2020年注目の最先端技術、量子コンピュータと5G 。今回は、アマテラスが注目する量子コンピュータと5G関連のベンチャー/スタートアップ企業を10社ご紹介いたします。
1つ目の注目技術は、量子コンピュータ。2019年10月には、Googleが独自開発した量子プロセッサー「Sycamore」を用いて、世界最速のスーパーコンピューターでも1万年かかるとされる処理を、200秒で実行したと発表しました。
さらに、2019年12月には東京大学とIBMがパートナーシップと締結し、2020年中にIBMの量子コンピュータ「Q」を日本で運用する予定が発表されました。実用化に向けて国際的に研究開発が進んでいる量子コンピュータの開発が、日本でも大きく進もうとしています。
- 目次 -
- 1 社会の不可能の壁を傑出した技術で超越する
- 2 イノベーションで世界を変える
- 3 テクノロジーの恩恵を、 それを“今”必要とする全ての人に届けたい
- 4 リザーバコンピューティングの力を簡単に
- 5 すべてのステークホルダーに価値をもたらす 社会的意義のある事業を創造する
- 6 地球上、いや様々な惑星に存在しえる全ての人に、 ロボティクス革命による利益を届ける
- 7 医療にイノベーションを起こし、世界中の人々の健康と幸せのため、あらゆるテクノロジーを駆使して、医療の革新に貢献する
- 8 AI技術で未来の社会に貢献する
- 9 人々が抱える課題を解決する、新しい社会インフラになる
- 10 絶対安全な量子暗号通信の社会実装を目指して
社会の不可能の壁を傑出した技術で超越する
東京大学で機械学習を研究するCEOの楊天任氏と、大阪大学で量子アルゴリズムを研究するCTOの御手洗光祐氏が中心の東大発、量子コンピュータベンチャー/スタートアップ企業。社員はまだ数名のシードアーリーフェーズ。
量子コンピュータ向けのアルゴリズムとアプリケーション開発を行い、量子コンピュータの性能を最大限に引き出し、量子コンピューティングを産業・社会応用することを目指しています。例えば、化学材料の設計においては量子計算の力を使って候補材料の高速スクリーニングや今まで見れなかった反応の解析を行うことで、新材料開発に貢献します。
2019年11月には、2.8億円の資金調達をし、量子コンピュータの実用化に向けて研究・開発を加速させています。
【企業情報】https://amater.as/online/companies/716/
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イノベーションで世界を変える
日本のAIスタートアップ企業のトップランナーとして知られるABEJA(アベジャ)。10歳からプログラミングを始め、シリコンバレーで最先端のコンピュータサイエンスを学んだ岡田陽介氏が起業。その技術力は、日本国内だけでなく世界から注目されており、Googleや米NVDIA社から出資を受け、2017年にはシンガポール現地法人、2019年にはアメリカのシリコンバレーに現地法人を設立。世界で活躍する日本発AIスタートアップ企業の1社です。
ABEJA(アベジャ)は、2019年3月から次世代のテクノロジーを探究する研究開発プロジェクト「ABEJA X」を始動。第一弾として、量子アニーリングのコンピュータを用いたソフトウェアの研究開発を進めています。量子アニーリングは、ある一定の条件下で最適な組み合わせを高速で選べる処理能力が特徴です。この能力は「組合せ最適化」と呼ばれ、交通、製薬、金融など、幅広い分野で膨大なデータと複雑な条件の中で適した方法を効率的に選び、社会全体の最適化をもたらすテクノロジーとして期待されています。
岡田陽介CEOインタビュー:https://amater.as/founder-interview/ai-abeja/
テクノロジーの恩恵を、 それを“今”必要とする全ての人に届けたい
エンジニア出身の向井永浩氏が起業したAIスタートアップ企業のNextremer(ネクストリーマー)。高度な自然言語処理機能や画像認識機能を有するAIエンジン群の提供やその機能を活用したAIプロダクトの開発を行っています。チャットボットや案内用の対話システムなど、様々なドメインに導入されています。
