SNSやブログでは発言されない、転職するとき・転職してからの実態

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今回は、ご好評頂いたウェビナー「スタートアップ転職者に聞く! ~SNSやブログでは発言されない、転職するとき、転職してからの実態~」(2021年2月実施)を記事化致しました。
アマテラスを通して転職された様々なバックグラウンドの3名の方々に、転職前の悩み、転職後感じられたギャップ、そして実際スタートアップで働いてみて思われたことについてリアルなお話を伺うことができました。

龍 健太郎氏・寺田 響氏・根岸 泰之氏


龍 健太郎氏・寺田 響氏・根岸 泰之氏

龍 健太郎氏:株式会社ZMP 事業部長
大手電機メーカーのIT事業にて金融機関向けシステム営業を担当。次ステップを模索し、2015年に自動運転スタートアップである株式会社ZMPへ入社。

寺田 響氏:株式会社Laboro.AI ソリューションデザイナー
ベネッセホールディングスにて8年半に渡りマーケティング/新規事業/営業企画/経営企画に携わる。その後、リクルートグループにてビッグデータや機械学習を扱う部門に所属。2018年7月より現職。現在は、AI開発のプロジェクトマネジメントや、クライアント企業のDX戦略構築等に従事。

根岸 泰之氏:ランサーズ株式会社 CEvO(チーフエヴァンジェリストオフィサー)
2001年にフリーライターとしてキャリアをスタート。2003年にエン・ジャパン(株)へ入社し、制作部長、プロモーション本部長を歴任。2013年4月にランサーズ参画。現在はCEvOとして、広報活動やマーケティンに携わる。

【転職への不安・迷い】「自分の力量でやっていけるか?」

株式会社Laboro.AI ソリューションデザイナー 寺田響氏(以下敬称略):

スタートアップへの転職に際して、私自身はそれほど大きな不安はなく、むしろワクワクする気持ちの方が強かったです。前職の大企業で社内スタートアップ的な組織にいたことがあり、その時の働き方が自分に合っていたという思いがあったので、比較的小規模でアーリーステージの会社に行きたいと考えていました。

ただ、仕事の規模が小さくなるのではないか? また、自分の力量でやっていけるのか?今思えばその辺りは少し不安に思っていたのかもしれません。

株式会社ZMP 事業部長 龍健太郎氏(以下敬称略):

私は転職の前年から転職活動を始め、当時通っていたビジネススクールで色々な人と話はしていましたが、一番不安だったことは、寺田さんと同様、「自分が本当にスタートアップに行って役立つのだろうか?」という点でした。

本日ご参加頂いている方はスタートアップへ転職したことのない方が8割と伺っていますが、私はその典型だったと思います。迷いはありませんでしたが、大企業で10年間勤めてその文化に染まっていた自分が、市場で一体どれくらいの価値があるのか分からないという不安だけはありました。
しかし、そこで止まっていては何も変わらないので、最後は「エイヤー」と開き直ったところはあると思います。結果的には杞憂だったのですが、その辺りは後程お話します。

リクルート出身者はスタートアップ転職に有利?

アマテラス:

アマテラス登録者の多くの方から、「スタートアップ転職するにはリクルートを経由すると良いのでしょうか」と質問されることがよくあるのですが、寺田さん、その辺りはいかがですか。

寺田響:

リクルートは、一般的な日本企業とは社風が違う、ということはあるかと思います。確かに、リクルートからスタートアップに行った友人も多数います。

一方で、現在スタートアップ側で採用もしている立場からすると、「リクルート出身だから」というより、「会社の中でどうご自身の価値を発揮していたか」ということの方が重要だと感じています。
リクルートの中でも保守的な方もいれば、いわゆる「ジャパニーズトラディショナルビッグカンパニー」の中でも、先進的な考えの方はいると思います。個人的には、「世の中で言われているほどリクルートパワーは強いのかな?」と思っています。

アマテラス:

寺田さんのキャリアで考えると、(前々職の)ベネッセから現在のAIスタートアップに転職する場合は大きなジャンプになったかもと思います。その意味では、リクルートを挟んで転職キャリアを積んだことで、現在の勤務先にアジャストしやすかった、ということはありますか?

