スタートアップ転職を考えているあなたに、2021年1月末時点でのアマテラスサイト上データをもとに情報提供し、転職活動の指針に役立ててもらえることが本コラムの目的です。
新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)の拡大が、日本のスタートアップ転職市場にどのような影響を与え、今後どうなっていくのか、それらをアマテラスサイトに登録している約420社のスタートアップと転職者の動きをもとに、コロナ2年目の転職活動についてお伝えします。
※ここで利用しているデータは、あくまでアマテラス登録企業と登録者個人の分析結果です。国内のスタートアップ全体の状況と合致するとは限りませんので、ご承知おき下さい。
- 目次 -
1. 2回目の緊急事態宣言でスタートアップ企業の採用状況はどうなっているのか?
1-1. 直近3カ月のWITHコロナのスタートアップ採用状況(2020年11月~2021年1月)
弊社サイトの新規登録者及び採用アクティブ企業(=スカウトメッセージを送った企業)数について、2020年2月からの推移を見てみます。(グラフ1参照)
新規登録者(グラフ1内のオレンジ線)は、2回目の緊急事態宣言発出された2021年1月に増加しており、1回目の緊急事態宣言時と近い動きとなっています。
他方、採用アクティブ企業(グラフ1内の青線)も底堅く推移していることが分かります。
スタートアップ企業の採用は、コロナ禍でも堅調なVC/CVC/Angelによる投資に支えられています。INITIAL発表による国内スタートアップの資金調達状況を見ると、コロナ禍でも4800億円程度になると見込まれており、2019年度には及ばないものの高い水準で推移しています。
1-2. 採用アクティブな業種・企業
次に、2020年11月~2021年1月に採用アクティブ企業の多かった上位6業種についてみてみます。
コロナで社会変革が加速されていくと企業は「改革する側」と「改革される側」に分かれていく、とアマテラスは考えていますが、採用積極の上位6業種は「改革する側」として注目しています。
1. SaaS
先が見えず変化が早い時代には、契約も解約もしやすいというSaaSの特徴がフィットしています。表1の資金調達額上位セクターでも第2位にランキングされていますが、DNX VenturesやUB VenturesなどSaaS専門の国内VCも出てきており期待の業界です。
米国ではSaaS企業からユニコーンが多く輩出されていますが、日本ではSaaSスタートアップの代表例Sansanでも売上高133億円(2020年決算)とまだ絶対的な存在とは言えません。国内SaaS業界は、しばらくは戦国時代が続くでしょう。
旺盛な資金供給に支えられ、ポストPMF(プロダクトマーケットフィット)のフェーズに入っている多くのSaaS企業は、事業開発・営業の採用を積極化しているという点で転職者にとっては狙い目の業界です。
アマテラス登録企業:キャディ株式会社、株式会社KURANDO、モノグサ株式会社、株式会社RevCommなど
2. AI・ディープラーニング
AI・ディープラーニング業界はビフォーコロナ期(2020年2月以前)から潤沢な資金調達を行っており、WITHコロナ期を通じて採用アクティブな業種です。
AIはポストコロナ時代を担う業界であることは間違いないと思いますが、ここ1年間で大企業と多くのPoC(概念実証)が行われた結果、パートナーに選ばれる会社とそうでない会社との選別が始まりつつあるように見えます。現状では多くのAIスタートアップの売上は、大企業からのPoC予算に依存していますが、コロナが長引けば大企業の財布の紐は固くなっていくでしょう。ややAIバブルの様相があった2020年までですが、2021年には事業パートナーからの選別と集中が進むと思われます。
アマテラス登録企業:Idein株式会社、株式会社アラヤ、株式会社Ollo、NABLAS株式会社、株式会社イライザ、株式会社アダコテック、株式会社オルツなど
3. モビリティ・ロボティクス
コロナにより生活様式・ビジネススタイルの変化で、非接触・遠隔というコンセプトがより重視された結果、モビリティ・ロボティクス領域のスタートアップへの期待が高まっています。
アマテラス内で特に採用アクティブなのは、ドローン・自動運転・サービスロボット(接客・清掃・監視など)の領域です。
また、日本は少子高齢化という社会課題を抱えていますが、離島の薬不足、ビル内監視の人材不足などの課題もロボット技術で解決可能です。
規制・法律などの問題からビジネス拡大には時間がかかりそうですが、その解決課題の大きさから成長ポテンシャルはとても大きいと思われます。
アマテラス登録企業:Telexistence株式会社、株式会社XTIA、Mira Robotics株式会社、株式会社人機一体、株式会社FullDepth、TechMagic株式会社、株式会社ソラリス、株式会社かもめや、株式会社未来機械など
