CEO INTERVIEWS

起業家インタビュー

Vol.38
2015年06月30日
株式会社葵 | 代表取締役  石井 貴基 氏

株式会社葵
代表取締役 石井 貴基 氏

教育に関する格差を是正し、高品質な教育サービスを圧倒的に安くお届けする。そのために年収150万、500万、1000万の人でも関係なくアオイゼミというサービスを選んで頂ける世界観を作らなければならない。

はじめに

"教育には莫大なお金がかかる。世帯収入格差が教育格差に繋がっている。"

前職の生命保険会社でそう実感した石井社長は、スマートフォンを通じた教育サービスを展開することを決意します。

最初は事業が軌道に乗らず、生活費確保のために朝から夕方まで他社でアルバイトをして働きながら「アオイゼミ」の事業を立ち上げるというハードな生活を送っていました。

それでも
”年収150万、500万、1000万の人でも関係なくアオイゼミというサービスを選んでいただけるという世界観を作らなければいけない”
と、圧倒的な安値で高品質の授業を配信し続けた石井社長。

いまや日本最大級のライブ授業サービスを展開する会社に成長。
教育業界を大きく変えている注目の石井社長、その生い立ちや起業ストーリーに迫りました。

株式会社葵
代表取締役 石井 貴基 氏
(いしい たかき)

【経営者略歴】
アオイゼミ代表取締役塾長。1984/10/29北海道札幌生まれ。

①新卒でリクルートに入社
②ソニー生命保険に入社。
生命保険の販売の傍ら、ファイナンシャル・プランナーとして北海道のあらゆる世帯の家計をコンサルティングした際、家計における「教育費」の負担が高いことに気付き、課題感を感じる。
③インターネットを使って高品質な教育サービスを圧倒的な低価格で提供するため、上京し、株式会社葵(アオイゼミ)を創業。

◆創業の経緯など→[MacFan]  http://goo.gl/lLJy4N
◆Twitter:@takaki_ishii
◆趣味はバイク、読書(活字・漫画問わず)

  • MISSION

    高品質な教育を、 圧倒的な低価格で提供する。 ITを使って、「教育」を進化させる

  • 事業分野

    教育・Edtech

  • 事業内容

    ・インターネット学習塾の経営 ・中学生・高校生を対象とする進学塾の運営 ・eラーニングシステム・アプリの開発

  • 設立

    2012年3月8日

  • 社員数

    42名(2015年6月時点、アルバイト・インターン生含む)

  • 企業URL

    http://corporate.aoi-zemi.com/

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起業家紹介

石井 貴基 氏

やりたいことはほぼ全部実現。周囲を巻き込んで実現までもっていく。

株式会社アマテラス:石井さんの生い立ちや家庭環境について教えていただけますか?

株式会社葵 石井社長(以下石井):生まれ育ちは札幌で、地元の公立小中学校に通い、高校は函館ラ・サール高校で寮生活を送りました。

大学は福島大学という国立大学に進みまして、札幌から函館、福島と進学するたびに徐々に南下していきました。福島大学卒業後新卒でリクルートに入社し、これでやっと東京進出だ!と思ったのも束の間、故郷の札幌に配属されてしまいまして(笑)。結局東京に来たのはつい3年前(2012年)の起業時です。

これまでを振り返ってみると、子供の時から今まで、やりたいことや、やろうと思ったことはほぼ全部実現してきていると思います。 例えば、僕が小学校の時、ミニ四駆がものすごく流行っていました。当時はいろんなスーパーやオモチャ屋でレースが開催されていました。それを見て「もっと身内で集まってやろう」と思い、地元の小学生向けの大会を友だちの家で企画しました。レースに使うコースを持っている友達からコースを集めて連結して超特大サーキットを作ったり、参加費を集めて、そのお金で大会の景品を買ったりしていました。そういう企画やリーダーを小6の頃ぐらいからやっていたのを思い出すと、自分の「やりたいこと、思いついたことを実現する」というスタンスは、昔からあまり変わっていないと思います。

