『元Jリーガー』は売りにしていません。今はもうウェディングプランナーです

株式会社ノバレーゼ社員 阿部祐大朗氏

プロサッカー選手が引退し、ビジネスパーソンとしての道を着実に切り開いている。

彼は高校在学時にはJリーグの名門、横浜Fマリノスの指定選手となり、若くして将来を嘱望された。3年時の全国高校サッカー選手権ではベスト4で国見高校の平山相太(現在FC東京)と対決し、怪物対決として大きく注目をされたがその後は苦しい日々を送る。戦力外通告やチームの解散などを経て5チームでプレーし、2011年シーズンを最後にプロサッカー選手を引退。

2011年の年末。私の友人であるプロサッカー選手の柴村直弥(Jリーガーを経て現在はウズベキスタンのプロサッカークラブに所属)から電話が鳴る。“鳥取でチームメートの阿部祐大朗が引退してビジネスの世界で働きたいと言っています。本当にいいヤツです。相談してもらえませんか?”

渋谷のカフェで柴村直弥と阿部祐大朗と会った。私の話を食い入るように聞き、メモを取る阿部祐大朗氏。この素直さと熱意があればしっかりとした会社に紹介できる。私は最初から好印象だった。2012年初頭、縁あって、ウェディングプロデュースを行う企業、株式会社ノバレーゼに入社。

ノバレーゼにとっては初めて受け入れる元Jリーガーだったが特別扱いはせず、他の社員と同様にビジネスパーソンとして鍛え、育成してきた。ノバレーゼは高い就職人気を誇る会社だ。難関を乗り越えて入社した優秀な社員とともに働く彼を私はとても心配してきました。同社の田中取締役(管理本部長)や人事部門の方々がそれを察して、ときどき彼の状況を私に知らせてくれる。そのたびに私は彼が会社で活躍し、愛されていることを確認できて嬉しくなりました。

入社して2年が経ち、阿部祐大朗氏は紆余曲折を経ながらも1,000人以上の従業員がいるノバレーゼの幹部候補としてリーダー研修を受けるまでになった。

阿部祐大朗氏がノバレーゼでの2年を経て、どんな苦労をしてどのように成長してきたのか、インタビューしました。

阿部祐大朗氏

社員
阿部祐大朗氏

1984年、東京都町田市生まれ。桐蔭学園高3年で、特別指定選手として横浜F・マリノスでJリーグデビュー。2003年U-20W杯日本代表、05年にモンテディオ山形に移籍。その後、北信越1部のチーム、徳島ヴォルティスを経て、ガイナーレ鳥取を最後に現役を引退。2012年に株式会社ノバレーゼに就職しウェディングプランナー(横浜モノリス店)として活躍中。

株式会社ノバレーゼ

株式会社ノバレーゼ
https://www.novarese.co.jp/

社員数
1,389人(連結) *パート・アルバイト含む(2013年12月末時点)

婚礼プロデュース事業/婚礼衣装事業/ホテル・レストラン事業

入社前に比べて愛情が2倍になって、愛に溢れています。

アマテラス:

Jリーガーからウェディングプランナーになって3年目ですね。入社前に比べて自身で変わられたと思う点はありますか?

株式会社ノバレーゼ 社員 阿部祐大朗氏(以下敬称略):

愛情が2倍になった感じです。なんだか、愛に溢れてます、本当に!

アマテラス:

愛情が2倍ってすごいですね。一体何があったんですか?

阿部祐大朗:

いろいろありましたが最近リーダー研修を受けたことはきっかけの一つですね。
ウェディングプランナーになって2年経ち、マンネリ化じゃないですけど、仕事がわかったつもりになっていたんです。全然、甘い考えだったんです。そんなタイミングでリーダー研修というのを受けさせてもらいました。マネージャーになるために必要な研修です。

リーダー研修では、マネージメントに関する数字のことなどを学ぶのですが本当に素敵だなと思ったのが、お客様のために、ということを真剣に話し合うんです。翌朝の発表に向けて夜からチームで話し合って、気付いたら朝の3時4時くらいになっていました。目標を達成するために数字を使って説明するのですが、講師は数字のことをあんまり教えないんですよね。まずは「お客様」のことを考えようと。立場が上に上がってきても、「お客様」のことをまずは考える、そういう指導でした。

