大企業からスタートアップ転職。あなたの市場価値はどうなる?

大企業からスタートアップ転職。その理由トップは“市場価値をあげたい”

弊社はスタートアップ転職サイト『アマテラス』を運営していますが、登録者がスタートアップへ転職したい理由の圧倒的No.1は、“自分の市場価値をあげたい”です。

アマテラス登録者の多くは日系大企業(以下大企業)勤務の30代前半社員で、初めてスタートアップ転職を検討する方です。自身の市場価値を上げたいと考え、裁量の大きい環境であるスタートアップへの転職を考えるようです。

では、自身の市場価値とはどのように量ればよいのでしょうか?

あなたがビジネスで深く関わる5人を思い浮かべてください。その5人の平均年収があなたの市場価値に近いものになると私は考えています。その金額を想像したとき、あなたはどう感じるでしょうか?

類は友を呼ぶ、という諺がありますがビジネスコミュニティの世界にも当てはまります。

志高いスタートアップCEOは会社の枠を超えて志高い経営者とお付き合いをすることが多く、その仲間達が結果的に全員上場したといったこともありますがこれは偶然ではないように思います。そのコミュニティでは相互に人間力を磨き合い、成功者への道を歩んでいるからです。

成長するスタートアップ/ベンチャー企業では次々に優秀な人材が参画し、成長機会をコミュニティ自体が創出します。事業の成長スピードが速いため、そこで働く個人には能力を超えた裁量を与えられることも多々あります。大変ではありますが、そこで努力をして実績を出した人は若くしてタレント人材になり市場価値を高騰させます。そのタレントがロールモデルとなったコミュニティではタレントを続けて輩出する、そんなことがアマテラスの支援先で起こっています。

一方で、大企業では30歳くらいになれば5,10,20年後の姿がおおよそ想像できてしまいます。将来、自分が社内のどのような組織(コミュニティ)にいるのかが分かれば、自身の市場価値もある程度は推測できるでしょう。

私は新卒入社した銀行での新人研修3日目に講師との個人面談で、「君は頑張っても頭取にはなれない。運がよければ取締役かな」と言われたことをはっきりと覚えています。働いてもないのに未来がわかってしまうことは辛く、大企業のリアルを突き付けられました。

先が見えてしまうと頑張る意欲も湧きづらくなり、新橋辺りの居酒屋でくだをまくサラリーマンの気持ちもわからなくはないです。しかし、そんな時間の使い方をしていて市場価値が上がるはずがないですし、彼らもできればそうしたくはないはずです。

現状を抜け出して、市場価値を上げるスパイラルに入っていきたい、そう考えるなら勇気をもって一歩踏み出す行動が必要です。

どうすればあなたの市場価値はあがるのか?

コンサルティングファームのマッキンゼー元日本代表、大前研一さんによれば、自分を変えるには3つの方法があると言います。
・付き合う人を変える
・時間配分を変える
・住む場所を変える

私はこの中の“付き合う人を変える”というのが最も有効な手段だと考えます。「周囲のビジネスコミュニティが自身の市場価値に大きく影響を与える」と前述しましたが、「現在のコミュニティでは未来がない」と感じるのであれば、望むコミュニティに自ら踏み込んでいけばよいのです。

“スタートアップ/ベンチャー企業への転職”はそのための有効な手段の1つです。スタートアップに転職するということは、“誰と働くか”を選ぶことであり、“一緒に働く経営者を選ぶ”ということです。

スタートアップは規模が大きくないため経営者との距離も近いですし、創業者である経営者の考えが色濃くカルチャー・組織・経営に反映されます。ビジョンに共感できる経営者を選ぶことができれば、“付き合う人を変える”ことは成功です。

私がドリームインキュベータに入社したのは、堀紘一さんと働きたいと思ったことがきっかけです。当時のドリームインキュベータは創業間もないベンチャー企業で、まだ社員数は少なく、堀さんや堀さんの仲間であるBCG(ボストンコンサルティンググループ)出身の経営陣の下で働くことができ、転職目的を達成できました。ロールモデルとなる人と共に働き、得たい経験を積むことが出来れば、自身の目指す姿に近付いていくことができます。

