CEO INTERVIEWS

起業家インタビュー

Vol.83
2018年03月19日
株式会社ZMP | 代表取締役社長  谷口 恒 氏

株式会社ZMP
代表取締役社長 谷口 恒 氏

自動運転技術を全ての人へ〜社会を変えるサービスを届けたい〜

はじめに

自律移動技術において日本第一人者であるZMP。その技術の事業範囲を更に拡げ、‘Robot of Everything’のミッションを実現すべく「タクシー」と「宅配」という2つの新サービス事業の開始を発表しました。そんな谷口社長に、道無き道を進む覚悟をお伺いしました。

株式会社ZMP
代表取締役社長 谷口 恒 氏
(たにぐち ひさし)

【経営者略歴】
制御機器メーカーでアンチロックブレーキシステム開発に携わる。その後、商社で技術営業、ネットコンテンツ会社の起業などを経て、2001年にZMPを創業。家庭向け二足歩行ロボットや音楽ロボット開発・販売を手掛け、08年から自動車分野へ進出。メーカーや研究機関向けに自律走行車両の提供を行う。現在、ロボットタクシー、物流支援ロボットキャリロ、ドローンなど、様々な分野へのロボット技術の展開”Robot of Everything”戦略を進めている。16年より東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程に在籍。

  • MISSION

    Robot of Everything 人が運転するあらゆる機械を自動化し、安全で楽しく便利なライフスタイルを創造します。

  • 事業分野

    モビリティ・ロボティクス

  • 事業内容

    自動運転技術等

  • 設立

    2001年1月

  • 社員数

    90名(2018年2月時点)

  • 企業URL

    http://www.zmp.co.jp/

起業家紹介

谷口 恒 氏
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自動運転技術を用いたサービスを自社展開することを決定

アマテラス:前回のインタビューは2014年春でしたが、あれから約3年間経過しました。その後の変化について教えていただけますか。

谷口:当時の社員数は34人でしたが、今は90名まで増えました。事業範囲が拡張し、2017年末までに更に社員数を増やす予定です。

主力事業である自動運転の技術開発は以前から変わらず進めており、BtoBの自動車産業向けのビジネスとして自動車メーカーや部品サプライ向けに研究開発用として販売しています。

そして、現在は自動運転技術を『交通弱者』と呼ばれる方々に届けるサービスを自社で運営していくことを構想しています。この決定は3年前との大きな違いです。自動運転技術を用いた自動運転タクシーというサービスを提供するところまで、他人任せにせずしっかりコミットしなければ、自分がやりたい信念を実現することができないと分かったのです。

自動運転タクシーと有人タクシーのコンビネーションでより便利な社会を

谷口:2017年6月に、タクシー配車サービスの構想を発表しました。
まずは一般の有人のタクシーの配車から始めますが、その後需要を見ながら2020年東京オリンピックの頃までを目標に自動運転タクシーを整備していく予定です。許認可や投資によって自動運転のカバーエリアが変わりますが、お客様の利便性を考えたサービスを提供したいと考えています。

例えば羽田空港から東京駅までタクシーで行きたい時に、自動運転タクシーのサービスは羽田—お台場間しか展開していないとします。お台場までは自動運転で行き、そこから東京駅までは有人タクシーに乗り換えないといけません。

そういったコンビネーションの問題に対して、乗り換えの待ち時間を少なくする配車サービスや、最初から有人タクシーを使用する場合と乗り換えをする場合の、所要時間や値段を比較する乗り換え案内を提供しようと思っています。

日本中を自動運転タクシーが走るにはまだ時間がかかりますし、実現するのかも分かりません。車椅子を利用する方にとっては有人タクシーの方が便利ですし、仕事などを車内で進めたい人にとっては自動運転タクシーの方が喜ばれます。

そうすると有人タクシーの把握も必要になるので、自動運転タクシーと並行して自社でサービス全てを提供しようと考えています。そこで、大手タクシー会社と提携しました。

人でないとできないこともあり、有人タクシーはこれからも絶対に必要なので、提携会社とは共存共栄します。メンテナンスや整備士は継続して必要なので、自動運転は雇用を突然奪うものではありませんし、何よりタクシー会社の収益の改善に貢献できます。