寺田響:

半分イエスで半分ノーですかね。
ベネッセでもデータの仕事はしていたものの、AIや機械学習、統計分析を本格的にやりだしたのはリクルート時代だったので、確かに経歴的にはリクルートを挟んでいなければ、私は今ここにいられなかったと思います。

ただ一方で、ベネッセもリクルートも大きな組織で、部門や一緒に仕事をする人によって性格も変わってくる為、「リクルート出身だからスタートアップの採用で優遇される」ということではない気がします。やはりその人のパーソナリティで評価されていると、少なくとも私は感じています。

大企業からスタートアップへの転職には、自己投資の考えと自分の基準を持つことが大事

アマテラス:

龍さんは、比較的保守的な、転職する方が多くはない職場から転職されました。周囲に相談すれば転職に対してネガティブなことも言われていたかと思いますが、それにも関わらずスタートアップに飛び込んだのは、何故でしょうか。

龍健太郎:

私にはいずれ起業したいという思いがあり、自己投資の考えがあったのだと思います。条件を上げる転職もありますが、スタートアップに行けば必ず最初給料は下がります。それでも、「その先で自分が何をしたいのか」、「何のために転職するのか」、「そこで得られるものが何か」という基準で考えていました。

同じ会社の人の意見ではなく、当時通っていたビジネススクールの人達と話をして、気持ちを固めていくことはしていました。自己投資の考えと、自分の基準を持った上で周囲に意見を求める、という二つで私は動いていたと思います。

転職への最終関門は、社長面接より家族の納得

ランサーズ株式会社 CEvO 根岸泰之氏(以下敬称略):

私の場合は、不安や迷いは全くなく、転職活動では他社は見ずにランサーズとしか話をしていないくらいでした。ただ、嫁に不安があったので、「どう納得してもらうか」に苦労しました。

子供もいるので将来の家庭事業計画書のようなものを作ったり、義理の両親にも説明に行ったり、買ったばかりの家のローンを組み替えたりもしました。ランサーズの秋好(社長)の面接よりも、突破しないといけない本当の最終面接は嫁、という感じでした。

【スタートアップ入社前後のギャップ】大企業での経験が活きる!

寺田響:

スタートアップへの転職に際して、私自身はそれほど大きな不安はなく、むしろワクワクする気持ちの方が強かったです。前職の大企業で社内スタートアップ的な組織にいたことがあり、その時の働き方が自分に合っていたという思いがあったので、比較的小規模でアーリーステージの会社に行きたいと考えていました。

ただ、仕事の規模が小さくなるのではないか? また、自分の力量でやっていけるのか?今思えばその辺りは少し不安に思っていたのかもしれません。

龍健太郎:

私は転職の前年から転職活動を始め、当時通っていたビジネススクールで色々な人と話はしていましたが、一番不安だったことは、寺田さんと同様、「自分が本当にスタートアップに行って役立つのだろうか?」という点でした。

本日ご参加頂いている方はスタートアップへ転職したことのない方が8割と伺っていますが、私はその典型だったと思います。迷いはありませんでしたが、大企業で10年間勤めてその文化に染まっていた自分が、市場で一体どれくらいの価値があるのか分からないという不安だけはありました。
しかし、そこで止まっていては何も変わらないので、最後は「エイヤー」と開き直ったところはあると思います。結果的には杞憂だったのですが、その辺りは後程お話します。

想定以上の裁量の大きさ

龍健太郎:

もう一つのギャップは、大企業では判断を上司に委ねますが、スタートアップでは自ら判断することが求められるということです。判断の良し悪しも自分に直接返ってきます。自分で決めなければならない範囲が非常に大きくなったというギャップは、想像していたよりもあったように思います。

現在は自分自身が上司になり、部下からは「これどうしましょうか」ではなく、「自分はこうしたいのですが、どう思いますか」という質問を受けるようにしています。自分はどうするか、どうしたいかをそれぞれが考え判断し、それに対して結果を自分で受け入れるというサイクルで仕事をしていくことが、大企業とは大きく違うところかなと思います。

寺田響:

先程龍さんもお話されていましたが、大企業の方からすると信じられないくらい、スタートアップは何もない状態から始まっているところがあります。予算がない、計画がない、個人の目標がない。自分でゼロから作ることは、私にとっては大きなギャップでした。

他方で、「規模の小さい仕事しかできなくなるかもしれない」という転職前の不安は、良い意味で裏切られました。私がAI業界にいるからなのかもしれませんが、「大きな組織ではできないようなことを、スタートアップはスピーディーに達成してくれるのでは」という期待から仕事を頂くことが予想以上に多くありました。保守的な考えを持つ大企業が多いと思っていましたが、大企業のスタートアップに対する期待値が、私が思っていたよりも高いと感じ、それは意外なことでした。

「ビジョン実現の為には何でもやる」という方がスタートアップでは活躍できる

根岸泰之:

私自身は、元々エン・ジャパンで色々な企業と関わることがあり、「スタートアップはこういうところ」と知っていたので、入社前後のギャップはあまりありませんでした。

ただ、どのスタートアップ企業も、目指す頂上や夢は決まっていても、登るルートはその時々の状況によって変わってきます。目的地は変わりませんが、問題が起こった時に今やっていることを少し変える必要が出てきます。その際に、問題を回避するルートを取るなど次の手を考えられるかどうかで、活躍できるか/できないかという差が出るのではないか、と今は感じています。

