- 目次 -
- 1 大企業からベンチャーに転職すると、最初の年収はダウンすると覚悟すべき、良くて現状維持。お金・役職は後から付いてくる。
- 2 Seed/Earlyフェーズでは気持ち程度の報酬 + ストックオプション
- 3 Middleフェーズで年収500~700万円+ストックオプション
- 4 Laterフェーズで年収は600~1,000万円+ストックオプション
- 5 ストックオプション目当てでベンチャーに転職するのは良いのか?
- 6 金銭リターン目当てのベンチャー転職ではモチベーションが続かない。
- 7 ストックオプションはどのようにもらうのか?
- 8 ベンチャーに参画して下がった年収は上がるのか?
- 9 150人の部下を率いた事業部長もベンチャーでは一兵卒から参画する。
- 10 ベンチャーであれば取締役以上のポジションでないと、というのは大きな間違い。
- 11 一億円出しても残ってほしいと思われる人材になればよい。
- 12 コンサル出身者に多いベンチャー転職勘違い。
- 13 経営者の立場で考えればベンチャー経験のない人の採用はリスク。
- 14 “何のために転職するのか?” を自問自答する。
大企業からベンチャーに転職すると、最初の年収はダウンすると覚悟すべき、良くて現状維持。お金・役職は後から付いてくる。
ベンチャーでの給料水準がわからないのですがどのくらいを想定すればよいのでしょうか? という質問をよくいただきます。
毎月30-50社の日本のベンチャー/スタートアップCEOと打ち合わせをしている私の肌感覚でいえば、一般的にはおおよそ以下のような給与水準です。20代後半~30代半ばで将来の幹部候補の中途採用人材という前提です。
Seed/Earlyフェーズでは気持ち程度の報酬 + ストックオプション
起業から3.4年以内くらいのいわゆるシード、アーリーフェーズでは最低限の生活ができる程度の収入か、せいぜい600万円程度+ストックオプションです。
“魔の川”を乗り越えるフェーズとも言われます。“魔の川”とは、アイデア(シーズ)をサービス、プロダクトにする間に存在するギャップ(障壁)です。
経営者はほとんど収入ゼロで生活を切り詰めて事業立ち上げに奔走している状況です。 サービス/プロダクトを構築中のため、売上もほぼゼロですのでコストをいかにゼロに近づけて潰さないことが重要です。自己犠牲の精神をもって仕事に取り組める方でなければ魔の川は越えられないでしょう。
Middleフェーズで年収500~700万円+ストックオプション
事業立ち上げに目途が立ち、事業を軌道に乗せ始めるミドルステージ(創業から3~5年程度、社員数は20~50人程度)では年収500~700万円+ストックオプションが一般的です。
“死の谷(デスバレー)”を乗り越えていくフェーズとも言われています。“死の谷”とは、サービスやプロダクトを事業として収益化させていくまでのギャップ(障壁)です。
売上が立ち始めるが勝ちパターンが見えておらず事業は赤字、給与は低く抑えられたままのことが多いです。ベンチャーキャピタルからの投資を受けることが多いのはこのフェーズ(いわゆるシリーズA)で、資金調達に成功すれば給与水準が上昇することがあります。
Laterフェーズで年収は600~1,000万円+ストックオプション
“死の谷”を乗り越えて、次はレーターフェーズ(創業から6年以降程度、社員数は50人~)となります。事業が軌道に乗り、収益モデルが検証されて継続的に利益が出ているようなフェーズです。給与水準は600万円以上になることが多く1,000万円近い水準になることもあります。
ストックオプション付与数は少な目になることが多いのですがその理由としてはストックオプション発行枠には上限があり、その大部分を既に社員に割り振ってしまっているためです。ストックオプション枠が余っていればもらえるチャンスがあるという状況です。
利益が出ている割りには年収が思った以上に上がらないことがあるのですが、それは上場に向け、利益を出していくことが求められるためその分給与が抑えられがちです。
このようにベンチャーではどのフェーズでも高い給与をだしづらい構造になっているのが現状です。シード、アーリーフェーズでは売上がないためコストを抑えなければならず、ミドルフェーズでは十分な収益がない中で事業に投資を行い、レーターフェーズでは上場に向けて利益を出すために給与を抑えがちになります。
金銭的に本当に大きなリターン(数千万円、億単位)を得られるのは、ストックオプションや株式を持っていて上場や会社売却(M&A)によるEXITで得られるキャピタルゲインになります。
結果として日本のスタートアップ転職における給与事情は実際のところ、
・入社時の年収は下がることが多い、良くて現状維持。
・本当の金銭的リターンは上場、M&A(会社売却によるEXIT)によるキャピタルゲインで入社後3~5年後。
というところです。上記を踏まえベンチャーに参画される際の給与・待遇についての考え方を詳細に述べていきたいと思います。
ストックオプション目当てでベンチャーに転職するのは良いのか?
