自分の人生で、もう1回自分に熱くなれるものにチャレンジしたいという気持ちが湧いてきた

株式会社アイアンドシー・クルーズ取締役 竹下謙治氏

竹下さんはアイアンドシー・クルーズ(以下IACC)に転職当時46才。
大手証券会社を経て上場企業で取締役CFOを経験し、修羅場も酸いも甘いも経験してきた人だ。

そのような方がIPOを目指している未上場ベンチャー企業で常勤で働きたいと相談されてきました。
説明するまでもなく、そのようなベンチャー企業では気力のみではなく体力も必要とされ、若いメンバーが主体で、大変なことが多い。かつ頑張りが報われるかどうかの保証はどこにもない。それでもよい、むしろそれがいいのでチャレンジしたいと竹下さんは力強く言われました。

成功したと言ってもよいだけの経験を積み、シニアになってもなお果敢にチャレンジする竹下さんの考えに迫りました。

竹下謙治氏

取締役
竹下謙治氏

2001年〜2007年  大和証券SMBC等で公開引受業務に従事。
2007年〜2013年  EC企業(東証マザーズ上場)の取締役副社長管理本部長を務める。
2013年、株式会社アイアンドシー・クルーズに入社。
同年、取締役CFO就任。

株式会社アイアンドシー・クルーズ

株式会社アイアンドシー・クルーズ
http://www.iacc.co.jp/

設立
2008年06月

《 Mission 》
Impression at All Moments 〜すべての瞬間に感動を〜
《 事業内容 》
太陽光発電/エネルギー事業 リフォーム/住生活事業 自動車/その他事業

50歳くらいでもう1回熱くなれるものにチャレンジしたかった。

アマテラス:

上場しているベンチャー企業の取締役副社長(CFO)を経て、今回、未上場ベンチャー企業を転職先に選ばれた背景、竹下さんのキャリアについてお話していただけます。

株式会社アイアンドシー・クルーズ 取締役 竹下謙治氏(以下敬称略):

学生時代のお話からしますと、1989年に大学を卒業しましたが、その当時は今のように学生がベンチャー企業にインターンシップに行ったり、あるいは起業するということが極めて少なかった時代です。そんな中でも私は日本学生経営学会とかそんな組織に入って活動していて、経営やベンチャー企業という世界に強い関心を持っていました。

そんな背景もあり新卒で証券会社に入社しました。そこで上場(IPO)のサポートをする仕事に就き、企業経営の一端を垣間見るようになり、ますます「自分の行きたいところはこっち(ベンチャー企業など経営に近いところ)だな」と思うようになりました。

その頃から自分年表を描き始めていて、いつかは金融サイドではなくて事業会社サイドで、且つマネージメントに関わっていきたいという願望がありましたね。
そういう意味ではIPOやM&Aの仕事に携われたのはすごくラッキーでした。仕事を通じて様々な企業の「栄枯盛衰」を見てきて自分は起業家としてではなく「経営者の右腕」として、「マネジメントを業にする」ことを自分の仕事にしたいなと思うようになっていきました。

証券会社での業務経験も積み、多くの経営者との仕事を通じて裏も表もある程度知ったところで、事業会社にチャレンジしたいと考えるようになったのは30代後半くらいです。
ちょうど40歳の時に、大和証券SMBC在籍時にIPOのサポートをした会社社長と意気投合してお声をかけていただきました。マネジメントを業にすることを実現するという意味で、これはチャンスだなと思って踏み出しました。元々事業会社で働きたかったところに機が熟していったという感じでしょうか。自らがIPOをサポートした上場直後のストリームというEC事業などを手掛ける企業に入社し、スタートから取締役副社長という立場で管理部門の統括の仕事を約6年間やってきました。

ストリームでは充実した日々を送れましたが、ある程度目指していたことを経験できて、達成感というのがあったのかもしれません。そこで、もう一回自分年表を引き直して、自分の人生の中で、もう一勝負というか、50歳の前後くらいでもう1回自分に熱くなれるものにチャレンジしたいという気持ちがフツフツと湧いてきたんですよね。
上場会社の取締役副社長として重責を担わせていただきましたが、上場会社での6年間の経験と証券会社でIPOサポートに携わった経験があり、次は未上場ベンチャー企業でIPOを成し遂げたい、これはもう明瞭だったんですよね。だから、そういうターゲットはないかなということで、転職活動はそこの軸をブラさずに行こうと最初から思っていました。

