サービスを作りたいからサービスを作る、そういう環境を大切にしています。

八楽株式会社代表取締役 坂西優氏

機械翻訳と人間翻訳の両立した翻訳サービスを提供している八楽株式会社。
第一回対談後からの変化や、今提供している新たなサービス、12カ国19人の社員を束ねる代表の坂西さんに外国人のマネジメント方法をインタビューしました。

未来を意識して仕事をするのではなく、一緒に働いている人や商品が好きだから一生懸命今を働く。こんな姿が坂西さんから伝わってきました。

坂西優氏

代表取締役
坂西優氏

福岡県出身。早稲田大学卒業後、渡米。オンラインマーケティングの仕事に数年携わった後、日本に帰国し八楽を設立。

八楽株式会社

八楽株式会社
https://www.yarakuzen.com/

設立
2009年08月
社員数
19名 (2016年1月時)

《 事業分野 》
WEB・アプリ
《 事業内容 》
機械翻訳と人間翻訳を組み合わせた高品質な多言語オンライン翻訳システム『ワールドジャンパー』を企業向けに提供。 ウェブサイトに導入するだけで日本語のサイトを多言語に翻訳できるツールで、全てのサイトをクラウド上で行うため、従来の翻訳会社との手間のかかる打合せなどの手間を省略化し、更新も自動で差分だけを抽出して翻訳可能。 主な特徴は、 1)誤訳の少なさ 2)値段のリーズナブルさ 3)納期の速さ 4)ウェブサイトの翻訳に特化

『YarakuZen』それはウェブ翻訳サービスと人間の良さをハイブリッドさせたシステム

アマテラス:

現在の八楽さんの事業内容をお聞かせ下さい。

八楽株式会社 代表取締役 坂西優氏(以下敬称略):

『YarakuZen』という翻訳ウェブサービスを提供しています。
翻訳サービスは品質とスピードとコスト、この3つのどれが1つでも欠けても満足いただけないビジネスなのですが、一般的にウェブ翻訳サービスだと品質、翻訳会社や人に頼むと、スピード、コストで難があります。
品質が良いまま、スピードとコストを改善したもの、ウェブ翻訳サービスと人間の良さをハイブリッドさせたシステムが『YarakuZen』です。

例えば、「配送は午前中の見込みです」の「見込み」という単語を翻訳したい時、自動的に「見込み」を用いたジーニアス辞書の例文が出てきます。例文を見て、参照しながら作業が出来ます。

また、ユーザー毎に翻訳のデータベースが割り当てられ、それを元に機械翻訳をして、最後に人が修正します。この修正したデータを自動でフィードバックして機械学習させることで、品質が良くなりコストとスピードが改善されます。つまり、同じような文章を翻訳する時、修正したデータはデータベースのフレーズ集に自動的に溜まっていくので、利用するほどシステムが学習して快適に利用できるようなります。

次に、翻訳を人に依頼する場合のお話をします。翻訳依頼のボタンを押すと注文画面が出てきて、『YarakuZen』に登録している4万人の翻訳者さんに文単位で修正を依頼することが出来ます。一方で、機密事項の高い文章はきちんとNDA(秘密保持契約)を結んだ翻訳者さんに注文をすることも出来ます。

料金に関しては、無料の場合と有料の場合があります。修正を人に依頼する場合、一文字レベルによって3円から12円まで幅があります。グーグルなどにある無料の翻訳ツールもありますが、ご存じのとおり誤訳だらけで現状では使えるサービスではありません。一方で翻訳会社に頼むと少しの分量でも数万円かかるなど高コストです。しかし『YarakuZen』は、無料の機械翻訳に学習機能が付いており、翻訳依頼のコストも翻訳会社の10分の1程度に抑えることが出来ます。
また有料の場合ですと、個人毎に割り当てられる翻訳データベースを会社全体で共有出来るようになります。自分が修正したデータを他の人も管理出来ることから、用法を統一して品質を向上したり、プロジェクト管理が出来るようになります。

このように、機械と人間をハイブリッドさせたシステムが『YarakuZen』です。

アマテラス:

御社の競合サービスにはどのような企業があるのでしょうか。

坂西優:

海外にはありますが、日本ではあまりないですね。翻訳管理システムはまり知られていないので、どうしてもgoogle翻訳やyahoo翻訳と比べられてしまいます。ですのでユーザーからするとgoogle翻訳、yahoo翻訳、excite翻訳がライバルになってるんですね。

