女性の社会進出とともに働く妊婦が増えています。2022年設立の株式会社MamaWellは、ウェアラブルデバイスを用いて心拍数などのバイタルデータをリアルタイムで収集し、妊娠中の女性の健康状態をモニタリング。データをもとに健康維持できるよう専任の助産師が伴走サポートするサービスを行っています。
同社のビジョンは「女性がより健やかで快適に暮らせる社会を実現する」、ミッションは「女性の生涯における健康をエビデンスに基づいてサポートする」。妊娠・出産によって女性のキャリア形成が中断されない社会の実現を目指しています。
インタビューに応じてくださったのは、4人目のメンバーとして同社に加わった菅谷勇貴さん。副業にも力を入れている菅谷さんからは、つくばの魅力に加え、パラレルワークがもたらす価値やスタートアップらしい柔軟な働き方などについても聞くことがきました。
菅谷勇貴氏
新卒で大手メーカーに入社し8年勤めた後、留学・ワーホリを経て外国人採用サービスを手掛けるスタートアップに入社。執行役員として経営の面白さ・大変さを経験し、この頃から個人として復業も行う。2024年4月にMamaWellへ入社し、サービスまわり・営業・採用ロールを担う。
株式会社MamaWell
https://mamawell.jp/
- 設立
- 2022年08月
- 社員数
- 5名(役員2名含む)
≪MISSION≫
女性の生涯における健康をエビデンスに基づいてサポートする
≪事業分野≫
医療・ヘルスケア
≪事業内容≫
弊社は、「女性の生涯における健康をエビデンスに基づいてサポートする」をミッションとして、妊娠・育児期の女性を対象に、パーソナル助産師が伴走者として、利用者一人ひとりの状況に応じた適切な情報を提供し、身体づくりを中心とした継続サポートをオンラインで行っています。
- 目次 -
正社員としてフルタイムで働きながら複数の副業も行う
いま携わっている仕事について教えてください。
経営陣としてご夫婦2人がいて、私は2024年4月に2人目の正社員として加わりました。何でもやるフェーズではありますが主に私に求められているのは、助産師さんの統括を中心としたサービスの運用・質の改善、法人営業、採用まわりの業務です。
正社員としてフルタイムで働いていますが、副業もいくつかやっています。前職と妹が経営する会社の手伝いと、元同僚とチームで行っているサービスの3つで、自分一人での副業はキャパシティを見つつ整理しているところです。
立て続けに訪れた途上国で海外暮らしに興味が芽生えた
これまでのキャリアをお聞かせいただけますか?
新卒でカネボウに入社し、8年間勤めました。前半の3年間は現場の営業、いわゆるルートセールスをやり、後半5年は本社のマーケティング部門で営業戦略などを担当しました。正直、キャリアや転職についてはあまり考えていませんでした。
そんなとき、青年海外協力隊で活動する友人に会いにネパールに行き、村に宿泊させてもらったんです。それから1年も経たないうちに会社でスリランカに1週間ボランティアで行く機会がありました。偶然ですが、立て続けに2つの途上国に滞在したわけです。今まで自分が持っていた感覚や常識は日本でしか通用しないものだと感じ、価値観の違いに心を揺さぶられて、海外で暮らすことに興味を持ちました。
当時はワーホリという言葉すら知らず、28~29歳くらいのときに初めて、ワーキングホリデー制度を使えば30歳まで海外で働きながら長期滞在できると知りました。それで「1回海外に住んでみよう!」とカネボウを辞めたのが最初のキャリアチェンジです。
海外生活経て大企業からスタートアップへ 在留外国人をサポート
ワーホリで行った先はオーストラリア。今の妻と付き合っていて帰国したら結婚しようと話していたので、当初からそのまま現地に住み続けることは考えていませんでした。帰国後は、外国人の暮らしや仕事をサポ―とする事業を展開するGuidableという企業に入社しました。海外暮らしのきっかけをくれたのは途上国の人だったので、彼らをサポートしたいという気持ちがありました。
前職が大企業だったので、真逆のところで全然知らない環境を経験したいと思ってスタートアップ企業を選びました。カルチャーショックを受けて海外に興味を持ったように、常識や前提が壊されることを面白いと思う性格なので、同じような規模の会社に入っても面白くないだろうなと。当時は私が10人目くらいの正社員でした。
