CEO INTERVIEWS

起業家インタビュー

Vol.48
2016年03月31日
ランサーズ株式会社 | 代表取締役  秋好 陽介 氏

ランサーズ株式会社
代表取締役 秋好 陽介 氏

"僕という個人が完全に捨てきれたという感覚があります。完全に「ランサーズだ、俺は。」と一心同体になれた時があって、そこからは迷いがないです。"

はじめに

2013年2月、社員がまだ数名の頃にアマテラスと起業家対談を行ったランサーズ。あれから3年がたった現在、社員は100名を超え、秋好社長は内閣府・内閣官房が主導する「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」に選ばれ、日立や日本生命など有名企業の社長らと共に日本の未来を描いています。会社が急成長をする一方、秋好社長の内面でどのような変化があったのか? 秋好社長に語っていただきました。

ランサーズ株式会社
代表取締役 秋好 陽介 氏
(あきよし ようすけ)

【経営者略歴】
1981生 大阪府出身
2005年 株式会社ニフティ入社
2008年 株式会社REET(現ランサーズ株式会社)設立

  • MISSION

    時間と場所にとらわれない新しい働き方を創る。

  • 事業分野

    web・アプリ

  • 事業内容

    クラウドソーシング事業個人間や個人法人間で、仕事を匿名で直接取引できる、仕事のマーケットプレイスを運営。 インターネットを通じて『時間と場所に囚われない新しい働き方の創出』というビジョンを持ってクラウドソーシングサービスを提供。 クラウドソーシング事業の国内パイオニアで国内最大級規模を誇る。

  • 設立

    2008年4月

  • 社員数

    約140名(2016年2月時)

  • 企業URL

    http://www.lancers.jp/

起業家紹介

秋好 陽介 氏
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クラウドソーシング先駆者としての誇り。ランサーズは巨人であり続ける。

株式会社アマテラス:最近(2016年2月)のランサーズの事業概況について教えていただけますか?

ランサーズ株式会社 秋好社長(以下、秋好):前回藤岡さんからインタビューされたのはちょうど3年ぐらい前(2013年2月)ですがそれからかなり大きく変わりました。当時は「ランサーズ」というクラウドソーシングのウェブサービスをやっているという状況だったのですが、そこから色々派生しまして、事業開発面ではKDDIさんやインテリジェンスさんといった事業会社と組んで、異業種と連携した、KDDI×クラウドソーシングみたいなサービスを始めたり、僕たち自身もコンサルタントを抱えて、企業に直接お伺いに行って企業の仕事をクラウドソーシング化したりコンサルタントが代行してお仕事をディレクションするLancers for ビジネスというサービスを始めました。社内のディレクター陣がランサーさんと一緒にクライアント企業の課題解決を行うソリューション事業は現在急成長しています。また、ランサーズフィリピンという子会社作って海外事業も始めました。

以前インタビューされた時よりもかなり多角的に事業展開しています。クラウドソーシングという軸は変えずに、周辺領域を始めたというのは大きな違いです。3年前に比べたら社員規模も遥かに大きくなっていると思います。 地方創生という形で自治体との提携も始めています。この取り組みはクラウドソーシングを活用して東京の仕事を地方の人にしてもらう、という形です。

秋好:上図がクライアントの分類です。使っていただいているクライアントはやはり半分以上東京で、逆に働いている方は75%が東京以外つまり地方です。

この辺を行政の方から注目頂いて、横須賀市や奄美市等と提携しました。その他にも3~5自治体とは提携のお話をいただいています、その他に、全国の自治体・地域から150程度のお問い合わせを頂いています。自治体との取組みを始めたことも大きな変化です。 ※ランサーズの地域創成の取り組み「エリアパートナープログラム」:https://www.lancers.jp/lap

株式会社アマテラス:ランサーズ上でやりとりされる仕事の内容は、以前はロゴデザイン作成などが主流でしたが今はどうですか?

