20代でのスタートアップ転職に、規模や知名度への不安は不要

株式会社カオナビアカウント本部マーケティンググループ 鈴木優一氏

今回は株式会社カオナビの鈴木優一さんにお話を伺いました。
株式会社カオナビは、顔画面が並ぶシンプルな画面から、一元化された人材情報をクラウド上で簡単に共有できるプラットフォーム『カオナビ』を提供しているHRテクノロジー分野のスタートアップ企業です。
社員の顔や名前、経験、評価、スキル等の人材情報を一元管理・可視化することで、最適な人材配置や抜擢といった人材マネジメント業務の効率化を可能とし、企業が直面している人材マネジメント課題を解決しています。

鈴木さんは比較.com株式会社(※現在は「手間いらず株式会社」)及びエン・ジャパン株式会社で営業・マーケティング、ITビジネスのスキルを磨かれた後、カオナビの経営ビジョンや商品開発の革新性に魅力を感じ、2015年に入社しました。
3年を経て、鈴木さんが現在感じられている仕事の面白さやここまでに経験されてきた苦労、そして転職活動を考えている人へのアドバイスなど、貴重なお話を伺うことができました。

鈴木優一氏

アカウント本部マーケティンググループ
鈴木優一氏

2010年3月、上智大学大学院 理工学研究科卒業。
2010年より比較.comにて、予約.com国内事業部のリーダーといて事業部管理を行う。その他営業プロモーション、ITビジネス等幅広く経験。2011年に転職したエン・ジャパンにて、新規サイト立ち上げや求人サイト運営、WebマーケティングやSEOを中心に携わる。
2015年1月、株式会社カオナビに入社。

株式会社カオナビ

株式会社カオナビ
https://corp.kaonavi.jp/

設立
2008年05月
社員数
126名(2018年6月末現在)

《 Mission 》
シンプルな仕組みで世の中をちょっと前へ。
《 事業内容 》
クラウド人材管理ツール『カオナビ』の開発・提供

新卒で比較.comに入社し、ITビジネス全般を経験

アマテラス:

鈴木さんは大学院卒業後に比較.comに入社され、その後エン・ジャパンを経て、カオナビに参加されましたが、新卒時にスタートアップ企業を選んだ背景を教えていただけますか?ご出身は上智大学大学院の理工系でしたね。

株式会社カオナビ アカウント本部マーケティンググループ 鈴木優一氏 (以下敬称略):

そうです。周囲でベンチャーに就職する人は皆無でした。
大学では電車の研究をしていたので重工系のメーカーなども検討しましたが、リーマンショックが重なったこともあり、業界を絞った就職活動はできませんでした。

その中で、よりビジネスに近い業界に興味を持ちました。コンサルティング会社から事業会社、どちらかというと大企業よりも小規模な企業を見ていましたが、その中で縁のあった比較.comへの就職を決めました。

比較.com は、2003年2月に施行された確認株式会社、いわゆる「1円起業制度」で設立された初めての東証マザーズ上場企業ということで注目されましたが、私が入社したのは上場後8年程経った頃でした。

アマテラス:

比較.comではどのような業務を担当されたのでしょうか。

鈴木優一:

最初は営業で入社しました。ただ、小規模な企業でしたから、サイト管理やプロモーション、その他ITビジネスに関わる業務全般を学ばせてもらいました。

エン・ジャパンでの3年半。そして、再びベンチャーへ

アマテラス:

そこからエン・ジャパンへ転職されましたが、何かきっかけがあったのでしょうか?

鈴木優一:

私は元々ものづくりが好きだったのですが、様々な業務を経験する中でIT系に軸足を置きつつ新規にものづくりがしたいと考えるようになり、新たな仕事を探し始めました。
また、人材業界に興味を持ち始めていたこともあり、エン・ジャパンの新規事業を創成する部署の人材募集に応募し、転職しました。

アマテラス:

人材系にご興味を持たれたのは、どのようなきっかけがあったのですか?