4. HRtech
働き方の多様性に応じたサービスを提供しているHRtech企業は、資金調達額も多く(表1で9位)プレーヤーが増加しています。リモートワークを始め、壮大な社会実験ともいえる働き方改革も、HR業界の変化を後押ししています。ビフォーコロナ期に登場していたHRtech企業は、この1年で急成長し、後発を引き離している印象です。
弊社登録企業の株式会社スタメンはその象徴で、2016年の創業後、エンゲージメント管理ツールを主軸としたビジネスモデルでパイオニア的な存在でしたが、急成長し2020年12月にマザーズ上場。加藤社長の力量もありますが、時代の波に乗った会社の成長スピードには目を見張ります。
アマテラス登録企業:株式会社アッテル、株式会社サイトビジット、Laboratik株式会社、BizteX株式会社など
5. 新素材・バイオテクノロジー
コアな研究を行っている大学発ベンチャーをはじめ、研究開発型企業の採用はWITHコロナでも堅調です。むしろビフォーコロナ期よりも、採用アクティブになっていると言えます。
「コロナ下でも採用スタンスは変わらない。良い研究者・人材がいれば採用する」という研究開発型ベンチャーの声をよく聞きます。長期的視点で基礎研究を行っているため、コロナ禍でもネガティブな影響が少ないようです。
買い手市場になったために応募者サイドからすればライバルは増加傾向にありますが、採用窓口は縮小していない貴重なカテゴリーの1つです。
アマテラス登録企業:株式会社メトセラ、Varinos株式会社、株式会社Epsilon Molecular Engineering、株式会社Liquid Mine、マイクロ波化学株式会社、株式会社S-Nanotech Co-Creation、株式会社アルガルバイオなど
6. サステナビリティ・環境
菅首相の「2050年までに二酸化炭素排出ゼロ」という発言が象徴的ですが、米国でのバイデン大統領就任など、世界的にも地球環境配慮への気運は高まっており、地球規模での追い風があるカテゴリーの1つです。
イーロン・マスク氏がエアコン事業に参入するという報道もあり、サステナビリティや環境問題は世界的な競争が起こっていくでしょう。日本人の省エネ意識は高く、課題解決に関わる高度な技術力も有しており世界のリーダーシップになる可能性のある分野です。長期的視点での投資資金が流れ込んでおり、採用も活発な分野です。
アマテラス登録企業:株式会社チャレナジー、株式会社REXEV、自然電力グループ、みんな電力株式会社、株式会社プラゴ、Green Earth Institute株式会社、つばめBHB株式会社など
1-3. 採用を抑制している企業の特徴
・経営者がSNSなどで情報発信しなくなった。
・会社としての情報発信が減った。もしくは全くされていない。
・会社のウェブサイトを見るたびにメンバーが減少している。
このような状況になっている会社は、採用を抑制し、経営もダウントレンドに入っている可能性が高いため応募は控えた方がよいでしょう。コロナ禍の中で「改革される側」に押しやられている可能性が高いです。
・労働集約的なビジネス
・観光・外国人をターゲットとしたビジネス
・資材・原料などの調達を中国はじめ海外からの輸入に依存
これらの事業に逆風が吹いているのは事実ですが、コロナ2年目になっても経営不振や採用抑制にこれらを理由に挙げているのであれば企業側に問題があると言えます。
やや厳しいですが、自らをスタートアップ・ベンチャーと自認する会社であれば変化に対応して、2021年には成長の萌芽を見せていくタイミングでしょう。生き残ることは大事なことですが、変化が加速している世界でコストダウン・事業縮小しているだけの会社が巻き返していくのは簡単ではありません。
1-4. WITH/AFTREコロナで生き残るスタートアップに戦時のリーダーがいる
平時と戦時では異なる経営スタイルが必要とされますが、WITH/AFTERコロナ期に必要とされるのは戦時のリーダーシップです。WITH/AFTERコロナ期にあたる今後3~5年はこれまで以上に見通しが立てづらく、平時のリーダーが実力を発揮しづらくなってくるでしょう。
多くの会社を見てきましたが、同じ業界・同じような成長フェーズのスタートアップでもリーダーシップの違いがこの一年間の大きな差となりました。結局のところ、スタートアップの運命はCEOで決まると考えています。
平時のCEOは緊急事態に備えた対策がある。戦時のCEOはサイコロを投げて「3のゾロ目に賭ける」しかない場合があることを知っている。
平時のCEOは広く支持を集めようとする。戦時のCEOはコンセンサス作りなどに時間を割かず、反対も許さない。
ベン・ホロウィッツ『WHO YOU ARE(フーユーアー)君の真
ではCEOを見極めるには何を見ればよいでしょうか?