秋好:そこも大きく変わりましたね。前はデザインが中心でしたけど、今はデザインの仕事だけではなくてエンジニアの仕事も、ウェブの仕事も、あとはライティングの仕事も、翻訳の仕事もやっています。中にはAirbnbの家の掃除をやってくださいとかリアルの仕事を含めて、かなり幅広くなってきましたね。オンライン上で完結する仕事だけを扱う訳ではなくなってきていています。
ランサーズが扱っている仕事の幅が広がったというよりは、利用していただいているクライアントの幅が広がったというイメージです。当時はインターネットが得意な一部の人だけが発注していましたが、今では、普通の中小企業や自治体まで利用して頂けるようになってきたので、自然と発注の質の幅もカテゴリーの幅も広がってきました。

株式会社アマテラス:クラウドソーシング流行りで、カテゴリーキラーのクラウドソーシング事業者が出てきています。その中でランサーズの立ち位置はどうなっていくのでしょうか?

秋好:クラウドソーシングを一番最初からずっとやっているというのもありますが、立ち位置という意味ではこの3年で変化がないです。僕らは国内では総合型の一番大きな巨人としてのプラットフォーマーです。確かにカテゴリーキラーはいるのですが、僕らとしてもカテゴリーに対して最適化しています。例えばライティング専用のクラウドソーシング会社はあるのですが、僕らのライティングカテゴリーはかなりチューニングしていて、十分カテゴリーキラーと戦えています。ですから総合型を目指しています。人材業界でいうとリクルートさんの様な立ち位置でやらしていただいています。 最大の強みは規模が一番大きいことだと思います。ランサーさん(仕事をする個人)もすごく良い人がいますし、案件の数も一番多いです。そういった立ち位置でやらせてもらっています。

事業について説明する秋好社長

株式会社アマテラス:僕もランサーズを依頼者として利用していますが、安心・安全・信頼というのは利用者としては大事ですね。ランサーズさんがユーザーに提供している、安心・安全・信頼についても教えていただけますか?

秋好:色々しておりますが最近の面白い取り組みとしては、“補償”というものを始めました。要はランサーズで取引して万一トラブル、賠償、裁判などあれば、ランサーズが補償します、という制度です。クライアントとしても安心できますし、個人の人も万が一、何かあればランサーズが補償してくれるというのは、安心安全のひとつです。それ以外にもこの業界を7年やっているから出来ることですが、我々自身が良いランサーさんの統計を取って認定ランサーというのをやっています。この人は信頼できるというランサーさんを数千人認定しました。これによりランサーズで頑張れば、認定バッジがもらえて、さらに仕事ももらえるという仕組みです。

株式会社アマテラス:海外展開も始められましたね。

秋好:はい、昨年の12月にフィリピンで事業を始めました。僕らは近い未来1000万人がオンラインで働く、仕事のインフラになるというものを中期ビジョンにしていて、日本だけだとなかなかそれが…。日本でも徐々に広がってきてはいますが、1000万人はなかなか厳しいんですよね。そもそも日本の労働人口は6000万人しかいないという現状もあります。それらを踏まえると海外にいかないという選択肢がありませんでした。そしてようやく去年進出できました。

株式会社アマテラス:前々から海外進出という話はされていましたが念願叶いましたね。

秋好:ずっと一緒に働いている社員からも「4年越しですね」と言われました(笑)海外ではまずランサーの獲得に取り掛かり、日本の仕事を渡して取り組んでもらいました。そのために社員も現地に出向しています。

ランサーズフィリピンの様子

株式会社アマテラス:なぜフィリピンを選ばれたのですか?

秋好:クラウドソーシングのマーケットで一番利用されているのは北米なのですが、2番目はフィリピンです。アメリカ人の次にクラウドソーシングを使っているのはフィリピン人なのです。その理由は、やはりまだ給与が低いというのもありますし、英語圏というのも大きいと思います。フィリピンは、日本とも近く、時差も1時間しかありません。海外進出の最初の足がかりとしては良いなと思いました。元々北米よりはアジアに行きたいと思っていたのもあります。

株式会社アマテラス:フィリピン人ランサーのスキル的な部分はどうでしょうか?

