業が現場に行くことがありますが、その分のコストもかかってしまいます。
あと、外部講師の場合は社員ではないので営業をしてくれない。教えたら“はい、さよなら”となる。フィードバックもあまりしない。他人事になってしまう。
内製で講師を持てば、講師間でノウハウをシェアすることや、互いにスキル・経験を高めあうことができる、教えた人が教材を作る、教材を作った人が教える。

一方でこれはトレードオフとして拡大を捨てています。
私は元々起業したかったわけではないので、変な言い方ですけど会社を大きくしたいと思っていなくて、質が下がって水ぶくれするぐらいだったら、別に大きくしなくていいと思っています。お客様から要望があるのに答えられないって言うのは企業としてはダメだと思っていますから。

アマテラス:

売上が順調に伸びている状況ですが、お客さんから継続して仕事を頂けている理由、選ばれている理由を教えて頂けますか?

高田貴久:

基本指名買いで、プレセナさんお願いしますとなることが多いです。他社とのコンペに実際ならないですね。単発ものではなくシリーズもの、体系的な研修を提供することでお客様の中に入り込んでしまいます。

それぞれに科目があって、それぞれにラーニングポイントがあって、それぞれのラーニングポイントを紐づけているわけです。だから、新入社員研修でプレセナを使いました、5年目の研修でも使いました、でもその間の3年目研修で違うことを習っている、となるとお客さんは気持ち悪いのです。
去年も、一昨年も、その前もプレセナの研修をやっていて、ラーニングポイントがみんな頭の中に染みこんでますから、いまさらプレセナ以外の研修をやっても違うな、となるんです。

あとお客さんが継続してくれている理由を1つ追加でお話すると、最強の会社の法則と言うのを良く話していまして、5つの条件があると思っています。

市場よりもいいものを提供している。
市場よりも安い価格で提供している。
社員の給料が高い。
社員が早く帰れる。
それでいて仕事が楽しい。

これ全部実現されていればお客様にも切られないし、社員も辞めないし、いいんじゃないかと思っています。ところが、安く売って高い給料を払うって難しいです、当たり前ですけど。

正直をいえば営業はあんまりやりたくないです。営業担当者が頭下げて、値段交渉して、というのではなく、リーズナブルな値段で、かつ良いコンテンツがあれば放っておいても売れるという考え方ですね。だから、今でも高値はつけるなと言っています。高値で売れるかもしれないけど、ふっかけて高値で売る営業をやりたいのかと、そうじゃないだろということです。

それを実現しようと思った時に、いくつか工夫がありまして、基本的には業務の反感をなくすということです。よくあるのが、営業担当者がすごく忙しいけど、講師は遊んでいるとか、開発がすごい忙しいけど、営業担当者は暇しているとか。プレセナは講師が営業もし、全員が正社員として幅広い業務を請け負うことよって負荷調整ができるようにしています。
例えば、他の研修会社の社長と話をしていると、外部の講師を呼んできたら、ちゃんと教えてくれるかどうか不安なので後ろで営業担当者が1日付いて見ているらしいんです。外部講師は終わったらさよならって帰ってしまうので、営業担当者がお客様と今日の講義どうでした?次回どうしますか?という打ち合わせをしますが、そこで二重に人件費がかかります。だけど、私達は講師が一人で行って、打ち合わせもして社内の営業にフィードバックもするので人件費が半分ですむんですね。

アマテラス:

求める人材像について教えて頂けますか?

高田貴久:

下の図にまとめています。今いるメンバーの大半はコンサル会社にいて、何か違うと思って来ています。コンサル会社にいてそれなりにしっかり仕事をこなしているが、何か違うなって感じている人はフィットすることが多いかもしれません。

アマテラス:

プレセナの経営課題を教えてください。

高田貴久:

直近の経営課題は人材採用と社員教育ですね。ここの対応が手薄になっていました。その背景を説明すると、もともとは、いい講義をすれば研修会社は伸びると勘違いしていました。いい講義をすると1日だったのを2日にして下さい、1階層を2階層にしてくださいとお願いが来るので、人をいっぱい増やしました。その後にリーマンショックが来ました。私達はなんとか耐えたのですが、その時に学んだのが、単発ものの講義だと景気が悪くなると“はい、さようなら”と簡単に切られてしまうということです。

なので、この時とにかく、マーケティングを真面目にやろうと考えました。新規を取らないと会社が成り立たないという当たり前のことに気が付いて、マーケにすごく力を入れました。かつ社員は採用し過ぎたので、採用を控えました。リーマン後の逆風の中で業績が落ちなかったのは集客のマーケティングに力を入れた結果です。それで、逆風が治まったらどうなったかということですね。

アマテラス:

逆風が治まったらどうなったんですか?

