力があるなら、転職先でも必ず花は咲く。過去を捨てる勇気を!

株式会社すららネット取締役(営業担当) 葉山勝正氏

今回の転職者インタビューは、インターネットを通じてゲーム感覚で学ぶことができる対話型のデジタル教材『すらら』を展開する株式会社すららネットで、営業担当役員としてご活躍されている葉山勝正さんを訪ねました。

葉山さんは大手人材会社で“営業を徹底的に科学する”ことで営業手法を確立し、20代で営業部長、事業部長となって150人もの部隊を率いた方です。その葉山さんが次に選んだのは、教育ベンチャーの一営業担当としてキャリアを再スタートさせることでした。
その選択に至った社会問題解決への思いや転職時のご覚悟、そして、現在のお仕事等について、熱く語って頂きました。

葉山勝正氏

取締役(営業担当)
葉山勝正氏

立命館大学卒業後、エン・ジャパン株式会社に入社。営業部長、事業部長として活躍。2013年㈱すららネット入社。2015年より現職。

株式会社すららネット

株式会社すららネット
https://surala.jp/

設立
2008年08月
社員数
30名(2016年時点)

《 Mission 》
教育に変革を、子どもたちに生きる力を。
《 事業内容 》
e-ラーニングによる教育サービスの制作・提供および運用コンサルティング

営業の一兵卒として再スタート

アマテラス:

葉山さんがすららネットに入社してからこれまで携わってきた仕事、そして、現在の仕事の内容について教えて下さい。

株式会社すららネット 取締役(営業担当) 葉山勝正氏(以下敬称略):

すららネットに入社したのが3年前、2013年の9月です。30歳くらいの頃、営業担当の一兵卒として入りました。当時のすららネットは社員数12~13人位で、オフィスも今程は大きくありませんでした。
当時はまだ新卒採用をしていなかったので、30代のスペシャリストが多い会社でした。湯野川社長がMBOした経緯から以前の企業で新規事業の企画をしていた方が多く、新規事業に強いプロ集団といった組織でした。

最初は塾向けの営業で、新規電話を1日100件とかしていました。「お世話になります、すららネットの葉山です」と言った途端にガチャンって切られて…といったこともありました。塾向けの営業を1~2ヶ月間担当していくつか契約を取り、学校向けの営業チームに配属されました。

学校向けは契約を取るまでスパンが長く、新規契約を取ったのは学校向けの営業チームに配属されてから半年後でした。当時、「ちょっとしたキャリアを持って中途入社したのに、半年間新規獲得なしで大丈夫か?!」といった焦りは相当ありました。勿論、営業としては新規だけでなく、既に導入して頂いている学校のフォローアップや活用の拡大提案、例えば、高校1年生だけ使っているのを「来年は2年生も使っていきましょう」といったこともやらなくてはいけないので、そこから着手していました。とはいえ、新規が取れないことに悶々とはしていましたね。

属人的な営業から、チーム営業に進化

葉山勝正:

周囲は新規事業のプロで、営業力も高い方が多く、「営業力だけでは勝負はできないな」と感じていました。そことは違うところで会社に貢献しなくてはという思いがありました。
独自性の強い営業を皆さんがやられていたので、そういった方達の話から営業のエッセンスを汲んで、一般化することを考えました。「その人しか出来ない」というやり方ではなくて、そのエッセンスを汲みとった上である一定のクオリティの営業を多くの人が出来るようにするのが自分の強みです。自分でもそうやって営業をしてみて、ある程度契約が取れるようになってきました。そして、新規営業だけでなく、導入学校へのフォローや活用拡大についても仕組み化しました。