“ベンチャーに参画して、ストックオプション、エクイティ(株式)をもらったら億万長者になれますか?”と聞いてくる方がいます。一攫千金の夢を描くことは良いと思うのですが、金銭リターンを最優先としたベンチャー参画は辞めたほうが良いというのが私の感覚です。
日本では起業して10年存続する確率だけでも5%、20年存続するのは0.4%(国税庁データ)、実際にEXITに成功する確率は宝くじレベルです。私は“ストックオプションは宝くじのようなもので当たらないことを前提として、当たればラッキーくらいに考えた方がよいですよ”、と伝えています。
金銭リターン目当てのベンチャー転職ではモチベーションが続かない。
ベンチャーを探す際に“事業内容にはこだわりません、IPOできそうな会社を紹介してください。”という方がけっこういるのですが、そのような転職であれば少し考え直す必要があると思います。入社した後にIPOが遠のいたらあなたのモチベーションは維持できますか?
数年以内にIPOすると豪語する経営者はゴマンといますが(いうのはタダですし、起業家は大きなことを言うくらいがちょうどいい)、実際にその通りになる確率は先述した通りとても低いのが現実。金銭目当てで人のモチベーションが続くのはせいぜい3年程度だと思いますが入社して3年以内で大金を手にできる確率は低いのも現実です。
私はこれまで数万のスタートアップ/ベンチャーを見てきましたが起業時に考えた事業計画のままで上場までたどり着いた会社を1社も見たことがありませんしIPOの予定もほとんど計画通りにいきません。
そういう状況下で問題になるのは“あなたのモチベーション”です。
金銭リターンを目的としてベンチャーに参画してもモチベーション維持に限界があり、せいぜい我慢できるのは3年程度でしょう。
ベンチャーに参画すると基本的には悪いニュースから先に入ってきます。最速1年後にIPOすると言われて入社したものの、入社してみると計画通りに事業が進まない、ビジネスモデルに限界が来た、異業種から競合が参入してきた、、などなど。入社前に聞いていたバラ色の成長ストーリーはどこへやら。億万長者になる夢はみるみる遠のいていきます。そしてたいていはIPOの延期などネガティブな噂を聞くことになります。金銭リターンが最大の目的で入社した人にとってはそのような話を聞くたびにモチベーションの維持が難しくなります。
仕事のパフォーマンスは徐々に低下し、経営陣に対して不信感が募り、経営との距離感が遠のいていくことになります。
しかし、ベンチャーではうまくいかないことが当たり前なのです。
では困難にぶつかってもモチベーションを維持できるための最大のポイントは何かというと、“誰と働くのか”ということだと私は思っています。辛くてもこの人のためなら頑張れる、と思ったことは誰しもあるのではないでしょうか。ベンチャーであればそれは経営者にあたります。
会社選びの際にIPOできそうかという判断軸よりも、ともに情熱を燃やすことができる経営者や仲間がいる会社かどうかを考えることが大事だと思います。そのようにして入った会社では困難もあなたの成長の糧と捉えることができるでしょう。そして面白いことに、諦めずに情熱を燃やし続けられる人のもとにIPOの神様はやってきて金銭的リターンがもたらされていると思います。
ストックオプションはどのようにもらうのか?