アイアンドシークルーズに決めた理由は上村社長に尽きる。

アマテラス:

上場企業でCFOとしての経験がある竹下さんは多くの選択肢があったと思いますがIACCを選ばれた理由を教えてください。

竹下謙治:

月並みですけれども、ホント人に尽きるというか、上村(IACC代表取締役社長)に尽きるということですね。

これまでの経験や学びから私の仕事に対する価値観としてやはり誰と仕事をするのかというのが一番大事だと考えるようになりました。
いくら会社が成長していようとも、状況が悪かろうと、結局、CFO的な役割で働くとすると経営トップが仕事のパートナーになるので、やっぱりそこの人ですよね。考え方、もちろん行動も含めて、そこが自分とフィットするかどうか、お互い相思相愛になれるか、あるいは喧嘩をしても大丈夫だなという本当の信頼感みたいな部分ですね。
何かロジカルに合う合わない、というような感じではなくて、最後はそこはもうフィーリングなんですよね。お互いの感性みたいなところもありますし、そこをどこまでわかりあえかというコミュニケーション(意志疎通)できるかどうかも含めて。上村とは「最後」でなく「最初」からフィーリングが合うというか、妙な?魅力がありましたね。

上村とはその後夜の会食も含めて数回面談させてもらいましたが、良い出会いがあって私の場合はすごいラッキーだったなと思いますし、それは今に至っても全く後悔してない決断でしたね。

アマテラス:

入社面談時に感じた上村社長の印象と入社後の印象は、そんなにブレはなかったですか?

竹下謙治:

ブレはないですね。上村はどう思っているか知りませんけど(笑)。私自身はこの会社でのミッションを自ら明確に決めていますし、お互い遠慮しないでやりましょうねと話しています。だから飲んだりした時もいろいろ言っていますけれども、包み隠さず話すようにしています。お互いの信頼感のベースになりますので。

逆に意外感というか、僕はもうちょっと上村は上からグイッと引っ張っていくスタイルなのかという感じがありましたが、そこは良い意味で期待を裏切られたっていうか。
もちろん、そのグイっというリーダーシップを発揮する時もありますけれども、どちらかというと仕事を任せてくれますし、そこも含めて人を信頼しチームプレーを大事にしていますね。

アマテラス:

竹下さんは上村社長のどのあたりを見て、「ついていきたい人だな」と思えたのでしょうか?

竹下謙治:

例えば経営をどうやりたいかというところについて、『人』を軸にしてやっていきたいんだという思いに共感しました。人を大事にした経営をすると話している経営者は多いですが継続的に実行している方は実際にそう多くはないのではないかと思っています。上村はそれを体現しているというか、具体化しているところが、言葉の端々にもにじみ出てきていると感じました。私がIACCに入社した時は、まだ社員も20人くらいでしたし、完全に目が届く、ずっと一緒にやってきた仲間なので、なおさらだったと思うんですけれども。
あとは、経営のスタイルとしてどちらかというと、個人というよりもチームでタッグを組んで皆で進んでいくというようなタイプの人だと感じて、そこもよいと思いました。

例えば、トップがガーンと行って、皆ついてくれば良いじゃん、というようなところもそれはそれであるのでしょうけれども、やはり今のIACCのステージではメンバーと一緒に会社のステージを上げていく、というようなところが重要と感じています。

アマテラス:

竹下さんが望んでいるマネージメントスタイルや考え方が上村社長の考えに合った部分があったということでしょうか?

竹下謙治:

そうですね。ですから、まさに誰と仕事をするのかという中で、上村は自身のスタイルを持って体現しており、それは私の価値観やマネジメントスタイルと近いところがあるのかなと、、話をしていて感じたんですよね。

アマテラス:

「誰と仕事をやるのかが大事」という価値観はこれまでのご経験で、どのように形成されていったのでしょうか?