ただ昔からコンプレックスとしてあるのが、運動ができないことですね。体育はオール1でした。柔道や、スキーなどの個人競技は得意なのですが、サッカー、バスケのような球技系がどうも苦手でした。小学校の頃は運動できる人=正義みたいなところがあるじゃないですか。自分は運動で目立つタイプではなかったので、どちらかと言うと、企画とかで周囲を巻き込むタイプなのかなと思っていました。

これができたら面白そうじゃない?と提案して、各コミュニティーのインフルエンサーを巻き込んで、実現までもっていくタイプでした。

起業に関してお話しすると、祖父が会社をやっていたので、会社を作るということがそんなに遠い世界の話ではないと常々感じていました。経営者としての振る舞いを間近で見ることができたのは、とても大きな経験だったと思います。祖父は当時60歳で、Windows95が出たての時に即購入するような感度の高い人でした。自分がミニ四駆にハマっていたときに、乾電池だと消耗が激しいので充電池が欲しいと思い、機械系に詳しい祖父に相談したところ、「そう言うと思っていた。ちょっと待っていろ。」と言い、倉庫にあった充電池セットを持ってきてくれたのです。「おまえがそう言うのは読んでいた。」と言わんばかりの自然な流れで渡してくるので、そういう先回り力を見て、やはり祖父はすごいと単純に尊敬していました。

小さいときから家族より「北大(北海道大学)に行け。」と育てられたのですが、それと同時に「公務員と銀行員には絶対なるな。」とも言われていました。理由はよくわかりませんが、きっと親が僕のことを、どちらかといえば人から言われたことを淡々とやるタイプではないと感じとって、そう育てたのだと思います。

中学生の時は成績が悪くて、中2くらいまで中の下くらいの成績でした。母親から「あんた将来、北大ね。」とずっと言われ続けて育てられたので、自分の人生の中で、北海道大学に行くというのがもう既定路線としてありました。ですが中2の秋に、ふと、このままだと北大を狙えるような偏差値の高い高校に入れないと気付きました。急に焦り始めて先生に相談するとやはり厳しそうだということが分かり、心機一転塾を変えて本気で勉強をし始めました。

中2の秋に受けた最初の模試は、函館ラ・サールの合格判定が2%ぐらいでしたが、そこから必死に勉強したおかげで中3の春には50%ぐらいに上昇しました。そして秋口には合格判定が80%くらいになり、学年順位も1位・2位というところになっていました。
その成功体験は、今のアオイゼミにも生きています。成績があがった要因としては、「勉強はやれば伸びる」という感覚を持てたことです。環境を変え、目の色を変えて勉強に取り組んだことで自分の意識も変わり、自分で参考書に取り組めるようになりました。

今思えば高校受験で勉強のコツをつかめたのはよかったです。勉強って本当はすごくシンプルで、理科とか社会とかで100点を取る方法を極端に言うと「知らないことを無くせばいいだけ」です。わからないことを無くせば、理論上は満点を取れるじゃないですか。わからないところがあるかないかのチェックは問題を解きながら行い、まだ覚えきれていないところがあれば、そこを覚えて漏れを防ぐことでさらに点数が上がります。単純にそういうゲームなのだと思って勉強に取り組んでいました。

高校受験はそれでうまくいきましたが、大学受験はそう簡単に行かず、数学が足を引っ張りました。今思うと勉強法が良くなかったですね。中学のやりかたで高校も突き進んでしまっていたので。僕が大学受験をした頃にアオイゼミがあれば、結果も変わっていたかもしれないと思います(笑)。

「差異は価値」という文化で青春時代を過ごす。

株式会社アマテラス:高校に入ってからのお話を教えていただけますか?