鈴木優一:

父が銀行員だったのですが、仕事ずくめの日々にも関わらず、生き生き仕事しているように見えませんでした。そこで、働く人が生き生きと働けるようなサービスや、それに近い仕事を選びたいと思ったのが興味を持ったきっかけだった気がします。

アマテラス:

エン・ジャパンには3年半ほど在籍していらしたということですが、そこでの業務内容はどのようなものでしたか?

鈴木優一:

新規サイトの制作や転職サイトの運営、そこから少し派生してWebマーケティング関連の業務に携わりました。中でも、SEOに軸足を置いて働いていた期間が長かったです。

アマテラス:

エン・ジャパンからの転職を考えられたのは、どのような理由からですか?

鈴木優一:

「次にまた転職する時はベンチャー」とぼんやり考えていました。実際に、週末起業イベント(スタートアップ・ウィークエンド)に参加したりもしていました。

当時(2014年頃)メディアでベンチャー起業家の話題が多く取り上げ始められ、ベンチャーバブルの始まりのような時代の波を感じるようになったのですが、そんな中で熱量高く自社のサービスと向き合っている起業家達の姿を見て心が動きました。
大手よりもまだ大きなバックグラウンドがないような会社の方がよりサービスやユーザーと向き合える気がして、「もう一度ベンチャーでやってみたい」と考えるようになりました。

インタビュー中の鈴木氏。インタビューはカオナビ本社(東京・港区)で行った。

カオナビを選んだのは、「課題への共感」と「ツールの革新性」、そして、「縁」

アマテラス:

転職先には様々な選択肢があったかと思いますが、その中でカオナビを選んだ理由について教えて下さい。

鈴木優一:

1つは、役員に同じ大学の出身者がいたことです。
上智大学出身の起業家と実際に会ったのは初めてでした。そもそも上智からベンチャーに行く人が少ない中、同じような学生生活を送ってきた人が経営している会社ということに縁を感じました。

そして、勿論カオナビの作っていたツールが面白いと感じたことも、理由の1つです。
ツール自体はBtoBですが、僕が今まで使ってきたBtoBツールとはイメージが異なり、古臭いUIではないし、サクサク動く。「使いやすい、新しい商品を作っていこう」という革新性に魅力を感じました。

「ベンチャーは、課題解決をなし得るサービスを世の中に出すことが大事だ」と考えていたこともあり、カオナビが対象とする課題感の大きさや、その課題解決による世の中へのインパクトの大きさも魅力でした。

カオナビで働く魅力は、「HRTech業界No.1の面白さ」

アマテラス:

カオナビではどのような仕事に携わっていますか?

鈴木優一:

業務の中心はマーケティングです。当初はWebからイベント出展からSEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)施策のオウンドメディア立ち上げ等全て私1人で担当していました。その後10人程に増えて業務が分散されて来たので、現在はWebの運用型広告に特化して担当しています。

アマテラス:

カオナビで働いて3年程になりますが、その魅力や面白さはどんなところにありますか?

鈴木優一:

先程もお話ししましたが、「人材マネジメントの変革」という解決したい課題に対し、カオナビは将来的にも様々なソリューションが提供できる会社であるということが大きいです。

また、今はBtoBでHR Tech(Human Resource×Technology:クラウドやビッグデータ解析、AI等のIT関連技術により、採用・育成・評価などの人事関連業務を行う手法)が流行っていますが、カオナビはその中でもタレントマネジメント分野でのシェアNo.1です。
どんな業界でもシェアNo.1を取れるサービスや、そういった会社で仕事ができるのは面白いと感じています。

アマテラス:

人事関連サービスにも多々ありますが、組織管理、タレントマネジメントという分野になるのですね。競合するサービスなどもあるのでしょうか。

鈴木優一:

そうですね、いくつか競合はあります。ここ1年程でHRTech関連サービスはかなり増え、どこもシェア拡大を狙っています。更に、今後はより多くの企業がカオナビの業務領域に入ってくると思います。

厳しい状況になると思いますが、リーディングカンパニーとして、それらの競合に打ち勝つ手法を考え、実践していく面白さもあります。

顔写真が並ぶ、 クラウド人材管理ツール「カオナビ」

「残業が多い社員は、生産性が低い」と評価される職場

アマテラス:

入社して戸惑ったこと、想定と異なったこと等はありましたか?