竹下謙治:

人と仕事をして何かがぶつかり合うことはよくある話です。考え方が違うのはどこに行っても当たり前の話ですが、結局、目的観みたいなのがブレちゃう人がいる。そこがブレると僕はちょっと違うのかなと思ってしまいます。

要するに、ただ儲け(利益)のことだけを考えているのか、そうじゃなくて会社の成長の今のステップでここで必要だから何をしなくてはいけない、という話なのか、もっというと、その先に自分たちが経営している会社が、世の中やお客さんに対してどういう価値を提供して貢献していくのだろうかという、そういう根本的な軸や価値観がぶれずに共有できるメンバーでありたい、又、ピンチになった時に、お互いカバーしあえるメンバーでありたいという意味で「誰と仕事をやるのか大事」を強く感じるようになりました。

アマテラス:

私もそれは共感します。不正や邪道をしてまで利益を追求する経営者がいますが、それだったらそんな事業はやらなくて良いと思います。そんな利益って何のためになるんですか、と思います。

竹下謙治:

そうですね。誰のために?何のために?なるのって話でしょうし。意見がぶつかったときにそれは如実に感じるんですね。上村さんとは話の中で、私の考えに近いものがあると感じたのと、お互いに隠しているところがないというか。人間、すべてを理解しあえることは難しいと思いますが、こと経営に関しては、素の考えや思いを自然に出してそれを受容することも大切かなと感じています。

アマテラス:

会社を選ぶときに、事業内容以上に一緒に働きたいと思える社長がいるかどうかが重要ですか?

竹下謙治:

それは私の考えに照らせば間違いないですね。
事業内容(事業軸)で考えた場合でも、皆さん世の為、人の為になりたいと考えて、ビジネスを起こしている訳であって、その手段でゲーム事業をやる経営者がいて、ゲームで楽しんで人生に豊かさを与える、それはそれで結構ですし、そこは価値観の問題になってくると思います。

事業の軸で考えた時に概念的ですけれども、上村は『次の世代に残せる事業をやりたい』ということを軸に考えていて、その考え方は単純に良いなぁと感じました。

それで実際に何をしているかというと「今は、太陽光事業をやっています。」と、「ああ、なるほどね。」と思いました。ベンチャー事業はいつ儲かるのか、大きく成長するのかわからないし、良くても競争で負けちゃうかもしれないし、いろいろありますよね。そうなった時に駄目でも、またこの人たちとだったら次やれるよねと思えることが大事だと考えています。

特にベンチャーですといろんなことをやれるじゃないですか。確かに本業みたいなものがあるのでしょうけど、変化に素早く対応するのもベンチャー企業だとも思っています。そういう意味では、いまやっている事業も重要ですが、価値ある事業を変化に即してやっていこうとする経営者の価値観や素養、人柄がより重要かとも思いますね。

アマテラス:

例えば、ソフトバンクに入社したら、配属先が携帯事業とは限らず太陽光発電事業だったり、プロ野球事業だったり、行く先は本当に様々ですが、その配属先が不満で辞めるんだったら、ソフトバンクに入るのは間違ってるような気がしますよね。やはり孫さんの考え方に共感しているから、ソフトバンクに入るわけですよね。

竹下謙治:

そうですね。情報通信革命の担い手になりたいっていう意志をもってソフトバンクに入っていれば、それを成すためのやり方や世の中や会社への貢献はいくらでもある訳であって、目先の事業内容だけで会社を選んでいるわけではないですよね。

IACCの魅力は、『人』を軸にした経営。

アマテラス:

実際に働いてみて改めて感じたIACCの魅力を教えてください。

竹下謙治:

まず、仕事を行っていく上で自由度が高いというのが一つの魅力ですね。放任ということもなく社員に仕事を任せるところがあります。

それは上村の考えとも共通するところかなと思っています。事業を軸に据えた経営だと、目標を成し遂げなくてはならないからあなたはこういう機能・役割ですよね、という管理になると思いますが、人を軸にした経営なので、事業を運営する上で、会社の価値観を踏まえた上で、あなた(社員)の考えや主体性により仕事を進めてください、ということですし、もちろん役割はありますけれども、個人が事業主のようなイメージです。
わたしどもは「アントレプレナー型」の組織体・事業モデルを目指しており、個別の事業開発の進め方等はチーム内で判断するようにしています。上から押し付けるというよりも、チームでリーダーシップを持って進めていくという考えが土壌にあります。そういうところも僕は気に入っている点ですね。

アマテラス:

上村社長のマネージメントはトップダウンというよりも任せて自主性を重んじる、というスタイルなのでしょうか?