そうこうしているうちに、当時の新規営業の8割を取っていた学校向け部隊の女性マネージャーが産休に入ることとなり、2014年秋頃に私がマネージャーになり、新しいメンバーも入ってきました。
入社間もない人が早期に活躍するには何らかの仕組みが必要ですが、半年間くらいシコシコと作ってきた営業の一般化がここで役立ちました。今までは「特殊」と言われていた学校向け営業で、新規メンバーも比較的早期に数字をあげられるようになったのです。
そして、結果的に、当時3人の部隊でしたが、私が4で、他の2人が3ずつといった割合で、全員が案件取れるようになっていました。それで全体の実績も上がり、安定しました。フォローやその活用の拡大で利用ID数も昨年位から上がっています。

アマテラス:

属人的な営業からチーム営業に変化したのですね。

葉山勝正:

そうですね。当時私入れて3人だったチームが、2015年4月に新卒が加わり、4人になりました。そして、10月にはもう1名加わりました。5人のチームとなり、ある程度売上実績も出たことで、今年3月に取締役に就任しました。今はマーケティンググループという営業部隊を担当しています。
中には3つの組織があり、学校を担当している部隊、塾担当の部隊、もう1つはBtoC及び海外を担当しています。学校向けの市場は今急速に伸びているので、私は学校担当部隊のマネージャーを兼任し、かつ営業のプレイヤーでもあります。塾向けの部隊のマネジメントについては専任マネージャーにある程度任せていますが、徐々に関与を増やしています。塾向けの市場については、まだまだこれから伸びる市場ですので、こちらも学校の部隊同様組織力を高める取り組みをしています。
また、地方の大手・中堅塾チェーンでの大規模導入実績も作ることができてきました。10月からは九州の雄、英進館様での取り組みもスタートし、今後このような動きを加速させていこうと動いています。

大手人材会社の営業としてキャリアをスタート

アマテラス:

次に、葉山さんのキャリアとすららネットに転職した背景を教えてもらえますか。

葉山勝正:

エン・ジャパン株式会社に新卒で入社をし、営業として配属をされました。当時はネットの求人広告がまだ黎明期の頃です。コンビニに置いてあった『B-ing』や『フロム・エー』といった求人雑誌が主流でした。それがネットに切り替わるタイミングで、特にIT業界やメーカー業界等はネット求人に移行しつつあったのですが、私が配属されたのは外食、小売、アパレルといった紙媒体での求人・求職が一般的で、ネットへ移管しづらい業界でした。今はスマホがあるので調理人もスマホでネット接続するのが一般的ですが、当時は調理人がPCでインターネットに接続するかと言うと恐らくしない。それを「ネットで求人募集しましょう!」と行くので、「はぁ?『ガテン(紙媒体)』でしょ」みたいな反応でした。
今まで使っていなかった人たちに新たな手法の導入提案をしていましたが、そこで成果を出して、早いタイミングでチームリーダーになり、マネージャーになりました。その翌年には当時最年少の支社長になりました。入社4年目、26歳の頃です。

打倒、リクルート!営業を科学し、“少数でも勝つ”方策を確立

葉山勝正:

そして、営業部長になりましたが、ちょうどその時リーマンショックがありました。2009年です。中途採用市場は全般的にドン底まで冷え込み、当時会社の売上が半分以下まで落ちた覚えがあります。

当時、中小企業向けのリテール市場はリクルートが一番強かった。代理店も人員も多くて地方等も十分に対応できるので、当社はリクルートに競り負けていました。しかし、中堅や大手企業の採用が底冷えした以上、リテールを取りに行こうという話になりました。
そこで、私は営業部長として50人程の営業部隊を、リクルートの何千人というところに勝負に行く部隊を立ち上げました。『リテールマーケティング部隊』と名付け、そこのヘッドをやりました。しかし、当たり前ですが、勝てる訳が無いんです…。

アマテラス:

50対数千…戦国時代の話みたいですね。

葉山勝正:

しかも、基本的にリクルートの営業マンの方が能力高いので、向こうは鉄砲持っていて、こちらは竹槍で攻めているようなものです。

そんなでなかなかうまく行かなかったのですが、当時の営業企画部長やマーケティング部長といった方達に協力してもらい、「少ない人数でも大人数のリクルートに勝てる方法をつくりあげよう」と営業を科学するようなことをやりました。
営業プロセスを細分化し、どこでどれだけ動けば、どこで売上が跳ね返ってくるのか――極端な話、6月初めにアポイントが10件取れていると7月に売上がいくらになるといった予測値が実績値と3%以内差しかないというくらいまで科学をしました。しかも、「少人数で勝つ」為には相当効率化しないとならず、10件電話をしたら1件取れるではだめで、10件電話したら8件取れる為の仕組みをつくらないといけない。それも作り、キャリアが浅い人でもかなりの高確率で数字が取れるようになりました。
そして、いろんな部隊を統合し、最終的にはリテール部門だけで150人程の組織になりました。

アマテラス:

効率がいいから、経営資源をそこに投入した方がいいと判断されたのですね。

葉山勝正:

そうです。リテール・中堅・大手という部隊があったのですが、「リテールのやり方を中堅の部隊にも持ち込んだ方がいい」、「どうせなら葉山が見たらいい」ということで、どんどん取り込み、最終的に100人以上の部隊になりました。その際には、仕組みだけでなく、自分たちの考えや思い、方針をどれだけ浸透させるのかといったことにも取り組みました。
例えば、戦略と人事評価と日々の行動をいかに結びつけるかといったことに取組んでいました。そうしている間に中途採用支援事業がエン・ジャパンで一番大きな事業だったのですが、そこの事業部長になりました。その時は新規サービス開発に注力しました。

歩んできたキャリアについて語る葉山さん

「小さいベンチャーを自分の力で大きくしたい」

葉山勝正:

エン・ジャパンに2004年に入社しましたが、当時恐らく200人程度社員がいて、上場もしていたフェーズでした。今度は黎明期というか小さいベンチャーの企業で、自分の力を以て上場なり、会社の拡大をしていくことをしたいと思って、エン・ジャパンを退社しました。

アマテラス:

エン・ジャパンの後、一時期コンサルの仕事もなさっていましたね。

葉山勝正:

やりましたけど、合わなかったですね。
いくつかの会社の新規事業の開発や事業の企画部門の受託を数ヶ月間やっていました。「面白そう」とコンサル業界に飛び込んでみたものの、結果的に物足りなさを感じました。それまで事業サイドに居たので、自分が作ったモノをどうやって売っていくのか、享受したお客様はどう思っているのかといった一貫が見えないのが辛かった。
あと、自分はどちらかというとリーダーシップで人を動かしていくのが得意だったのですが、コンサルではリーダーシップは関係ない。自分が思っていた理論や「こうしたら絶対うまくいく」というのが、提案してもなかなか企業を動かすことができず、やり辛かったですね。そういう意味でも、「やっぱり自分でやったほうがいい」と思いました。

そこで起業をするか、ベンチャーに行くかと考えました。
起業は40代になっても50代になってもやろうと思えばいつでも出来る。でも、ベンチャーの企業に、しかも黎明期の企業に参画することは歳を取ったらなかなか出来ない。かつ、優れたベンチャー企業があったとして、その企業を大きくしていくことは今しかできないと思いました。そんな素敵な会社に出会えれば、それは今しか出来ないことだから、起業せずにベンチャーに行こうと決めていました。
そして、アマテラスの藤岡さんにお願いして、転職活動を始めました。

社会性の高い事業と誠実な社長が決め手

アマテラス:

転職活動でいろんな企業から声が掛かりましたが、その中からすららネットに決めた理由は何ですか?