Guidableには3年ちょっと在籍しました。事業の立ち上げや組織づくりから携わり、最終的には執行役員として主力事業の事業責任者を務めました。
コロナ禍に仲間と始めた飲食店がパラレルワークの第一歩
パラレルキャリアについても伺いたいのですが、どんな経緯で副業を始めることになったのでしょうか。
ワーホリでオーストラリアにいたとき世の中はコロナ禍で、カネボウ時代に仲の良かった同僚2人も在宅勤務になりました。通勤などがなくなって元同僚たちにも時間に余裕が生まれ、「何かやりたい」と言い出して、間借り店舗で営むカレー屋を開きました。最初は遊び感覚でしたが、何度か出店して「3人でやるのは面白い!」となって、今度はしっかりビジネスとして立ち上げることにしたんです。たまたま全員静岡生まれということもあり、縁あって静岡の企業さんにコンサルみたいな形で入りました。その後Guidableでも働き始め、いつのまにか副業を持つ形になっていました。
やがて妹が起業してその事業も手伝うようになり、ミーティングの壁打ちなど自分が価値を提供できる分野が分かってきました。そして何より、「1つずつ順番に取り組むのではなく、同時に複数を並行して進めることに意味がある」という大きな気づきがありました。シナジーですね。副業が本業に活かされることもあり、自分の中で1本筋が立って、パラレルワークに目覚めた感じがありました。
「田舎で子ども育てたい」「TX(つくばエクスプレス)で交通の便も良い」とつくばに移住
帰国後にご結婚されたのですよね。どうしてつくば市に住むことになったのでしょうか?
妻も私もあまり都会に住みたくなくて、子育てもなるべく田舎でしたいと考えていました。当時は東京で働いていたので、都内に通いやすい神奈川、千葉、埼玉辺りを考えていましたが、途中でTXの存在に気づいたんです。妻の実家がある鉾田市にも近いし、TXを利用しよう!とTXの駅があるみどりのに引っ越しました。
まだ実感はないのですが、たくさんの人から教育環境の良さついて聞いています。つくば市は人口に対する研究者率が圧倒的に高いんですよね。地方に移住すると奥さんは子どもの教育環境を心配しますが、つくばには研究者が働ける場所としっかりした教育環境の両方があるので選ぶ人が多いそうです。教育レベルの高い人が多いので学校やカリキュラムもしっかりしてきて、その環境が教育意識の高い子育て世代を呼び込んで、さらに環境が整う。そういった好循環があるように思います。
子どもが生まれ、家族と過ごす時間をつくるために転職
MamaWellに転職された背景を教えてください。
きっかけは子どもができ、子育ての時間を確保したいと思ったからです。それに加え、在留外国人以外にも助けたい人や解決したい社会課題、やりたいビジネスがあり、全て実現するには?と考えたときに、個人事業主として独立することを視野に入れて仕事を探していました。そして子どものために市内の保育園について調べているとき、住んでいるつくば市がスタートアップに力を入れていることに気づき、つくば市のスタートアップ企業を重点的に探しました。
ただMamaWellには、その探し方とは全然違う視点からたどり着きました。転職活動中に、マイノリティの力になりたいという気持ちが自分の中に昔からあったことに気づいたんです。妻が妊娠・出産したときも、世の中はもう少し妊婦さんや小さい子を持つ親に優しくてもいいのではないかと思いました。それで、妊婦やママ向けのサービスを提供する会社がないか調べて見つけたのがMamaWellでした。妊婦さん向けのサービスを行うつくばのスタートアップ企業。自分にドンピシャだと思いました。
エビデンスに基づいたサポートというビジョンに共感
子どもが生まれたばかりの状況でスタートアップ企業に転職されたわけですが、不安はありませんでしたか?決め手となったMamaWellの魅力は何でしょうか。
就活で多くの企業と話す中で「独立しても十分にやっていける」と思えるようになっていたので、会社の規模は気になりませんでした。いざとなれば個人で稼げばいいので。働きたいと思った大きな理由はビジョンへの共感です。論理立てて考えたいタイプなので、なんでもかんでも利用者の心情に寄り添うのではなく、エビデンスに基づいて妊婦さんをサポートしていきたいという打ち出しに強く魅かれました。