ストックオプションの定義は“所属する会社から自社株式を購入できる権利”ですので、オファーレター(内定通知書)に権利行使の条件が提示されるのが一般的です。
例えば以下のような記載です。
・付与ストックオプション:600株相当、総発行株式の1%(現時点)
・行使価格:500円
・行使タイミング:3年勤務後、1/3を行使可能。その後1年ごとに1/3を行使できる。
・その他条件:会社に在籍している期間でなければ行使できないものとする。
この条件では、その会社に3年勤務したのちに10万円を支払うことで(行使価格500円×200株分)、200株相当を得ることができます。そして、その時点で株式が上場していて株価が1,000円であればキャピタルゲインは一株あたり500円です(そこから課税されますが)。それから1年後にさらに200株、その翌年には残りの200株を得られる権利があります。
会社によっては、IPO時の予想キャピタルゲイン額までオファーレターに記載するところもあります。5000万円相当、など。
一方で、オファーレターにはストックオプションを付与する、という記載のみがあり、詳細は別途書面にて伝えるということも多いです。
というのはストックオプション付与数は経営者の一存で決められるものではなくVCなど既存株主の利害とも関わることですので、資本政策をもとに既存株主と相談のうえ決められるためです。
まだ入社前から必死にストックオプションの取り分を交渉をする人がいますが、この行動が内定取り消しに繋がることが多いのも事実ですので注意してください。ストックオプションはあなたより先にリスクを取って参画したメンバーが給与の代わりにもらってきたものです。まだ何も貢献していないわけですので、ストックオプションという宝くじを付与してくれる経営陣、既存メンバーに感謝できるくらいのマインドが必要だと思います。
実際のところストックオプションは入社時だけではなく、入社後にも発行されるチャンスがあります。給与をあまり出せないベンチャーでは活躍してくれた社員には給与ではなくストックオプションを発行することも少なくありません。ですので、何も貢献していない入社前段階でストックオプションの交渉をゴリゴリとしてネガティブな印象を持たれるよりは入社後に評価されていただく方が気持ちよいものです。
ベンチャーに参画して下がった年収は上がるのか?
実際にアマテラスを通じてスタートアップ/ベンチャーに転職している人の多くは最初は年収が下がるものの2-3年後には元の給与水準以上に上昇しています。
《功には禄を、能には職を》という言葉がありますがベンチャーでは収益性が低い状況のことが多いのですがあなたの貢献で会社の利益を創出し、事業拡大に寄与すればお金もポジションも後から付いてくるものです。
ベンチャーに転じて金銭リターンを得ている人達はやはり“実力者”というのが私の感覚です。フェアな評価をする経営者のもとで成果を出せば当然ですがリターンは帰ってきています。その人たちに共通するのは、
経営者が掲げるビジョンに共感して参画している。
入社時の給与にこだわっていない。
ということがあると思います。
“何のための転職か?”、“何のためにこのベンチャーで働いているのか?”ということが明確になっているため、様々な困難や環境変化をポジティブに捉え、あらゆることを自身の成長の機会と捉えなおして克服していきます。その結果、経営者の信頼を得て、幹部ポジションになるのも早いです。
またベンチャーで活躍する人が入社時の給与にこだわらないのは、自分に自信がある証拠です。まだ活躍もしていない人が、収益の低い企業からお金をたくさんもらおうとする態度は将来の経営幹部人材として正しい行動でしょうか?最初は年収が下がっても必ず結果を出して、会社にとって不可欠な人材になるという想いが大事だと私は考えます。日本的かもしれませんが、男は黙って、という大和魂ですね。
150人の部下を率いた事業部長もベンチャーでは一兵卒から参画する。
1つ事例をお話します。
10人程度のある教育ベンチャーに転職したHさんは、もともとは大手人材会社で150人の部下を持つ事業部長でしたが、年収は約半分の500万円、ストックオプション無し、役職無し、一兵卒からスタートという条件をすんなり受け入れて入社しました。彼は入社前にその会社の財務情報などを調べた結果、ほとんど儲かっていないことを理解していたので目先の待遇については一切目をつむりました。オファーされた金額を見て、彼が最初にしたことは奥さんに当面は生活が苦しくなることを説明し、親から借金をして、住宅ローンも組み替えました。そしてそれを一切会社には言わずに仕事に取り組みました。その会社はわずか3年程度で、彼の大きな貢献で大きな成長を遂げ、海外進出も果たしました。彼はその会社の営業取締役としてNo2の立場になり、年収は元の水準以上になり、ストックオプションも発行され、数十名の部下を率いています。
彼のこの自己犠牲の話はどこからともなく他の社員に伝わり、彼にはより人望が集まっています。この例は極端かもしれませんが、自分が幹部候補人材としてスタートアップに参画する覚悟があるのであれば、このようにするのが理想だと思います。
結局、実力のある人はポジションも待遇もあるべきところに落ち着いていくように思います。
