20代でベンチャー・スタートアップへの転職を考えている方へ

“一度きりの人生、何かを成し遂げたい。”

“自分は何者かになりたい”

20代の頃はこのような熱い思いを持ちながら、どうすればよいかわからず情熱が空回りしている方が多いと思います。(私もそうでした。)

私は仕事上、何かを成し遂げた、もしくは成し遂げつつあるCEOと仕事する機会が多いのですが、彼らの多くは以下のようなキャリアを送ってきています。

起業家キャリアモデル(アマテラス版)

20代

既存企業(日系・外資)でビジネスの基本を身につける

20代後半~30代

スタートアップで修羅場をくぐる。
そしてボコボコにされる。全否定される。自信をなくす。
ただし、失敗してもやり直しがきく。

30代~40代

起業・独立。

40代~50代

何かを成し遂げる。



このことから言えることは成功した(しつつある)起業家や経営人材は、若い頃(20代後半~30代前半)に経営に近いところで仕事をして挫折を味わっていることです。そこでの経験を経て、自ら起業し、10年近い長い時間をかけて社会を変えたといえるようなレベルまでサービスを創っています。

『経営』は『経営』しないと学べない。

また、経営は累積経験が効くことが特徴です。一度経営者として成功した人は特定の分野に関わらず経営者として力を発揮しています。例えば、京セラで経営者をしていた稲盛さんが、異業種であるJALの経営者に就任して結果を出しました。

シリコンバレーではシリアルアントレプレナー(連続起業家)という言葉がありますが彼らは一度経営者として成功した後に、再び起業し成功しています。有名なタクシー配車スタートアップの『UBER』の創業者、ギャレット・キャンプ氏は最初にウェブサービスの事業で成功し、そこでの経営経験を活かしてUBERを立ち上げています。

一度、経営者としての経験をした人がコツを掴み、異業種でも経営スキルを活かせることは多くの経営者が証明しています。

つまり『経営』は累積経験が効くスキルだということです。

『経営』に関われるチャンスが多いのはスタートアップ。

ではどうすれば20代で経営に関われるのか?

その答えは『スタートアップ』への参画です。

スタートアップでは以下のような環境があります。

・経営者が近くにいる。

・すべての社員に経営意思決定に関われる(本人次第)。

・経営環境が大きく変化するフェーズのため、経営意思決定の数が多い。

・社員が増加(もしくは減少)して、組織の変化率・変化幅が大きい。それに伴い、組織マネジメントも変化する。

・組織拡大とともに自身のマネジメント人数も増加。

つまり経営の疑似体験ができる場です。

このような経験を当事者として関わっていくことは、大企業の場合は一サラリーマンでは難しく、役員クラスになればできますが、そうなるまで数十年待つことが一般的です(待てば役員クラスになることが保証されているわけでもありません)。

ですがスタートアップであれば、若くしてこのような経験を積むことができ、経営者としてのキャリアパスを若くしてスタートすることができるわけです。

スポーツと同様、ビジネスでも基礎は必要。丁稚奉公の勧め。

では、大学を卒業していきなり起業したり、スタートアップに飛び込んで『経営スキル』を習得していくのが良いキャリアパスか、というと必ずしもそうではないと思います。サッカーでいえば、ボールを止める、蹴る、ドリブルするという基礎スキルがなければ、どんなに足が速くて、体が強くても試合で活躍できないように、ビジネスでも基礎は大事です。

ビジネスの基礎とは、

・人との約束を守る、時間を守るというマインドセット

・報告、連絡、相談するというコミュニケーションスキル

・敬語の正しい使い方、挨拶といったビジネスマナー

という中学生で教わるようなことです。しかし、実際のところこれすらできていない社会人が少なくないというのが現実です。

社会人のスタートはしっかりとしたメンターがいる環境で、ビジネスの基礎を習慣として身に着けるべきだと思います。

どんなに才能や能力があっても、ビジネスの基礎がない人は仕事で成果を出すことは難しいでしょう。約束を守らない人、失礼な言葉遣いをする人、時間にルーズな人、、このような人で成功した人を私は見たことがありません。そして、このような人は若い同年代の仲間うちでやっているサークルのような会社の人によく見られます。せっかく高い能力に恵まれながら、マナーを知らないために成長の機会を失うのはもったいないことです。

