CEO INTERVIEWS

起業家インタビュー

Vol.26
2014年03月25日
Cafe Eight Co.,LTD | 代表取締役  清野 玲子 氏

Cafe Eight Co.,LTD
代表取締役 清野 玲子 氏

3坪のお店を持ったって『起業家』。パンケーキを1日10食出しても『起業家』ですよね。
自分の好きなことで、少しでも人のためになる、自分のスキルを必要としてくれる人がいるのであればちょっとアクションを起こしてみようかなっていうことでいいんだと思うんです。

はじめに

清野さんは2000年からヴィーガン(純菜食主義)をコンセプトしたカフェを運営し、日本のオーガニック、ヘルシーブームの火付け役となる。

日本で次々と起こる凶悪犯罪や倫理観欠如による問題。これらの諸原因の一端は『食生活』にあるのではないか、日本人の『食』を見直すことから人を健康にして、元気にしたい。そんな思いからカフェエイトを運営する。

そして、アートディレクターとしては、映画"007"のジェームスボンドのように、スマートで、ユーモアもあり、任務はきっちり遂行するが遊びもある、そんなライフスタイルやワークスタイルを追求する。

清野さんと知り合ったきっかけは、ベンチャー支援で有名なトーマツベンチャーサポートの佐藤史章さんに『お勧めの女性起業家は誰ですか?』と聞いたところすかさず『カフェエイトの清野さんですね』と答えが返ってきた。

その数日後、佐藤さんに伴われて、目黒の住宅街にある清野さんのオフィスを訪問。センスの良い古民家が清野さんのオフィス。クリエイティビティを刺激される雰囲気だ。
撫子ジェームスボンド、清野さんに起業の背景、立上げ時に苦労、夢についてインタビューしました。

Cafe Eight Co.,LTD
代表取締役 清野 玲子 氏
(きよのれいこ)

【経営者略歴】
1968年7月28日東京生まれ。アートディレクターとしてファッションブランドや化粧品会社などのC.I.や広告、ミュージックCDのジャケット、食品などのパッケージデザインを手がける一方、飲食事業の別会社では表参道のオーガニックカフェ「PURE CAFÉ」を営む。他社の飲食店のプロデュースや地方の特産品開発なども手がける。アートディレクター兼カフェオーナー/プロデューサー。

起業家紹介

清野 玲子 氏

"007"のジェームスボンドみたいに身軽で、お洒落で、遊んでいるように仕事をしたい。

株式会社アマテラス:Cafe Eight(以下、カフェエイト)とDouble Ow Eight(以下、ダブルオーエイト)という二つの事業を手掛けられていますが、事業内容や起業の背景について教えてください

Cafe Eight Co.,LTD 代表取締役 清野 玲子(以下、清野):はい。カフェエイトの方は飲食事業をやっておりまして、ヴィーガン(VEGAN 純菜食主義)をコンセプトにしたカフェレストラン事業です。ベジタリアンという言葉はご存じと思いますが、ベジタリアンにもいろいろな種類があり、多くの場合は卵や乳製品など一部の動物性食品を食べます。ヴィーガンとはそれらの動物性食品を一切食べず、野菜や豆・穀類を中心とする純菜食主義者のことです。この飲食事業をスタートしたのが2000年で、その3年前、1997年にデザイン事務所を川村(現取締役)と一緒に立ち上げまして、これがダブルオーエイトという会社です、27才のときでした。当時女性二人でデザイン事務所を立ち上げるのは珍しかったと思います。川村とはソニーミュージックという会社で一緒になり知合いました。

1997年といえば、バブル崩壊後、景気がガクッと落ち始めていた時でした。私たちはバブルをぎりぎり余韻だけ味わった世代で、先輩たちはバブルを味わってきた人たちで「こんなに景気が悪いのに、よく会社作るね」ということを言われながら始めたのですが、女二人でデザイン会社を起業するのも珍しくて強みになると自分たちでは思っていました。

