国外ではGAFAが大規模な人員削減をする中、再就職先としてグリーンテック企業が注目されています。グリーンテックとは、環境負荷の低減や、持続可能性の向上を目的とした技術を指します。
2027年には、グリーンテックの市場規模が483億6000万ドル(約5兆2712億円)に達すると予測されています。
この動きに日本も追従していくであろうと思われ、グリーンテックの存在感は今後日本でも増していくでしょう。
今回はグリーンテック領域のベンチャー/スタートアップ企業を14社をご紹介いたします。
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WOTA株式会社
水問題を構造からとらえ、解決に挑む。
WOTAは各家庭において、水を使ったその場で排水を再生し循環利用することを可能にする「小規模分散型水循環システム」を開発しているベンチャー企業です。その技術を応用し、ポータブル水再生プラント「WOTA BOX」と、水循環型手洗いスタンド「WOSH」を展開しています。
小規模分散型水循環システムは、独自のセンサー及びAIの技術によって水処理の自律制御を実現しています。
WOTA BOXは使った水の98%を再生し、循環することで再利用を可能にします。現在、災害時のインフラやイベント会場での簡易シャワーとして利用されています。
代表取締役兼CEOの前田瑶介氏は、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻(修士課程)を修了した後、WOTAを創業しました。大学院では住宅設備(給排水衛生設備)の研究や、デジタルアート等のセンサー開発・制御開発に従事しました。
Spiber株式会社
持続可能なウェルビーイングへの貢献
Spiberは、世界初の人工合成による構造タンパク質素材「Brewed Protein(ブリュード・プロテイン)」を開発している慶應義塾大学発のベンチャー企業です。
Brewed Proteinは、植物由来の糖類からクモの糸のようなタンパク質繊維を生産します。生産過程で石油由来の原料を必要とせず、従来の繊維よりも地球環境の保全に役立つことが特徴です。
現在はアパレル・ファッション業界向けに素材の提供をしています。
取締役兼代表執行役の関山和秀氏は、慶應義塾大学先端生命科学研究所にて研究活動に携わり、クモ糸人工合成の研究を開始。研究を事業化するため大学院に進学し、博士課程在学中の2007年にスパイバー株式会社を設立しました。
株式会社アルガルバイオ
藻類の研究開発で、人々と地球の未来に貢献する
株式会社アルガルバイオは、藻類を研究し、幅広い実用化を目指す東京大学発のベンチャー企業です。
藻類を活用した技術は、健康・美容領域の素材開発、食料領域の大量生産とコストダウンを実現する技術開発、石油・ガスに代わるエネルギー資源としてのバイオエネルギーの開発と、多岐にわたっています。
2022年には、広島県大崎上島の研究拠点にて「微細藻類によるCO2固定化と有用化学品生産に関する研究開発」(NEDO事業)の展開も始めました。
創設者で現在取締役CSOの竹下毅氏は、東京大学特任研究員を経て、2018年に東京大学における20年以上の研究成果を基にアルガルバイオを創業しました。
株式会社JEPLAN(旧:日本環境設計株式会社)
あらゆるものを循環させる
JEPLAN(旧:日本環境設計)は「あらゆるものを循環させる」というビジョンの実現に向けて、リサイクル技術の「BRING Technology™」の開発、リサイクルプロジェクトの「BRING™」などを運営しているベンチャー企業です。
BRING Technology™は、使用済のポリエステル繊維やペットボトルを分子レベルまで分解して不純物を除去し、純度の高い原料を抽出して、再び原料にリサイクルする技術です。これにより従来のリサイクル手法とは異なり、リサイクルを何度繰り返しても品質が劣化することなく、資源の完全循環を実現します。
BRING™は、不要になった衣類を回収して、上記の技術を用いてリサイクルするプロジェクトです。BRING™の参加企業の店頭やネットショップなどで衣類を回収し、まだ使える物はリユースし、また、ポリエステル 100%繊維のものは自社工場で原料にリサイクルします。もう使えなくなった物は素材に応じた形でリサイクルしています。
ポリエステルの再生原料を使用したオリジナルの製品も販売し、「服から服をつくる®」循環を実現しています。