Nextremer(ネクストリーマー)は、2016年に早稲田大学高等研究所と共同で、量子アニーリングを用いた人工知能ソフトウェア開発の研究を開始。研究内容は、「対話システムへの応用を目的とする、量子アニーリングを用いた個人の選択の予測」および「量子アニーリングを用いた深層学習など機械学習の高速化・リソースの削減」の2つを掲げています。2019年には、量子アニーリングや関連計算技術に関する世界トップクラスの国際会議、Adiabatic Quantum Computing Conference 2019にて共同研究の成果を発表しました。
向井永浩代表取締役会長インタビュー:https://amater.as/article/interview/ai-nextremer/
リザーバコンピューティングの力を簡単に
QuantumCore(クアンタムコア)は、2018年4月、自然言語処理・ディープラーニングを専門とする秋吉信吾氏、ヤフオクのシステム開発や食べログを開発責任者として立ち上げた長島壮洋氏など、エンジニアリングに精通する3人によって創業されました。
『リザーバコンピューティング』という技術の可能性にいち早く着目し、時系列データの機械学習において主流とされるディープラーニングの性能を超えた『Qore』エンジンを独自開発しています。複雑系力学分野で研究されてきたリザーバコンピューティングは、 複雑な時系列処理などの深層学習と同じタスクを、量子コンピュータなど特殊なハードウェアをもちいることなく、 約1/100オーダーのわずかな学習データで、約100倍近く高速に解くことができます。
リザーバコンピューティングを使用することで、従来不可能だった個人データの活用や、環境に制約のある工業分野での活用、自然現象など複雑な時系列問題での活用が可能になります。
2つ目の注目技術は、「超高速大容量」「超低遅延」「同時多数端末接続」という3つの特徴を持つ5G。2020年3月からソフトバンクが5G対応スマートフォンを発売開始するなど、2020年は日本での5G元年と言われています。5Gを用いることで、オリンピックでは、選手や審査員の目線で試合をより高画質でリアルタイムに様々な端末から見ることができ、臨場感あふれる観戦が可能になるといわれています。
すべてのステークホルダーに価値をもたらす 社会的意義のある事業を創造する
JTOWER(ジェイタワー)は、ゴールドマン・サックス出身の田中敦史氏が、通信業界において社会的意義のある事業を創造するために設立した、通信ベンチャー/スタートアップ企業。2019年12月に東証マザーズ上場。
商業施設やオフィスビルなどの屋内における携帯電話の通信設備を集約する屋内インフラシェアリング事業を展開。多数の基地局の配置が必要になる5G時代に向けて、2019年度から屋外のインフラシェアリング事業を本格化させています。
2019年7月には、5G時代における事業者間のシェアリングモデルを推進するため、NTTと資本業務を提携。2020年2月には、通信基地局設置用に賃貸可能なロケーション情報を取り纏めたデータベース「SITE LOCATOR」事業において、JA三井リース株式会社と事業連携を開始。JAグループから賃貸可能なロケーション情報を集め、SITE LOCATORに登録し、通信事業者とロケーションオーナーとのビジネス機会を創出すると共に、5Gの効率的なインフラ整備を後押ししていきます。
さらにJTOWERは、地域や産業の個別ニーズに応じて柔軟に5Gシステムを構築できる「ローカル5G」のサービスを企画しています。
地球上、いや様々な惑星に存在しえる全ての人に、 ロボティクス革命による利益を届ける
テレイグジスタンス(Telexistence/遠隔存在)とは、Telexistence株式会社の創業者の一人で会長でもある東京大学名誉教授 舘暲氏が1980年に世界で初めて提唱した技術/概念。遠隔地にいるロボットが自分のアバターとなり、まるで自分が現地にいるかのように、物を見たり、感じたり、動かしたりすることができるようになります。三菱商事出身の富岡 仁氏が舘暲氏と出会い、技術の可能性に魅了されたことをきっかけに起業しました。