社名のDouble Ow Eightは映画の“007(ダブルオーセブン”)から来ています。“007”の次で008(ダブルオーエイト)。二人ともデザイナーとして“007”という映画作品がすごく好きなんです。“007”のオープニングのグラフィックが毎回凄くて、デザイナーの目で見ると「やるな」ってことをやるわけです。そういうところに感動したことと、“007”のジェームスボンドみたいに身軽に動いて、オシャレでしかも遊んで見えるような仕事の仕方をしようと。

“いつもあの人達遊んでるな”と思われるぐらいでいかないと起業した意味がないと思っています。以前は企業に所属していましたが大きな組織だと上下関係であったり、取引先のトップの話を直接聞けない、などいろんなジレンマがありますよね。自分たちはそういったことに向かないタイプということは二人ともわかっていました。また、デザイナーという職業のキャリアパスは、企業のデザイン部署の中でだんだん地位を上げていくか、独立するか、あるいは別の職業に代わるかという選択肢になる。それを考えると、遅かれ早かれ独立するのだったら今やってもいいんじゃないかということで立ち上げたんですね。

株式会社アマテラス:営業経験のないお二人がダブルオーエイトを起業して最初はどうやって売上を上げられたのですか?

清野:当時はインターネットブームがあり、ホームページデザインの仕事を運良く受注できました。サラリーマンだったときに、間違いなくこれからはインターネットだという確信があったのですがいわゆるホームページデザイナーがまだまだいなくて、当時勤めていた会社から専門学校に通わせてもらいました。社会人向けのホームページ作成の短期セミナーです。そのセミナーには有名大企業の次期精鋭のマーケティングの方や、かなり上席の方たちが大勢参加されていました。ホームページってなんだ、インターネットってなんだ、サーバーって何?というようなことを勉強しに来ていて、デザイナーとしてそこに参加していたのは私だけでした。

そこで知り合った人達からホームページ作成の依頼がどっときました。
セミナーの講師経由からもたくさん仕事のお話を回していただきました。
大企業とのダイレクト取引ですし、二人だけの事務所だったので利益率の高いビジネスでした。

ただ、会社を二人で立ち上げたときに、お金ができたら好きなことをまずやろうと言っていたんです。1年仕事をしてお金がある程度できたら1ヶ月二人でニューヨークやロンドンに行って帰ってきて。クライアントさんからは“突然いなくなるし、電話も出ない!”と顰蹙を買いました(笑)

でもそういう仕事の仕方、つまり“007”のようなスタイルを求めていました。“この二人は普通じゃないぞ”と思われたことは間違いないと思います。

2000年頃、狂牛病など食の問題が勃発。『食』という側面からこの状況を解決したいと考えた。

株式会社アマテラス:カフェエイトが立ち上がる背景を教えて頂けますか?

清野:私たちはデザイナーなので、印刷物、立体物も作ります。インテリアであったり、コンセプトワーク、ブランディングもしていきます。そういう流れの中でお店を作るということはものづくりの一つだったので、自然な流れでした。

私自身ものすごく料理が好きなのですが、二人とも飲んだり食べたりが大好きなんです。最初の事務所は3LDKのマンションの端と端に住んで、真ん中の部屋を事務所として使っていました。ですので夕飯も一緒に食べたりしますよね。私が毎日毎日料理をして、打ち合わせに来た人や、夕方来たお客さんにも「食べてけば?」 と誘って皆で食卓を囲んでいました。(笑)

仲良くなったある印刷会社の営業さんとは、「宴会やるから打ち合わせを夕方にしようよ」という感じで宴会が始まり、じゃあ誰誰も、という感じで人が集まるようにるんです。まあ連日連夜宴会をしていたんですね(笑)