竹下謙治:

それを目指している途上というところでしょうか。
例えば、この会社は、最初は人材紹介事業から始まっています。人材紹介事業の次は太陽光発電システムのユーザーと販売会社とのマッチング事業。太陽光マッチング事業の次は太陽光発電設備のサプライ事業。そして、いま取組中のリフォーム会社とユーザーとのマッチング事業。
今後は、リフォームのサプライもやりましょう、あるいはリフォームのキュレーションやりましょうと、広がっていくと思います。このような動きは現場発生的に広げているんですよ。もちろん、経営陣が事業として出すのか辞めるのかを判断するところはありますけれども。お客さんのニーズや現場の声があって、ボトムアップで事業が増殖している部分がありますので、そういうのは良いなと思います。

アマテラス:

とはいえ、ビジネスですから日々のプロセス管理などはしていると思いますがどのようにされているのでしょうか?

竹下謙治:

プロセス管理はホント、ガチガチにしている訳ではないですね。設立当初から2〰3年の間は売上重視の数字管理をしていたようですが、会社の規模や社員数なども増えてきて、今のフェーズに適した合理的なマネージメントスタイルにはなってきていると思いますし、私の立場からは会社のクオリティを高めよう!メッセージを発しています。

今の時点からさらに上を見た場合、やはり一人一人の能力をより出していかないといけないでしょうし、ただ売上げだけを拡大させて行くのではなく、上村が考えているような、次世代に残せるような感動あるビジネスを作ろうという考えに賛同してみんな集まっている訳ですから、それを裏切りたくないという思いもあるんですよね。それが100%出来ているかというと、まだまだですけど実現するためにどんどんアイデア出してやっていこうと話しています。

アマテラス:

IACCのメンバーは上村社長の理念に共感して集まってきている?

竹下謙治:

そうですね。僕自身もそうですけれども、やはり理念に魅かれて入ってきている人たちが多いですね。“理念は何か”というと、先ほど話した様に、『次世代に残せる事業』で『感動創造すること』ですし、ベンチャースピリットを持ってやりましょうということですし、事業開発型のワークスタイルを前提としているので主体的な人が多いですね。

主体的な人って、僕が感じているのは裏返しで、自分がやろうとすると相手の事を思いやるんですね。ある意味優しくするというか、困っている人がいたら手を差し伸べるという部分があります。ですから、社内にギクシャクした感じがあまりないというのでしょうか。

アマテラス:

主体的・自律的な人がベンチャーに合う人だと思いますが御社はどのような人材教育をされているのでしょうか?

竹下謙治:

特に形式だった研修などはしていないですが、OJTですね。

入社してIACCで働いていると結果として自主性・自律的なマインドになっていくと思います。
例えば入社して、「じゃあ今日はこれこれやってください」「これで報告出して、これやって、ここをやってください」、それで日々が過ぎていく、という単純な話にはならない。

そうじゃなくて、「こんなミッションだよね」という話をして、「後はホント、任せたよ」という感じになるんです。
そうすると自由感があると思うんですよね。そこで怠ける人なのか、あるいはどんどんやっていく人なのかと言うと、当然後者になってくる。そうするとますます良い循環というのか、これもあれもやりましょうということになってくるので「じゃあやってみたら」という雰囲気ではありますよね。

アマテラス:

主体的・自律的な企業文化、社風作りは本当に難しいと思います。同じようにしていてもなかなか実現できていない会社が多いと思いますが、なぜ御社はそういう空気を作れているのでしょう?