創業者で現在取締役会長の岩元美智彦氏は、容器包装リサイクル法の制定を機に、繊維商社にて繊維リサイクル事業に従事した後、2007年にJEPLAN(旧:日本環境設計)を設立。
共同創業者で現在代表取締役社長の髙尾正樹氏は、東京工業大学工学部(化学工学)卒業後、東京大学大学院にて技術経営を専攻。綿素材の古着を糖化してバイオエタノールにリサイクルする技術開発をはじめ、JEPLANの繊維やペットボトルのリサイクル事業の技術開発に携わりました。
株式会社EVERSTEEL
鉄の未来を切り拓く
EVERSTEELは、独自の画像解析アルゴリズムを応用し、等級判定や異物検出を自動で行う「鉄スクラップ解析アプリケーション」を開発・提供しているベンチャー企業です。
鉄スクラップ解析アプリケーションによって、検収作業の効率化や省人化、希釈コストの削減や密閉・爆発物による危険防止を実現します。現在国内鉄鋼メーカー6社との取引を開始しています。
創業者の田島圭二郎氏は、東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻修了。2019年スイス連邦工科大学での研究開発を起点に、鉄スクラップに特化した画像認識システムを構築しました。
メトロウェザー株式会社
風を制し、空の安全を守る
メトロウェザーは、赤外線レーザーを用いて、大気中の微粒子の微細な動きから、数十km先の風向・風速を測定する超高分解能ドップラー・ライダーを開発する京都大学発ベンチャーです。
ドップラー・ライダーによって、ドローンの運行に必要不可欠となるリアルタイムでの高精細風況情報の提供を実現します。また、ドローン関連だけでなく都市防災・風力発電・航空・海運・鉄道領域等幅広い分野の市場参入を計画しています。
代表取締役CEO古本淳一氏は2019年まで京都大学生存圏研究所で助教として研究・教育活動を行いながら2015年にメトロウェザーを創業しました。
株式会社チャレナジー
風力発電にイノベーションを起こし、 全人類に安心安全なエネルギーを供給する
株式会社チャレナジーは、プロペラのない風力発電機「垂直軸型マグナス式風力発電機」を開発するベンチャー企業です。
垂直軸型マグナス式風力発電機は、マグナス式と垂直軸を組み合わせた技術により、台風などの強風下でも、安定した発電を可能にします。これにより、これまで風力発電のできなかった地域に再生可能エネルギーをもたらします。具体的には、離島や遠隔地での電力供給や、非常用電源としてその活用が期待されています。
代表取締役CEOの清水敦史氏は、東京大学大学院修士課程を修了後、株式会社キーエンスにてFA機器の研究開発に従事。 東日本大震災をきっかけとして独力で「垂直軸型マグナス式風力発電機」を発明し、2014年にチャレナジーを創業しました。
株式会社パワーエックス
自然エネルギーの爆発的普及を実現する。
株式会社パワーエックスは、超急速EV充電用蓄電池の「PowerX Hypercharger」をはじめとする、大型蓄電池を製造・販売などを行っているベンチャー企業です。
PowerX Hyperchargerは、標準的なEV電池が100kWほどの出力の一方、最大240kWで出力できる超急速EV電池です。
現在は、再生可能エネルギー100%の超急速EV充電ステーションの展開や、予定年間生産量が5GWhとなる日本最大級の蓄電池工場の展開を予定しています。
取締役兼代表執行役社長CEOの伊藤正裕氏は、2000年株式会社ヤッパを創業。その後、M&Aにより株式会社ZOZOに入り、ZOZOテクノロジーズの代表取締役CEOを経て、株式会社ZOZOの取締役兼COOに就任。2021年には株式会社パワーエックスを設立しました。
京都フュージョニアリング株式会社
究極的なエネルギーソリューション「核融合」によって地球の課題を解決し、人類に新たな未来をもたらす。
京都フュージョニアリング株式会社は、核融合エネルギーの実現を目指す京都大学発のベンチャー企業です。
核融合エネルギーは二酸化炭素を排出しないだけでなく、海水から燃料を取り出せるため、事実上無尽蔵の燃料が地上に存在します。
京都フュージョニアリングは2023年2月にアメリカで子会社を設立するなど、国際的な市場に向けて研究を進めています。
代表取締役の長尾昂氏は、Arthur D. Little Japanにて、新規事業などの戦略コンサルティングに従事。エネルギースタートアップのエナリスにて、マザーズ上場、資本業務提携、AIを活用したR&D等などを担当。その後、京都フュージョニアリングを2019年に設立しました。
株式会社Helical Fusion
人類は核融合で進化する