秋好:優秀なランサーの方が多いです。特にデザイナーがフィリピンはすごく多いです。スキル的な強みは国によって違っていて、ベトナムはエンジニアが多かったり、シンガポールはヘッドクウォーター的で、専門職の方が多かったりしますが、フィリピンはデザイナーが多く、そういった学校も多いです。といってもデザインの感性が日本とはまた違うので、そこは特徴としてあるのですが、良い仕事をしてくれます。 あとはデザインクルーという会社を去年買収しました。元々日本の案件を翻訳してアジアに流す、というプラットフォームをやっている会社で、フィリピンのユーザーさんもそのデザインクルーに1000人位登録していますし、アジアの登録者で数千人います。そういった所が繋がってのフィリピン進出ですね。規模はまだ小さいですけどすでに回っていて、手応えを感じています。

株式会社アマテラス:クラウドソーシングビジネスは日本よりもアジアの方が成長ポテンシャルはあるのではないでしょうか?

秋好:あるんです。そもそもフィリピンは若い人が多いです。人口ピラミッドの形は日本と全然違います。もしかしたら若い人だけなら日本人より多いかもしれません。しかもITリテラシーも高いです。向こうではみんなスマホを使っています。そして平均月収3万円(2014年時点で世帯月収37,00円)なので、ランサーズで1個ロゴコンペに勝つだけで、一ヶ月暮らすことができます。安定的に10万円とか稼いじゃったら、もうRICH MAN!!です。

フィリピンの人口ピラミッド(2015)

日本の人口ピラミッド(2015)

組織の病気。50人、100人の壁をどう乗り越えるか。

株式会社アマテラス:3年前に比べて会社の成長とともに秋好さん自身変わったことはありますか?

秋好:当時まだ資金調達はしていませんでした。資金面では、自分たちの自己資金でやるというよりも、外部VCや事業会社と提携してレバレッジをかけていくということを学びました。それによって、確実に事業のスピードアップはしています。 まず使える資金が当時と比べると圧倒的に違います。当時は1000万、2000万円が月で考えた時のアッパーでした。それが3億とか10億まで膨らんだのでそこは大きく違います。人間の脳ミソは面白くて1000万円しか使えないとなると、1000万円の打ち手しか出てきません。しかしこれが10億使えるとなると今までに想像できなかったことが色々浮かんでくるようになりました。

中には1円しか持ってなくても100億のこと考える孫さん(孫正義:ソフトバンク設立)みたいな方もいますけど(笑)。誰しもが可能なのは持つことで考える、なので僕は持つことは大事だなと思っていて、持つことで可能性が出てくると思っています。孫さんのようになにも無いところから戦い方を考える人は稀で、武器を持って初めて戦い方覚える人のほうが多いようにも感じています。

株式会社アマテラス:資金調達で得た資金は何に使ったのですか?

秋好:人材採用と組織・企業文化開発です。とにかく仲間にお金をかけました。現在140人くらいいますから、藤岡さんとお会いした時からすると考えられないですね。初めてお会いした時は鎌倉のオフィスで社員が2、3人とかでしたもんね(笑)(インタビューさせていただいた会議室を見渡して)あの時はこの部屋2個分ぐらいの広さでした。それが今は140人です(笑)

2012年のランサーズ秋好社長とアマテラス藤岡@鎌倉オフィス

秋好:人が増えたことで環境もガラッと変わりました。採用に力を入れる過程で出てきた問題や壁から色々学びましたね。30人の壁、50人の壁とよく言いますが、ランサーズでもそういった時期はありました。スタートアップではよくある話なのですが、従業員が10人、20人くらいの規模ですと「よし、いくぞ」の掛け声ひとつで、まとまりが出来て一人でやっている時とテンションを変えずに業務が出来ます。しかしその時はお互いに理解できていたことが、40人くらい、50人くらいになると急に「社長の言ってることがわからない」という人が出始め、社員との距離ができ始めてきます。社員からするとコミニケーションが1/5となるので、情報の量が薄くなり、僕が何を考えているのか当然、過去と比較すると薄くなります。前まですぐ答えてくれていたことが、1週間後に返事が来る。「私のこと大事にされてないんじゃないか」とも思い始めたりするようです。そういった小さなことが積み重なって距離ができると、言っていたことが伝わらなくなるんです。「いくぞ!」と100言って100伝わっていたのが、100言って5伝われば良いくらいになってきます。しかもそういった伝わっていない状態になっている、と気づくのに3ヶ月くらいかかりました。ある日「あ、5しか伝わっていない」となる。