竹下謙治:

1つは組織が小さいということもありますが、組織が階層化されていないことがあると思います。みんなが経営陣とフラットに話せる。そして上村自身も色々取り組んでいるし、社員に任せてくれているし、じゃあ俺たちもね!というようなカルチャー的があると思います。

あとは、インフォーマルなイベントがけっこうあるのですが、心から楽しめるというかやらされ感が無いところがいいですね。例えば、最近社員旅行で沖縄に行きましたが、しょうがないから来たという人はいないんですね。
旅行だけじゃなくて、普通に飲み会の時もとても盛り上がるんですが、そうなるのは盛り上げ役になるような人がいることが大きいと思います。自然発生的なのか、そういう人がいることはとても大事だと思います。

アマテラス:

やはり人ですね。そういう潤滑油のような人は組織には必要ですよね。

竹下謙治:

IACCに色んな人がいると思います。社内にはいろんな事業が立ち上がっていて、その事業に必要なスキルを持った人たちが入ってきているので、社内がクロスカルチャー、多様性になっていることは面白いです。
インフォーマルなイベントでも、ファシリテーター(旗振り役)がいて、みんなが楽しめる感がありますね。

今後のキャリアプラン

アマテラス:

竹下さんは現在47才ですが今後のキャリアプランはどのようにお考えですか?

竹下謙治:

先ほどの自分年表じゃないですけれども、50才くらいでもう一旗あげたいと話しましたが、もう一回自分が熱くなれる場所を探していましたし、基本はここで骨を埋めるつもりです。個人で温めているビジネスアイデアの実現もないことはないですが、IPOというイベントが控えていますし、その後も上場会社としてはやることがたくさんありますので。

あとは、個人的にはIACCを最高の組織にしたいと思っています。IACCの社員はみんなそういう思いはあるのでしょうけれど、この場だったらなおさら良い土壌は持っていますので、組織作り、人づくりの仕事にずっと携わっていきたい部分があります。
何らかの形で、それが自分の中で達成感を感じたり燃え尽きるみたいな状況が来るかもしれないですけれど、それはその時に考えようかくらいの事なんですよね、今は。

アマテラス:

最高の組織を作りたいということですが、どのような組織でしょうか?

竹下謙治:

まだそれは模索している部分もありますが、シンプルですが、組織やそこに携わる人たちが豊かで幸せを感じていられるような組織かなと思っていますし、会社を通じたスマートライフの実現といったところでしょうか。

例えば、IACCが順調に大きくなってきて、人数が100人、200人、300人となった時に300人全体を満足させることは難しいことでしょうけど、だからこそ、そこにチャレンジすること自体に価値があり、それがライフワークになっていくのかもしれません。

上村ともこのあたりは考えが合うところですが、人生を託していけるというか、その組織で歩んで行きたいと思える会社にしたいですね。「ここ(会社)は修行です」というような組織はあんまり僕は好きじゃないんですね。

例えば、今いる20代の人たちが、40歳になりましたと、結婚して、子供もできて、家を持って、、というライフイベントがあって、そこまで考えて、何かサポートできるような組織でありたいんですね。大きな上場企業だったら、当たり前なのかもしれませんけれども。月並みですけど、人生を豊かにする。例えば、勤続何年休みとかでなくて、1年目から5年目の間にあなたの仕事のサイクルとか、あるいは何か行き詰ってフェーズを変えたいという時に、1カ月海外に行ってもいいよ、半分お金を出しますというような。個人の人生を豊かにして刺激できるようなところを仕組みとして持っている会社が理想ですね。

ベンチャー企業へ転職活動で気をつけるべきことは、経営者の見極めに尽きる。

アマテラス:

竹下さんのようにシニアで、経験、実績がある方のベンチャー企業への転職活動で気を付けるべきことなどありましたら、教えてください。

竹下謙治:

やっぱり人ですね。経営者の見極めです。ここについては年齢や経験、実績などはあまり関係ないかもしれません。
会社の理念が素晴らしくて社長もよい話をしてくれたとしても実際に入社してみると言っていることとやっていることが違う人たちがいます。そこの見極めはとても重要です。