葉山勝正:

社会的価値が高いビジネスをやっていることが一番大きいです。どうせやるなら社会問題を解決するようなビジネスに携わりたいと考えていました。世の中を便利にするのではなく、そもそも光さえ当たっていないような人たちに光を当てる――それが本当の社会問題の解決だと思っていて、そういうことに取り組んでいる企業に会いたかった。すららネットがしているのは正に社会問題の解決で、所得格差があるから教育格差があり、何らかの障害があって他の人と同じ教育が受けられない人たちがまだ日本にもいるし、海外にも沢山いるわけで、それを解決しようという姿勢は非常に価値があると思いました。

また、湯野川さんという経営者とフィットしたというのもありましたね。

アマテラス:

社長の湯野川さんについて、どう感じましたか?どんなところに共感したのですか?

葉山勝正:

嘘をつかない、「この人は絶対ハシゴを外さない人だ」と思いました。私自身、誠実さを大事にしていて、それを強く感じました。

転職活動時に、「ストックオプションこれくらい出しますから」とか「ポジション出しますから」といった感じで口説いていただいた会社もありましたが、ある意味信用出来ない気がしたんです。それこそ、経営管理等の専門的な職種では確かにそうことも有り得るし、誰も居ないなら役職就きというのも分かりますが、営業部隊が既にいるところにいきなり上から入るなんて、「本当にいいのか?」と聞きながら思っていました。

湯野川さんは、そういうことを一切言わなかったんです。「最初は営業としてスタートしてもらいます。丁稚奉公ですがいいですか」と。「ストックオプションがあるから」といった誘い方も一切なかった。むしろ、「ストックオプション全部配り切っているから配分できません、ごめんなさい」と。ですので、「この人すごく正直だな」というか、誠実だと感じました。

あとは、理念・考え方と活動内容が一致しているというのも非常に感銘を受けました。
「教育で世界を変える」「全ての人に教育の機会を」等の考えを打ち出している会社はいくつかありますが、実際に事業に結び付けている会社は少ないと感じました。
すららネットは「所得格差による教育格差の根絶」を掲げていて、学校や塾への教材提供の他にも、NPO法人と連携をして経済的困窮世帯の学習支援を実施していたり、海外の相対的貧困層向けの学習支援なども実施していく、と湯野川さんから伺いました。理念と事業活動が一致しているという事にも大変魅力を感じました。

他にも、湯野川さんは新規事業のプロで、百戦錬磨の人。面接の時いろいろお話しながら、「そのスキルは盗みたい」と思いましたね、正直。

日本の教育現場の課題を解決するサービス

アマテラス:

実際にすららネットで働いてみて、その魅力や面白さはどこにありますか?

葉山勝正:

いくつかありますが、やっている事業が非常に社会的価値の高いビジネスなので、仕事する中で「社会のためになっている」というような実感はあります。それが一番ですね。

アマテラス:

通常はBtoBというか、学校や塾が取引先になると思いますが、生徒さんから「ありがとう」と直接言われるようなことはあるのですか?

葉山勝正:

勿論あります!昨日、凄く感動することがありました。
大阪のある中学校に行き、『すらら』を使った実際の授業を見学させて頂きました。最後に、学校の先生が「この『すらら』を作っている会社の葉山さんが来ているから、ちょっと皆さん挨拶してください」と言って、一人の女子生徒が英語でスピーチしてくれたんです。
「『すらら』があるから、今までわからなかったことがわからないままでなく、わかるようになりました。以前は英語がそんなに好きではなかったのですが、今では得意になりました。『勉強、嫌だな』と思っても、こういうアニメーションの教材だったら勉強ができると思います。この教材を導入してくれて、本当にありがとうございました。他のいろんな学校にも広めてください」といったことを中学3年生の女の子に言われて…感動しましたね。

現在の学校は、少子化で、人を集めるのに苦労しています。そして、人数を集めるには、従来取らなかったような学力下位層を取りに行かないとならない。すると、クラスに学力上位層と下位層が一緒にいる状態になりますが、先生は1人。授業はどうなるかというと、一定の層に合わせざるをえないので、上位層はつまらないし、下位層はわからない、といった状況になります。「これを放って置けない」となると、先生方はプラスアルファの補習をしなくてはならず、先生に負担がかかる。先生も疲弊するし、子どもたちは“わからないまま”もしくは、“つまらないまま”になってしまう。自分に合った教育が受けられないのです。