その3ヶ月は結構致命的で、3ヶ月も距離が離れると、人はだんだんと疑心暗鬼になっていきます。それでなにが起きるかというと、辞めていく社員がいたり、事業スピードが遅くなる、等色々な症状が出てきます。症状が出てくると、経営者は、病気なんだと気付くのです。そこで対処できるかが大事で「いやこれは社員が悪い」と言って同じやり方を続けると更に症状が進んで、末期になります。僕は運良く、周りにいた経営者達もそれを経験していたので、それは病気だよと教えてもらえました。なので処方箋もらって対処できましたまず行ったのは社員と話すことです。一人一人と話すこともあれば、グループで話すことも、飲みながらフランクに話すこともありました。合宿も行いました。そういった場で話していくと「そんなこと思ってたんだ」ということがたくさん出てきます。

「話す機会が減った」ということが積み重なると大きな方向のミスに繋がってくるんだと実感しました。その時にもう50人や100人といった全員と毎週1on1するのは無理だと思いましたね。いままで自分が担っていた役割を分身として、経営幹部(マネージャーや役員)にしていきました。 組織マネジメントの仕方は色々あると思うのですが、ランサーズはビジョンの強い会社なので丁寧に「自社のビジョン」を全メンバーに伝えていきました。ほとんどのメンバーはビジョンの実現に共感して、入社してくれていますから改めて「ビジョンを実現したい」という思いを共有できました。なので、50人の壁という意味ではビジョンを明確に定め、ランサーズの価値観、社長の考え方の分身を経営幹部にして、僕らの会社がどこに行くかを明確にしたんです。ビジョンを明確にするという体制にして2年くらい(100人くらい)の組織まで持続的に成長しました。

過去の苦労も明るく語る秋好社長

秋好:100人くらいになるとまた第2の壁がありました。50人の壁は「人」で乗り切れました。自分が「この人だったら信頼できる」という人を3人くらい経営幹部に任命して彼らに過去の自分と同じ動きをやってもらう。その人たちがいると、1人で30人くらいはマネジメントできるので、90人、100人くらいまでは行けるようになります。それでうまく来ていたので100人になった時にマネージャーを横に広げようと思いました。3人だったところを8人とか、数を増やせば良いと。

でも面白いものでそれだと上手くいきませんでした。100人を超える段階では、人で担っていたことを仕組みにする必要があります。社員一人ひとりにランサーズの価値観を共有し、会社としてのフェアウェイを明確にする必要があります。そのために僕らはランサーズウェイというのを作りました。ランサーズのビジョン、ビジョン実現のための行動指針です。

秋好:これを作れば良い、というのではなくて社員と一緒になって作っていくことと実際に作ったあとの運用が重要でした。このようなプロセスでマネージャー層を育成してくことにまさに取り組み中です。今のところ順調に拡大していると考えています。

スタートアップやるなら写真を撮れ。秋好社長の「写真のススメ」

秋好:ランサーズウェイを作った時に苦労したのは写真ですね。写真は絶対に撮っておいたほうが良いです。あとで本当に困ります。うちで言うと、ずっと仕事ばかりしていた2008年は全然写真がありません。クックパッドの穐田(あきた)元社長に4年前にお会いした時に、このステージだと何が一番大事ですか、と聞いたら「思い出だ。写真を撮れ」と言われました。今それを実感しています(笑)あの時は「思い出が一番大事だ。お金も人もなんとでもなる。でも思い出は取り返せない」と言われました。

価値ある「クソコード」 社員が互いに尊重し合う社風

株式会社アマテラス:一方でこれだけ急成長すると、前からいた社員と中途で入ってきた社員とで能力に差が出来てしまって軋轢が生まれることもあると思います。そのあたりはどう対処されていますか?

