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会社生存率は設立10年でわずか6%。成長するスタートアップ転職先を探すのは高難度。
いざスタートアップに転職をしようと思ったとき、あなたはどのように行動しますか?
ネット検索をすると、膨大なスタートアップが出てきて途方に暮れてしまいます。日経新聞が新鋭注目企業として新聞で取り上げたベンチャー企業数だけでもここ5年で約3,000社もあります。一方で日本の会社生存率は起業してから5年で14%、10年で6%、20年で0.4%(国税庁調査)という厳しい現実。
貴方の人生を賭ける1社を見極めるのは困難を極めます。
そこで、優良なベンチャーキャピタル(以下VC)の投資先を狙うというのは1つの有効な手段です。
楽天もDeNAも創業間もない時からVC投資を受けて成長してきました。
VCは投資家から集めた資金を将来性あるスタートアップに投資してEXIT(IPOやM&Aによる投資回収)によるキャピタルゲインを得る仕事です。そのためVCはスタートアップ業界に情報網を貼り、将来のエクセレント企業を血眼になって探しています。
その中でもしっかり結果を残している優良VCの投資先の中には将来性豊かな会社がある可能性が高いです。
私もドリームインキュベータという会社でベンチャー投資の仕事に携わってきましたが、厳しいプロフェッショナルな世界でした。ベンチャーキャピタリストは結果が全てですので、3年もすると結果、つまりトラックレコード(IPOやM&Aによる投資先のEXIT実績)が数字になって現れはじめます。VCの評価は何社に投資したかではなく、投資先がどれだけEXITして、どれだけのキャピタルゲインを得たかです。
そして良いVCとは、以下2つの能力があります。
・優秀な経営者、伸びる事業を見極める目利き力
・経営アドバイス力(経営コンサルティング能力および経営者のメンタリング)
VCの真価が試されるのは投資したあとにEXITまで持っていく力ですので①よりも②の能力がより重要と言えるでしょう。VCの善し悪しを見極めるには、投資先を見るよりもトラックレコードを見る事です。特にリードインベスターと言われるVCは一番槍を入れた投資家で最もリスクを取り、経営者とともに成長をドライブさせてきたので尊敬されるべき存在です。
参考例
・DeNAのリードインベスター: 日本テクノロジーベンチャーパートナーの村口氏
・ランサーズのリードインベスター: GMOベンチャーパートナーの宮坂氏
・Facebookのリードインベスター: Peter Thiel(ピーター・ティール)
スタートアップを成長させることが出来るVCには良い経営者が集まります。一方で単におカネを出すだけで、経営アドバイス・メンタリングができないVCには良い経営者が集まらずに生き残れないという構図です。シリコンバレーのVCは質が高いと言われるのは、実際に起業し会社を成長させてEXITしてきた経営経験者がVCとなっているからです。彼ら自身が経営者として修羅場をくぐり抜けてきたからこそ経営者にリアリティあるアドバイスができるのです。プロはプロとしか仕事をしません。一流のCEOには一流のVCが投資しているとも言えます。
逆にいえば、怪しい投資家、VCが入っているスタートアップは要注意です。投資家のトラックレコード、経歴、評判をネット検索してみることを勧めます。
企業ステージに応じて、投資家・ベンチャーキャピタルの顔ぶれは変わる。
ベンチャー企業の成長ステージはシード、アーリー、ミドル(ステージA)、レイター(ステージB,C)のように区分されます。それぞれのステージごとに強みを持つVCがありますので、参画したい企業ステージに応じてVCを探し、その投資先を探すというのは1つの手です。
シードステージのスタートアップへの転職
シードステージは起業直後と位置づけられ、おおむね会社設立の時点から1~2年目までの時期で、シードステージに投資を行う投資家はエンジェル投資家とも呼ばれます。社員数は数名程度。
いわゆる「準備」の段階です。アイデア、事業計画はあるが具体的な製品(プロダクト)やサービスに落とし込めていないという段階です。まだ会社が設立されていないことも多くこの段階では発案者とその仲間が別の会社に勤めながら「ビジネスが具体的に進められるのか?」、「ゴールするまでの計画は完璧なのか?」を試行錯誤している状況です。エンジニアや専門スキルを持つような人を外部から採用するニーズがでてきます。このような会社に参画したい場合はエンジェル投資家の投資先、投資ターゲットを狙うのがいいでしょう。
エンジェル投資家
川田尚吾氏(ディー・エヌ・エー共同創業者)
木村新司氏(グノシー・アトランティス創業者)
山田進太郎氏(メルカリ・ウノウ創業者)、
佐々木正(シャープ元副社長)
伊藤穣一(MITメディアラボ社長)
笹森良氏(フンザ創業者)、
赤坂優氏(エウレカ創業者)、
佐藤裕介氏(フリークアウト・イグニス創業者)、
中川綾太郎氏(ペロリ創業者)
など
アーリーステージのスタートアップへの転職