大企業はメンバーシップ型組織なので上司も仕事も人事の辞令次第で、自分で部署や職務(ジョブ)を選ぶことは難しく、キャリアは会社任せになりがちです。

他方、スタートアップ転職では事業・職務・仲間を選ぶことができ、キャリアデザインが可能になります。

新型コロナウィルスは大企業・スタートアップの産業構造変化の促進剤

さて、この記事を執筆している2020年11月時点では新型コロナウィルスが依然猛威を振るっていますが、このウィルスは産業構造変化の強力な“促進剤”となっていると感じます。

ビフォーコロナ時点から成長期待されていたSaaSや効率化を実現するテクノロジー企業が一気に産業のメインキャストになろうとしています。例えば、ハンコレス社会が当たり前になることでリーガルテックが急成長しました。一方、元々苦境に陥っていたデパート等のノンテクノロジー業種や保険営業・人材紹介エージェント等の対面営業色の強い労働集約職種は更に厳しい状況に追いやられています。

アメリカではGAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)がWITHコロナで業績を伸ばしており、更に強大化しています。ニューノーマルの定着が進むほどにビッグテック企業は電気・ガス・水道に近いインフラになっていくでしょう。日本でもfreee、スマートHR、メルカリ等はより強大になると見込まれます。

コロナは産業構造の変化を促進し、企業を『改革される側』と『改革する側』に分断していくと、私は予測しています。

小売ビジネス界では“DEATH BY AMAZON(デス・バイ・アマゾン)”という言葉があり、トイザらスのようにアマゾンによって倒産に追いやられる事例が相次いでいます。

日系大企業の多くもGAFAやテクノロジースタートアップにディスラプトされる可能性は大いにあると思っています。技術力が低いカメラメーカーはiPhone等のスマホカメラに急速にディスラプトされました。どこから敵がやってくるかわからない時代です。

名札(=有名企業勤務)vs.値札(=価値あるスキル)

コロナによって人材の流動性も促進されています。そして、ポストコロナのキャリアマーケットでは、有名大企業勤務といった『名札』よりも、価値あるスキル『値札』が重要になります。

名札:「私は大手の〇〇会社で働いています」という社名が重要な昭和的ステータス

値札:「私は〇〇のスキルを持ち、〇〇の課題を解決できる」というスキル重視の令和的ステータス

大企業在勤の方から転職相談を受けると、いまだに「大手の〇〇商事の課長をしていますが、ベンチャーに転職できますか?」、「現在年収は〇〇万円もらっているので、同等程度は欲しいです」と訊いてくる方がいらっしゃいます。

キャリアマーケットでは『名札』をアピールされても評価出来ません。「大手企業にいた」ことからわかるのは「おそらく有名大学を出て就職戦線に勝利した人」ということで、ビジネスでどのような貢献ができるかは全くわからず、『値札(スキル)』がつけられていないからです。

多くのスタートアップは、育成する余裕がないため即戦力人材を中途採用しており、キャンディデートの値札(スキル)をまず見ます。

ポストコロナ、令和時代で活躍するにはいかに自分の値札を持つかです。自分はどのような状況でどのような貢献ができるのか。そして、それは人材マーケットでどれだけのレア度を持っているのかを意識しながら仕事に取組みましょう。

スキルが高い仕事をしているからといって必ずしも市場価値が上がるわけではありません。例えば、公認会計士は高度なスキルを保有していますが、今では下図のように国内に約4万人もいて、もはやコモディティスキルになりつつあります。

公認会計士資格を保有しているだけでは年収は上がらなくなりました。希少価値があったのは2000年くらいまでだと思います。その資格をテコにして、違う経験・スキルをかけ合わせてレアカード化することが生き残りのカギになっています。

出典:日本公認会計士協会 https://jicpa.or.jp/about/outline/

早く経験を積みたいなら大企業よりスタートアップ

『名札』となるスキルを早く身に着けるならば、大企業よりも“改革する側”にいるスタートアップ企業をオススメします。

改革する側にいると、先端技術やビジネススキルを活用する機会に恵まれ、次世代を創出するビジネス機会が増えます。リーダークラスで活躍できると理想的ですが、まずは改革する側に身を置くことで市場価値上昇の機会は増加するでしょう。