秋好:そうですね、軋轢ありました。そして今後もあり続けるのだと思います。でも一つ大事にしている価値観は「過去がいいとか悪いとかではなく、過去へのリスペクトはしよう、その上で未来を考えよう」というものです。よくあるのが、中途で新しく入った人は過去を否定したくなりますよね。でもそれはしてはダメなんです。

例えばエンジニアのコードで言えば、現状のコードを見て、中途の人が「なんだこのコード!」とか言いたくなると思います。その気持ちはよく分かります。しかし捉え方を変えると、そのコードが今までお金を生んでくれていたし、過去に作ったクソみたいな仕組みが成長を生んでくれました。僕が中途の人によく言うのは「確かに今、あなたたちの目から見たらクソみたいに見えるかもしれないですけど、これはこれで価値があるから、一旦リスペクトしようよ」ということです。リスペクトする気持ちが言うだけじゃなくて本当にあれば、まずメンバー同士は上手くいくか否かで言うと、上手くいくはずです。ですから尊重し合うことは本当に大事です。

とはいえ過去だけが正しいわけではなく、過去の時点ではよかったものも古くなってきて未来には違うことをしないといけない場面も多くあります。また、中途で入った人が活躍できる場にもしたいと思っているので、新しいメンバーに関しては「過去の経歴がどうだったとか過去の会社がどうではなく、ランサーズらしく新しいホワイトボードに一緒に絵をかこう」と言っています。昔からいるメンバーには、そのためにはランサーズを誰よりも知っている僕たちが、新しい仲間が結果を出しやすくするアシストをしようと話しています。ある種の結果を演出する、ということです。これは経営者としてはやったほうが良いと思っています。新しく入る仲間が活躍しやすいように彼らの行動や結果を、分かりやすく伝え、演出しています。

新しい人とのスキルや経験の差、という意味では、過去からいるメンバーに関しては成長するしかないです。そのためにも、成長できない環境のみに身を犯し続けるような、飼い殺しをしてはいけません。よくあるのは過去を知っているからと言って、ずっとオペレーションに置いてしまって、忙しくて成長できるような仕事を渡してあげられない、ということです。ランサーズでも過去にそういった事ありましたが、本当に罪だと思いました。ですから成長できるところに配置する必要があるんです。そういう意味で、過去からいる社員には機会を提供してあげなければいけないと思っています。それは僕がそのような境遇を作ってしまった経験があり、そこから学んだ、社員にチャンスを与える、ということです。

株式会社アマテラス:社員が成長しないと、組織は回らないということですよね。秋好さん自身、1エンジニアとして現場に戻っていることもあると伺いましたが、その背景について教えてもらえますか?

秋好:結構揺り戻しがあります。というのも2013年から振り返ると2013年はずっと人材採用と資金調達をしていました。2014年は組織作りともう一回資金調達して、2015年はまた組織作りと資金調達をしていました。そうすると段々、事業についての僕の感覚が薄れていきますし、プロダクト自体も弱くなってきます、ですからプロダクトの現場に戻ったり、一緒に営業同行にいったりすることは多くあります。2015年後半でいうと組織作りは巡航速度になったので、事業サイドに振り切っています。エンジニアチームの中に一席もらって事業に入って働いています。数字見て、進捗追ってというのも伴走してやることもあります。

熱がこもる秋好社長

「ランサーズだ、俺は。」秋好社長の覚悟

株式会社アマテラス:秋好さんに訪れた成長の壁はありましたか? 秋好さんはポジティブだから壁を壁と考えていないかもしれませんが(笑)

秋好:経営者って面白くて、過去の嫌なことや壁を忘れちゃうんです。その時は壁だと思うし、辛いと思うのですが、基本的にそういう課題は乗り越えてきたからいまがあり、いざ乗り越えると課題ではなくなるので、良い思い出になってしまいます。さっきの50人の壁も100人の壁も「昔はあったね」という感覚です。僕からするエピソードの1つなんです。現在に行き着くために必要なハッピーエピソードで、もちろん当時はきつかったです。「なんだこれは」、「こんなもののために起業したんじゃないぞ」等色々思っていました。でも乗り越えると忘れてしまいます。忘れるというのは経営者に大事な部分だと思います。