ビジョン実現の為には、勝率1割の状況を勝利に変える覚悟で、人の指示ではなく自ら考えて行動する。うまくいけば称賛され、失敗すれば全力でリカバリー方法を考える。そのような思考が、どのスタートアップにもカルチャーとして根底にあると思います。それが辛くもあり、楽しくもあり、やりがいにも繋がります。

ビジョンの実現、会社の成長の為なら「これしかやりません」ではなく、「自分の強み以外でも何でもやる」というような姿勢、繰り返しになりますが、「自分で考えて、自分でやる」、「もしも何かあった時には自分でリカバリーしてやる」というような気概のある方でしたら、どこでも活躍できるのではないかと私は思います。

スタートアップ企業の労務環境は、むしろ良くなっている

アマテラス:

ところで、大企業とのギャップとして労務環境についてよく聞かれるので、ここで補足させて頂きます。今は東京証券取引所の上場審査が厳しくなり、労務環境が整っていなければ上場できません。ですので、上場を目指す未上場スタートアップではかなり労務環境が整っていることが多くなっています。

龍健太郎:

そこは厳しく見るようになっていますね。当社でも労務管理にしっかり取り組んでいます。

根岸泰之:

昔は、「時間と場所にとらわれない働き方をつくる」と言いながら、「今気付いたら今やる」がルールなので、昼夜を問わず仕事しているという感じはありました。

今は、会社ではなく、自分の意志でよりスキルアップできるような時間を作れるようになってきています。

【スタートアップで働いてみて】一から作り上げる楽しさは、スタートアップにしかない

寺田響:

月並みな話ですが、やはり自分が一から作っていく楽しみは、スタートアップにしかないと思っています。
私が今の会社に入って最初の仕事は、「電話がないから電話を買う」ということでした。会社に早いタイミングから関わっていればいるほど、会社に愛着も生まれ、後から入ってくる人達が働きやすい環境を整えて行きたいと思うようになります。

会社の仕組みや仕事の在り方、個人のキャリアパスは、すべて、自分がどう働きかけるか、働くかによって決まってくるのです。それが、会社の規模が小さいアーリーなステージである時の楽しみ方、良さなので、私個人はスタートアップに転職して良かったと感じています。

スタートアップ転職で未来への不安が消えた

根岸泰之:

もスタートアップに転職して良かったと思っています。
まず、未来への不安が完全に消えました。もし会社が明日潰れても自分が困るとは全く思わない、「何とかなるでしょ」と考えられるようになりました。自分で一つ事業を立ち上げた時に、その感覚が芽生えました。初め100人中98人が相手にしてくれなかった事業にくじけずに頑張って取り組んだことで、結果が世に出て、自信が持てたのだと思います。根性論のようですが、「諦めなければ終わらない」という心構えに再現性があるのかなと思います。

将来に不安を抱えている方こそ、一回チャレンジしてみると、私のように不安がなくなる、もしくは反対に明確に合わないというジャッジができるかもしれません。スタートアップが良くて大企業が悪いと言っている訳ではなく、それぞれ特徴や社会的役割が違うだけなので、自分を生かせる場所を見つけられたらいいのではないかと思います。

もう一つ良かった点は、前職ではお会いできなかったような要人との接点ができたことです。その道のスペシャリストやエキスパートの方々が、自分だけでは気付けないようなアドバイスやヒントを下さるので、沢山の刺激を受け、自分自身の成長に非常にプラスになっています。

最先端領域で仕事ができる

龍健太郎:

私が入社したZMPは、これからの成長市場と見込まれているロボットを作っています。最先端なので前例がなく、関係省庁とのハードルを乗り越えなければなりません。先日「こういう法律改正されたね」と関係省庁から言われたのですが、自分がやったことが時代を切り拓いて前例となり、実績として残っていくことは、自分の自信になっています。

最前線でやっているので、ロボット関係の法律や関係省庁とのやりとりは、自分が日本で一番のスペシャリストだと思っています。会社を選ぶ時に、これから新しく伸びていく成長領域の業界を選ぶこともとても重要だと今は実感しています。

【Q&Aセッション】コロナ禍での転職ではコミュニケーションを更に大切に

アマテラス:

ここからは参加者の方から頂いている質問にご回答頂きたいと思います。 最初の質問です。コロナ禍の今、スタートアップ転職で気を付けることはどんなことでしょうか?