経営者や会社の周辺情報を事前に取れればよいですが、ネット掲示板の情報や評判は参考になっても信憑性に薄い。やはり経営者と直接じっくり話して最後は相性や感性かな。

そのために、僕は、経営者との面談では自分の考えを100%出して、そこで理解をしあえるかどうかを見極めていきました。
面談で完全に相互に理解できるかは難しいと思いますがコミュニケーションの質だけでなく、長く話せば話すほど分かり合えてくる部分が多いのも事実だと思うんですね。悪い所も見えてくるのでしょうけども、ちゃんと腹を割って話せば誤解が解けたりします。だから、雑談も含めていろんな話をして、そこで好きになったり、あるいは嫌な部分が見えてくるのかもしれないですけど、おかしいと感じたらそれ自体もどんどんどん話す。
それで納得できるところまで話すべきだと思います。

経営者にコンタクトができる人材エージェントを探した

アマテラス:

今回ベンチャー企業に転職するにあたり、具体的にどのような活動を行いましたか?

竹下謙治:

自分は年も年だし(笑)、軸を絞って、IPOを目指していて、社長がしっかりしている会社を探そうと考え、経営者に直接コンタクトができる人や人材紹介会社を探してきました。まずは身近な人や私の知り合いの人たちでベンチャー経営者と付き合いがある人に声をかけて、IPOしそうな会社やこれからベンチャーで伸びていきそうな会社はないかと属人的にファインディングしました。

ベンチャーキャピタルにもあたりました。ベンチャーキャピタルだと出資先の社長を知っているので、投資先のベンチャー経営者を紹介してもらったりしました。

それからベンチャー経営者に直接コネクションがあって、エグゼクティブ層、経営幹部層に強い人材エージェントを探しました。ベンチャー、転職、優良ベンチャー、というようなキーワードでネット検索していて株式会社アマテラスを見つけました。ベンチャー専門の人材紹介会社でベンチャー経営者と直接やりとりをしているというのを見て、アマテラスに面談の依頼をしたんですよ。

大手の人材紹介会社やベンチャー企業を扱っていると謳っている他の人材会社にも登録しました。

アマテラス:

実際に活動してみて意味のあった活動、意味がなかった活動など教えていただけますか?

竹下謙治:

意味があったのは、藤岡さんのような経営者との直接的なネットワークがあるエージェントとの出会いです。
他のエージェントで有名な方にもかなりサポート頂いたのですが、案件の紹介だけでなく精神的にも勇気づけていただいたのは良かったですね。
私は、結果としてベンチャーエグゼクティブのプロであるアマテラス藤岡さんからIACCの上村社長を紹介いただいたのでこれが良かったです。アマテラスからはIACCさんのほかにも数社ポンポンと紹介いただきましたが、それぞれのベンチャー企業の経営状況、良いところだけでなく懸念点や経営者との相性なども事前にアドバイスを聞けたので、それは良かったですね。

一方で大手ではない人材エージェントですと年齢で判断されて人材エージェントの担当者にすら面談を断られることがありました。

大手の人材エージェントにも登録しました。大手だけあって案件の量はあるのですがどうもミスマッチしてしまうんですよね。自分の経験、年齢、年収から判断されるとどうしても大企業を推薦される。ベンチャー希望ですと話すと数がグーっと絞られてきますし、大手の人材エージェントだと担当者がベンチャー企業の詳細な企業情報や経営者との相性まではなかなかアドバイスできなくて話がうまくかみ合わなかったですね。担当者がベンチャー経営者と会っていないのでこれは仕方がないのかなと思いました。

結局、トータルで10社くらい受けましたね。内定を複数いただくことができましたが上村との出会いで決まりました。

 

転職活動時の心の支えになったのは・・・

アマテラス:

シニアになってからの転職活動は不安も大きいでしょうし、心が折れそうになることもあるのでは?

竹下謙治:

それはもう毎日不安で心が折れそうになりました。私は前職を退職をし区切りをつけてから転職活動をしていたので、収入がない状況で、生活コストかかります。しかもこれまで天引きだった健康保険とか年金とかの支出もある訳ですよね。暇もあるし自分で年金などを払込みに行くんです。そうするとね、当然預金残高は減っていき、、、何やってるんだろう俺、、って辛くなります。
面談が進んで最終段階でご縁がありませんでした。となると本当に落ち込みました。

アマテラス:

どうやって折れそうな心を支えていたのですか?

