円満退職をするための退職交渉の進め方とは

念願のベンチャーから内定をもらい一安心。しかし一流のビジネスパーソンは会社の辞め際もきっちりと対応するものです。最後に“円満退職を実現する”という大仕事が残っています。

転職先を決めた時にまず認識すべきことは“次の会社に迷惑をかけずに入社すること”です。

転職先企業では貴方の入社を想定して体制作り、新しい採用計画を立て始めています。当初約束した入社予定日からズレなく入社することで新しいキャリアがスムーズに始まります。一方でこの約束が守れず、入社予定日がズルズルと後退してくると、退職交渉・段取が出来ない人という不安感が生まれ、新会社デビューで躓くことになってしまいます。

実際にあった話ですが、お世話になった会社への義理もあり、あれもこれもやってから退職してほしいという要望を聞いているうちにあと1ヵ月、あと1ヵ月、となり予定よりも入社が3か月ほどずれ込みました。その間、転職先の受け入れ部署に大きな迷惑が掛かっており、入社した時にはメンバーからは不信感を持たれ、信頼構築がスムーズにいかずに結局数か月で退職することになりました。

こうなってしまっては後の祭りで、また一から転職活動を始めることになってしまいます。

この方の間違いは“今の会社に迷惑をかけない”ことを考えたばかりに次の会社に迷惑をかけてしまいました。今の会社を“スケジュール通りに退職する”ことも大事なビジネススキルです。

では、“スケジュール通りに退職する”ための心構えやポイントをお伝えします。

退職交渉を始めるタイミング:書面かメールでオファーレターを確認してから。

口頭での内定(ぜひ来てください、という類の曖昧なものも含む)段階で退職交渉を始めてはいけません。書面もしくはメールで正式なオファーレター(内定通知書)を頂いてください。オファーレターに記載されている待遇やポジションなどが納得いくものであるかを確認・合意した後で退職交渉を始めてください。実際に書面で見てみると話と違うこともあります。退職交渉を始めたあとに条件面で齟齬があり内定を辞退、もしくは取り消しされることになってしまっては一大事になってしまいます。

退職の“相談”はしない。“報告”する。

「会社を辞めたいのですが、、」という“相談”をすると当然引き留められてしまいます。  部下の退職はサラリーマンにとってマイナス評価になるからです。既成事実として“報告”をすることが重要です。

“実は次の会社が決まり●月から働くことになりました。今の会社に不満はありませんでしたが、以前から関心をもっていた●社のA社長に出会う機会があり、お話をするうちにこのA社長と一緒に働きたいと思うようになりました。これまでお世話になり大変心苦しいですが、ご理解いただければと思います。会社の規定に則り、●月の退職を考えているため、引継ぎなどしっかりさせていただきます。“

そう伝えて退職願を提出する、という感じです。

多くの場合は、そこで引き留められるでしょう。

よくある話としては、

“突然言われても困る。私も判断できないので上長に相談する”と言われ上長、部長、役員と次々と出てきて時間が経過する。

“今の状況で辞められても困るので、後任が見つかるまでいてほしい”と言われ、後任が見つかるまでに数か月経過した。

“考え直してくれ。君が求めるポストを用意するから”と言われるが、実際には一時的なポストに過ぎなかった。

お世話になった上司や会社に迷惑をかけたくない気持ちはわかりますがこのような状況では情は捨てるべきというのが私の考えです。次の会社に“決めた”のであればもう気持ちは次に持っていくべきです。引き留めに応じて時間を経過させるのは次の会社からするとプラスでしょうか? 退職日から逆算して引継ぎやスケジュールの設計を進めていきましょう。一流のビジネスパーソンであれば引継ぎを早めに終わらせ、旅行などで有給を消化し万全のコンディションで次の会社の初出社日を迎える努力をするでしょう。

一般的な会社の就業規則では退職の報告をしてから翌月末退社、という決まりです。

例えば、4月に退職の申し出をすれば5月末退社ができます。この時会社側の判断で7月末退社という強制はできません。

もし、上司が退職願を受け取らない、ということでしたら他部署(人事部や経営陣)に直接提出しましょう。

もしそれで食い下がられたら、退職日が伸びる理由を明確にしてもらいましょう。

そして、本当に退職者がそれを全部するべきなのか、1つ1つの延期理由を精査し、建設的に議論していきましょう。退職日までに誰が何をどうやるか、できないことは誰に任せるのか、真摯に話していけば実は引継ぎにさほど時間がかからないことが明らかになっていきます。

退職までに4-5か月もかかるようであればその会社のビジネスモデルや経営に欠陥があるともいえるでしょう。

退職する会社の方々とは何を言われても穏便に対応。喧嘩しない。

あくまで目的は次の会社に迷惑をかけずにスケジュール通りに退職することです。会社を刺激したり新たに敵を作る必要はありません。中には退職していく貴方に避難を浴びせる人もいるかもしれません。それでもここは我慢してください。ここまでのキャリアを築かせてくれた会社に感謝し、貴方が辞めることで迷惑がかかる人がいるのであれば、申し訳ないととにかく謝ることです。ネガティブな発言をしたり、感情的な対応をすれば、周囲は貴方の引継ぎに非協力的になり退職日が延期してしまう可能性があります。

辞める意志が揺るがないことがわかってくれば、引き留めしても時間の無駄と思い始めるでしょう。ここは根比べです。

退職日までのスケジュールを貴方が主体的に決めて、進める。

退職までの引継ぎスケジュールは貴方が主体的に決めて周囲を巻き込んで進めていきましょう。いつまでに、何を、誰に、どのように引継ぎをするのか、あなたが計画を作り周囲に承認を取りながら進めましょう。この作業を他人に委ねると退職日が遅延してしまいます。

“美しい円満退職とは、貴方が成功すること”

私は仕事を通じて得られる幸せの1つとは“仲間を得られる”ことだと思います。せっかく何かの縁で知り合った仲間ですから、退職後も繋がっていてほしいという願いがあります。辞める時にはしがらみがあるのは仕方がないですが、貴方自身が輝き続けていればまた笑顔で会えるようになるはずです。

よくテレビ番組などでもありますが昔の悪ガキも成功して故郷に戻れば暖かく歓待してくれるものです。会社を辞める時に生じる軋轢は致し方ないものとして、次の一歩を踏みだす努力をすることです。前の会社に引きずられるよりも次の会社に目を向けて一歩踏み出しましょう。迷惑をかけてしまった人もいつかわかってくれるはずです。

たくさんの転職者を見てきましたが、成功し、古巣に恩返しすることで帳尻があってくると思います。

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藤岡 清高

株式会社アマテラス代表取締役社長。iU 情報経営イノベーション大学客員教授。 東京都立大学経済学部卒業後、新卒で住友銀行(現三井住友銀行)に入行。法人営業などに従事した後に退職し、慶應義塾大学大学院経営管理研究科を修了、MBAを取得。 2004年、株式会社ドリームインキュベータに参画し、スタートアップへの投資(ベンチャーキャピタル)、戦略構築、事業立ち上げ、実行支援、経営管理などに携わる。2011年に株式会社アマテラスを創業。 著書:『「一度きりの人生、今の会社で一生働いて終わるのかな?」と迷う人のスタートアップ「転職×副業」術』