寺田響:

今日ご参加の方の多くが、大企業とスタートアップ企業のカルチャーギャップを気にされていると伺いました。
私は現在リモートでの採用面接も行っているのですが、採用側としてリモートでどう擦り合わせるか難しさを感じています。転職を考えられる方にとっても、入社前に社員と会えないことが多く、シビアな問題ではないかと思います。面接等コミュニケーションの回数を、できる限り通常以上に増やすという形で今は対応していますが、最適解はまだ迷っているところではあります。

根岸:

コロナ禍ではなかなか難しい面もありますが、先方企業の方と仕事以外の話をしてみることも大事だと思っています。単純に、「先方企業メンバーとお友達になりたいか、2人で飲みに行きたいか」と考えた時、「行ける」と思えばマッチしていて、「ちょっと二人だとな…」と思うのならマッチしていない可能性があると思います。

スタートアップ側もミスマッチを防ぎ、人間関係がフィットする仲間とやりたいと考えているので、多少の雑談、交流のような場を用意してもらうようお願いしてみてもいいと思います。

龍健太郎:

我々の会社ももし候補者から「会いたいです」と言われたら、「ぜひ来てください」と言うと思います。積極的に会った方が良いと私は思いますし、「経営者とも会わせて下さい」と言うべきだと思いますね。言ってくれた方が嬉しいし、「この人はやる気なのだな」と思われると思います。

経営者の哲学や根底にあるビジョンに共感できるかを見極める

寺田響:

「経営者をどれだけ信頼できるか」は、大事な要素になります。
スタートアップならではの話ですが、経営者の言う事が変わってくることが結構あります。というのは、動向や状況が変わってくると、元々言っていた事や描いていた事を変えていく必要があるからです。半年前に言っていた事と、全然違う事を言い始めるということも、ゼロではありません。それも超越して、その人について行きたいと思うか、一緒に働きたいと思うか、ということが大事だと思います。

アマテラス:

楽天の三木谷さんの有名なエピソードがあります。昨日話した内容が今日は全く違っていたことがあり、「言う事が違っているじゃないか」と社員に言われ、「この1日の間に俺が進化したんだ。今日の俺は昨日の俺じゃない。だから良い意味で俺は進化したんだ」と言って皆を納得させたそうです。

寺田響:

ですので方法論は変わっても良いのですが、ビジョンがブレブレであればその会社はやめた方が良いかも知れませんね。

龍健太郎:

弊社の社長(株式会社ZMP 谷口 恒 代表取締役社長)は哲学がしっかりしているので、私はついて行っています。何のためにロボットを世の中に送り出そうとしているのか、仏教の「一隅を照らす」という一つの哲学に基づいて、「世の中に役に立ちたい」という哲学が社長の根底にはあります。
ただ、社長の発言が変わる中で、その根底の部分があまり理解できずに辞めていく場合もあります。

アマテラス:

経営者の根底にあるビジョンや思考回路に自分がフィットできるかどうか、できるだけ踏み込んで話してみることが大切ですね。

【Q&Aセッション】異業種転職で評価される人の特徴は、柔軟性と自主性、そして熱意

アマテラス:

次の質問です。異業種からの転職で評価されるために求められることは?

龍健太郎:

弊社の場合は殆ど異業種からなのですが、根岸さんが仰っていた、「何でもやります、できます、吸収します」という姿勢を持った柔軟性の高い人がものすごく伸びています。そのような姿勢の方はどこに行ってもできるのだろうと思います。柔軟性と自主性のある人達が、自分の周りでは間違いなく伸びていると感じます。

寺田響:

熱意やギラギラ感、覚悟を持っている人、という点は皆共通している気がします。AIや自動運転に興味のある方は沢山いらっしゃると思いますが、それを「自分の仕事にしたい」、「スタートアップで成功したい」というように自分の成長に貪欲な人でなければ、結構苦戦することもあるのかと思います。

【Q&Aセッション】海外で仕事をできるかは、経営者の方針を確認

アマテラス:

最後の質問となります。日本から海外進出を目指すスタートアップは少ないように思いますが、スタートアップで海外の仕事をすることは難しいのでしょうか?

龍健太郎:

これは経営者の方針だと思います。いくら担当者が海外とやりたいと言っても、経営者の方針が「まずは国内で」ということだと難しいです。最初のマッチングの際に海外進出への考えや計画について経営者の方針をしっかり確認し、そこに納得した上で転職検討すべきだと思います。

アマテラス:

スタートアップは結局経営者が一番の意思決定者なので、面接でしっかりと経営者から言質を取ることで、海外と仕事ができる確率は高まりますね。本日は遅い時間までありがとうございました。

この記事を書いた人

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河西あすか

慶應義塾大学経済学部卒業後、食品メーカーにて商品企画等のマーケティングを担当。 慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了後、企業再生・変革の実行支援コンサルティングファームに在籍。