皆さんがすぐ出来ることとして以下2点をお勧めしています。
1. CEOのSNSを見る
2. スタートアップ企業の公式SNS・ニュース欄・プレスリリースを見る
戦時のCEOは自らの言葉で方針を発信するか、プレスリリースという形で企業行動を打ち出しています。今でこそClubhouseなどの音声ツールが流行っていますが、そこでCEOの生の声を聴くことも出来ます。
他方、平時のCEOは「様子を見る」という言葉を使いがちで結局のところ有効な行動を起こさず沈黙している傾向があります。
戦時はしばらく続くでしょう。事業の成長性を見ることも大事ですが、それ以上にCEOのリーダーシップスタイルを見極めることが大事です。
アマテラス登録企業で戦時のリーダーシップを発揮している事例を紹介します。
【事例:株式会社Payke(インバウンド向け事業)】
アマテラス登録企業の株式会社Paykeは訪日外国人向けに多言語対応の買い物支援サービスを提供していました。しかしコロナ禍によりインバウンド需要が蒸発。
Payke社経営陣の意思決定は早く、2020年3月には事業縮小に着手。退職者も出ましたが、早めに手を打ったことで退職者は転職活動を素早く開始し、成長スタートアップへと転職しました。
Payke自身は顧客ターゲットをインバウンド旅行者から観光業を行う自治体に転換。沖縄の観光事業者を支援するクラウドファンディング立ち上げて支援を行ったり、アフターコロナに向けてショッピングサポートアプリを開発・運営するなどしています。
2. 2021年、スタートアップ転職市場はどうなっていくのか(転職希望者目線から)
2-1. コロナ禍でスタートアップへの転職希望者が増えている
コロナ2年目入り、スタートアップ転職市場は以下のようになっていくと考えています。
・買い手市場は継続。ライバルは増加
・副業・フリーランスが増加
・スキル重視、即戦力重視の採用傾向
最近の登録者からのよく聞く声は以下のようなものです。
「変化が加速する社会で、会社に依存する生き方よりも個人のスキル・経験を高める方がよいという考えから、裁量の大きなスタートアップで多くの成長機会を得たい。」
社会の変化が加速することより会社のライフサイクルも早まり、企業寿命は短命化していくでしょう。一方で、人生100年時代と呼ばれるようになり、キャリア寿命は長期化します。そうなると、勤務先よりも自身のスキル・経験の重要性が増し、スキルをアップデートし続けて自らの市場価値を高める必要性が出てきます。極端に言えば、いつでも転職できる人、どこでも雇われる人になっていく必要があります。
2-2. 出身業種毎の転職者の動きはどうなっていたのか?(2020年)
アマテラス新規登録者数の出身業種別推移(〔グラフ4〕参照)を見てみました。
大別すると、
・登録者が増えている業種:IT・メーカー(技術者)・商社・コンサル
・登録者が増えていない業種:建設・不動産・金融・医療
に分けられます。
登録者が増えている業種(IT・メーカー(技術者)・商社・コンサル)は、登録者が少ない業種(金融・医療・建設不動産)に比べると、『ポータブルスキル(どの会社でも活かせるスキル)がある』という点が強みです。そのため、後者よりも転職がしやすく、先手を打って成長ポテンシャルの高いスタートアップ転職に動いているとも言えます。
一方で、金融・医療・不動産の方は、高くなった年収とそれに応じた即戦力スキル・ポータブルスキルがなかなか見合わないこともあり、「転職したくても転職できない」という悩みが多いようです。30代半ばを超えてくると転職できない理由が転職したい理由を上回ってくるのは事実です。ただ、これは時を重ねるほど困難が増してきます。
「それでもベンチャー・スタートアップ村で一歩を踏み出したい」ということでしたら年収も高めで働き方が大企業に近いレーターフェーズから探すことをお勧めします。
※参考:スタートアップ転職活動の進め方その2 ~初めてベンチャー・スタートアップへ転職する時、第一歩はどうするべきか?~
2-3. 職種毎の転職者の動きはどうなっていたのか?(2020年)
次に、アマテラス新規登録者数の職種別推移(〔グラフ5〕参照)を見てみます。
ここでも業種と同様に
・登録者が増えている職種:事業開発・営業・エンジニア・コンサル