そういった課題に対して、『すらら』は、“アダプティブラーニング”って言っていますが、ひとりひとりの学力に適応した指導が出来る教材です。だから、学力差があったとしても、それぞれに応じた学習指導が出来る。そういった点で、今の日本の学校課題をストレートに解決しに行っています。
塾においても同様な状況にあると言えます。

『すらら』登場キャラクターが描かれている(株)すららネットオフィスでインタビューを行いました

国境を越え、教育環境が厳しい子供達の学習を支援する

葉山勝正:

また、『すらら』はPCとインターネット環境、そして、そのコンテンツさえあれば勉強できるように作られており、「今まで勉強したことがない」、「習ったことがない」ということでも分かるようになっています。

例えば、東日本大震災時に子供の学習支援を行っていた仙台のNPOさんと組んで、『すらら』を提供させて頂きました。
NPO団体ではボランティアの方が活動されますが、ボランティアでは指導する人のスキルによって教えられるレベルが異なります。しかも、継続的に教えてくれるかという点でも難しい。となると、どうしても提供する教育品質にばらつきが出ますが、『すらら』ではそのばらつきがありません。また、従来の活動は“人ありき”なので、ある程度教育力がある人が集まらないと提供出来ませんが、『すらら』なら教育力がある人がいなくても学習会が出来ます。この取り組みが評価され、日本パートナーシップ大賞優秀賞を受賞し、現在では30拠点以上に拡大し、この手の取り組みでは日本最大規模にまで成長しています。

『すらら』はこういったNPOさんと組んで、教育において他の人と差がある子供達の支援に取組んでいます。
具体的には、相対的貧困層向けに活動するNPO団体さんに対しても『すらら』の提供をしています。
また、メンタルクリニックなどでも導入がされています。メンタルに問題がありクリニックに通う子供達がいますが、治って元の環境に復帰しても、またクリニックに戻ってきてしまうのです。どうしてかというと、治療期間に勉強していないから、戻った時に追いつけない。それでまた気持ちが落ちてしまい、クリニックに戻ってしまう。「では、メンタルクリニックで勉強を教えよう」と思っても、病院の先生は教えられない。
こういった課題に対して「すらら」を提供し、解決しようと取り組んでいます。

現在は、海外にもその取組みを拡げています。スリランカの『BOP層』という最下層の貧困層世帯の子供向け塾を運営しています。塾運営には通常結構な費用が掛かるのですが、Eラーニングという手段を使えば、低コストで安価に貧困層の子供達にも塾や、学習機会が提供出来るのです。この取り組みを皮切りに、インドネシア、インドなどでも事業が始まっています。

痛感した大企業とベンチャーの違い。まずは、馴染んで信頼を得る

アマテラス:

ベンチャーに入ってみて、大変なこと、想定外だったことはありますか?新卒で入った企業との違い等を感じたことはありましたか?

葉山勝正:

以前の会社と圧倒的に違うことは“マルチタスク”ですね。新規営業もして、学校向け部隊のマネジメントもして、取締役としての仕事もあります。またNTT西日本さんなどの大手企業との事業連携やITソリューションエクスポ等のイベント時のブース設計、そして、採用もやっています。
以前の勤務先では、「採用は人事」という感じで分掌や役割が決まっていました。こんなにも1人が抱える役割が多いというのは、ベンチャーに入って感じたことです。頭の切り替えが大変だな、と思いましたね。

また、細かいところですが、例えば「郵送」とかも前の会社では誰かに任せれば良かったのですが、ここではそれも自分でやる。最初の頃、「宛名ラベルはどう貼るの?」「コピーの取り方?」とか、そういうところからわかりませんでした。「おお、出来ねえ、俺!」とか思いました(笑)。そういった点でもベンチャーは大変でした。