石井:僕が進学した函館ラ・サールはすごく特殊な高校でした。恐らく日本で唯一だと思うのですが、1年時はワンフロアの100人部屋で過ごさなくてなりませんでした。1学年の人数は200人なのですが、その内100人が寮生というような構成で、寮ではプライバシーは皆無でしたね。

毎日24時間いろんな人と一緒に暮らすので、嫌でも人の良いところ、悪いところが見えてきます。そのような日々で学んだこととしては、いい意味で人に期待しすぎなくなったことです。例えば、仲間に裏切られたと思うような出来事があったとします。でも裏切られたと思うのは、その人に過剰な期待をしていたからだと思うようになりました。やっぱり人間同士なので考え方が違ったりもしますし、相手の事情も様々なので、あまりにも期待しすぎるとかえって悪い感情が生まれ、損するだけで何も解決しなくなってしまいます。そうならないように、いい意味であまり人に期待しすぎなくなったのはよかったのかなと思っています。

高校の時に入っていた部活はプラモデル部です。実は自分で作りました(笑)。僕はプラモデルがライフワークなのですが、高校のときにプラモデル部を作りたいと思ったんです。ただ、学校が認めてくれなかったので、それだったら勝手にやるよ、と思って本当に勝手にやっていたら、いつの間にかプラモデル部が正式に部と認められていました(笑)。やっぱり、自分はやりたいことを実現する人間なのだと思います。

やりたいことが既にあればそれに参加するのですが、既存のものがないのであれば、作ろうと思って行動してきました。メインストリームのところでやっていくというよりも、日陰で何か面白いものを仕掛けるというイメージです。
どちらかというと自分は企画屋なのだと思います。

ラ・サール高校には面白い文化があって、国語の教師で1人、「差異は価値」と言っていた先生がいました。人と人との価値、モノとモノとの価値というのは、違いから生まれるという至極真っ当な論題なのですが、「差異は価値」ということが、名言として一部の友人に広まっているところがありました。
それがきっかけなのかはわかりませんが、仲の良い友達の間では人と違うのがイケてるよね!みたいな雰囲気がありました。そんなアメリカのような文化があったので、自分の考えや主義主張がないと「個性が無い」と言われてしまう文化です。
そういう環境の中で、自分は比較的埋没している方かなと自分自身では思っていたのですが、応援団の団長をやったり、プラモデル部を作ったりと、周囲からは良い意味で「好きなことをやっている主体性のある人」と見られていたようです。

株式会社アマテラス:大学受験、大学時代のお話を教えてください。

石井:大学受験をし一年間の浪人を経て、前期では北大に受からずに後期で福島大に合格し入学を決めました。そこで初めて本州に行ったわけですが、大学での生活は僕には合いませんでしたね。

高校で、「差違は価値」だと言うような環境に生きてきて、いざ大学入りました、サークル入りましたという段階で、みんな同じようなことしかやっていなくて、同調圧力というのがすごく嫌でした。やっていることがすごく合理的であればそれは良いのですが、先輩がやると言ったらやろうよ、という雰囲気は本当に合いませんでした。 だから大学では友達が全然できませんでした。仲が良かったのは今一緒に会社を経営している仲間ぐらいです。

そのような状況だったので最初は大学に行かなくなりましたし、大学の中での付き合いよりも大学外での付き合いのほうが多かったです。例えばデザイナーの人と知り合って、DTP(DeskTop Publishing)という世界を知ったり、あるいは福島の町でお店を始める人やNPOを立ち上げる人がいたりですとか、そういう方々が大学外で身近にいました。このような人たちとの付き合いはとても面白かったです。当時フリーペーパーブームがあったのですが、福島にフリーペーパーがそれほどなく、福島市街地は衰退の一途をたどり、若い人が町に来ないという課題がありました。これは何とかならないのかなと思い、福島大学生向けのフリーペーパーを作ろうと決めました。当時大学2年でした。福島大学生は4000人ぐらいいるのでその10%でも町中に呼ぶことができれば地方都市は十分活性化するのではないか、と思ったのがきっかけです。

そこからDTPをデザイナーの方に教わったり独学で学んだりして知識を養い、ようやく実現したのが大学を1留して4年の時です。実際3年かかってフリーペーパーの発行を実現できました。全く何もない、知識も技術もないところからのスタートだったので時間はかかりましたが、時間をかけた分実際に福島大生を町に流入させる影響力のあるメディアにすることができました。フリーペーパーのクライアントからは一番CPA(cost per action)がいいメディアだととても高い評価をいただきました。