だから私3時以降は仕事していませんでしたね。3時になると食材の買い出しに行っていました。そのうち、いろいろな方たちが来て宴会をするようになったときに、お店やったらいいよという声が出てきたんです。もともとクライアントさんだった方が青山に作る新しい店舗の最上階に飲食店を入れたくていろいろと声を掛けられていたらしいのですが、なかなかピンと来なかったようで、そんな時に、「清野さんやらない?」と言われて、「私でいいんだったらやりますよ」ということで始まりました。

そもそも飲食事業をすると決めた理由の一つが、2000年頃、特殊な殺人事件が連続して起こったり、狂牛病や牛乳の偽装事件だとか食の問題が勃発していた時期で、『食』という側面からこの状況を解決したいと思っていたことでした。

私自身がベジタリアンで、もともと料理写真家になりたくて料理撮影の会社に勤めていた時期があったんですが、そこで外食産業の裏側を見る機会があり、業務用の食材ってこんなひどいものが使われているんだという事実を目の当たりにして、外食が一切できなくなった時期がありました。みんなを呼んで宴会をしていたのにはそういう背景もありました。自分が選んだ健康な食材で野菜をたくさん食べてほしい。私の料理でみんな体がすっきりすると言って喜んでくれて、これが私の使命かなとも感じていました。日本人の食がおかしくなったから、おかしな殺人事件や切れやすい子供が出てきたりしたんじゃないかと思います。

食のことを見直さないとみんなおかしくなってしまうという思いがどこかであったので、私の手料理で宴会をして「みんなたまにはちゃんとしたものを食べなさい」と言い続けました。その会は『割烹清野』と呼ばれ、私は「お母さんみたい」と言われていたんですよ(笑)

「今日、『割烹清野』やるよ」とみんなに電話すると集まってくる。来られる皆さんは見た目は豊かな生活をしてるし、しっかりした会社に勤めていますが、実際話を聞くと「昨日もコンビニの弁当でさあ」、「徹夜で」と、本当に酷い食生活で体を壊す人がたくさんいました。「そういうことじゃだめだよ」と宴会をしながらみんなに話していました。そんな思いもあったので、「飲食店やらない?」と言われたときに、「私だったらこういうことやりたいです」と言ったところ「面白いからやってよ」と言っていただき、カフェエイトがスタートしました。

3年くらいカフェエイトを続けたころに狂牛病はじめ、食に関する事件がまだまだ続いて起こりました。カフェエイトの食事に喜んでくださるお客様がたくさんいらっしゃり、実際に取引する農家さんの実情を知っていくと、有機農家の野菜を買う人がいないと有機農家は増えないし、フェアトレードをして需要を増やす必要があるなと思ったり、いろいろな使命を強く感じました。川村と相談して、店舗のオーナーに当初負担していただいた初期費用や権利などを自分たちですべて買い取り、完全に独立して法人化しました。そこから本気でやろうということで走り出したんですね。それと同時に現在の表参道の店舗(PURE CAFE  http://www.pure-cafe.com/ )もオープンさせました。

リーマンショック発生。逆張り経営で飲食ビジネスに投資を行う。これが吉と出る。

株式会社アマテラス:「資金繰り」の面ではどのような壁がありそれをどう乗り越えたのでしょうか?

清野:一番資金繰りで苦労したのはリーマンショックの直後ですね。母体となるデザイン業務のほうの仕事がさっぱり激減してしまいました。

弊社の場合はデザイン事務所(ダブルオーエイト)というコストがほとんどかからない事業と、飲食事業(カフェエイト)というコストも手間もかかる業態の二つがあります。当初はそのコストのかからないデザイン事業で得た利益を飲食事業に補填・投資をしていくかたちでスタートを切って、飲食事業が赤字でもトータルで経営できるような状態でやっていました。

リーマンショックが起こると広告宣伝費がまず削られます。実はそのときに、有名なIT企業の社員食堂の大きな企画を任されていたのですが、具体的なプランを出しているような状態の真っ最中にリーマンショックが起こり、その仕事自体が頓挫してしまいました。