MamaWellはご夫婦が現場で感じた問題意識から生まれた会社で、事業内容に先見性があります。私も含めみんなそこに共感して入社しているので、そこが大きな強みでしょう。個人的には、社長のタイプや会社の雰囲気が前職と全然違うところも面白いと感じています。Guidableの社長はエネルギッシュで豪快な人でしたが、MamaWellは社長が助産師さんで旦那さんはお医者さん。きっちり情報収集をした上で経営判断を下しています。社長のタイプが全然違う上に、自分には前職でのマネジメントやコミュニケーションのやり方が染みついているので、それを調整しながら会社を成長させていくのは非常に面白いです。
柔軟な働き方を許容してくれる会社に感謝
つくばでのワークライフバランス、QOL(Quality of Life)についてはいかがでしょうか。
現段階でそこまでの好条件を提示されないことは入社前から分かっていたので、副業ついては事前に社長に話して許可をいただいていました。おかげで本業とバランスを取りながら副業もできています。社長の「私たちが社員の柔軟な働き方に理解を示せなかったら、働く妊婦さんをサポートするサービスを提供できないよね」という言葉に、働き方の柔軟性を大切にしようとする強い意志を感じました。
つくば市で働き始めて、想定外だったことや大変なことをお聞かせください。
マイナス面はないですね。思ったよりいろんな人がいて、いいなと思っています。確かに東京に営業に行くとなれば少し時間はかかりますが、それほど気になりません。都内で働いていたときも電車で1都3県をまわっていて、遠い所だと片道1時間半くらいはかかかっていましたし、大手・中堅企業あるいは公的機関などはつくばから1時間程度で行けるところが多いので。強いて言うなら、都内の株主や顧客に会食や飲み会に誘われても当日はなかなか行けない、ということくらいでしょう。
つくばは出会いが多く、身近な企業の活躍が刺激になる
つくばのスタートアップで働く魅力は何でしょうか。また、これからつくばで働こうと考えている人アドバイスをお願いします。
MamaWellの所在地でもあるつくば市産業振興センター(つくばスタートアップパーク)は毎週水曜日にイベントを開催していて、たくさんの出会いがあります。加えてスタートアップ企業が集まっているので、業績を伸ばす会社が出てきたら大きな刺激になり、「頑張らなきゃ!」となるでしょう。これは非常にいい環境だと思います。
優秀な筑波大生が近くにいて、スタートアップ企業が都内ほどひしめきあっていないのも大きな魅力です。都内だとインターンから取り合いが熾烈ですが、筑波大生の方も近場で探すとそんなに選択肢がないので、イベントなどに来て「合う」と感じたらかなりの確率で来てくれると思います。
つくばにはカフェや公園など気持ちよく働ける場所が多い
パラレルワーカーとして働くつくばは、どんなところが魅力でしょうか。仕事に対するこだわりも教えてください。
パラレルワーカーは気持ちの切り替えが大事です。つくば市には広々とした土地と自然があり、生活に困らない程度の施設も整っているので、カフェや公園に行くなど状況に合わせて自分で働く環境を変え、気持ちをコントロールしやすいです。
仕事では、複数の仕事を同時並行で進めることにこだわっています。能動的に点を線にしていく意欲がある人なら、すべてを同時にやったほうが絶対にいい。自分ではパラレルワークを「価値を創出できる技能や領域を、同時多方向かつ複利的に広げる活動」と定義していて、自分が価値を創出できる技能や領域を見定めて、そこでシナジーを生み出せるように努めています。
素敵なお話をいただきありがとうございました。
株式会社MamaWell
https://mamawell.jp/
- 設立
- 2022年08月
- 社員数
- 5名(役員2名含む)
≪MISSION≫
女性の生涯における健康をエビデンスに基づいてサポートする
≪事業分野≫
医療・ヘルスケア
≪事業内容≫
弊社は、「女性の生涯における健康をエビデンスに基づいてサポートする」をミッションとして、妊娠・育児期の女性を対象に、パーソナル助産師が伴走者として、利用者一人ひとりの状況に応じた適切な情報を提供し、身体づくりを中心とした継続サポートをオンラインで行っています。