これは本当にいい経験だったと思うのですが、高校時代のプラモデル部と同じで単純に自分がやりたいことをやってそこに人が集まってきてくれたということです。自分自身カリスマ性があるとは全く思っていなくて、どちらかと言うと自分の立ち上げた企画に人が集まるというやり方です。僕は多分、お金で人を集めるタイプだと思います。要は企画にお金がつくから、それで人が集まると。いい意味でも悪い意味でも企画ベースで人を集める人間だと思います。

世の中を動かす方法と言ったら「人を集めるか」または、「お金を集めるか」だと思っています。僕はどちらかと言うと、金を集めるほうだと大学のときに思いました。人を集めるタイプのリーダーを見て羨ましいと思ったりもしますが、自分はそっちには向かないなと思っています。

アオイゼミ社内風景(1)

アオイゼミ社内風景(2)

「親に言えないことはやらない」「フェアであるべき」を信条に、まっすぐ突き進んだ社会人生活。

株式会社アマテラス:そんな起業家精神溢れる石井さんが、新卒でリクルート、その後ソニー生命というキャリアを辿った経緯は?

石井:リクルートに入った理由はとても単純で、大学時代にフリーペーパー事業をやってみましたが、やはり社会人として今後キャリアを歩いて行くのであれば、しっかりした会社で事業経験をしないといけないと思ったからです。そして、いろんな業界を見て回れる会社に入りたいと考えました。そこで受けたのが総合商社だったのですが、知り合いから「石井くんはリクルートが向いてるよ。フリーペーパーもやっているし」と言われたのがきっかけです。とりあえず受けてみたら最終的に受かったのがリクルートだったという感じです。今になって思えば、最初の就職先がリクルートで本当に良かったと思います。配属先が営業職だったので、お客様のことを徹底的に考えてそれに合わせた提案をしたり、しっかりした営業スキームを学ぶことで、社会人力を高めることができたと思っています。

自分は一度思い込むとまっすぐ進んでしまうタイプで、分譲マンションの広告を作っていた当時、クライアントに対してもそのように接していました。

物件の良さを読者に伝えるために、物件の本当の価値を知る必要があると思い、それを知るためにはその物件を検討しているお客様の声を聞いたほうがいいのではないかと思うようになりました。クライアントに「営業に同席させてもらっていいですか」と言うと快諾していただけたので、土日にクライアントとマンションのモデルルームでずっと一緒にいたりしました。気さくな方だったので、彼女や趣味などの雑談もしましたね(笑)。

クライアントと話をしながら現場にいると、モデルルームの空気感やクライアントの懐事情なども詳しくわかるようになってきます。その生の声を読者に伝えようと思って、とにかく徹底的に仕事をしました。そしたら広告から成果につながる事例が増えて、結果的にクライアントさんからの出稿が増え、さらに成果を出せるという好循環を創ることが出来ました。その結果、リクルートで表彰していただくこともありました。でも札幌支社での業績だったので、首都圏と比べると金額的にも小さいですし、やはり一度は東京で勝負したいと思い始めました。しかし、当時自分が所属していた部署では、自分の希望を叶えるとなると半年くらいは待たないといけないような状況だったため、ちょっと待つのもしんどいなと感じたわけです(笑)。そのようなタイミングの時、ソニー生命から「うちに来ないか?」という声がかかりました。

ソニー生命の人の話を聞くと、ソニーマンシップはリクルートマンシップに近いと感じましたし、それに加えて生命保険の仕組みの面白さに魅かれ転職しました。
ソニー生命はコンサルティング営業ということにこだわりを持っている会社で、「お客様それぞれの家計や、将来やりたいことによってライフスタイルがぜんぜん違う。だから、お客様ごとに最適化された生命保険を提案しましょう」というスタンスの会社です。
そのため、自分もお客様のところへお伺いするときは、とにかく家計の状況や将来実現したいことなどを詳しく伺って、将来の見通し図を一緒に作らせていただきました。その際どの世帯においても、「お子様の教育費の負担が重くなっている」ということが気になり、今の時代ネットを駆使すれば、高品質な教育サービスを圧倒的に安く提供できるのではないか?という、そういう発想につながっていきました。