というのも、経営者は重大な意思決定や一番重い課題にむきあうため、会社の規模が大きくなればなるほど、精神的なプレッシャーは質も量も増えていきます。逆に嬉しいこと・喜びも規模にともない大きくなっていくので、苦しみと楽しみの反復横とびをしながら、質も量も通常のビジネスマンの(個人的な感覚としては)数十倍になるという状況で、うまくストレスコントロールしないと精神的にも厳しくなると思います。冗談じゃなくメンタルヘルスの領域です。ですので経営者には、課題解決したら自然と忘れるであったりという、ある種の感覚の麻痺が必要な時もあります。「それぐらいだったら、まあいいか」と昔だったら1週間は悩んだろうなというのを笑顔でやり過ごせるというのは必要な才能だなと個人的には思っています。

あとは僕自身の変化という観点だと僕という個人が完全に捨てきれたという感覚があります。昔は秋好陽介という人間が強かった。どういうことかというと、ランサーズでの幸せと秋好陽介としての幸せが利益相反する場合がありますよね。これ、ランサーズとしてはハッピーですが、秋好陽介としては辛いなというものです。会社が忙しくなってきてプライベートの時間がなくなってきたとか、広報担当が土日全部、地方出張入れてくれるとか、そういうことです(笑) ランサーズとしてはハッピーなんですよ。ですが秋好陽介としてはちょっと苦痛。さすがに3ヶ月1度も休んでないとか、僕もそろそろ歳だし考えてよ、と(笑)でもそれを乗り越えた時期がありました。乗り越えたというか、完全に「ランサーズだ、俺は。」と一心同体になれた時があって、そこからは迷いがないです。もちろん人間としての限界は越えられないですけど(笑)

株式会社アマテラス:公私の私、プライベートを捨て去れたきっかけは何ですか?

秋好:本当に何が本質的に自分にとって大事なのかを俯瞰して意識できたという体験です。資金調達などの関係者が増えたタイミングも影響したと思いますし、そういったタイミングでは熟考しました。なので資金調達の前などは、調達後を考えてその時に必要な自分のイメージをつくっていました。調達後は求められるスピードや要求のレベルが一気に高まりますが、僕はイメージしていたので、それに比べたら調達後の要求は想定内でした。例えば2012年のままの僕で行ったら辛くて辛くて死にそうになっていたと思います。

「なんで自分の会社なのにこんなに考慮しないといけないのか」「こっちは人生かけてるのに色々と言われないといけないのか」等色々思っていたと思います(笑)。でも覚悟を決めたのでそんなことを意識もしません。株主も、僕らと一緒に進んでくれる仲間という感覚が強いです。 とはいえ、資金調達をする前の段階では「この人たちは本当はハゲタカなんじゃないか」「契約した瞬間になんか悪いことしてくるんじゃないか」「ごちゃごちゃ言われるんじゃないか」「うまくいかなかったらこの3億円を買い戻せって言ってくるんじゃないか」とか色々思っていました(笑)

話しが弾む秋好社長と藤岡

株式会社アマテラス:そういう不安に潰されそうになっている経営者を僕はたくさん見てきました。でも秋好さんはその辺をポジティブに捉えて加速させましたよね。

秋好:そうですね。僕がやったのは覚悟を決めることと、あとは徹底的にリスクを潰すことです。資金調達をする時、100人程度のベンチャーキャピタリスト(VC)やその関係者に会いました。100人合う中で、条件よりまず人で選びました。そして、逆に私からVCの人を徹底的にデューデリしました。

実際、GMOベンチャーパートナーズさんに投資を受けた経営者5名に直接お会いしたり、グロービスはリードインベスターだったので投資先10人くらいににお会いして、「どうですか?」と聞いて回りましたし、それを拒否するようなVCさんだったら違うなと思っていたと思います。 条件面も徹底的に詰めて自分にわからないことを1つ1つ潰していきました。ですから3ヶ月くらいバチバチの交渉をしていました。私は、エンジニア出身なので、このファイナンス周りの業務をやるのはきつかったですね。今までそんな経験したことないですし、畑が違いました。しかもそういったことを相談できるCFOが当時はもちろんいなかったので誰にも相談できませんでしたが、未来の重要なプロジェクトとして取り組みました。

株式会社アマテラス:資本政策は後戻りできないので本当に重要です。エンジニア出身のスタートアップ社長は資本政策の重要性を理解しないまま安易に出資を受け入れて失敗している方が多いので本当に秋好社長を見倣ってほしいと思います。