・登録者が増えていない業種:管理部門
に分類できそうです。
前述したようにVC・CVCからのスタートアップ投資は旺盛で、特にシリーズB/C以降の拡大フェーズへの投資が中心です。よって、事業拡大やプロダクト開発など攻めのビジネスサイド部門での採用は積極的です。
他方、管理部門の採用は消極的なこともあり、人事・総務・業務オペレーション・財務経理といった部門の方々には転職にやや消極的な傾向が見られます。
しかし、管理部門の採用には以下のような傾向があります。
・景気と連動しがち
・ビジネスサイドの採用が収束すると管理部門の採用が始まる
ワクチン接種などポジティブなニュースが出てくると、管理部門・コストセンターの採用が始まる可能性があると思います。そう遠くない春を待ちましょう。
3. 2021年コロナ禍でのスタートアップ転職活動のポイント
2021年、これからスタートアップ転職で留意すべきことをお伝えします。残念ながらアマテラス経由でコロナ期に転職し、1年以内という短期間で退職に至ったこともありました。そこからの教訓が皆様にとって転ばぬ先の杖になればと思います。
3-1. まずはオンライン面談を活用する
スタートアップ企業は上場企業とは異なり、詳細情報を公開していません。ですので、関心があるスタートアップ企業には、カジュアル面談などで企業やポジションの詳細情報を聞くことが肝要です。
他方、カジュアル面談は正式な選考面接ではないため企業にとっては手間であったり、現職のある転職希望者にとってもその為の時間調整が難しいといったことがありました。
しかし、Web会議ツールによるオンライン面談が普及し、カジュアル面談のハードルが転職者・企業の双方にとって低くなっています。
また、買い手市場になる中で、応募から転職活動を成功させる方も増えています。
「関心ある企業があるものの、自ら動けていない…」という方は、是非オンラインでのカジュアル面談を申し込んでみることをお勧め致します。
3-2. オンライン面談だけで内定承諾しない。必ずオフィスに行き、社長・同僚候補と顔を合わせる。
コロナ期間中に転職から短期間離職した事例で最も多かったのが、入社まで一度もオフィスに行くことなく、オンライン面談だけという方です。
私たちはコミュニティの中で能力を発揮する人間です。入社してから「こんなはずではなかった」となることがないよう、「この人達・この場所で働きたいのか」という納得感(第六感)を持てるまで、妥協することなく転職活動をして欲しいと思います。
最終的な意思決定をする際には、実際にオフィスに赴き、ソーシャルディスタンスをとった上で対面での面接をお勧めしています。
3-3. スタートアップは基本的には即戦力採用と心得る。成果を出せる業界・職種・企業ステージを選ぼう。
スタートアップではリモートワークが一般化し、中途採用では即戦力採用の傾向が強まっています。手取り足取り教えてくれる環境ではないため、これまでの経験・スキルが活かせない会社に入るのは危険です。入社した会社で3か月以内に成果を出せるかどうかを入社前に見極めることが重要です。
いくつか事例を紹介します。
【事例1:スタートアップで活躍してきた猛者でもこの時期の転職は辛い】
ITベンチャーの事業責任者として2回上場を経験し、実績は申し分のないCさんは、気鋭のスタートアップへの転職を希望し、アマテラスに相談に来られました。有名なスタートアップコンテストで優勝するなど一気に知名度が上がったAI関連スタートアップのCEOに紹介したところ、「そこまでの実績があるなら」とCさんのためにカスタマーサクセス立ち上げというポジションを創り、その責任者として採用しました。
一回目の緊急事態宣言と入社タイミングが重なり、入社初日に3か月後に期待される成果(カスタマーサクセス組織立上げと業績目標)を伝えられた上でフルリモートの在宅勤務が開始。フルリモートは未経験だったCさんはどうしてよいかわからず戸惑ってしまいました。
アマテラスも全力でフォローをし、Cさんの人脈やスキルをフル活動し見事成果を出すことが出来ました。
しかし、スタートアップ界ではそれなりに名が通った猛者のCさんですら、「いきなりリモートワークで成果をコミットして動き出すのは精神的に辛かった」と漏らしていました。