そこに何ヶ月も時間を割いてやってきたのですが掛かったコストも支払っていただけなかった。その後もどんどん仕事が減りました。お仕事自体はあるのですがその予算がどんどん減っていく、業界全体が縮小する、というような状態になり、さすがに苦戦しました。

もともと余剰人員を抱えていたわけではないので社員解雇はしませんでしたが自然減や女性の妊娠退社のタイミングでスタッフを極力絞り込んでアルバイト雇用にシフトするなどしてコストを抑えました。

デザイン業はしばらく未来は明るくないと感じたのですが、食は大きな落ち込みはないと考えて、飲食事業を補填なしで採算があがる仕組みにしなければと思い、初めて銀行から融資を受けて店内の内装替えをしたりメニュー構成を変えていきました。

普通こういう時は出費をできるだけ絞ると思うんですが逆に投資をして攻めました。
これが結果的には正解でした。飲食事業はリーマン後、利益を生み出すようになっていきました。

むしろ、リーマン前までは考えが甘かったと気付きました。
二足のわらじ状態でしたので、デザイン事業は非常に忙しくて、どうしても飲食事業は現場任せになり目が届いていない部分がありました。このままではいけないということで細部にわたって私たちが細かく指示をしながらお店全体を引き締めていくという作業をしました。箱は悪くないので、きちんとやればもっと売り上げは上がるはず、やらなきゃいけないことはたくさんある。リーマンショックをきっかけに着手したという言い方が正しいかもしれないですね。

飲食の中でも例えば高級レストランなどの高客単価ゾーンはリーマン後は厳しかったようですが、幸いカフェは客単価の低い業態なので、あまり不景気の煽りは受けなかった。むしろ高いレストランに行っていた人達が客単価の低いカフェにシフトしてきて飲食事業に関してはリーマンショックの直接的な煽りというのはほとんどありませんでした。

男性的発想からは ”CafeEight” は産まれなかった。

株式会社アマテラス:女性経営者として、女性だからこそぶつかった壁や困難はありましたか?

清野:必ずしも女性だからこそ、ということではないと思いますが、数字へのこだわりなど対外的なことを意識して経営するという事が全く無かったので、銀行の方と話をするときには頭を男性的に切り替えたほうがよかったと反省した事がありました。それまで直感で仕事をしてきたというところがありまして、自分たち自身を経営者と思わず好きなことを好きなようにやってきました。結果的に銀行からは融資を受けられたのですが、良い評価を得られなくて思うような金額を融資してもらえなかったんです。

デザインに関しては、いただいた仕事に対してコストをあまり意識せずとにかくお客さんに喜んでいただこうとしか考えていなかった。なので飲食に関しても同様にお客様に喜んでいただけること、それだけを考えてやってきたのですが、やはり数字(コスト・利益)のことは追いかけていったほうがいいと追々気付くようになりました。

女性だから数字にこだわりはない、ということはないと思うのですが、女性が起業しよう何かやりたいと思ったときに男性と比べると自分の好きなことを職業にしようと思う方多いと思うんですよね。

儲けたいとか、会社を大きくしたいとか上場して有名になりたいというような欲求よりも誰かを元気にしたい、といった身近な人への貢献の発想で起業される女性は多いと思います。

株式会社アマテラス:男性と女性で考え方が違うと感じたエピソードなどあれば教えてください。

清野:カフェエイトを始めるときに飲食業界に勤める男性の方たちにヴィーガンというコンセプトでやりたいと話しに行ったところ、10人が10人とも「やめろ」と言いました。

まず単価の高いお肉を使わないと商売にならないということと、野菜は仕入値段の変動が激しいし単価も安い。野菜は旬の入れ替わりが激しくて調理のスキルも非常に必要になってくる、、などなど、論理的に考えるとやめるべきだと。

悪いこと言わないから少しでもお肉は出しなさいと言われたんですけど、「いや絶対にヴィーガン料理でやっていける」という確信が私の中にはあったので言うことを聞かないわけですよね。

自分の中でもうビジョンが見えてしまっているので、信じてやっていけば必ず実現できるという思いがあって、やってみて駄目だったらしょうがないな、くらいの覚悟はできていたんですね。女性は男性よりも直感で動く部分が大きいかなと思います。

株式会社アマテラス:カフェエイトの仲間集めはどうされてきたのでしょうか?