自分が小さいときから意識している信条が二つあります。まず一つ、「親に言えないことはやらない」ということ。もう一つは、「フェアであるべき」という発想です。その二つだけ。とてもシンプルです。

例えば、高校のときも、全然部員が集まっていない部活が存続しているのに、何で自分が作りたいと思っていてメンバーも集まってきているプラモデル部は作ってくれないんだよ、フェアじゃないだろう、と。
教育産業だって同じです。少子化の影響もあり学習塾などの単価は上昇傾向にあります。これは企業としては仕方がないと思いますが、一方で経済的な事情で塾に「行けない」層も増えています。これが進むと、アンフェアな世の中になってしまうと思います。だから、自分たちは「フェアな学習環境を作りたい」という想いでアオイゼミを創っています。

アオイゼミ オフィス内のコタツの前にて アオイゼミ石井社長(左)とアマテラス藤岡(右)

副業をしながらの起業。独自のビジネスモデルを強みに事業を拡大。

株式会社アマテラス:起業してから資金面の苦労話を聞かせてください。

石井 :会社を創ろうとなってから半年で起業したので準備金はありませんでした(笑)。当時は27歳だったので、そんなにお金を持っている歳でもなかったのですが、それでも何とかやるしかないと思って、何とか100万ぐらい集めて東京に来て起業しました。
東京は本当に土地勘がなく、リクルート本社のある東京駅とせいぜい新橋、ほかは新宿に1回行ったことがあるくらいでした。
そんな中、大学の友だちが中野に住んでいると聞いて、新中野というところで起業しました。不動産を決めて、まずはそこに僕が住み始めました。自分以外の創業メンバー2名はその1、2ヶ月後に仕事を辞めてジョインして、3人全員そろったのが2012年5月です。ただ3人で集めた100万円はすぐに無くなったので、お金の工面をしようと言うことになり、役員3人全員が副業をかけもちしながらアオイゼミの授業を配信するという生活を1年半ほど続けました。かなりハードな日々で本当にやせこけていましたね。その当時と一番太っていた去年の写真を見比べたら、劇的ビフォーアフターですよ(笑)。
最初はシステム構築を外注したり、既存のCMSに乗っかるような形で創業しましたが、サービスをリリースして2カ月ほどで「これはダメだ」と思い、自分たちでシステムを一から作ることになりました。当時居たアルバイトの子がたまたまPHPをいじれたので、自前でやろうということになりました。

事業の大きな転換期は2013年8月にスマホアプリを出した時です。そのおかげで1日の会員登録者数がそれまでの10倍に伸びました。KDDI ∞ Laboに採択していただいたのもその時期です。

そしてこのタイミングで日本ベンチャーキャピタル(NVCC)さんとコロプラ創業者の千葉さんが個人で投資してくれました。NVCCの担当者はビジネスモデルの面白さと、こいつら気合い入ってるなというところを評価してくださったようです(笑)。

アオイゼミでは平日夕方19時から22時までライブ授業を行っているのですが、NVCCの担当者は遅い時間にも関わらずオフィスに来てライブ授業の様子やオペレーションをずっと見ていました。2時間も3時間もずっと見て、「よし」っと投資してくれました。ここまで長時間ライブ授業を見続けていた方は、後にも先にもこの方だけです。
NVCCさんとコロプラ千葉さんのおかげで、ようやく副業を辞めて事業に専念できるようになりました。それが2013年10月頃で、創業して1年半ぐらいです。

調達した資金で中野ブロードウェイの少し広いオフィスに引っ越しました。事業が拡大し、人もお金もより必要になってきたところで、2014年8月にジャフコさんが追加の投資をしてくださり、現在の四谷オフィスに移転してきました。