谷口:タクシー業界は売上の6割がドライバーの取り分なので固定費が高く、利益がほとんど出ない状況です。自動走行タクシーを導入することで固定費がグンと下がり、収益構造を改善できます。
人でないと出来ないものはその付加価値から値段を高く設定し、ユーザーが選択できるようにします。そういう形で発展できる産業だと考えています。

香港はタクシーの利便性がよく、大体6万台あります。他方、日本のタクシーは、東京を例にするとどんどん減っていて今は5万台を切っています。東京では2009年から2014年の5年間でタクシードライバー数が2割減り、今度も増える見込みがなくオリンピックまでに更に5000台減ることが想定されています。

人でないと提供できないサービスは維持しつつ、自動運転タクシーを参入させて日本も香港並みに便利で安くなると、お客様も乗るようになる。そうすると、減少し続けるタクシーの数も増加に向かいます。

アマテラス:タクシー業界が抱えるタクシードライバーの確保という課題を、ロボットタクシーの技術で解決できるのですね。

谷口:はい。ドライバーが儲からない仕事もあって、例えば大きな施設と公共機関との間のピストン輸送は収益があまり良くありません。そういった単純な輸送を自動運転タクシーで代替すると、ドライバーは長距離などの稼げる仕事に専念できます。

ロボット技術でタクシー業界の「おもてなし」品質を守る

谷口:ウーバーなどの海外で流行っているサービスをそのまま日本に導入しても、上手くいかないのは目に見えています。日本のタクシーは海外と比べても質が高く、資格も必要です。
アメリカだとドライバーが目的地を知らなかったら降ろされてしまうのですが、日本のドライバーなら一緒になって地図を見ながら探してくれます。

日本のタクシーは世界的にも評判がとてもよく、おもてなしの品質を守ることも必要ですが、ウーバーではそれが担保できません。

ですので、日本は得意なロボット技術を取り入れてタクシー業界を発展させて行くべきだと考えています。この考えに共感する方が多く、サービスを実行することまでが弊社の使命だと思っています。ウーバーに勝つ日本版のソフトやスマホアプリを開発するために、サーバーエンジニアのような人材も募集を始めました。

自動運転技術を宅配サービスにも活用

アマテラス:3年前から社員の数を60名近く 増やされましたが、エンジニア人材を中心に増やされたのですか。

谷口:エンジニアが多いです。事業推進担当も増えました。それから、物流支援ロボット キャリロの量産が2016年8月から始まり生産管理や生産技術、品質保証といった生産周りの人材も増やしました。

キャリロは現在大手50 社以上で利用して頂いており、実際使ってみたレビューからお客様と一緒に機能を高めているところです。

工場や倉庫での利用が一段落しましたので、次から元々の狙いであった一般道路向けのサービスです。例えばお年寄りの方がコンビニのカット野菜やパンなどを、スマホで注文すると宅配ボックスを載せたキャリロデリバリーが届けてくれます。

ロボット自体は既に完成していて、スマホとの連携も大よそ出来ています。機能実験を終え、実証実験を行っている段階です。

アマテラス:このサービスはオフィス向けでもニーズがありそうですね。人手不足のクロネコヤマトなどの宅配業者にも応用できますし。

谷口:自動走行宅配ロボット キャリロデリバリーは歩道を走行しますが、歩行者や自転車との衝突回避や夜間の走行を想定して、ブレーキランプやウィンカーを付けています。実験では時速4キロ程で走らせていますが、360°見渡せるセンサーがあり、人が来るとちゃんと止まります。

今後は3次元地図の作成機能を考えています。一度手動で動かすと自動運転のマップを作り、その範囲内ならどこへでも自動で行けます。

谷口:フードデリバリー関連企業にも利用を呼び掛けています。フードデリバリーは年々2%程の成長を続けています。しかし、配達員の不足から成長が頭打ちになっています。配達をロボットで代替すれば、数百億円規模のものすごい規模の市場に参入することになります。

アマテラス:開発された自動運転の技術をロボットとして売るのではなく、サービスとして提供するのですね。それがZMPの考え方だと伺っています。

谷口:お客様はサービスを求めています。1回食べ物を運んでくれることを求めて、ロボットを買う人はいません。配達員が不足しているなら、ZMPがロボットを活用して配達するサービスをすればいいのです。