清野:実際の経営に関しては川村と二人だけでやっているので、彼女との出会いがすべてと言ってもいいぐらいなんですが、スタッフに関して言うと、自然に集まってきたんです。

カフェエイトはオープニングメンバーに、とても恵まれていたんです。
他の方には参考にならないと思うのですけど、運が良かったとしか言えません。

まずお店を始めようと決めたのが7月で、店のオープニングが10月頭。3ヵ月しか時間がありませんでした。私自身全く飲食の経験がない中で、仕入れ先を探したり、内装とか厨房のことですとか、メニュー構成を決めたり、コンセプト決めたりということで、ほとんど人材採用に関しては手つかずに近い状態だったんですけど、いろんな人にとにかく言いふらして回ったんですよ。こういうことをやりますからって。

特に人を探してると話したわけではなかったのですが、それを聞きつけて面白いから働いてみたいんですっていう人たちが集まってきました。
 
集まったのはほとんどが知らない人ばかり。

当時の東京は空前のカフェブーム。カフェが乱立していて、雑誌もほとんどカフェ特集といった状態でした。うちがヴィーガンという全く新しいコンセプトの店を始めると言うと、海外での生活経験があって日本でベジタリアンの生活をしているスタッフが集まってきたりと、自然と面白い経歴の人間が集まりました。実際にバイリンガルのスタッフが非常に多かったです。
それがお店のカラーになって、“なんか日本じゃないみたいですごく面白い”と評判になりました。

忙しくて人材採用する余裕もなかったんですが、とにかく会った人と機会があればとりあえず話をしていました。噂が噂を呼んだのだと思います。

”あいつ面白いぞ” と思ってもらえると人が集まってくる。

株式会社アマテラス:ほとんど全てのベンチャー経営者は人材採用で悩みを抱えていますがこれはとても示唆のある話だと思います。でも、面白いコンセプトを打ち出しさえすればいい人が集まるってものではないですよね。

清野:そうですね、やはり若いときに自分自身が面白い人間になっておくと、あの人、何かやりそうだなっていうのを周りがいつも見てくれる。何かをしようとしたときに仲間が力を貸してくれる。いろいろな人に話をしたと言いましたけど、そんなに言ったわけではないんですよ。話をした人がさらに知合いに話をして拡がっていったんです。

20代のころにたくさん遊んでいたので、その時のネットワークや、自分自身がそこで磨かれたという部分もあると思います。そうすると友達も面白くなりますよね。自分が面白いと当然周りにも面白い友達ができて、その面白い友達に私の感覚的な言葉を投げかけると理解してくれてそれを誰かに伝えてくれる。

自然と面白いスタッフが集まったり、お客さんも面白い方たちが集まってきて・・・ということだったと思います。事業を始める時にきっちりした企画書があってもそのままには絶対進まないので、若い人に伝えたいのは若いうちにとにかく自分を磨くためにとことん遊んだりとことん人に会ったりして、“なんかあいつ面白いぞ”と思ってもらえるのが一番近道だと思います。

株式会社アマテラス:『面白い人間になる』というのは本当に難しくて勉強するより難しいことだと思いますけど、それを意識しておくかおかないかの差は大きいですよね。

清野:結局何かしようとしたときに自然とみんなが寄ってきてくれるかそうでないかで事業は大きく変わってくると思います。
私でいえば、『割烹清野』がいい経験でした。ほぼ毎晩宴会をしていて、本当にいろいろな方たちが集まってくださったので、みんな私の料理を知っているわけです。そうすると、あの清野が店をやるっていうと、仲間がいろんな人に話をしてくれて。仲間集めというところではあまり苦労した記憶はないですね。

