シニアベンチャー/スタートアップを見分ける3つのポイント

高齢化社会突入に伴い急拡大しているシニアビジネス。社会的意義もあるだけに、ベンチャー企業/スタートアップにも大変注目されている分野のひとつです。アマテラスでも複数の企業が登録されており、採用ニーズもとても活発に行われている領域であります。

しかしシニアビジネスというと、補助金(介護保険など)に頼りがちなビジネスである・問題意識がわからない・クールじゃないなどネガティブなイメージを持たれがちの企業ではあります。事実アマテラスに転職相談を申し込む方でもあまり興味を持たれない分野です。

ただ故にシニアベンチャー/スタートアップは、優良なものを見分ければ成長分野かつライバルの少ない領域であり、転職者の皆様にとって大変実績を作りやすい分野になっています。ではどのようにして優良なものを見分けるべきでしょうか。アマテラスでは以下の3つのポイントを見分け方として提案いたします。

1.最新技術・アイデアを用いた企業なのか。

マツコロイドで有名な石黒浩氏が開発した技術を使った株式会社テレノイド計画の高齢者向けアンドロイド。このような最新技術を使う企業こそがシニアベンチャー企業/スタートアップと呼ぶべきだろう。(https://amater.as/companies/173/)

冒頭でも述べたように、シニアベンチャー企業/スタートアップと名乗る企業は増えています。実際TechcrunchやTHE BRIDGEなどのテクノロジー系のメディアでも取り扱われるケースが増えてきました。

 しかしシニアベンチャー企業/スタートアップと名乗る企業の事業内容は、注意する必要が有ります。実際単なる老人ホームやヘルパー派遣会社が「ベンチャー企業」と自称している場合もあり、玉石混交状態であると言っても過言ではありません。アマテラスでもシニアベンチャー企業と名乗る企業に就職したけれども実態は普通の老人ホーム運営会社だった・・・という失敗談を話す転職希望者の方にお会いしたことがあり、その深刻さを実感しています。そのため「シニアベンチャー企業/スタートアップと名乗る会社がやっている事業が本当に社会を変えうる革新的な事業か」という点には、大いに注視すべきです。

事業の見分け方としては、該当するシニアベンチャー企業/スタートアップが用いている技術やアイデアが新しいものであるかを見るというやり方が有効です。例えばロボティクスやカメラシステムなどのハード面の新規性・WEBなどのITリテラシーは、興味ある企業の担当者に十分に聞く必要が出てくると思います。

 またシニアビジネスのどの部分に注目している企業か、という点も重要な点です。例えば株式会社こころみが提供する会話型コミュニケーションツール「つながりプラス」、AmazingLife株式会社が提供するスマホで火葬依頼のできる「シンプル火葬」など他企業での参入があまりない事業内容であるかは大いに注目すべきといえるでしょう。

2.国の補助金に頼らない収益源を確保しているか。

ディチャーム株式会社の訪問美容。福祉施設で営業するがサロンにいるかのような装飾を行うのが特徴だ。補助金適用外となるこのようなビジネスこそシニアベンチャー企業/スタートアップが取り組むべき領域といえよう。(参考:http://ameblo.jp/dignitycharm-blog/entry-12124335422.html

シニアビジネスというと、介護診療など国の補助金に頼っているイメージを持たれている方も多いかと思います。事実近年シニアビジネスに参入した企業にはこれが狙いである場合が目立ちます。

しかしこのような保険金・補助金目当ての企業をベンチャー企業/スタートアップと呼んでもいいのでしょうか。アマテラスではそうは思いません。なぜなら保険金・補助金は国によって定められた仕組みであり、その枠を超えてビジネスを拡大することができない仕組みだからです。実際行っていい事業領域・貰って良い報酬金額なども厳しく定められています。そのため社会を根本から変えようとするベンチャー企業/スタートアップの取り組みには合いません。

それゆえにシニアベンチャー企業/スタートアップは補助金に頼らない資金調達や事業展開を行う必要があります。例えばディチャーム株式会社は介護・福祉のあらゆる領域に参入している企業として知られますが、事業内容は老人福祉施設への訪問美容や訪問エステ、通院が困難な方への訪問歯科、若い頃に買っていたものなどの細かいニーズに応える買い物代行など、介護保険が適用されないもののみに限定されています。補助金の適用されないこれらの領域については、参入企業は少ないものの、シニアの方々に実際あるニーズであることから好評を博しています。シニアビジネスは保険適用外であっても裾野が広い産業です。国の規制でがんじがらめの補助金適用ビジネスよりは、適用外のところからシニアの隠れたニーズを拾う企業に注目してみるとよいかと思われます。

3.海外にも目を向けているか。

シニアベンチャーの専門アクセレーターであるAging2.0は、2015年に東京を含め世界29都市でピッチイベントを開催。シニアベンチャー企業/スートアップが世界中で出てきていることを象徴している。(参考:http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20150821/432622/?ST=ndh&P=2)

介護や福祉といったシニアビジネスというと縮小中の日本国内マーケットばかりで海外進出の面白さがない」ということを理由にシニアベンチャー/スタートアップへの転職ないし起業を諦める方はいらっしゃるかと思われます。「日本は世界でも屈指のスピードで高齢化が進んでいる。」という話はマスコミなどでよく聞かされる話ではあり、事実日本の高齢化は相当に進んでいます。

 しかし、高齢化が進んでいる国は日本だけではありません。高齢化は韓国、ドイツ、イタリアなどの先進国固有の問題となっています。特に注目されるのが中国や東南アジア諸国です。高齢化社会に突入する(人口に占める高齢者の比率が7%から14%へと倍増する)までのスピードは非常に急激で、タイ22年・マレーシア23年・中国24年と日本の24年とほぼ同じかそれ以上という予測値が出されています。このスピードが急激であるために中国やASEAN諸国の場合、高齢化社会に突入するまでに一人当たりGDPが先進国水準にまで至らず、「豊かにならずに高齢化」という世界のどの国も体験したことのない現象に直面する可能性が叫ばれています。

 この時代背景のため、「国全体としての経済成長・財政の限られ得る国の施策に頼らずに如何にして高齢化社会に対応していくか」という問題は、民間企業で解決すべきである、と考えられる世界的な問題となっています。当然新たなアイデアを持つベンチャー企業/スタートアップに期待する声も大きくなっています。実際海外には、Aging2.0という専門アクセレーターが存在するほどです。

このように高齢化は世界各国で問題視されているものであるため、よいサービス・よい企業が出て来れば世界で勝負できる可能性も十分に秘めています。海外進出を目指したい皆様にも十分チャレンジングな領域であるといえるでしょう。

シニアベンチャー企業/スタートアップは規模が小さいだけに、現状では日本国内にとどまっている場合が多いかと思います。ただ市場の潜在規模が大きいだけに国内だけでなくいずれは海外にも、と考えている企業は非常に先見の目がある企業ではないかと思います。そのようなことを社長が話す場合は、優良シニアベンチャー企業/スタートアップの条件を満たしていると思います。逆に高齢化を国内特有の問題と考えている場合には注意が必要ではないかと思います。

参考文献

苅込俊二(2008)「東アジアにおける高齢化の進展と政策的対応の課題」みずほ総研論集 2008年Ⅳ号http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/argument/mron0811-2.pdf

この記事を書いた人

アバター画像


アマテラス編集部

「次の100年を照らす、100社を創出する」アマテラスの編集部です。スタートアップにまつわる情報をお届けします。