アマテラス:

企業ユーザーはどのくらいの規模感の会社が多いのですか。

坂西優:

大企業や中小企業、業種で言えばIT企業からレストランなど、様々な会社があります。

多いのがオリンピックに向けての多言語対応です。外国人観光客のためにポップ広告の翻訳や、メニュー翻訳など、基本的には外国人観光客のインバウンド対応ですね。

「World Jumper」から「YarakuZen」へ

アマテラス:

2013年にインタビューさせていただいた時には『World Jumper』という翻訳サービスを運営していましたが『YarakuZen』に移行した背景を教えてください。

坂西優:

サービスを移行した背景ですが、起業時から追って説明します。

まずアメリカから日本に帰ってきて、自動翻訳機能が入った多言語掲示板を作りました。当初は何でも掲示板だったのですが、横浜のビジネスグランプリで優勝して投資を得られたので、ビジネスとして成功させるために、まずはアニメの掲示板に特化して世界中のアニメファンを集めて、彼らにECでアニメグッズを売るというサービスをやっていました。
当時日本から直接海外向けにアニメグッズを売る会社がほとんど無くて、ユーザー数は凄く増えました。ところが、ユーザー数がどんどん増えていくにも関わらず、売り上げが全然伸びなかったんです。その後、システムをアプリに転用するなど試行錯誤したのですが、また売り上げが伸び悩んでなんとかしようと何故かインドへ行きました(笑)。すると、縁あって元マイクロソフトの研究員と名門のインド工科大学の教授にお会いすることが出来ました。

そこで、機械翻訳をそのまま使うのではなくて、機械翻訳は人の生産性を上げるためのサポートとして使ったほうがいいとのアドバイスを頂きました。その話をもとにウェブサイト翻訳サービスに転用しました、これが当初の『WorldJumper』です。

しかし『World Jumper』は、色んなテクノロジーが混在していて、予想以上にバグが多かったことやeコマースサイトとかコニュニティサイトに使えなかったんです。コストも全然合いませんでした。ユーザーからは社内ドキュメントやマニュアル、Eメール翻訳に使いたいというリクエストが多かったので、ブランド名を『World Jumper』から『YarakuZen』に変えて、ウェブサイト翻訳からドキュメント翻訳の形に転用して2015年10月に公開しました。それから発展して今に至っています。

外国人マネジメント 重要なのは人、商品への想い

アマテラス:

この2年半の間に組織も大きくなりましたが、出来なかったことから出来ることに変わっ たことなど御社の変化について教えてください。

坂西優:

個人ユーザーサイドで言うと、企業向けしかサービスを扱っていなかったので、個人の方に勧めることが出来ませんでした。今では誰でも困っている人に勧められるようになったことです。会社サイドで言うと、人数が増えたことで段々チームとして出来上がってきて、効率的に色んな開発が出来るようになってきたことですね。

アマテラス:

坂西さん自身の変化はありましたか。

坂西優:

昔に比べたら、色んな人のサポートをするようになりました。
チームが大きくなるとチーム毎に分かれます。中でも、エンジニアは外国人が多くて、営業マーケティングは日本人が多いので、自分がなるべく間に入って橋渡しするような仕事もするようになりました。

アマテラス:

最初から多国籍な社員で構成されているのは八楽さんの特徴だと思います。多国籍社員のマネジメントで難しいことや気をつけていることがあれば教えて下さい。

坂西優:

私自身これで会社設立が2社目でして、1社目は20代の時にニューヨークで起業しました。その時アメリカ人を最初に雇って会社を経営していたので、外国人と働くのに慣れているんです。逆に日本人とあまり仕事をしたことがなかったので、日本に帰ってきた時外国人を雇うことが自然な流れでした。

多国籍の社員で一番気をつけているのは採用ですね。パッと見完璧なバックグラウンド、完璧なコミュニケーション力があっても、後で亀裂が出来てきたり、他のいいサービスが出てきたと言って突然辞められたりなど、よくある話です。すごく気が合って、楽しく飲みに行けるようになっても突然辞められてしまうことはあります。極端な話ですが、時給1000円貰っていたとして、隣に時給1050円の会社が出来たら次の日からスイッチするのが当たり前な国はあるわけです。それを責めるのはお門違いで、その国の考え、その人の考えなので、採用の時点で本当にその人がうちに感じている魅力、入りたい動機は何かをしっかりと見定めて採用します。なので最初の見極めには相当時間をかけます。自分一人では無理です。いろんな社員が面談して多角的、総合的に評価するしかないですね。本当に今すぐ必要なポジションであっても、最後まで納得出来ないと採用しないです。