秋好:一回目はやはり初めてだったので、結果的に失敗ではなかったと思いますが、今戻ったらもっと違う風にやるな、というのはあります。ですから2回目やった時はさらにバージョンアップしていたと思います。2014年に10億円調達したのですが、その時は事業会社からだったので違う意味で大変でした。事業シナジーと資金調達妥当性の2つ検討され、かつ大手さんなので、ある種の上場審査よりも厳しいデューデリをしていただけます。これが突破できたのは別の意味で嬉しかったです(笑)

株式会社アマテラス:秋好さん、ポジティブ過ぎますね(笑)。

秋好:そうなんですよ、最近ポジティブハラスメントって社員に言われます。「リスク見えてるんですか?」と聞かれても「まあポジティブに行こうよ」と返しています(笑)。新しいですよねポジハラ(笑)。でもリスクは見えています。本当にそことの戦いです。 周りの起業家に聞いてみるとどこの会社も大体みな何かしら乗り越えている様に思います。

今ではすごく有名な会社でも昔は実はね、などはよくある話しです。皆多少は病気に犯されます。その後どれだけ早く戻ってこれるかが勝負どころです。 結局大事なのは社員やユーザーの声だと思いました。どれだけ彼らの話しを聞けるかと言うことです。合宿を開いたりしてそういった機会を作るのは大事だと思います。かと言って全社員を見るは無理ですから、逆にそのアドバイスをくれる人No.2、No.3の人の声を聞くというのも大事なのかもしれないです。

株式会社アマテラス:さらに社員も増えるという話がありましたが、それを超えるためにはどのような困難が待ち受けていると想定していますか?

秋好:今の事業のままだったらこのままでも良いのかもしれないですが、新しい事業を幾つかやるので、仲間の増員は必要です。2008年から8年経て0→1としてやったものを1→10にしてきました。これからはまた0→1をやります。クラウドソーシングを軸に、全く新しい事業もやろうと考えています。新規事業でももちろん「働き方を変える」というビジョンは変わりません。

大きくなった組織で新規事業を成功させられるかはまだ未知数だと思っています。組織文化的に、1→10の人を集めていて、0→1の経験者は創業者の自分しかいないからです。0→1と1→10は考え方が圧倒的に違いますよね。0→1は合議制ではなく、独裁です。できない理由しか出てこない所をなんとかしてやらなくてはならないので、議論は要りません。「とにかくやる」が大事です。そこを組織としてどれだけまとまってやれるかというのが、僕の今の課題です。

そして先ほど言ったように300人に近づいてくるので、組織的な課題というのは増えていくと思っています。もう少し先回りして経営したいのですが、どうしても目の前の経営課題に対処せざるをえないというのがあります。もう少し先回りして経営はしていきたいので最近岡島さん(岡島悦子:株式会社プロノバ代表取締役兼グロービス経営大学院教授。アステラス製薬、丸井グループ等の社外取締役も務める。ハーバードMBA修了)を社外役員に迎えました。僕が見てない世界を見ている分、彼女は先回りもできますからアドバイスをもらって一緒に経営できればと思っています。また社外役員は今後も増やしていこうと考えています。

株式会社アマテラス:秋好さんは相談できる人や周囲を巻き込むのがとても上手いように見えます。

秋好:自分ができないことはどうしてもありますから。自分ができることの限界を知っているので相談が上手いのかもしれません。僕は恐らくプロデューサーやエンジニアとしてなら少しだけ人よりできると思います。しかしそれ以外ははっきり言って普通です(笑)そこは僕が頑張るより出来る人に聞いた方がいいよねという良い意味の諦めがあります。

株式会社アマテラス:最後に一言お願いします。

秋好:事業を進めていくうえの課題はたくさんありますが事業は手触り感があるので、答えはなんとなく分かっています。粛々と進めていきます。今に満足しているとか、そういった意味ではなくて、単にやります、という事です。一方で社員300人というは未知の世界なので、チャレンジです。理想からははまだ遠いんですけど、理想にいく自分なりの考え方というのはあるのでそこは粛々と頑張る領域ですね。

株式会社アマテラス:貴重なお話ありがとうございました。

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edited by 又吉陽二郎

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