竹下謙治:

1つはひたすら自己啓蒙していました。自己啓示というか、自己啓蒙というか、四六時中「ネガポ…、ネガポ」とずっと言っていました。(笑)

アマテラス:

ネガポ?

竹下謙治:

ネガティブなことをすべてポジティブにとらえ返すという意味です(笑)
例えば、落ちました、落ちたのはまあ必然だ、逆に次のチャンスを与えてもらったな、これは良かった、次いいところがあるサインだなと思ってよしまたやろうと。

あと、他エージェントの担当してくれた女性の方のコミュニケーションには助けられました。「状況どうですか?」とか「元気ですか?」とか、案件以外の何気ないやりとりなのですが、孤独な状況ですし、自分のことを気にかけてくれる人がいて、まめに連絡をしてくれると不安が和らいでいくんですね。

こういうOne to One のコミュニケーションは救われましたね。そうやってコミュニケーションがあると自分自身も落ち込んでいられないなと思う訳ですね。先ほど言ったように、気持ちを当然切り替えてやる。これはすごく大事だなと思います。

アマテラス:

やっぱり人には承認欲求があるから、 人から見てもらえている、気にしてもらえている、評価してもらえているというだけで、嬉しいところがありますよね。人材エージェントとしての価値はそういうところにもありますよね。

竹下謙治:

そうそうそう。転職活動中は不安になるので、気にしてくれる人がいて、コミュニケーションしてくれるってすごく大事だと思いますよ。これ自体がビジネスになるんじゃないかっていうくらいに僕は思っています、実体験として。

転職活動における人材エージェントの役割・価値とは・・・

竹下謙治:

ベンチャー企業でマネージメント層として活躍したいという方は、ベンチャー企業やベンチャー経営者の「真贋」を見極めるといういもでも、その専門分野のエージェントとタッグを組むくらいの心がけが大事かと思っています。個人ではなかなか得られない情報やネットワークをもっていますので、それは大きな価値ですし有効活用した方がよいと思います。

そして自分にとってエージェントとは、先ほど話した転職時の不安や孤独感を癒してくれる意味でもとても価値あるものでした。そして人材エージェントとは、ビジネスライクな話だけではなくて、普段思っている事など多様な話をして、エージェントの方にまずは自身のことを理解してもらったり、あるいは分かち合えるような関係作りというのはとても大事かなと思いました。人材エージェントの方も人間なので、理解しあうことで、より何とかしたいと思ってくれると思いますし。

アマテラス:

最後にチャレンジしようとしている主に同年代の方にメッセージをお願いします。

竹下謙治:

そうですね。自分のようなシニアな方がベンチャー企業、スタートアップにチャレンジしようというのは、それだけまずは「志」が高い!ということなのかと思います。

そういう方は、自分の為、家族の為というのもあるんでしょうけど、“世の為・人の為”、という部分が大きいのだと思います。

“自分にとっての世の為・人の為って何だろう”という価値観をしっかりもっていれば、いろんな巡り会いがあって、まだまだ大きなことができると思います。

アマテラス:

竹下さん、素敵なインタビューありがとうございました!

この記事を書いた人

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藤岡 清高

株式会社アマテラス代表取締役社長。iU 情報経営イノベーション大学客員教授。 東京都立大学経済学部卒業後、新卒で住友銀行(現三井住友銀行)に入行。法人営業などに従事した後に退職し、慶應義塾大学大学院経営管理研究科を修了、MBAを取得。 2004年、株式会社ドリームインキュベータに参画し、スタートアップへの投資(ベンチャーキャピタル)、戦略構築、事業立ち上げ、実行支援、経営管理などに携わる。2011年に株式会社アマテラスを創業。 著書:『「一度きりの人生、今の会社で一生働いて終わるのかな?」と迷う人のスタートアップ「転職×副業」術』

株式会社アイアンドシー・クルーズ

株式会社アイアンドシー・クルーズ
http://www.iacc.co.jp/

設立
2008年06月

《 Mission 》
Impression at All Moments 〜すべての瞬間に感動を〜
《 事業内容 》
太陽光発電/エネルギー事業 リフォーム/住生活事業 自動車/その他事業