鈴木優一:

実は、働き方に順応するのに苦労しました。
当社は皆ほぼ残業をしません。以前働いていた会社とは対照的で、「いっぱい仕事した方が良い」という文化は全くなく、「残業が多い社員は、生産性が低い」と見られます。
『働き方改革』と言われる以前から子育てとの両立に寛容に対応している等、今の時代に合った働き方が出来る会社だと思います。

しかし、当初はいかに限られた時間(定時内)で成果を出すことに集中するかというところに、大変苦労しました。

アマテラス:

具体的に、ご自身でどのような対応や工夫をなさったのですか?

鈴木優一:

やったこととしては、徹底的に無駄なことはしない意識を持ちこと、出来るだけ論理的思考をすることの2点です。
例えば、無駄な会議や打合せはしない、余計な資料を作らない、自分で考えて解決できないことはすぐに社内外問わず人に聞く、タスクの優先順位を考えるといったことです。

「頑張ります」だけではダメ。論理的思考でPDCAを回すことが重要

鈴木優一:

また、以前は「頑張ります」と言って何となく解決していたところが、今はそれでは通用しません。「なぜ、そうなったのか」、「どう対応するのか」等をしっかり掘り下げて考えなければならない。

テクニカルスキルは日々仕事をする中で新たに吸収できるかと思いますが、実は論理的な思考やコミュニケーション等のソフトスキルの方が大切なのに今までしっかりと学べていなかったので、そこを鍛えていく過程ではなかなか大変でした。

アマテラス:

そこは解決できましたか?

鈴木優一:

会社も外部の講師を呼んで『ロジカル・シンキング講習』を実施してくれましたし、私自身も常に論理的な思考が求められることで、そういった考え方が身についてきました。徐々に身についてきていると思います。

アマテラス:

普遍的なスキルをしっかり身に付け、あとはキャッチアップしていくということですね。 ちなみにWebマーケティングは本当に変化が早いですが、どういう手法でキャッチアップされているのでしょうか。

鈴木優一:

情報がありそうなところにひたすら聞いています。社内で駄目なら、社外の先進的な会社の人に色々と教えていただいています。

スタートアップでは自ら動いて課題解決し、成長する

アマテラス:

話が遡りますが、カオナビに入社される前に不安に思われていたことを教えていただけますか?

鈴木優一:

私自身にはそれほど不安はありませんでしたが、両親等周囲の人が不安に思っていると感じていたので、そこに対する説得材料が欲しいとは思いました。

当時の会社の状況や導入事例の他、収益状況についても「ベンチャーキャピタルが入っていて、上場を目指している」といった財務的な話等、安心材料になりそうな話をした記憶があります。

アマテラス:

よく10人未満の会社に転職される方に聞かれるのですが、大企業から小さな会社に行ってどのような成長ができると思われますか? 「大企業なら社内研修もあるし、誰かに聞けば何かしら教えてもらえる。しかし、小さな会社だと教えてくれる人がそもそもいないのではないか」といった不安を持つ方が多いです。

鈴木優一:

その質問はありそうですね。
成長はできると思いますよ。ただ、教えてもらうのを待つのではなく、社内に知っている人がいなければ、教えてくれる人を探しに行く。前例がなければ、自ら答えを探して自分のものにする。
そうやって、スピーディに課題を解決する方法を身につけて成長していくというイメージです。

アマテラス:

鈴木さんの場合は、社外に能動的に働きかけたり、セミナーに行ったりすることで解決してきたのですね。

スタートアップでの成長の仕方を語る鈴木氏

転職に必要なのは、多くの転職サイトより1人の信頼できる相手

アマテラス:

次に、実際の転職活動ではどのような行動をなさいましたか?意味のある活動や、逆に意味のなかった活動について教えて下さい。

鈴木優一:

まず、多くの転職サイトに登録する必要性はあまりありませんでしたね。
大手も含めて人材紹介会社等への登録は何社もしましたが、色々な会社からオファーを受けるよりも、(アマテラスの)藤岡さんのように親身になって話を聞いてくれる人を1人見つける方が圧倒的に効率的だと思います。