株式会社アマテラス:アオイゼミの事業特徴や今後の事業展開について教えてください。

石井:アオイゼミが他社と根本的に違うのは、そのまま既存市場との差ともなりますが、「無料でライブ授業を受けられること」と、「システムとコンテンツ両方を内製していること」です。競合他社はシステムとコンテンツのどちらかが外注になっているケースが多いです。この大事な部分を内製しているということは、今後大きな差になっていくと思っています。どちらかを外注してしまうと、まずユーザーの不満や声を吸い上げるのが難しい上に対応が遅くなるのではないかと考えています。
ユーザーからすれば外注かどうかはどうでもいい問題かもしれませんが、ユーザーの声をダイレクトに吸い上げるスピード感と、それをそのままサービスに反映し、臨場感のある授業を展開できるかどうかは、サービスを運営する上でとても重要だと考えています。

学習塾マーケットはもとを辿れば寺子屋というところが土台となっていますが、大学受験マーケットというのは、戦後に形成されたと思っています。戦後の頃から「うちの子どもは、いい大学行って、いい会社に就職させたい」という想いが強くなり、地元の塾に子供を通わせて、いい大学に行かせる流れができたのがそもそもの発祥だと思います。そういった流れの中で、高度経済成長期で塾の競争と淘汰が起こり、最終的に集約された「駅前予備校」と呼ばれる大手予備校が産まれました。バブル期の頃は、「浪人してでもいいから、一流大学に行く」という考え方が主流でしたが、バブルがはじけた後は、「もう浪人させるお金がない。わざわざ高いお金払って予備校に通わせる余裕はない」という考えに移り変わりました。その際にマーケットの中心を担ったのが「サテライン予備校」と呼ばれるビデオ学習方式の教室です。

時代の移り変わりに合わせてプラットフォームは変わっていきますが、アオイゼミは次世代のプラットフォームを作っていると思っています。次はネットの時代です。大手は既存のビジネスモデルを抱えているため、なかなかネットに移行できていないのが現状です。

僕はスマートフォンはもはやパソコンだと思っています。Windows95が世に出てから約20年ほど経って、ようやく現在1人1台パソコンを所有する時代が来ました。しかも常時ブロードバンド接続という夢のようなマシーンです。このような時代に、まだサテライト教室に通ってビデオを見るのが当たり前なのかというと、ちょっと違うのではないかなと思います。

これから5年以内にスマートフォンで学習するというのが当たり前になるだろうと僕は思っています。この「スマホ学習塾」、「スマホ予備校」という市場が中心となる新しい時代になると、教育費を安く抑えることができ、かつ、いつでもどこでも学習できるようになります。今までの学習塾以上のバリュー持ったスマホ予備校が、これからのスタンダードになると思っています。

このスマートフォンというプラットフォームに合わせた学習の仕方、いわゆるシステムと、スマートフォンというプラットフォームに合わせた学習コンテンツ、この両方が必要不可欠だと思っています。僕らはこの2つとも自前で作っていて、どうすれば最適のシステムにできるだろうか、どうすれば最適のコンテンツになるだろうか、ということを日々講師とエンジニアが議論しています。そのように作っているのがアオイゼミです。

そして最後は先生の質や授業の質が勝負になっていくので、ライブストリーミング授業の運営ノウハウをもったアオイゼミのやり方が次第に強みを発揮していくと思っています。ユーザーの声を講師にフィードバックしつつ、ビジョンを共有しながら講師を育成しています。

株式会社アマテラス:経営課題について教えてください。

石井:経営幹部候補人材がまだ少ないですね。会社として経験不足なところがあります。これまでは人件費を抑えてやってきましたが、これからは高年収を見て諦めるのではなく、条件面のボトルネックを外して優秀な方にどれだけ来ていただけるのかというステージだと思います。これまでの基準を考えて給与を設定してしまいがちですが、そこは固定概念を取り外して、会社をさらにグレードアップさせてくれる人材を求めています。そのための条件などは出来るかぎりご要望にお応えしたいなと思っています。

教育に関する経済格差を是正し、高品質なサービスを届けたい。

株式会社アマテラス:アオイゼミで働く魅力を教えてください。

石井:これは胸を張って言えますが、うちはユーザーとの距離がむちゃくちゃ近いですね。ネットサービスなのでリアルにユーザーと繋がっているわけではないと思われがちですが、けっこうユーザーがオフィスに遊びに来ます。ファンレターも来ます。面白いのは、「システムの皆さんへ」という手紙も来ます(笑)。“システムの皆さん、いつもご苦労様です。いつも素晴らしいサービスを作ってくれてありがとうございます。”と書いてくださるんです。とても嬉しいですね。ユーザーに近いところで仕事をしているので、リアクションがダイレクトに返ってくるのが魅力の一つです。