成長する組織では事業拡大ペースが組織拡大よりも早いため、メンバークラスで参画しても裁量が大きい仕事がすぐにやってきます。また、組織成長に伴いポジションが次々に創出されるため、思いの外早くリーダーになることも少なくありません。その結果、ポジションが人を育てる機会に恵まれます。

大企業では残念ながら若手が事業の操縦桿を握れる機会はなかなかやってきませんが、成長企業ではその機会に溢れています。

元リクルートの藤原和博氏の有名なキャリア理論で、「人材の市場価値は需要と供給で決まり、レアカード(希少人材)になることで大きく上昇する」というものがあります。3つのキャリアを掛け算して100万分の1のレア人材になる、というものです。

出展:https://globis.jp/article/6567

この理論を参考にすれば、改革する側に参画してレアな経験を積むことで市場価値上昇の機会を得られます。コロナ下において社会変化は加速しており、コモディティ人材とレア人材の市場価値の差はエクスポネンシャル(指数関数)的に大きくなるでしょう。

ヤフー日本代表の川邊氏(起業⇒ヤフー)
ソフトバンクの小澤氏(元楽天)
リンクドイン日本代表の村上氏(元ヤフー)

実際、日本の先端ビジネスをリードしている人の多くは、彼らのように成長企業の最前線で戦ってきた人達です。彼らのようなビッグタレントになれるかどうかはさておき、改革する側に身を置くことでジャパニーズドリームを実現できる可能性があります。機会は人を成長させます。

アマテラス登録者の転職理由第1位が「市場価値をあげたい」ということでしたが、筋のよいスタートアップに参画することでそれを叶える成長機会が得られます。

改革される側で働く落とし穴

ビジネスで改革される側(成熟市場や縮小業界、新興企業にシェアを食われている側)にいることで学べることもあります。主には、
・組織やオペレーションの効率化、生産性向上
・事業の集中と選択(顧客セグメントの縮小)
といったことが経験できるでしょう。

会社の危機を乗り越えるような“戦時”経験はとても貴重で、リアルな経営に関わりあなたの市場価値を高めるチャンスでもあります。

ただ、“戦時”は通常そんなに長くありません。せいぜい1年くらいでしょう。コロナ下においても多くの企業が半年程で変化に対応しました。

戦時を経た後、「これだけやったのだから責任をもってやり抜く」、「一緒にやってきた仲間を見捨てられない」といった思考回路(カイシャへの忠誠心)にはまり、組織のレジェンドへの道を辿りがちです。それも1つの生き方ですが、社内のレジェンドはキャリアマーケットでの評価が難しいのが現実です。

撤退・縮小状況に居続けることと、社会変革・新規事業などに積極的に取り組む成長スタートアップに参画することでは、どちらの成長機会が多いでしょうか?改めて考えてみる必要があると思います。

大企業からスタートアップ転職のリスクとは?

大企業からのスタートアップ転職検討者に必ずといっていいほど訊かれるのが、「スタートアップ転職にはどんなリスクがあるのか」ということです。

これまでのコラム等でもお伝えしていますが、スタートアップ転職のリスクは、

・会社が潰れること
・給与が下がること
・安定がなくなること

ではなく、“転職の目的が果たせないこと”です。

スタートアップ転職の目的とは、

・〇〇業界で〇〇の経験をしたい。
・経営者直下で0→1の経験を積みたい。
・〇〇社長と働きたい。

といった、“コト”を為すことだと思います。

スタートアップ転職の目的として、目先の年収アップやストックオプション、役職などの“モノ”を追求する方がいますが、これらの“モノ”は求めるものではなく、後から付いてくるものです。間違った転職目的を持つと、モチベーション維持が難しいので気を付けて欲しいです。

正しく転職目的を持ち、得たい経験ができればその転職は成功です。その上で事業が成功すれば尚良しですが、事業が失敗したとしても自身の市場価値を上昇させることはできますし、そうなれば次に繋がるはずです。