八楽のビジネスに興味を持っている訳ではなく、日本で働きたい、給料が良いなど見えなかった本当の目的と、我々が提供したい、我々が感じて欲しい価値にズレがないかどうか。それが一致しないと採用はしません。

未来先行型の人は採用しない。演繹型の人を採用する。

アマテラス:

やはり理念や共感は大事で、それは国籍が違っても変わらないんですね。

坂西優:

そうですね。将来こういう世の中になって、このような会社が上場しそうだからここにjoinしようと考える未来先行型の人より、商品や一緒に働いている人が好きだから、一生懸命今出来ることを積み上げて、最終的に素敵な世界を作るといったような演繹型の人、そういう人を優先して採ります。今まで

アマテラス:

外国人社員のモチベーションを上げるためにはどんなことをされていますか。

坂西優:

好奇心ですね。目の前にこのような機能を作ったらどんなことが起こるかとか、これしたらユーザーが喜ぶか喜ばないかとか、とにかく好奇心を刺激するような質問をずっと投げかけます。サッカーが好きだから、サッカーをやる。同様にサービスを作りたいからサービスを作る、そういう環境を大切にしています。

八楽の今後のビジョン

アマテラス:

今後、八楽さんが注力していく取り組みは何かありますか。

坂西優:

我々のサービスはデスクトップで使われることが多いんですね。ですので用途を特化して、しっかりと何がユーザーに刺さるのか見極めた上でモバイル対応していくように考えています。

アマテラス:

八楽さんの経営課題についても教えてください。

坂西優:

人材採用ですね。ここが一番大事だと思います。結局我々IT系って、人件費が支出の殆どです。主な支出は人件費かマーケティング費で、ほとんどが人件費です。

これからもっとチームを増やしていく上で、どういうチーム編成にするのか、どういう風にマネジメントするのか、どういう風に採用していくのか、成長期に向けてアクセルを踏む時に、どのように対応をしてどのようなマネジメントしていくかが重要ですね。

サービスの課題に関しては、早急にユーザーに『YarakuZen』という商品を理解して頂くことです。
新しいサービスということもありますが、コンセプトや使い方を理解してもらうのが意外と時間かかります。そこをいかにスピードを上げていけるかが課題です。

アマテラス:

今、八楽さんに参画する魅力を教えて下さい。

坂西優:

まだまだ未熟な会社だからこそ、会社を一緒に作っていくステージに参加出来るところです。そこが魅力ですね。逆に、成長期に入ってある程度会社が出来てきて、安定したポジション、成長するのが見えているポジションに入りたい人は合わないですね。

アマテラス:

坂西さん、ありがとうございました。

この記事を書いた人

アバター画像


藤岡 清高

株式会社アマテラス代表取締役社長。iU 情報経営イノベーション大学客員教授。 東京都立大学経済学部卒業後、新卒で住友銀行(現三井住友銀行)に入行。法人営業などに従事した後に退職し、慶應義塾大学大学院経営管理研究科を修了、MBAを取得。 2004年、株式会社ドリームインキュベータに参画し、スタートアップへの投資(ベンチャーキャピタル)、戦略構築、事業立ち上げ、実行支援、経営管理などに携わる。2011年に株式会社アマテラスを創業。 著書:『「一度きりの人生、今の会社で一生働いて終わるのかな?」と迷う人のスタートアップ「転職×副業」術』

八楽株式会社

八楽株式会社
https://www.yarakuzen.com/

設立
2009年08月
社員数
19名 (2016年1月時)

《 事業分野 》
WEB・アプリ
《 事業内容 》
機械翻訳と人間翻訳を組み合わせた高品質な多言語オンライン翻訳システム『ワールドジャンパー』を企業向けに提供。 ウェブサイトに導入するだけで日本語のサイトを多言語に翻訳できるツールで、全てのサイトをクラウド上で行うため、従来の翻訳会社との手間のかかる打合せなどの手間を省略化し、更新も自動で差分だけを抽出して翻訳可能。 主な特徴は、 1)誤訳の少なさ 2)値段のリーズナブルさ 3)納期の速さ 4)ウェブサイトの翻訳に特化