外国籍社員の割合が60%超。多様性あふれる社内

アマテラス:外国籍社員の比率が3年前は50%程だったと思いますが、現在はどうなっていますか。

谷口:以前は50%程の比率で、その国籍は11カ国でしたが、現在は60%を超え、国籍は18カ国に及びます。当初は外国人率50%という制限を設けていましたが、この制限は廃止しました。

今は外国籍の人達の方が多く応募してきますし、優秀な方も多数います。営業職などは言葉の問題から採用しておらず、主にエンジニアとして採用しています。世界にも日本にも優秀なエンジニアはたくさんいますが、日本は大企業志向が強く、外国籍の人よりは応募者が少ないです。

アマテラス:もともと日本にいる留学生や日本に滞在している外国の方が、ZMPに就職するのですか?

谷口:もちろんそのパターンもありますが、初来日の人も結構います。ロボット/エンジニアで検索すると、日本だと多分ZMPが最初に出てきます。
また、「外国人が多くて働きやすい」ということも、コミュニティ内で知られているようです。外国籍率6割だと、もはや日本の会社ではなく、マジョリティは向こうにありますからね(笑)。

ZMP本社内で行われたインタビューの様子(右:谷口社長 左:アマテラス代表 藤岡)

‘Robot of Everything’を具現化できるようになった

アマテラス:3年前と比べるとZMPの認知度はかなり高くなり、ベンチャー界では知らない人はいないと思いますが、それによって変わったことはありますか。

谷口:元々ZMPはプッシュ営業よりインバウンド(顧客からの問い合わせ)が中心で、新しい製品を開発してリリースすると、それを見て「欲しい」という方が購入して下さり、更にリピーターになることで拡大してきました。
認知度が上がったことで、その範囲が広がりました。知られることによりブランドが創出でき、安心感もあるので、他社ではなくZMPから製品を買おうとする方が増えました。

また、たくさんの人が集まってくださるようになり、「パートナーとして一緒に組みませんか」という話は年々増えています。こうした仲間が増えたことで、事業領域を広げることができました。
車の自動運転技術から、キャリロの量産の実現、更に今取り組んでいる宅配サービスまで取り組めるようになりました。

‘Robot of Everything’という言葉を2014年に全社員に言いました。
これからは車の自動運転技術をより多くの人が求めており、だからそのロボット技術を、人を運ぶ以外にもモノの運搬などもっと広範囲に広げていこうという意味です。

3年前のその言葉を具現化できるようになったのです。ロボビジョンやアイザックといった自動運転のための技術を、宅配ロボットなどの用途に広げて使えるようになりました。
「総合ロボット会社を目指す」と言いましたが、あの時の構想がキャリロを始めとして実現しつつあります。

上場の延期を乗り越え、困難を新たなチャンスに変える

アマテラス:以前谷口社長からお話を伺った時に、「2020年には1000億企業に成長していたい」と仰っていましたが、その目標に向かって邁進する中で、谷口社長はCEOとしてどんな壁に当たって、どう解決してこられましたか。

谷口:2020年の構想に向かって、上場して更に伸長するという計画があったのですが、去年(2016年)セキュリティの問題から、私たち自ら上場を延期しました。
もし上場後に問題が起きるとそちらの方がより信頼を失いますし、大事なお客様の情報を守るセキュリティをしっかり整えてから、改めて上場しようということを社員全員で共有しました。

また、上場すると大きな投資が難しくなると考えました。タクシーサービスとデリバリーサービスの2つの新事業を自分たちの手で進めていく計画ですが、未知な領域のため法整備も十分でなくリスクもあります。しかし、この新事業に大きな投資をするのはチャンスでもあります。
このチャンスをしっかり掴んで、事業基盤をより広く固めてから、そこから再度ジャンプしたら良いのではないかと考えるようになりました。

確かに上場目前に壁が立ちはだかった時は、一瞬「うーん」と思いましたが、一呼吸置いてから壁を違う角度から見ると、また新たなチャンスが生まれたわけです。今は「結果的に壁ではなかったな」と思いますが、その瞬間は大変でした。

アマテラス:そうだったのですね。ZMPへの周囲やメディアの関心が大きく、いちいちの動向が大きく取り上げられる中で、谷口社長が上場延期と新たなチャンスの意思決定を下されたのは流石だと思うのですが、その際メディアなどの論調は気に留められなかったのですか。