2015年頃に起業したAIスタートアップに参画した人達には、時期が早すぎたこともあり0→1に失敗して事業解散やリストラになった人が大勢出ました。

しかし、2020年頃に創業したAIスタートアップにとって、そのような人達の(失敗)経験は価値あるものです。同じ失敗をしたくないスタートアップは高いサラリーを提示してでもその経験を求めます。

ファーストペンギンとしてAI事業にチャレンジした人達は結果的に市場価値を上げ、会社を変えて0→1を成功させています。その転職は成功したと言えるでしょう。

会社が潰れることや給与が下がることなどはスタートアップ参画の前提条件です。それが怖いと感じるならその転職は止めた方がよいでしょう。

スタートアップ企業への転職は、目的を正しくもつことが重要です。

大企業の終身雇用は終わった。人生100年時代にキャリアをどう築くか?

新型コロナウィルスは我々ビジネスパーソンに変化を促していることは間違いありません。以前から綻びを見せていた大企業の終身雇用もついに終焉することでしょう。

これからの時代、我々はどのように処するべきでしょうか?

私がお勧めするのは、『LIFESHIFT(人生100年時代)』著者のリンダ・グラットン氏が提唱する、コロナ後の長寿社会を幸せに生きるための『生産性資産』という視点です。

生産性資産とは、

・価値ある高度なスキル
・キャリアにプラスになる人間関係
・会社や組織に頼らない自分自身の評判

を指し、それらを得ることによって社会から求められ続ける人材でいることが出来るというものです。

そして、生産性資産を構築するためには「個」としてのブランディングを立て、社内のみでなく社外の人とも積極的に仕事をして、オープンマーケットで実績・評判を積み上げていくことが必要になってきます。

自らキャリアのビジョンを持ち、次の5年でどのような仲間とどのような経験をしたいのかを考えてみて下さい。

今いる職場でそれが実現できるのであればそこに留まればよいと思います。

しかし、それが難しいのであれば積極的にそのビジョンを実現すべく行動するべきでしょう。冒頭に述べた「付き合いたい5人」は待っていてもやって来ません。大企業では人事にお願いして社内異動希望を呑んでくれればよいですが、それは簡単ではありません。

では、どうすればよいか?

自ら働きたい人を探し、「仲間になろう」と働きかければよいのです。

スタートアップでは転職に限らず、副業の受け入れも柔軟です。今の会社にいながら副業・フリーランスで参画してもよいでしょう。コロナがもたらしたリモートワークの普及は、あなたのキャリアに選択肢をもたらしました。

息を呑むような絶景は冒険をしないとみることはできません。自らの市場価値を億単位にしたいのであれば、同様にキャリアの冒険が必要です。

社内のレジェンドよりも、社会のレジェンドが1人でも多く産まれることを願っています。

【お知らせ】
12月8日(火)19:00~20:00に、ウェビナーをLIVE配信致します。
「自身の市場価値をあげる方法 ~大企業・中堅企業からスタートアップ転職の法則~」
本記事を前置きとして、更に踏み込んだお話しをさせていただく予定です。

大企業・中堅企業勤務でスタートアップでのキャリアに関心がある方は是非ウェビナーをご覧ください。
皆様からのたくさんのご質問もお待ちしております。*この機会に、疑問を解決しましょう*

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この記事を書いた人

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藤岡 清高

アマテラス代表取締役CEO。iU 情報経営イノベーション大学客員教授。 東京都立大学経済学部卒業後、新卒で住友銀行(現三井住友銀行)に入行。法人営業などに従事した後に退職し、慶應義塾大学大学院経営管理研究科を修了、MBAを取得。 2004年、株式会社ドリームインキュベータに参画し、スタートアップへの投資(ベンチャーキャピタル)、戦略構築、事業立ち上げ、実行支援、経営管理などに携わる。2011年に株式会社アマテラスを創業。 著書:『「一度きりの人生、今の会社で一生働いて終わるのかな?」と迷う人のスタートアップ「転職×副業」術』