それ以外では、文化が全然違いましたね。社内で当たり前のことも、入社当初の自分にとっては当たり前でないこともありました。詳細はもう覚えてないですが…。ですので、企業文化を理解するための努力を大分しました。
例えば、湯野川さんには何回も「今日お食事行きませんか」と誘いました。そうやって、話す機会を設けて頂きましたね。マーケティンググループの人たちとも…殆ど飲みの席ですが(笑)。
“会社の文化を知る”ことは大事なことだと思いますね。成果を出す前にそもそも馴染んで信頼を得ないと、成果は出ないので。

アマテラス:

取引先についても異なる点がありましたか?塾は民間に近いのかも知れませんが、学校は普通の企業や営利団体とは違うのでは?

葉山勝正:

ギャップは感じましたね。企業では、社長が「イエス」と言えば、基本的に組織としても「イエス」です。でも、学校の場合、理事長や校長が「これ、導入したい」と言っても、現場の先生方が「こんなの使いたくない」と言ったら、導入にならない。当然管理職の合意形成は必要ですが、現場の合意形成も取らないといけない。営業の仕方が今までと違ったので、戸惑いました。私は前職でリテール担当の営業部長で中小企業の社長に即決して頂いていたのですが、それが学校だと根回しする人数も多く、契約までのスパンも長いため、キーマンを見つけて戦略的に営業していくことが必要です。そういう違いに最初は苦戦しました。

また、『先生』に仕事で接したのも初めてでしたから、はじめのうちは先生方の状況もわかりませんでした。PCが1人1台ではないので、メールでのやりとりが難しく、「メール見ました?」って2週間前のことを訊いたら、「まだ見てないです」。「ええ?!」みたいなことはよくありました。

あと一番大きかったのは、前の会社では新規事業等の立ち上げについて、極端な話、もし失敗しても二打席目が回ってくる。「10個新規事業立ち上げたら、1個当たる」とかよく言いますが、そういう感覚でした。でも、ベンチャーの場合、それは許されない。新しいことをやって、それを「必ず成功させる」という気持ちの強さ、プレッシャーは、ベンチャーと大企業では圧倒的に違うと思います。

「社長と合うか」の見極めが大事

アマテラス:

話は変わって、葉山さんの転職活動についてお伺いしたいのですが。転職活動ではどんなことをしましたか?

葉山勝正:

(アマテラスの)藤岡さんも含めて、いくつかのエージェントに連絡しました。人材系の会社に居て周囲に詳しい方も多く、「どの会社がどういう分野に強い」といったことが分かっていましたので。

アマテラス:

それは役得ですね。通常は「どうすればいいか」から始まって、無駄撃ちして…といったこともありますが。どのぐらいの数のエージェントで、企業は何社ぐらい受けましたか?

葉山勝正:

エージェントは6~7社位行きましたが、実際にご紹介頂いたのは3~4社のエージェントでした。それらのエージェントから3件位ずつ企業面談に行ったので、15~16社ぐらいは会っています。基本的には、最初の面談から社長と話が出来る案件を持つエージェントを大事にしました。

アマテラス:

葉山さんは重責を担っていた方だから、社長と話さないと話が進まない、埒があかないということをご存じだったのだと。でも、それをしているエージェントは多くない。

葉山勝正:

少ないと思います。

アマテラス:

活動期間は短かったですよね?初回面接が社長ですから、早いですよね。

葉山勝正:

2ヶ月程ですかね。(2013年)6月頃に湯野川さんにお会いして、8月頃には決まりました。湯野川さん面談のはじめで「第一希望はすららネットです」と言いました。社長面談以降は、社員の方から話を聞かせてもらったり、社長と飲みに行ったりしましたね。

アマテラス:

そういった活動の中で、「意味のあった」と思うのはどんな行動でしたか?