浅田さん(ノバレーゼ 代表取締役社長)もそういう話をしてくれました。幹部の方も「いいよ別に。受注なんてしなくていいよ」みたいな。「まず目の前のお客さんを喜ばせなよ」というのを本当に真剣に議論する会社って、珍しいと思います。普通は「受注しろ、受注しろ」とかになるじゃないですか。そういうのが一切なくて、「祐大朗、お客さんを3回笑わせてくれればいいよ」みたいな。

課題はリーダーシップ、マネージメント。

アマテラス:

ノバレーゼのリーダー研修に参加して気付いたことは何ですか?

阿部祐大朗:

自分のリーダーシップはまだまだ足りないな、と感じました。
自分が指示を出した時にまだ頼りないところがあると思うんです。浅田さんが「リーダーというのは右って言ったら、周りの人が絶対右に行くような人じゃなきゃダメだ」と言っていて、自分は全然足りないなと思いました。それで思ったのが、まず結果。自分自身が結果を出さなければいけないというのもありますし、行動で示してないと人はついてこないので。

リーダーとかマネージャーになったら、どっしりしてパソコンをずっとやっているという勝手なイメージを持っていたのですが、浅田さんが「リーダーが一番働け。それくらいの覚悟がなければ誰からも信用されない」と言っていて、すごいなと。

プロサッカー現役時代は確かにそれくらいの覚悟でやっていたと思うのですがそれを今、同じように仕事に愛情を捧げているかというとすごく足りないなという所があるのでそれをまず実行していこうと思っています。

アマテラス:

リーダーシップ、マネージメント、というのが今の阿部さんの壁だと思う。これまでの2年間は極端にいえば、自分の役割をしっかりやっていれば評価されたけど、もうそろそろリーダーシップを発揮していく立場なのでは?

阿部祐大朗:

本当にそうです。サッカー選手の時は人を動かすも何も、プレーヤーとして自由にやっていただけだった。僕が人を動かすというか、その役割は基本的に監督だったので自分のことだけ考えていた。だから、もう、今すごいワクワクしています。楽しいです。リーダーシップやマネージメントの世界にやっと踏み込めたので。いままでこういう世界に気づかなかったですね。

アマテラス:

ノバレーゼのリーダー研修に参加させてもらうのはなかなか大変と聞いていますが、3年目で参加したというのは素晴らしいことですね。

阿部祐大朗:

そうですよね。同じリーダー研修に中途採用8年目で参加できた人もいて、このような機会をくれたことにとても感謝しています。参加するときに“一番楽しみにしてたんです。気合い入ってます!”みたいな感じでした(笑)

最初の苦労はパソコン、メール、コミュニケーション力。

アマテラス:

この2年間、どんな壁や挫折を味わってきましたか?

阿部祐大朗:

パソコンでのビジネス文書作成や、お客さんに送るメール作成は最初は本当に苦労しましたね。
1年目の時はもう、1通のメールを送るのに1日かかっていました。上司に「こういうのを1回作って」と言われて作るのですが、作成して「確認お願いします」と持っていくと「え?何これ、ふざけてるの?」みたいになり、「ここを直して」と言われて、直すのにも長時間かかって、それを3回くらい繰り返してやっとOKみたいな感じでした。
本当に何ができないのかもわからなかったですし、パソコンで『Enter』キーがわからなくて探しちゃうみたいな感じです。

アマテラス:

入社するときに阿部さんにまずパソコンを買う事からアドバイスしたことを思い出します。でも今はパワーポイントも使いこなすまでになったと聞きましたよ。

阿部祐大朗:

藤岡さんをマネして同じパソコンを買いました(笑)。今はそれなりに速くできるようになって。パワーポイントより画質がよいKeynote(高度な描写機能を持ったプレゼンテーション作成ソフト)がいいかなと思っています。

アマテラス:

Keynote、、、阿部さん、自分より最先端に行っちゃったね!上司の方も辛抱強く指導してくれたんですね。

阿部祐大朗:

当時の上司には迷惑をかけっぱなしで1日に3回くらい激怒されましたが(笑)本当によく我慢してくれたと感謝しています。

あと、お客さんの立場になって物事を考えて発言するというのは人生で初めてで、苦労しました。コミュニケーションの問題ですね。
サッカー選手の時のコミュニケーションとは全然違うので、そのマインドチェンジをすることは苦労しました。選手という立場では来てくれるサポーターに手を振ったり、サインや挨拶に応じたりしていましたが、いいプレーをすることが最も求められていました。今はお客さんからすると一生に一度のイベントで高いお金を払うので、求められるコミュニケーションのレベルが違います。満足してもらうのは当然ですが、要望や疑問に細やかに丁寧に対応する必要があります。そういったコミュニケーションがなかなかできなくて上司にもいつも怒られていたのですが、お客さんから怒られるのが一番辛かったですね。
金額のミスを指摘されたり、言ってること違うじゃん、というような。当然ですけどお客様も一生懸命ですからね。

最初はとにかく緊張でガチガチになっていてお客様に名刺渡すときも手が震えてました。話すのも教科書を読むように堅かったと思います。結婚式が終わってからいただいた手紙にも、「最初は不安でしょうがなかったです、阿部さんが。でも、いい人だったから任せましたけど」みたいな感じでした。敬語もちゃんと使えなくてお客様とも友達のように自然と話していました。ちゃんとやらなければいけないのですが苦労しました。

アマテラス:

ビジネスパーソンとしてのコミュニケーション力不足をどう克服したのですか?

阿部祐大朗:

プライドを捨てることです。でもすぐには出来なかったです。もともと現役時代にもニコニコとファンサービスをするようなタイプではありませんでしたし頭を下げることはあまりなかったので、最初はいろんなことがちょっと恥ずかしかったです。「いらっしゃいませ」、「すいませんでした」とか。
笑顔になって仕事をするのは初めての経験です。最初はほっぺたがずっと痙攣(けいれん)していたんです、本当に。上司からは「口角上げろ!」とずっと怒られて。

油断すると「口角下がってるぞ!」と怒られました。今となってはそういう表情は自然とできるようになったと思います。ゲストの方に「おめでとうございます」と言っていると、自然と口角が上がっていますね。

何よりも仕事をする中で「お客様のためにならないことが恥ずかしい」と思うようになったんですよね。
プライドを、違うプライドにしたんです。逆に「かっこつけている自分がダサい」みたいな。そうすると「お客様に対し一生懸命やっている方が素敵」と思えるようになったんです。

アマテラス:

”お客様のために働くことの方が素敵”と思ったきっかけは何だったのでしょうか?

阿部祐大朗:

ノバレーゼで働く周りの人がみんなそうだからだったと思います。変にかっこつけている人なんて誰もいなくて。それは会社の社風でもあると思います。今となっては本当に違和感なくそう思えます。

元Jリーガーを売りにしない。

アマテラス:

元サッカー選手というのは売りにしていない?

阿部祐大朗:

全然売りにしていないです。
お客様から『阿部祐大朗って、もしかして横浜F・マリノスにいた阿部祐大朗さんですか?』と気付かれる方もいるんですね。
そういう方だと意外と受注率が低かったりします。たぶん、昔の僕のイメージというか、高校時代ちょっと眉毛とか整えたり、いかついイメージだったと思います。「阿部さんがそんな、腰が低いなんて」みたいになってしまうこともあります。

なんとなくお客様とお話をしていて、「以前は何をされていたのですか」と聞かれて「サッカー選手をしていたんですよ」と言う話になることもあります。「横浜マリノスから、モノリス(「横浜モノリス」という結婚式場名)へ」と言って、笑いを取ったりしていますが自分が元サッカー選手だという話をしても結果的には受注には関係ないですね。やはりお客さんは良い結婚式を挙げたいという思いが一番ですから。
相手が自分に気づく事はありますが、自分からは言わないです。
「今はもう、ウェディングプランナーですから」といつも言います。

あと、サッカー選手時代に比べて勤務時間の違いには最初は戸惑いました。
ノバレーゼは、勤務は11時から20時くらいで、ウェディングプランナーの仕事は相手に合わせることが多いのでさらに遅くなることも多いんです。現役時代は1日の練習時間が2、3時間なのでとにかく1日が長く感じました。練習以外は自由で、もうパチンコしたり、ボーリングにみんなで行ったりしていました。そんな生活に慣れていたのでノバレーゼでの最初の頃は眠たくなるし、「これは違いすぎるな」と思って、「やっていけるのかな」というのは思いましたね。それが徐々に慣れてきて、今は浅田さんの言葉もあって、一番早く来て一番遅く帰ろうという気持ちになっているのが、すごい自分の中で変わったなと思っていますね。

アマテラス:

浅田社長とは接点は多いですか?