【事例2:高学歴・MBAでもスタートアップ即戦力ではないためミスマッチ】
〔Yさんの場合〕
高学歴で有名企業に就職し、MBA留学し、高い意識を持ち経営幹部としての活躍を望むYさん。
しかし、コロナ期に未経験ながらスタートアップCOOとして転職したことが状況を難しくしました。MBAで得た知識への自信から高い報酬と役職を要求したため、最初から結果を出すことを期待されました。
ところが、スタートアップでは営業先で社名を出しても相手にされず、これまでのスタイルでは結果が出ません。他の社員達に相談しても高い役職と給料を得ていることは周知の事実でお手並み拝見というスタンスでサポートを受けられず…。徐々に経営陣からのプレッシャーも増加し、退職へ。
〔Kさんの場合〕
新卒で官僚になり、その後MBAを取得。社会課題解決に関わるスタートアップで国に貢献したいと志を持つKさん。コンサル・大企業から多くのオファーがあったが、選んだのは社長直下で働ける小さなスタートアップでした。経営メンバーとして参画したものの、できない理由を論理的に説明するばかりで、事業では成果が出せず社内で「評論家」と言われるようになる。奮起に期待し、社長自ら厳しめの評価をKさんに伝えると逆ギレ。社長、社員と口をきくことがなくなり孤立し退社へ。
上記2ケースが起こった原因は複数あると思いますが、
・求められるスキル・経験とのミスマッチ
・プライドを捨てきれなかった
という2点が大きいと思います。
コロナ期はリモートワークで周囲の十分なサポートが受けづらい中で、即戦力としての成果を求められます。企業フェーズ毎に求められるスキル・経験が異なりますので、下図に照らして転職先の企業フェーズを選びましょう。これまでの経験・スキルを活かして一定の習得を経れば戦力化できるようなポジションを選んで欲しいと思います。
3-4. 副業・フリーランスなど台頭でライバル増加と心得る
WITHコロナのスタートアップ就職戦線で大きな変化の1つは副業・業務委託・フリーランス人材の台頭です。
副業転職サービスを展開するYOUTRSUTのリサーチによれば、コロナ禍以降ビジネスパーソンの副業意欲が増加しており、その副業目的の1位は「知見や視野の拡大」とキャリア重視の傾向があると言います。
実際にアマテラスサイト内でのマッチングでも副業・業務委託での案件が増加しており、主に採用されている職種は、①ITエンジニア、②マーケター、③デザイナー、④採用人事、⑤広報の5つです。
これらの職種は成果が見えやすく、リモートワーク適性があり、フルタイムである必要もないという特徴があり、コロナ時代の働き方と相性が良いです。
2021年は副業・フリーランスの採用がさらに加速されることが予想されますが、その結果、採用企業のスキル重視・即戦力採用の傾向が強まると思われます。
新卒以外でのポテンシャル採用については門戸がより狭まり、大企業でメンバーシップ型雇用に慣れている方の転職ハードルが上がることは留意したほうがよいでしょう。
4. まとめ「波に乗るためには、沖に出ていなければならない」
「2020年はコロナで個人のキャリア観が変わったタイミング」
私がこの1年間のスタートアップ転職希望者を見てきて感じたことです。
ジョブ型への移行やスキルアップの重要性について以前から囁かれてきましたが、どこか他人事のようでした。それがコロナ禍で否応なくリモートワークへ移行し、現実のものになりました。
社会はあるべき方向に進んでいますが、2020年のように時代が突然ワープすることを私たちは知りました。
「波に乗るためには、沖に出ていなければならない」という言葉が私たちの身に沁みます。
自分を変えようと考えるのであれば、まず沖に出よう。
そこではどんな波が来るかわかりません。
砂浜に戻されるかもしれないし、海底に押し込められるかもしれない。あるいは、望むところへ波が連れて行ってくれるかもしれない。
少なくとも、砂浜から眺めているだけでは遠くにはいけません。
コラムで平時と戦時という言葉を使いましたが、今は「戦時」です。
社会が混沌としているので自分を変えたい、と思っているあなたには、このどさくさに紛れて何かにチャレンジするには良いタイミングです。
このコラムを読んだ方のキャリア観に、少しでも変化が生じたなら嬉しく思います。