株式会社アマテラス:事業をやると決めた時から人を集めたというよりも、素地というか地盤みたいに力を貸してくれる友達がたくさんいたので、いざ清野さんが動いた時に仲間がさっと集まった。

清野:そうでしょうね。決してそんなに親しいわけではない人たちもたくさんいたんですけど、あの人たち面白そうなことを常にやってると思われていたんでしょうね。

冒頭にお話したように私と川村と二人で会社を立ち上げるときに、“Double Ow Eight”っていう会社は“007”のジェームス・ボンドのようにスマートだけどユーモアもあって、任務はキチンと遂行するけど遊びもあるという、そういう仕事の仕方をしたいという考えがベースにある。

女性が何かを始めるときって、男性から見たらダメな部分がたくさんあると思うのですが、とにかく「あの女二人はいつもわけわかんないことしてるけど、あいつらには敵わなそうだな、なんか楽しそうにしていて、女はいいよな」と思われるような仕事の仕方をしようっていうのは二人で話してました。

男性と同じ土俵に上ってしまうと、いろいろな面で頑張らないといけないところが出てくると思います。
体力もそうですけど、すごくロジカルにやっていかないといけない部分も出てきたり、そもそも女性って感覚的な生き物だと思うので、そうじゃない方もいますけど私はその感覚の部分をもっと生かしたほうがいいと思うんです。それを無理矢理兜で隠して男性の世界に行くよりも、女性は女性の感覚的な部分を最大限に生かしてこそ、女性が起業する意味があると思うので、傍から見て自分たちがどんなふうに見えてるかというのは意識するようにしています。

なんか辛そうな顔してないかなとか。実際そういう仕事を受けてしまうとそうなってしまうので、仕事自体もきちんと寄り分けるようにしていました。「あの人たちに関わってると元気になるな」とか、「とにかくなんか面白そうなこと常にやってるから、一応繋がっておこう」と思ってもらえるような遊び方だったり仕事の仕方っていうのは意識してきましたね。

株式会社アマテラス:男も女もそうですが、常にイライラした顔した人とは一緒に仕事をしようと思いませんよね。特に女性はそういう感性まで気持ちが行き届くというのはあると思います。

清野:そういう意味で自己プロデュースというのは女性のほうがやっぱり得意、上手だと思います。男性に比べると。

ビジネスでは男性の理屈よりも女性の直感 ”感覚マーケティング” が勝つこともある。

清野:90年代までは今までのマーケティングで良かったと思います。相手を見て市場分析して数字を予測して、という。でも2000年以降はそんなことしてたら全然間に合わない。相手を見てから物を作ったりアクションを起こしていたら間に合わないので、過去を分析するのではなくこれから先のこと、これが来るなというのをいかに素早くキャッチできるか。それができるのは女性だと思うんです。私はそれを“感覚マーケティング”という言葉を使っているのですが、競合がまだ1社もいない中で次はこれだということをいかに見つけていくか、それは本当に女性の得意技だと思うのでそれをやっていったほうがいいと考えています。
先ほどのお話じゃないですけど、私がカフェ事業を始めるときに、男性全員にやめろと言われましたけど必ずしも理屈通りにはならなくて“感覚マーケティング”が勝つこともある。

結果的にはカフェエイトのヴィーガンのコンセプトは世間が後からついてきた形になって、今となってはオーガニックブームだったりヘルシーブームっていうのが来ました。私たちがカフェエイトを始めるときに、とにかく老舗を目指そうと半分冗談で言っていたのですけど、5年たったときにもうベジタリアンの老舗と言われてました(笑)

自分が焼いたパンケーキを1日10食出しても起業家。まずはアクションを起こすこと。

株式会社アマテラス:“女性起業家 清野玲子”に憧れるような女性、起業に関心ある女性にメッセージをお願いいたします。

清野:私は一つ、何でもいいので誰にも負けない一芸、絶対的に自信が持てるということを身に付けることは非常に重要だと思います。それがどんなにつまらないことでもいいんです。