阿部祐大朗:

忙しい方ですがもう本当に距離感が近い存在です。突然横浜の事務所に来てくれたりとか、横浜の社員だけでスポーツ大会とかやったりするのですが「フットサル大会やろう」と企画してくれたり。距離感が絶妙なんですよね。
浅田さんはスタッフ全員をもう覚えています、たぶん。キッチンの1人1人も、全員の名前覚えていますね。飲みの席にもよくご一緒してくれます。とてもお酒強くて、、、お酒の飲ませ方もメチャメチャ上手いんですよ(笑)

アマテラス:

お酒に強い阿部さんが強いって言う事は浅田さん相当強いよね(笑) ノバレーゼは東証一部上場企業ですが社長と社員の距離が近いというのは風通しが良いですね。

現役時代は戦力外通告、契約打ち切りを4回経験。サッカーで培ったプロフェッショナルマインドが今に活きる。

アマテラス:

プロのサッカー選手をしてきて、今のビジネスパーソンとして仕事に活きたことはなんですか?

阿部祐大朗:

そうですね。新規の営業で数字を任されてるいるのですが、結構まわりから「数字任されてたいへんだね」と言われたり、「新規獲得は大変だ」とか、プレッシャーに負けそうな方とかいますが、そういうことでプレッシャーを感じることはほとんどないですね。
それはプロサッカーの世界にいたからだと思います。常に結果を求められていて、僕はそれで4回くらい本当にクビになってきましたから。
ちゃんと毎月毎月、数字を達成できてるかといったらそうではないので、そこはもっとこだわらなきゃいけないのですが結果を求められていることに変に慣れちゃっているんですよね。
多分自分に限らず、スポーツ選手は結果を求められることに慣れているので大丈夫だと思います。チームをクビになったときは本当に辛かったですけど。高校までサッカーしてる時は本当に自分が天才だと思って横浜F・マリノスに入団して、そこからは本当にダメな選手だったので、でもその経験がよかったですね。クビになっても違うチームでチャレンジして這い上がったりとか。10年間くらい諦めずにプロとしてやってきた経験は良かったと思いますね。本当にもう、一歩間違えたらすぐサッカーを辞めていたと思いますが、そのくらいグラグラした中で、なんとかやってきたので。

やっぱり、サッカー選手ってみんな基本的に明るいと思うんですよね。このノバレーゼという会社も凄く明るい雰囲気なんですけど、それがすごく合っている部分もあると思います。
現場は激しい意見交換があったりとか、お客様のこととなるとみんな一生懸命(笑)。 でも仕事が終わって夜にはみんなで盛り上がったりします。体育会的な文化なのでしょうね。実際に新卒の人は何かしらスポーツをやっていますね。

アマテラス:

プロサッカー選手から、ビジネスパーソンを経験してみて新たに見えた自身の可能性や能力はありますか?

阿部祐大朗:

思ったより人と接するのは嫌いじゃないと思いました。最近は素の自分で振る舞っていますが、スッとお客様の心に入れる感じがあるんですよ。

アマテラス:

すごいね、阿部さんは人の心を開かせる才能があるのかも。努力してもできない人もいるんだよ。

阿部祐大朗:

それは周りのみんなにも言われるんです。結構ズケズケと言っちゃうんですよね、お客様にも。でもそれが許されるところがある。これはノバレーゼで働いて気付いたことですね。
中学時代、高校時代はもうトゲトゲしてて、むしろ周りが気を遣ってくれていました。今普通に頭を下げている姿を見たら当時の友達は驚くかもしれません。でも、昔から根はいいやつだったんですよ(笑)