あと、受験というものは人の人生に大きな影響を与えます。そこに携われることはすごく意義のある仕事だと思っています。良くも悪くもその人の人生を変えることになるので、アオイゼミは真剣度の高いサービスだと思っています。

ただ一方、お金にはうるさい会社です。お金とは会社の収益のことです。僕は社会起業家のようになったらダメだと思っています。もともと僕は営業なので、ユーザーがお金を払ってくださるというのは価値を認めてくれているからだと思っています。
ましてアオイゼミは学習塾の4分の1以下の値段で学習塾以上のものを提供しているという自負がありますので、価値を認めてくだされば、そこのお金は払っていただきたいと。もちろん、お金を払っていただいた以上は、払っていただいたもの以上のバリューは発揮しないといけません。
そして、無料ユーザーの方が本当に満足して、お金を払ってでも受けたいと思っていただけるかどうかは、サービスとして非常に重要だと思っています。

教育に関わっていると、つい自分達は社会貢献しているからお金なんていいんだよと考えてしまうこともあるのですが、アオイゼミではこのような考えはしないように心がけています。教育は大事だけれども、ビジネスマンとしての素養も求めます。
しっかりと収益化できて初めて、ユーザーの方により良いコンテンツを提供できますし、より良いシステムを開発する投資を行えます。このような良いサイクルを回していくことが、結果的に生徒や、その保護者の方、従業員などのステークホルダーの皆さんの幸せに繋がると信じています。

株式会社アマテラス:最後になりましたが、石井さんの夢をお聞かせください。

石井:アオイゼミがこうなってほしいという話につながる原体験があるのですが、僕が一番強烈に覚えているのが、ソニー生命時代に担当させていただいたシングルマザーです。その方は30代後半で、離婚されて、今もお母さん1人娘1人で仲よく団地暮らしをしています。お子さんも当時小さかったので仕事の時間もなかなか確保できないということもあり、年収は150万ぐらいでした。その方のライフプランニングを作らせていただく際、お子さんの教育方針を聞いて、これぐらいのお金を貯めておきましょうという話になるのですが、そのお母さんは子どもにはやりたいことは何でもやらせてあげたいという想いを持っていて、「自分の生活はどうでもいいから、この子だけには絶対に投資は惜しまない。」と言われたのです。この話を聞いてとても衝撃をうけました。

「母」としてのプライドなんですよね、恐らく。僕はその女性に感銘と言うか感動を覚えました。アオイゼミというサービスはこういった人たちを助けられるサービスになりたいと思っています。
ただし、安かろう悪かろうのサービスではダメだと思っています。
「アオイゼミは無料でもライブ授業を受けられるし、うちはお金がないからとりあえずアオイゼミをやるしかないよね」という世界観では負けだと思っています。
そうではなくて、「成績のいいAくんも、近所のBちゃんも、みんなアオイゼミで勉強しているから、うちもアオイゼミをやらせたい。」というぐらい世間一般に認識していただき、かつ、実績を残していないと負けだと思っています。

年収150万とか、500万とか、1000万とかの人でも関係なくアオイゼミというサービスを選んでいただけるという世界観を作らなければいけない。そうでなければ、教育に関する格差を是正し、高品質な教育サービスを圧倒的に安くお届けするというビジョンが成し得ていないのだと思います。
自分のビジョンが達成したか否かの基準はそこですね。年収150万のシングルマザーが何の負い目もなしに、「学習塾に行かせるのではなくアオイゼミをやらせるのが良い」と思いながら使っていただけるかどうか。そこまでもっていくのが夢ですね。あと多分、10年くらいはかかると思いますけどね(笑)。

株式会社アマテラス:石井さん、素晴らしいお話ありがとうございました!

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edited by 藤岡清高

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