高田貴久:

仕事がとれて困る。とれ過ぎて困る。この時に本当にその逆風に耐えられるように集客マーケティングを必死に作ったので、そっちは出来たのですが、逆に人を採用するという対応が出来ていませんでした。
当時、採用は何も手を打っていない状況でした。知り合いに声をかけるのと、ウェブから応募してきた人を面接して、、ということをしていますがやはりなかなか採用できない。

結局お客様からの要望に応えきれないですね。最近も、とある大企業からの研修の要望があったのですが、実は人がいなくて。でも人がいないからできません、とは言えないです。プレセナが断ったら多分やる会社がない。お客さんはスゴイ困っていて。お客様とバリューチェーンを繋ぐってそういう事ですね。向こうも逃げられないけどこっちも逃げられなくて。苦しい悲鳴ですね。

なので、採用についてはここから力を入れて行きたいと思っています。

アマテラス:

高田さんの夢を教えて頂けますか?

高田貴久:

「いつかはグローバル」、「いつかはアカデミック」と言っていまして、特に「いつかはグローバル」はもうそろそろ真面目にやらなきゃということで、去年からグローバル展開を進めています。英語ができる人を採用して、英語登壇を国内でやり始めました。企業に採用された外国人向けの研修ですね。
向こう2,3年で私の構想では東京・シンガポールの2局体制でアジア系をカバーするという構想ですね。いつかはグローバルと言いながら、5年後位にはそうなっていたいと思います。

アカデミックに関しては社会人になる前の早い段階、高校生、大学生から教えていきたいと思っています。
結局、学校では、ラーニングポイントがはっきりしてないから教えられないのだと思います。良いも悪いもわからないから、教育指導要綱に書いてある通りにやって、先生のクオリティーがばらつくからしょうがないという感じだと思います。プレセナでやっていることは、多分学校教育でも使えるはずで、やっぱり最後はそこを目指したいなと。

鈴木:

確かアメリカの作文の授業では、“お母さんにお小遣いおねだりしましょう”というテーマで文章を作らせたりしますが、なんで欲しいのか、何に使うのか、それによってどういういいことがあるのか書きましょう、ということを教えています。そのレベルを今の日本人のビジネスパーソンでちゃんと分かってないことが多い。だから私達はこういう仕事をやっているのですが、そういうことは子供の教育で必要だと思います。

高田貴久:

それは絶対必要ですよ。

アマテラス:

日本では受験に繋がらないものは教えない傾向がありますからね。

高田貴久:

そうなんです。だから、詰め込み教育・知識教育そのものですよ。教育改革だなんて言える立場にもないし体力もないので言わないですけど、プレセナという会社が、まずは教育研修で日本のリーディングカンパニーを相手にやっていますと。それがコンテンツ化されて、ある程度ボリュームが出て十分な収益が出る体制になったら、そこの収益を元にアカデミックの方に取り組んでいきたいですね。あとは、直接個人向け、B to Cのビジネスもやりたいと思っています。

アマテラス:

高田さん、鈴木さん、ありがとうございました。

この記事を書いた人

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藤岡 清高

アマテラス代表取締役CEO。iU 情報経営イノベーション大学客員教授。 東京都立大学経済学部卒業後、新卒で住友銀行(現三井住友銀行)に入行。法人営業などに従事した後に退職し、慶應義塾大学大学院経営管理研究科を修了、MBAを取得。 2004年、株式会社ドリームインキュベータに参画し、スタートアップへの投資(ベンチャーキャピタル)、戦略構築、事業立ち上げ、実行支援、経営管理などに携わる。2011年に株式会社アマテラスを創業。 著書:『「一度きりの人生、今の会社で一生働いて終わるのかな?」と迷う人のスタートアップ「転職×副業」術』

株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ

株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ
https://www.precena.co.jp/

設立
2006年02月
社員数
61名(2018年現在)

《 Mission 》
『ビジネススキル』の体系化と普及を通じ、企業の発展と個人の成長に貢献します。
《 事業分野 》
教育・Edtech
《 事業内容 》
ビジネススキル研修サービス 主に以下4つのドメインでサービスを提供 「経営/事業相談事業」 「教材開発/社内講師育成事業」 「ビジネススキル研修」 「アセスメント」