葉山勝正:

意味のある行動でいうと、入社前に社長と一回は飲みか食事に行った方がいいとは思っています。要は、面接以外でちゃんとお話をしないと、自分と合うかどうかがわからないと思います。「この社長だったら、万が一無茶を言ってきたとしても、耐えられるか?我慢できるか?」という目で色々見た方がいい。

アマテラス:

それ以外にはありますか?どなたかに相談されたりはしましたか?

葉山勝正:

本当に自分のことをわかってくれている先輩や同僚にはよく話しました。それはすごく価値のある行動だったと思います。でも、言われたことを鵜呑みにしてはいけない。
「お前は絶対コンサルには向いてない」とか、「意外とお前にはコンサルが向いている」、「お前は絶対営業系に行っといたほうがいい」とか色々言われます。多くの意見を聞くことは大事で、それで一旦考えが拡がるというのは意味のあることだと思います。けれど、それに引っ張られてはダメで、いろんな意見を聞いた上で「どのリスクを自分は負える」と決めることが大事だと思います。

「今までの物差しとベンチャーの物差しは違う。過去を捨て、一から始める勇気を」

アマテラス:

これからベンチャーに行きたい方、ベンチャーへの転職活動をする方へのアドバイスはありますか?葉山さんのように大企業からベンチャー転職を目指す方が当社登録者には多くいらっしゃいます。

葉山勝正:

「最初から高い給与で入るな」と私は言いたいです。かつ、ビジネスサイドの人間として言うと、「変なプライドを捨て、給料査定基準も清算した上で転職してください」ということです。
以前の物差しを持ったまま、変なプライドを持ったままベンチャーに入社すると、辛いです。「何で僕は評価されないの?」とか言います。今までの物差しとベンチャーの物差しは違うので、過去のものは捨てて一から始める。本当に力があるなら、途中に苦労があっても必ず花は咲くはずです。なので、一番下から入っても問題ない。その勇気を持って欲しいと思います。

あとは一つ、注意点で言うと、ストックオプションやポジションは大事ですが、そこに左右されない方がいいと思います。本来、ポジションが欲しいから転職するわけではないし、ストックオプションが欲しくてベンチャー行くわけではない。

ベンチャーの魅力は、「自分の仕事が与える影響を実感できる」こと

アマテラス:

大企業では出来ない、ベンチャー企業ならではの良さは何ですか?

葉山勝正:

自分の考えた企画や案がダイレクトに売上や世の中の変化に跳ね返ってくる。自らが作ったものが社内外に影響を与えていることを感じるし、そのスピード感もある。

アマテラス:

最後に、3年後か、5年後かの葉山さんの目標は何ですか?

葉山勝正:

3~5年後ではないですが、起業はします。今は湯野川さんという社長に出会って、彼が考えたビジョンを仲間と一緒に実現していく渦中にいさせてもらっています。それを率いている社長は面白そうだなとか、いつか自分が立ち上げてトップとしてやりたいという思いはあります。それは湯野川さんを見て、より鮮明に思いました。ただ、先ほども申し上げたように、起業はいつでも出来るものなので。

5年後の目標としては、海外での事業展開ですね。国内も勿論ですが、ASEAN地域やアフリカにはまだ光が当たっていない人達が沢山いる。そういった地域における教育格差の根絶をやっていきたいです。

アマテラス:

素敵なお話をありがとうございました。

この記事を書いた人

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河西あすか

慶應義塾大学経済学部卒業後、食品メーカーにて商品企画等のマーケティングを担当。 慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了後、企業再生・変革の実行支援コンサルティングファームに在籍。

株式会社すららネット

株式会社すららネット
https://surala.jp/

設立
2008年08月
社員数
30名(2016年時点)

《 Mission 》
教育に変革を、子どもたちに生きる力を。
《 事業内容 》
e-ラーニングによる教育サービスの制作・提供および運用コンサルティング