ロボティクス、VR、通信、クラウド、触覚伝送技術を活用した空間を超える遠隔操作ロボット、量産型プロトタイプ MODEL Hを開発。5Gの普及によって、通信速度が向上しテレイグジスタンス(Telexistence)の実現に期待が高まっています。遠隔地にいながら働くことができる遠隔就労を実現することで、人間が入れない所での複雑で細かい作業が可能になります。また、医療、建設、観光、ショッピングといった様々な分野での活用が想定されています。
医療にイノベーションを起こし、世界中の人々の健康と幸せのため、あらゆるテクノロジーを駆使して、医療の革新に貢献する
鳥取大学発、次世代の医療用ロボットを開発するベンチャー/スタートアップ企業。地域経済活性化支援機構(通称:REVIC)が、経営陣を送り込み戦略構築からサポートを強化し、新規プロダクトの研究開発、国内外での資金調達や海外拠点の立ち上げを目指すなど、成長軌道に乗っています。
医学的知見に基づき、ロボット、IoT、AI、AR/VR等の先端技術を取り入れた研究開発を通じ、安心、安全な医療のための手技トレーニングを可能とする医療シュミレーターの展開をしています。5Gを用いることで、よりリアルに近い医療シュミレーターの開発が期待されます。
AI技術で未来の社会に貢献する
オランダやアメリカ、イギリスなどで研究者として実績を積まれた金井良太氏が人工知能と神経科学を融合し、より大きな研究成果を出すため起業。クラウド上で動いていた従来のAIを、アラヤ独自のAI圧縮技術で、自動車やスマホなどのデバイス上で動かすことが可能になるエッジAIを開発。
2019年には、KDDIから、5G時代を見据え有望なベンチャー企業への出資を目的とした「KDDI Open Innovation Fund 3号」を通じて、出資を受けました。KDDIとアラヤはKDDI ∞ Laboの取り組みで協業するなかで、5G時代に向けたAIエッジコンピューティング技術開発、ドローンの自律制御への適用を進めています。
【企業情報】https://amater.as/online/companies/496/
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金井良太CEOインタビュー:https://amater.as/article/interview/araya/
人々が抱える課題を解決する、新しい社会インフラになる
インド出身で、エンジニアのバックグラウンドを持つCEOのロイ・アショック氏や、Amazon Japanにて玩具事業部の商品戦略部部長を勤めていた上田氏ら4名が2016年に創業。
2019年3月には、三菱地所、みずほキャピタル、三井住友海上キャピタルなどから約3億円の資金を調達しました。
IoTを活用した生活空間におけるサービスプラットフォーム事業を個人向け、法人向けの2つの軸で展開しています。個人向けには、アプリやスマートスピーカーから家電を操作できるプラットフォーム「LiveSmart」のソフトウェア開発を行っています。法人向けには、より多くの通信規格との接続ができる「LS Hub」のデバイスを中心に、デベロッパー向けに管理画面やライフアシスタントボットのソフトウェア開発を行っています。5Gの普及によって、より多くの端末に接続可能になり、従来より早い通信でよりスマートな生活が実現できます。
絶対安全な量子暗号通信の社会実装を目指して
LQUOM株式会社は長距離通信を実現するために必要となる量子中継器の研究・開発を行うスタートアップで、代表取締役の新関和哉氏が2020年に設立しました。
現在開発が進む量子コンピューターの計算速度は、将来的に最新のコンピューターと比較して、桁違いに速くなると言われており、従来の暗号通信の安全性が危険に晒されることが想定されています。そのため、長距離通信を実現するために必要となる量子中継器の研究・開発を、国内外の研究機関と協力して行っており、近い将来の実用化を目指しています。
量子コンピュータと5Gの実用化に向けた技術・サービスの開発は、2020年だけでなく、これから長期で進んでいきます。国際的にも注目を集めている2つの技術の開発が、日本でどのように進んでいくのか。技術・サービス開発の一翼を担う最先端ベンチャー/スタートアップ企業のこれからの活躍に注目です。