株式会社Helical Fusionは、ヘリカル型核融合炉の実現を目指すベンチャー企業です。
ヘリカル型核融合炉は、核融合に必要なプラズマを安定して閉じ込めることができ、エネルギーを一定に出力できることから、発電に適していることが特徴です。
代表の田口昂哉氏は、みずほ銀行、国際協力銀行(JBIC)、PwCアドバイザリー(M&A)、第一生命、スタートアップCOOなどを経て、Helical Fusionを創業しました。
共同創業者の宮澤順一氏は、豊富なプラズマ実験のバックグラウンドを持ち、高温超伝導、流体ダイバータ、カートリッジブランケット、機能性液体金属等の先進技術の開発に従事した後、Helical Fusionを創業しました。
株式会社EX-Fusion
核融合エネルギーでより良い未来を築く
株式会社EX-Fusionは、レーザー核融合商用炉の実現を目指す大阪大学初のベンチャー企業です。
EX-Fusionは、長年レーザー核融合を研究してきた大阪大学レーザー科学研究所や光産業創成大学院大学の研究者によって設立されました。レーザー核融合は、負荷変動に対応することができるため、既存のエネルギー源を置換できると予測されています。
創業者でCEOの松尾一輝氏は、大阪大学大学院博士後期課程理学研究科物理学専攻を修了し、博士を取得。大阪大学修了後はカリフォルニア大学サンディエゴ校のFarhat Beg教授の下で、核融合の研究に従事。2021年にEX-Fusionを設立しました。
共同創設者兼CTOの森芳孝氏は、九州大学大学院総合理工学府 先端エネルギー理工学専攻を終了後、 光産業創成大学院大学准教授に従事。2021年にEX-Fusionを設立しました。
booost technologies株式会社
次世代に誇れる未来を創造するTechnologyパートナー
booost technologiesは脱炭素を推進するプラットフォーム「ENERGY X GREEN」などを運営しているベンチャー企業です。
ENERGY X GREENは、企業が排出するCO2の量を可視化・管理することで、脱炭素の計画策定を容易にし、カーボンニュートラルの実現を加速させます。
現在は上場企業を中心に導入されており、各業界の脱炭素を推進しています。
代表取締役の青井宏憲氏は、東証一部コンサルティング会社でスマートエネルギービジネスチームのリーダーを担った後、2015年にbooost technologies株式会社を設立しました。
シェルパ・アンド・カンパニー株式会社
ESG・サステナビリティ経営をテクノロジーの力で加速する
シェルパ・アンド・カンパニーは、ESG情報開示を支援するプラットフォーム「SmartESG」の開発をしているベンチャー企業です。
SmartESGは、企業のESG情報をクラウド上に集約することで、複雑なESG管理業務における様々な課題を解決します。
多くの企業でサステナビリティ部門が創設され、ESG経営へのシフトが進む中、SmartESGはそのシフトを加速させます。
代表取締役CEOの杉本淳氏は、慶応義塾大学卒業後、証券会社の投資銀行部門で国内外の大型M&A・資金調達案件や、IR・コーポレートガバナンス周りでのアドバイザリー業務に従事。2019年9月にシェルパ・アンド・カンパニーを創業しました。
株式会社ゼロボード
CO2が見えると、クリーンな未来が見えてくる。
株式会社ゼロボードは、CO2排出量の算出・可視化をするクラウドサービス「zeroboard(ゼロボード)」を開発・提供しているベンチャー企業です。
zeroboardは、企業活動やそのサプライチェーン由来のGHG(温室効果ガス)排出量を、国際基準であるGHGプロトコルに基づいて算定・可視化できるクラウドサービスです。
ESGや脱炭素に対する関心は高まっているため、GHG排出量はエイスク管理上の重要指標となってきている中、zeroboardは多彩な削減を支援します。
代表取締役の渡慶次道隆氏は、三井物産にてエネルギー x ICT関連の事業投資・新規事業の立ち上げに従事。その後A.L.I.にてエネルギー関連事業を組成。2021年に株式会社ゼロボードを創設しました。
おわりに
地球環境問題解決の必要性が高まる中、再生可能エネルギー、水処理、新たな資源の発見や資源のリサイクル、そして、それを可能とする様々な技術など広い分野にわたるグリーンテックは、今後存在感を増していくことでしょう。
こうしたグリーンテック企業では高度なIT人材や博士人材が求められており、地球環境を改善していくことに関心がある人々にとっては、新たな選択となるかもしれません。