立ち上げた事業が軌道に乗るまでのステージで、会社設立から2~5年程度の時期です。社員数は数名~10名程度。できるだけコストを抑え、高速でプロダクト(β版)のPDCAを回してユーザーニーズを探っていきます。ほとんど売上がない状態のため、資金的余裕はありません。運転資金、設備投資、プロモーションの資金を必要としたり、特許権などの知的財産を活用する研究開発型(大学発ベンチャーなど)のスタートアップはそれらの取得費用も必要となります。
このような会社に転職したい場合は、アクセラレーター・インキュベーターの投資先は参考になります。
アクセラレーター・インキュベーター
docomo Innovation Village
KDDI∞Labo(ムゲンラボ)
MOVIDA JAPAN(モビーダ)
Open Network Lab
サムライインキュベート
サンブリッジグローバルベンチャーズ
インキュベイトファンド
J-Seed Ventures
Femto Startup
Nippon Technology Venture Partners
partyfactory
クロノスファンド
イーストベンチャーズ
アーキタイプ
など
ミドルステージ(ステージA)のベンチャー・スタートアップへの転職
・サービス・製品がある
・少数だがユーザーがいる
・少人数のチームがある
事業が軌道に乗り始め、事業展開を本格的に進めていく時期です。社員数は10~30名程度。
勝ちパターンが見え始め、急激に社員数が増えるタイミングです。ミドルステージでは独立系VCやコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)からの投資が多いのが最近の特徴です。このようなステージの会社に転職したい方はベンチャーキャピタル、コーポレートベンチャーキャピタルの投資先を参考にしましょう。
独立系ベンチャーキャピタル
IVP
DCM
WiL
GLOBIS CAPITAL PARTNERS
Femto Growth
VoyageVentures
ImproVista
insprout
モバイル・インターネットキャピタル
リード・キャピタル・マネジメント
サンエイト
B DASH VENTURES
NVCC(日本ベンチャーキャピタル)
日本アジア投資
日本みらいキャピタル
アイシーピー
アントレピア
ウィズ・パートナーズ
バイオフロンティアパートナーズ
ドリームインキュベータ
Innovation Engine
東京大学エッジキャピタル(UTEC)
WERU Investment
エンゼルキャピタル株式会社
フューチャーベンチャーキャピタル など
コーポレートベンチャーキャピタル
GMOベンチャーパートナーズ
YJキャピタル(Yahoo)
オプトベンチャーズ
KLab Ventures
Gree Ventures
リクルートグローバルインキュベーションパートナーズ
gumi ventures
サイバーエージェント・ベンチャーズ
ベンチャーユナイテッド
Intel Capital Japan
DG Incubation
ベクトル
アイ・マーキュリーキャピタル株式会社(mixi)
伊藤忠テクノロジーベンチャーズ
三井物産グローバル投資、など
レーターステージ(ステージB、C)以降のベンチャー・スタートアップへの転職
・サービス・製品にユーザーが一定以上いる
・収益モデルの仮説が検証され始めている。勝ちパターンが出来つつある。
・組織が確立してきている。組織別チームがある。
収益モデルが確立されつつあり、損益分岐点を超え、単年度損益が黒字化しているステージです。
社員数は30-100名程度。成長から成熟に移りつつ、属人的な仕事の進め方から仕組みや組織による進め方に代わり、合理的な経営へ移行していきます。IPO(株式公開)の準備開始、新卒採用を始めるなどの兆候もでてきます。
レーターステージの投資家の特徴として、金融系VCや政府系VCからの出資が増えてきます。このステージのスタートアップに転職したい人は金融系VCや政府系VCの投資先を参考にしましょう。
金融系ベンチャーキャピタル
ジャフコ
三菱UFJキャピタル
みずほキャピタル
SMBCベンチャーキャピタル
ニッセイ・キャピタル
新生企業投資
大和企業投資
三井住友トラスト・キャピタル
東京海上キャピタル
三井住友海上キャピタル
安田企業投資
SBIインベストメント
オリックス・キャピタル
MUハンズオンキャピタル
りそなキャピタル
ネオステラ・キャピタル
Fidelity Growth Partners など
政府系ベンチャーキャピタル
DBJキャピタル
産業革新機構
東京中小企業投資育成
名古屋中小企業投資育成
大阪中小企業投資育成 など
業種カテゴリーごとに強いVCがいる。
もし転職したい業種カテゴリーが絞りこまれているのであれば、その業種に強みがあるVCの投資先を狙うというのも有効です。
大学発ベンチャー、次世代の最先端技術に強いVC
・東京大学エッジキャピタル(UTEC)
・産業革新機構
投資先スタートアップの創業者が教授や研究者のため、経営者タイプでないことも多く、CEO募集案件があることも特徴です。
大企業の知財・技術連携。グローバルビジネスに強いVC
・WIL
シリコンバレーでVC経験のあるメンバーが創ったVC.