アマテラス:

より多くの案件が来た方が、「あれも見ておけば良かった」というリスクは回避できて良いという気もしますが。量を追うよりも、深く理解をしてくれる人が自分に合う会社を紹介してくれた方が良いという理由は何かあるのでしょうか。

鈴木優一:

当然縁というものはあると思いますが、正直「どこの会社に行っても似たような未来が待っている」と思ったからです。

アマテラス:

若干の誤差がある位で、同じフェーズの会社に行けば大体同じようなことが起こるということですか?

鈴木優一:

はい、恐らく同等の人生の満足度を得るのだと思います。
なので、沢山の会社を見るよりも、自分では見つけられない、自分に合っていて面白いと思えるであろう一社を信頼できる人に依頼して探してもらった方が、納得度も高く、良い縁に繋がる気がしました。

私自身、多くのベンチャーを紹介して頂きましたが、自分のやりたいこと、チャレンジしたいことにマッチしていたのは、カオナビだけでした。しかし、アマテラス以外のどこからも紹介はありませんでした。

アマテラス:

今の貴社には恐らく大手人材エージェントもくるのではないですか。鈴木さんにご紹介した当時からすると、「ここまで成長したのか!」という感じがあります。

20代の転職に会社の規模や知名度への不安は勿体ない。スキルへの拘りも不要

鈴木優一:

あと、もう1つ意味がなかったと思うことは、紹介された会社が有名な会社ではなかったとしても、その会社に不安を持つことだと思います。

アマテラス:

深いですね。私はそういう会社には未来を感じるのですが、多くの人はきっと不安を感じるのではないかと思います。そう思われたのはなぜでしょうか。

鈴木優一:

結局、その会社がやっていることを「面白い!」と思えば、それがもう縁なのだと思います。ですので、規模や知名度に関する不安は、20代の私には必要なかったと思います。当然40代になればまた話は違ってくるとは思いますが。

また、転職活動では「自分の持っているスキルを生かせるところで働きたい」と言う方が多いと思いますが、スペシャリストでもない若者の持っているスキルはそれほど重要な要素ではなかったと思います。
今持っているスキルは恐らく10年後にはほぼ不要になっている筈ですから、そこにこだわるのは自分で範囲を狭めてしまうことにもなり、特にスタートアップへの転職を目指す20代については勿体ないと感じます。

アマテラス:

そうですよね。『SEO』もここ何年かで出来た言葉ですし、10年後はどうなっているか分かりませんからね。

堅実なビジョンの中で、確実な成長を続けるカオナビ

アマテラス:

最後に、貴社が僅か3年程で、10名程の雑居ビルオフィスからこのような会社になった理由は何だと思われますか?

鈴木優一:

私の中では、人材マネジメントを変革するという課題選定と、ソリューションのマッチングが良かったことではないかと思っています。

もう1つは、無駄なことに手を出さず、一つ一つの課題を徹底的につぶしていく、ぶれない姿勢でしょうか。
当社は、機能をたくさん搭載するのではなく、本当に必要な機能だけを絞り込んでシンプルな操作性を実現しています。これまでも様々なお客様からの要望はいただいていますが、すべてを反映させたり、このように顕在化しているニーズを解決するのではなく、その先にある本当のニーズをキャッチしてサービスに反映していくスタイルを貫いています。
その堅実な姿勢や取り組みを続けることで、確実に成長しているのではないかと思っています。

アマテラス:

本日は素敵なお話をありがとうございました。

この記事を書いた人

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河西あすか

慶應義塾大学経済学部卒業後、食品メーカーにて商品企画等のマーケティングを担当。 慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了後、企業再生・変革の実行支援コンサルティングファームに在籍。

株式会社カオナビ

株式会社カオナビ
https://corp.kaonavi.jp/

設立
2008年05月
社員数
126名(2018年6月末現在)

《 Mission 》
シンプルな仕組みで世の中をちょっと前へ。
《 事業内容 》
クラウド人材管理ツール『カオナビ』の開発・提供