具体的にビジネスの基礎を身に着けるためには、教育の体制が整った会社に入ることや模範となる上司、経営者がいる会社で働くことだと思います。

日本の大企業の良き文化として、幅広い年齢層の社員がいて社員教育をしっかり行うことがありますので、最初に大企業に入ることは1つの方法です。一方でスタートアップでは、目先の仕事に忙しく社員教育に十分な時間を割くことが難しいことが多いのですが、それでも模範となる経営者がいたり、社員教育に熱心な文化をもつ会社であればよいでしょう。

もっとも欧米のように学生時代からインターンを通じてビジネスの基礎を習得していればより早く経営の道に入っていけると思います。日本にもインターンの文化が根付いてきているので良い流れだと思います。

手前味噌ですが弊社の学生インターンは、私の近くで仕事をさせ、スタートアップCEOとの商談にも同行させ、できる学生にはクライアントCEOとのコミュニケーションも任せています。経営意思決定も透明にして関わらせるため1年も働けば、基礎となるビジネススキルやマナーはできるようになっています。

44%の男性が嫁ブロックを理由に内定を辞退。 リスクを取ってスタートアップに飛び込めるのは20代の特権。

『嫁ブロック』という言葉をご存じでしょうか?

転職することを奥様にブロックされる、という現象です。大手人材会社の調査データ(出所:2016年エン・ジャパン調査:30代以上の男性256人から回答。)では

30歳以上の男性の24%が“嫁ブロックをされたことがある”と回答しています。(図1)。


そして、嫁ブロックの主な理由が『年収が下がる』ことです。(図2より)

さらに嫁ブロックを受けた方のうち44%の人が内定を辞退しているようです。(図3より)

【図3】(嫁ブロックをうけたことがある方)嫁ブロックを理由に内定を辞退したことはありますか?

働くにあたり家族の理解や協力は必要なので、奥様の意見はとても重要だと思います。

残念ながら日本では大企業や中堅企業からスタートアップへ転職すると年収が下がるのが現実です。自らの意志でスタートアップにチャレンジできるのは若く独身の方の特権とも言えるでしょう。家族の理解を得られたうえでのスタートアップへの転職はよいですが、実際にはスタートアップが継続成長していく確率はとっても低いので、生活に不安定さをもたらすリスクはあります。まだ独身で自由な状況だからこそチャレンジできることもあると思います。

人が、死を前にして本気で後悔することとは? そのときの言葉をまとめた本、『The Top Five Regrets of The Dying』によれば、ある看護師が末期患者と接するなかで、彼らが口にした後悔の言葉で最も多かったのが

『他人が自分に期待するような生き方ではなく私自身に素直に生きれば良かった』

ということだそうです。

ビジネスパーソンにとっては時間の多く仕事の場で過ごすことになるので好きな仕事にチャレンジできるかどうかが人生の幸福度を決めるといっても言い過ぎではないでしょう。

後悔ない人生は20代での決断から。

皆様の周りで輝いている人やなりたい人はどのような人でしょうか?

私は20代の頃、いわゆる大企業に勤めて死んだような目をして働いていました。上司や先輩達を見てもなりたい姿がそこにあるとは思えませんでした。その時、私にとって輝いていると感じている人達は夢に向かって真剣に取り組んでいるベンチャー経営者達でした。成功もしていない彼らがキラキラと輝いていた理由は、自分自身に素直に生きていたからだと思います。

そして20代でベンチャー・スタートアップの世界に飛び込んだ自分は、例にもれず最初はボコボコにされましたがそれでもその状況を楽しめていました。20代の決断があるからこそ、今も楽しく仕事ができていると思っています。

自分自身に素直に生きる。20代の今こそ真剣に考えてほしいと思います。

この記事を書いた人

アバター画像


藤岡 清高

アマテラス代表取締役CEO。iU 情報経営イノベーション大学客員教授。 東京都立大学経済学部卒業後、新卒で住友銀行(現三井住友銀行)に入行。法人営業などに従事した後に退職し、慶應義塾大学大学院経営管理研究科を修了、MBAを取得。 2004年、株式会社ドリームインキュベータに参画し、スタートアップへの投資(ベンチャーキャピタル)、戦略構築、事業立ち上げ、実行支援、経営管理などに携わる。2011年に株式会社アマテラスを創業。 著書:『「一度きりの人生、今の会社で一生働いて終わるのかな?」と迷う人のスタートアップ「転職×副業」術』