あとは、人を育てたり、マネージメント能力についてはこれからのチャレンジですね。人を育成するというのは現役時代にはあまり考えていなかったです。むしろ、後輩が成長したら自分の出番がなくなる環境でしたので。

そういう世界はここで初めて踏みだした感じです。まず一歩目を、リーダー研修で。
でも頑張りたいですね、マネージメントの世界を。こういうのがやりたかったなという感じです。

アマテラス:

でもリーダーという意味ではとてもいい例が近くにいるよね。浅田社長が。浅田さんは1,000人以上の会社のリーダーだし、彼がどのように振る舞っているのかを見るのはとても勉強になるのでは?

阿部祐大朗:

本当にすごいですよね。浅田さんからはたくさん学びたいと思います。浅田さんは判断能力が凄いと思いますね。「YES」「No」の決断が早い。

アマテラス:

ノバレーゼの採用面談で阿部さんと浅田さんとの最終面談はわずか10分くらいだったよね。阿部さんは面談が短すぎて駄目かと思っていたけど、浅田さんはすぐに「採用」と判断したから面談を早く終わらせた。そういうのもリーダーには大事なことだと思う。 プレーヤーとリーダー人材の違いの一つに「意志決定力」というのがあると思う。決めることってトップしかできない。

阿部祐大朗:

ノバレーゼのゼネラルマネジャーも、すごいんですよ。カリスマ性もリーダーシップも。そういうところをこれから学んでいきたいと思いますね。

アマテラス:

阿部さんの将来のキャリアプランは?

阿部祐大朗:

もう社長ですよ。起業です。まずはここで本当に頑張って、しっかり責任ある立場で仕事ができるようになりたいと思います。でも、リーダー研修に行って、本当にここの会社で長くいたいなと思いました、心から。学んで、本当に吸収してからノバレーゼのような経営理念を持った会社を作りたいと思いました。ノバレーゼという会社は本当に素敵なんですよ。

アマテラス:

素晴らしい会社愛ですね。

阿部祐大朗:

リーダー研修はそれだけ思わせるような内容で、最後にみんな泣いていました。最後に「どうでしたか?」とコメント求められた時に「何かわからないけど、みんなのことが大好きになりました」って。
でも本当によかった。藤岡さんに出会えてノバレーゼを紹介いただいて本当に感謝です。

アマテラス:

ありがとう。でも自分は阿部さんが充実したJリーガーのセカンドキャリア(選手引退後のキャリア)を歩んでくれていることが何よりも嬉しいかな。 阿部さんから「起業」という言葉が出てくることは凄い進化だと思う。2011年年末にガイナーレ鳥取を辞めて、最初にキャリア相談に来てくれたときは、ファッションやお洒落が好きだからアパレル関係の仕事がしたいと話していたのを思い出します。

阿部祐大朗:

あの時は本当に、外から見てかっこいい人になりたかっただけでアパレル関係と言っていたと思いますね。

アマテラス:

阿部さんはウェディングビジネスに必要な”華”があるし、人の役に立ちたいという思いが根底にあるのでそれを突き詰めていくとノバレーゼの経営理念に共感していったのだと記憶しています。阿部さんのこれまでの経験は横浜F・マリノスやJリーグで講演したらすごくいいと思う。

阿部祐大朗:

本当ですよね。自分が現役時代にこういう気持ちがあったら、もっといい現役時代を送れていたと思います。サポーターの気持ちになってファンサービスとか、すごくしっかり対応していたと思います。
でもいい選手はそういうマインドを持っていましたね。中澤佑二さん(現横浜FマリノスのDF)は昔からプレーも凄いけどファンサービスもしっかりしていましたね。マスコミ向けのコメントもしっかりしていました。

サッカーを捨て切れたから、今新しい仕事に集中できる。サッカーは完全に燃え尽きた。

アマテラス:

一方でサッカー選手はエゴがないと生き残れないんだろうね。競争の世界だしね。

阿部祐大朗:

それが難しいですね。サッカー選手はやっぱり、エゴが強くていいと思います。むしろ僕はエゴがなかったので、選手時代。

アマテラス:

阿部さんは優しすぎるよね。それでもプロとして10年近くやってきたんだから凄いと思うけど。 そんなサッカー一筋でやってきた阿部さんが全く違う道に舵を切れたポイントはどこにあったのでしょう? セカンドキャリアに悩んでいるアスリートにとって参考になると思うので。

阿部祐大朗:

自分はサッカーを捨て切れたことが大きなポイントだと思います。今は全然、サッカーしたいとも思わないです。燃え尽きたんです、完全に。

サッカー選手としてそんなに大きな結果を残したわけではないのですが、やりきれたと思えたのが本当によかったなと思っています。そう思えたタイミングは所属していたガイナーレ鳥取がJFL(現在のJ3リーグに相当)からJ2への昇格です。悲願のJ2昇格に貢献することができたことで達成感を感じました。J2に昇格してからもう1年在籍し、試合にもけっこう出してもらっていたのですが燃え尽きていました。契約もあと1年残っていたのですが、もういいかなと。周囲は反対していたのですが。

アマテラス:

J2でまだこれから、という時だったよね。でも、捨てきれる、という決断が大事なのかもしれませんね。

阿部祐大朗:

そうですね。なんだかんだでみんなサッカーを捨てきれないんですよ。でも自分は捨てきることができたのでセカンドキャリアへの気持ちの切り替えができたと思います。
もう仕事でサッカーの世界に行くことは絶対嫌だった。もうサッカーを仕事にはしたくなかった。自分は本当にレアなケースだと思います。みんなサッカーが好きでやっているから引退後はサッカーを子ども達に教えたいと思うのが普通だと思いますが、自分は教えるとすれば仕事ではなく趣味などで休日でいいと思っています。

アマテラス:

Jリーガー引退後、サッカーとは全く違う道で成功している人はまだそんなに多くはないと思います。まして、ビジネスパーソンとして活躍している人は本当にレアで、阿部さんはまさに今、新しい道を作っていると思います。

阿部祐大朗:

そうですね、道を作りたいですね。そういうモデルケースがないので。
新卒の学生で、自分の記事やインタビューなどを読んで、ブライダルプランナーに興味を持ってくれる人が増えてきました。サッカー選手からも自分を見てブライダルプランナーという道を選んでくれる人が出てくれるようにしていきたいですね。

アマテラス:

最後にアスリートの皆さんにメッセージをお願いします。

阿部祐大朗:

アスリートはやっぱり現役時代に、自分のスポーツだけやるのもいいですけど、色々やったほうがいいですね。いろんなことに興味を持って。サッカー選手でいえば練習時間が短くて自由時間が多いのでいろんなことができると思います。英会話を勉強してもよいし、異業種の人に会うのもいいと思います。僕がマリノスにいた時には(故)松田直樹さんはサッカー以外の時間を有効に使っていました。練習が終わると、都内の方に連れて行ってくれていろんな社長さんに会ったり、いろんなお話をする機会を作っていました。

アマテラス:

いい先輩ですね。そういう先輩に恵まれるのも阿部さんの魅力だと思います。素敵なインタビューありがとうございました。益々の活躍期待しています!

インタビュー場所:株式会社ノバレーゼ 横浜モノリス、撮影:志鎌真奈美(shikama.net)

この記事を書いた人

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藤岡 清高

株式会社アマテラス代表取締役社長。iU 情報経営イノベーション大学客員教授。 東京都立大学経済学部卒業後、新卒で住友銀行(現三井住友銀行)に入行。法人営業などに従事した後に退職し、慶應義塾大学大学院経営管理研究科を修了、MBAを取得。 2004年、株式会社ドリームインキュベータに参画し、スタートアップへの投資(ベンチャーキャピタル)、戦略構築、事業立ち上げ、実行支援、経営管理などに携わる。2011年に株式会社アマテラスを創業。 著書:『「一度きりの人生、今の会社で一生働いて終わるのかな?」と迷う人のスタートアップ「転職×副業」術』

株式会社ノバレーゼ

株式会社ノバレーゼ
https://www.novarese.co.jp/

社員数
1,389人(連結) *パート・アルバイト含む(2013年12月末時点)

婚礼プロデュース事業/婚礼衣装事業/ホテル・レストラン事業