Sonyと共同で作ったスマートロックベンチャー、Qrioなどの案件も手掛ける。
IT系に強いVC
・サイバーエージェント・ベンチャーズ
ITメディア事業を運用してきた強みを活かして、IT企業とのシナジーを生む投資が強み。
エネルギー・環境・サステナビリティー関連に強いVC
・環境エネルギー投資
環境エネルギー関連に特化し持続可能性社会に貢献するスタートアップに投資。
地方創生関係に強いVC
・グロービスキャピタルパートナーズ
グロービスさんは幅広い業種に投資してきた実績がありますが、最近は地方創生案件にも力を入れているので、地方の有望スタートアップや地方創生に貢献したい方は投資先をチェック。
アメリカの有力VCからスタートアップを選ぶ。
スタートアップの聖地、シリコンバレーで働きたいという方は、シリコンバレーの有力VCの投資先から探すことも有効です。シリコンバレーで有名なVC、エンジェルを紹介します。
・SEQUOIA (セコイア)
主な案件:Apple、Google、Yahoo!
・Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)
主な案件:Instagram、Skype、Groupon
・Founders Fund(Peter Thielピーター・ティール)
主な案件:Facebook、スペースX、Airbnb
・Kleiner Perkins(クライナーパーキンス)
主な案件:Twitter、Google、Amazon
・Kohsla Ventures(コースラベンチャーズ)
主な案件:Hyperloop Technology、Square、Boku、
・GV(Google Ventures)
主な案件:UBER、ブルーボトルコーヒー、Angellist
スタートアップ転職の決め手は“CEO”。必ずCEOに会って自分の感覚で確かめる。
本文で挙げたVC、エンジェルといったプロフェッショナルな投資家の目利きを利用してスタートアップ選びをすることはとても有効ですが、彼らはあくまで投資対象(上場するかどうか)としてスタートアップを見ているのであって“働く場所”としてよいかどうかは見ていません。通常VCは上場すると株式を売り切っていなくなります。しかし会社は上場後も継続していくわけですし、そこで働く貴方にとっては大事な職場です。
VCの投資先は転職企業選びの“参考”にはなっても決め手にはなりません。
ではスタートアップ転職の決め手は何かといえば、“CEO”です。
スタートアップ選び=CEO選びといっても差し支えなく、働く距離も近く、最終意思決定者であるCEOとの関係性や相性はあなたの職場における満足度やモチベーションに大きく影響します。
また、ベンチャーの世界は環境変化が激しいので会社が生き残るために事業内容、ビジネスモデル、社員の顔ぶれさえも変化していきますがその中で変わらずにいるのは創業者であるCEOです。
このCEOと一緒に働きたい、このCEOとなら困難をともに乗り越えられる、失敗しても後悔しない、と思えるCEOを見つけることがとても大事です。
スタートアップ転職では必ずCEOに会って、妥協せず、納得いくまで話して見極めてください。
良いVCが投資をしていて、事業内容に将来性を感じたとしてもCEOに共感できなかったり、違和感を感じたら考え直す勇気も必要です。
貴方の人生の戦略に、良いCEOとの出逢いを。
以上