谷口:しませんでした。メディアの報道は必ずしも事実ではなく、基本的に気にしないようにしています。

当時は上場を延期したことについて様々に報道されましたが、今のZMPは色々なチャンスにも恵まれ、パートナーも多数現れたこともあり、今まで以上に好調で大きな価値を持っています。
そう考えると、メディアがもてはやした会社でもその後業績が落ち込んでしまう会社もあれば、その逆もあり得るので、メディアの報道にはあまり注意を払いません。

また、メディアや株価を気にすると、その場その場の付け焼き刃になってしまい、ビジョンがぶれてしまいます。
勿論メディアが取り上げてくれるならありがたいですが、一方で、私達自身がしっかりと信念を持って、メディアにあまり惑わされないことが大切だと思います。

上場を目標にして短期的な収益のために手段を選ばない会社はありますが、私は長期的に事業を見ることができて、ZMPのビジョンに共感してくれる企業とパートナーになりたいと思います。

上場延期を経て、「新たなチャンスが生まれた」と語る谷口社長

マネージャークラスの人材確保が課題

アマテラス:今のZMPの中長期的な経営課題はどんなことでしょうか。

谷口:若い人がどんどん入社してきてくれて有難いのですが、プロジェクトをまとめてくれるようなマネージャークラスの人材が圧倒的に不足しています。
また、これからまだまだ新事業を増やしていきたいと思っている一方で、事業推進担当者が不足しています。

エンジニアなど専門家は海外からでも応募をしてきてくれますが、マネジメントクラスになると、日本人が対象になるので応募が少なく、採用したい人材になかなか出会えないのが現状です。

法規制も整っていない道無き道を進んでいく覚悟

アマテラス:他の面での課題はありますか。

谷口:自動運転に関しては、警察庁による正式なガイドラインが発表されて、日本でも無人自動車が公道で走行実験をできるようになりました。レベル4(加速・操舵・制御を全て運転者以外が行い、運転手が全く関与しないシステム)で、運転免許を持った者が遠隔から操作可能な状況のもとでの実験が始まりました。ZMPは昨年12月に、日本で初めて無人の自動運転車両による公道実証実験を実施しました。

自動運転への現実味が帯びてきました。自動運転の実験のデータが蓄積され、事故も起きないことが判明すれば、段々規制も緩和されビジネスとして先が見えてきます。

他方、宅配ロボット事業についてはこれからです。
キャリロデリバリーは時速3、4キロで走っており、すぐに停車もできるので危険性は低そうですが、今までに誰もやったことがない分野なので法律もなく、車両なのか人間なのかという定義から始まります。

開発と並行して、こういった法規制の問題にも対応していかなければならないのは大変です。前例がないことをZMP一社で立ち向かわなければならないので、かなりの覚悟が必要でした。

「いつ認められるのか分からないものに投資するのはリスクだ」と言う声もありますが、必要性等を理解してもらうためには様々な活動が必要です。自分達の力だけではなく様々な方達に協力していただき、勉強会への参加等を通して法規制・改正に関わっていくことが大切です。

規制をテクノロジーで突破して社会を変えて、世界に挑戦する

アマテラス:谷口社長は短期的な視点ではなく、どうすれば社会をよりよくすることができるのかという視点で考えられているのですね。 そういった谷口社長のビジョンに共感する人がZMPに求められていると思いますが、今のこの90名規模のZMPに参画する魅力は何でしょうか。

谷口:先程言ったように、2つの新規事業が走っています。更に、20名程採用人数を増やして、また新しい事業を始めることも考えています。

『日本初の分野』ということは、これまでは法規制などでがんじがらめになっており、停滞していることも意味します。その規制をテクノロジーで突破して社会を変えるということは、非常に困難であり、覚悟が必要であると同時にとても遣り甲斐があります。

また、その結果、自動運転分野において日本で第一人者になれます。日本で一番になれば、次は世界に挑戦できます。

そういう機会に立ち会えて、自分がその一員になれるということは、人生においてなかなかいい経験になると思います。やはりここが一番の魅力です。

アマテラス:谷口社長、今日はありがとうございました。

自動運転タクシーのモデルと共に(右:谷口社長 左:アマテラス代表 藤岡)

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edited by 河西あすか

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