要するにオタクですよね。何かに対してオタクになるっていうことは、社会人になるとなかなかできないので若いうち、できれば学生のうちやったほうがいいと思ういます。私の場合はそれが音楽と料理だったんですけれども、友達なくしても気にならないくらい没頭して、音楽をものすごい聞き漁ったり、料理はとにかく毎日実験のようにのめり込んだ時期がありました。それがあったので社会人になった時に、音楽に関しては年齢も違う、職業も全然違う方たちと同じ共通言語で話せて、「なんで君、こんなミュージシャン知ってるの?」とか「わぁ、君面白いねえ!」とか、わーっと盛り上がれたり、ネットワークがそこでがーっと広がったり。それで私DJや映画制作もやってたこともあるんですよ(笑)

あとお酒も好きなんですが食卓でお酒があって美味しい食事があるというのは人のネットワークを作るのに一番いい場所なので、とにかく美味しいお酒、美味しい食事をたくさん体験することは人脈作りをするうえでは非常にいいと思いますね。特に女性であれば料理に没頭するというのはぜひお勧めしたいです。

私は社会に出たときに、今お話した音楽と料理という芸は持っていたんですけれども、それとは別にいわゆる酒の席にどんどん飛び込んでいって、いろいろな人たちに会うことができたっていうのはとても面白かったですね。自分より10歳ぐらい年上の人たちのところにポーンと飛び込んでいって、そういう人たちの話を聞くっていうのはそれ自体がマーケティングだと思います。自分が面白いと思っている人たちが何を考えているかとか、全く違うタイプの方たちとも繋がりを持って話を聞くと視野が広がるし、ダイバーシティ(多様性)に身を置くことはとてもよいことだと思います。

それと、私は日本では『起業』という言葉が大きすぎる、重すぎると思います。最近になって『起業家』と言われるのですが、そう言われてみればそうなるのかな、みたいな感じなんです。好きなことをやってきただけで、気が付いたら一応『起業家』ということにはなっていますけど、例えば、3坪のお店を持ったって起業家なわけです。そこで自分の好きなアクセサリーを1日1時間売っても起業家なわけです。自分が焼いたパンケーキを1日10食出しても起業家ですよね。そういう発想でいいと思うんですよ。本当に自分の好きなことで、少しでも人のためになる、これで喜んでくれる人がいるとか自分のこのスキルを必要としてくれる人がいるのであれば、ちょっとアクション起こしてみようかなっていうことでいいんだと思うんです。

株式会社アマテラス:最後に清野さんの夢について教えてもらえますか?

清野:私は福島出身ですが地方に雇用を生み出すことができたらいいなと思っています。日本は完全に東京一点集中型になってしまっていて、地方はみんなどこも同じ問題を抱えていますよね。商店街がだめになって大型店に全部持っていかれてしまって。そうすると地元に楽しみが無くなってみんな東京に出てしまう。日本は地方にこそいいところがあるはずなのに、このままだとそれが全く生かされない状況になってしまう。そして震災があった時に、東京に固執している理由は実はもうないんじゃないかと強く思いました。これからは分散していかないと。地方だってできることをやっていくことが重要だなと思っています。私は田舎で育った経験があるので、田舎の人たちの体質はわかっているつもりです。それをわかった上できちんと地方に雇用が生み出せるようなことをやっていきたいなと。具体的には飲食事業を地方で展開したいと思っています。

今カフェエイトではヴィーガン料理に取り組むことで、アレルギーを持つ子供やそのお母様たちがお客様として増えています。そういう子供たちのためのお菓子や食べ物を地方の工場で作り、工場にお店も併設し、そこで生産したお菓子を全国に卸して、ということもやっていきたいと思っています。

株式会社アマテラス:とても社会的意義の大きな夢ですね、清野さんありがとうございました!

edited by 藤岡清高

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