もちろん、すでに同業界で実績がある、という即戦力が約束されているような方は三顧の礼をもって迎えられる助っ人外人ですから最初から高待遇でよいと思います。
ベンチャーであれば取締役以上のポジションでないと、というのは大きな間違い。
大企業やコンサルティングファームの若手によくある話ですが、ベンチャーに行くのであればそれなりの役職がほしい、取締役のポジションがほしいという要望がありますがこれは筋違いです。
ここでも“功には禄を、能には職を。”という人事の基本原則を思い出してください。
職(ポジション)を得るには、それに応じた能力を発揮し、周囲に認められた時です。
単に大企業にいた人がスケールの小さな会社に来ると役職があがるというのは理屈が通りません。ベンチャーは大企業と違い社員が少なくポストに空きがあることが多いため社長が気前よくポストを用意することもありますが、既存社員からすると何も能力を発揮していない人が同等、もしくは上のポジションで入ってくるのは心地良くありません。そのような人への配慮も含めて、
“一兵卒からで大丈夫です。責任あるポジションに就きたいですが、まずしっかり結果を出して周囲に評価されてからだと思っています。”
というのがあるべき姿だと思います。
一億円出しても残ってほしいと思われる人材になればよい。
ここまでのお話ですとベンチャーに行くと金銭的に夢がないように伝わってしまったかもしれませんがやはりベンチャーは夢があります。実力主義の世界ですので若くても能力を発揮すれば責任あるポジションに着けるチャンスがありますし、その成果に応じて大企業にはないようなスピーディで大胆な昇給があります。
報酬・ポジションについての多くの疑問は経営者の立場になって考えてみれば理解できます。
会社にとって不可欠な人材には高い報酬を出しても惜しくないものです。極端な話、一億円を出してもいてほしいと思われる人材になればよいのです。
あなたが起業間もない会社の経営者だとした場合、会社の利益が少ないことを理解して、薄給でも文句も言わず貢献してくれた社員にはまず何をするでしょうか?
役職を与え、仕事の権限を与えることだと思います。そして会社が成長し収益が出たタイミングで報酬を弾むでしょう。その人は“Deserved”,つまりそれだけの価値があるからです。
まだベンチャーではしっかりした人事評価システムが出来ていないこともありますが実力を発揮し、成果を出している自負があれば会社の評価制度の構築や中身に対してもモノを言えるはずですし、そのようにすべきでしょう。ベンチャーこそ優秀な人には留まってほしいので、より実力主義の評価制度になることが多いですし、その結果、大企業よりもフェアな状況で評価されると言ってよいでしょう。
年功序列による人事評価制度が残る大企業ではいまだに以下のような事実があります。
・必死に努力して、同期トップの成果を出したにも関わらず最も低パフォーマンスだった同期との年収の差が5万円でガッカリした。
・成果も出さずに一日中パソコンの掃除をして武勇伝を話している古参おじさんが自分の3倍近い年収をもらっていた。
ベンチャーでこのようなことをしていたら優秀な社員から順番に去っていき、その会社はすぐに潰れてしまうでしょう。
コンサル出身者に多いベンチャー転職勘違い。
一方で昨今のスタートアップブームの風潮に乗り、ベンチャー参画について誤った考えの方が出てきていることにも問題意識を感じています。警笛の意味も含めて指摘したいと思います。
数多くのいわゆるハイクラス人材の転職をサポートしてきましたが、事業会社を経験していないコンサル出身者の方に、起業家に対してリスペクトを欠き、Takerの塊のような方が多く見られます。実際の彼らの勘違いコメントです。
(すべてのコンサル出身者がそうと言っているわけではありませんので悪しからず)
“今、1500万円もらっていますが、それくらいの金額は必要です。あと、取締役のポジションで。”(29才 外資コンサル)
“これまで一流企業の経営陣を相手に仕事をしてきたので、ベンチャーとの面接であれば社長以外とは話しません。”(28才 外資コンサル)
“自分が入れば、会社の売上を数倍にできるので、既存の役員よりもらってもよいと思うのですが。”(31才 日系コンサル)
“メガベンチャーにサウンディングしたところ、1500万円でオファーをもらえそうなので、Apple to Apple で判断して自分の年収を評価してもらいたい”(31才 外資コンサル)
まっとうにビジネスをしたことがある方からするともはやこのような話は失笑レベルなのですが。。
残念ながらこのような方は“経営センスが無い方”と判断されます。
プロサッカー選手になるためにはサッカー選手として実績を出す必要があるように、“経営者”になるには実際に“経営”をして実績を出していく必要があります。経営者の近くでコンサルタントをしていた人は“経営”経験があるとは認識されません。背負っているものが全然違うのです。またコンサルとベンチャー/スタートアップの給与水準の違いを理解できていない時点で経営メンバーとしては失格です。取締役ならば、まず会社に利益をもたらし、社員に給料を支払い、最後に残った利益から報酬を得るという考えが必要と考えます。既存メンバーの事情も考えることなく自分の利益を追求する姿勢で人は付いてくるでしょうか?
また、リスクを取って会社を存続させてきた創業初期メンバーへの尊敬の気持ちがなければ一緒に仕事をしていくのは難しいでしょう。会社はあなたの能力を誇示する場ではなく、貢献して成果を出す場所です。
カタカナ英語を連発するコンサル出身者は相手の気持ちを考えるよりも自分の知識を誇示したいのでしょうが、それで尊敬されるほど世の中甘くありません。
“ブランドのある会社にいたので、機会に恵まれ、身の丈以上の給料をもらっていましたが、ベンチャーでは実績がないですし既存メンバーにも配慮して一兵卒からしっかり結果を出していきたいと思います。年収は下がりますが経営経験を買うという気持ちです。成果が出た暁には相応の評価をいただければと思います。”
と言えることが理想ではないでしょうか。
それでも本当に能力に自信があり、会社の売上を数倍にできると考えていて、高い報酬と役職が欲しいのであれば、わざわざベンチャーに参画するのではなく“起業”をお勧めします。
経営者の立場で考えればベンチャー経験のない人の採用はリスク。
特に大企業やコンサルにいた人が“ベンチャーに参画してリスクを取るんだから相応の報酬や役職が欲しい”と主張されることがあります。しかし、経営者の立場で考えると、ベンチャー経験のない方を採用するのはリスクと感じています。一流企業や有名コンサルティングファームでそれなりに活躍してきたとしてもベンチャーでは実績をだせる保証は何もないからです。企業のブランドで営業してきた人がベンチャーで同じやり方では売れません。むしろ同じような境遇のベンチャーで実績を出してきた方を採用するほうが安心です。
有名コンサルファームでマネジャーを務めていたKさんは20人程度のスタートアップに転職して、綺麗な資料作りに腐心し、それを社内でプレゼンすることで悦に入っていました。しかし、一般的なスタートアップでは綺麗な資料作りに時間を割くよりも、雑な資料でよいのでお客さんと関係構築をしてくることのほうが評価されますよね。結局この人は試用期間でクビになりました。動く前に考えるべき、というのがこの方の考えでしたが、ここの社長はたたき上げの経営者。計画通りにいくことのほうが少ない現場では“動きながら考えろ”、“とにかく打席にたくさん立て”、という考えです。
経営者の気持ちになりきることは難しいですがあなたが将来の経営幹部候補人材として参画したいのであれば経営者になりきって考える努力は必要です。
“何のために転職するのか?” を自問自答する。
転職というのは人生において大きな決断ですので悩むのは当然です。
転職活動の道中で迷うたびに “何のために転職するのか?” ということを何度も自問自答してください。
今の安定した境遇を脱してより成長したい。
経営経験を積みたい。
0⇒1にチャレンジしたい。
多くの方がそんな思いをもってベンチャー転職活動を始めます。
しかし人材エージェントに勧められるままに多くの会社を受けている間に、気づけば高い報酬を出してくれる安定した会社を選びそうになったり、最初に想定していた転職の目的が逸脱することはよくあります。私の仕事の多くは実はベンチャー転職希望者に絶えず“何のための転職ですか?”と問い続けることだったりします。
ベンチャー転職ではベストの選択というのはあまりありません。しかし、後悔のない選択はできます。納得いくまで自問自答を繰り返し、経営者と対話を続け、後悔の無い意思決定をしてほしいと思っています。
最後に、私がもっとも共感しているベンチャー人材募集のコピーを紹介します。
南極探検隊員募集
求む隊員。
至難の旅。
わずかな報酬。
極寒。
暗黒の日々。
絶えざる危険。
生還の保障はない。
成功の暁には名誉と賞賛を得る。
*探検家のアーネスト・シャクルトン卿が1914年にロンドンの新聞に出した求人広告。