愛知県・東海エリアのスタートアップの様々なニーズや課題解決に応える

愛知キャピタル株式会社代表取締役 磯部勝雅氏

株式会社愛知銀行営業企画部 ファイナンス戦略グループ 服部達哉氏

愛知キャピタルは、事業承継支援やベンチャー・スタートアップの育成支援を通じた地域社会への貢献を目的として設立された、愛知銀行の100%出資の投資専門子会社です。

また、愛知銀行は、融資や各種コンサルティング業務に加え、地域ネットワークのハブ的な役割を担うことで、ベンチャー・スタートアップを支援しています。

共にあいちフィナンシャルグループの一員としてスタートアップをはじめとする地域企業の様々なニーズや課題解決に応えています。

今回お話を伺ったのは、愛知キャピタルの代表取締役である磯部勝雅氏と、愛知銀行の営業企画部ファイナンス戦略グループで働く服部達哉氏。それぞれの仕事内容や愛知県・東海エリアのスタートアップの特徴など、ざっくばらんにお話しいただきました。

磯部勝雅氏

代表取締役
磯部勝雅氏

愛知県南知多町出身。
1993年入行。営業店の支店長、人事部、総務部などの管理部門に従事した後、証券外国部長に就任。
2022年より、愛知銀行の投資専門子会社である愛知キャピタルの代表取締役として経営を担う。

愛知キャピタル株式会社

愛知キャピタル株式会社
https://www.aichi-fg.co.jp/company/group/capital/

≪会社概要≫
愛知キャピタルは、お客さまの事業承継支援、ベンチャー・スタートアップへの育成支援を通じた地域社会への貢献を目的として設立された、愛知銀行の100%出資の投資専門子会社です。
あいちフィナンシャルグループは、地域金融グループとしての役割・責務を果たすため、地域におけるお客さまのさまざまなニーズや課題解決に応え、良質な金融サービスの提供に努めています。

服部達哉氏

営業企画部 ファイナンス戦略グループ
服部達哉氏

愛知県名古屋市出身。
2011年入行後、営業店にて主に地域の中小企業への法人営業に従事。
その後、銀行系のベンチャーキャピタルへ出向し、ベンチャー投資業務を経験。
帰任後は、銀行にてスタートアップのファイナンス支援や地域における支援機関とのアライアンス構築に取り組む。2024年より、愛知県のオープンイノベーション拠点「STATION Ai」に出向、コミュニティの運営に携わる。

株式会社愛知銀行

株式会社愛知銀行
https://www.aichibank.co.jp/company/information/profile/

≪会社概要≫
愛知銀行は1910年(明治43年)創業の愛知県名古屋市に本店を置く地域金融機関。
2022年10月に中京銀行と経営統合し、両行の持株会社として、株式会社あいちフィナンシャルグループを設立。グループおよび両行の傘下において、クレジットカード業務、リース業務、信用保証業務、金融商品取引業務などの金融サービスにかかる事業、ソフトウエア開発事業等を展開。
2025年1月1日には、愛知銀行と中京銀行が合併し、「あいち銀行」となる

投資・融資を中心に愛知県・東海エリアのスタートアップを支援

アマテラス:

まずそれぞれの会社概要や、どのようなスタートアップ支援を手がけているのか、教えていただけますか?

愛知キャピタル株式会社 代表取締役 磯部勝雅氏(以下敬称略):

愛知キャピタルは2022年1月に設立された比較的新しい会社ですが、設立年にファンドを立ち上げてから、本格的にスタートアップ支援を開始しています。現在から数えて18年前(2006年)から、外部の金融機関系ベンチャーキャピタルへ継続してトレーニーを派遣しており、ベンチャー投資やハンズオン支援のノウハウを蓄積してきたということが立ち上げの経緯としてあります。

愛知キャピタルでは、基本的に愛知銀行・中京銀行の営業エリアである東海4県のお客様に対して投資を行っていますが、当地域への貢献が期待され、あいちフィナンシャルグループと協業できるビジネスモデルであれば、東京に本社がある企業に対しても投資を行っています。

株式会社愛知銀行 営業企画部 ファイナンス戦略グループ 服部達哉氏(以下敬称略):

愛知銀行では融資を中心に、地域のスタートアップへの支援を展開しています。

2022年9月には、当地域にてスタートアップ支援を手がけている7つの金融機関・組織(愛知県信用保証協会、名古屋市信用保証協会、日本政策金融公庫、名古屋商工会議所、愛知銀行、中京銀行、愛知キャピタル)と、あいちスタートアップコンソーシアム「雛の会」を設立しました。これらの機関と連携しながら、地域のスタートアップを金融面から支援しています。

2023年からは地域のスタートアップ支援の中核となる「STATION Ai(※)」へ出向者を派遣するなどして連携を強めています。

※名古屋 鶴舞にある国内最大級のオープンイノベーション拠点。スタートアップ企業の創出育成およびオープンイノベーションの促進を目的に様々な支援を手がけている

先見性や独自性があり、社会に貢献するスタートアップを支援したい

アマテラス:

現在お二人が携わっている仕事内容や役割についてお伺いできますか?

磯部勝雅:

私は愛知キャピタルの代表取締役なので会社運営が中心的な役割ですが、それ以外の部分で最も重きを置いているのは、投資における代表者面談ですね。

実際に投資が決まるまでに、案件相談会ではハンズオン支援の可能性を、最終投資委員会では投資実行の可否を判断しますが、私自身の目で投資候補先の社長を見て、どのようなビジョンを持っているかを聞いたうえで上程するというプロセスを意識しています。

代表者面談では、社長個人の先見性や事業の独自性、社会貢献に対する考え方などをお聞きしています。愛知キャピタルも地域金融グループの一員としてスタートしている背景がありますので、地域への貢献に対する信念があるかどうかも重視していますね。

服部達哉:

愛知銀行に入行後は、法人向けの融資等を担当してきました。その後は外部の銀行系ベンチャーキャピタルに出向してベンチャー投資業務について学び、愛知銀行に戻ってからは愛知キャピタルと連携しながらスタートアップ支援に取り組んでいます。支援内容としては融資だけでなく、銀行のお取引先企業とのマッチングや地元自治体や大学等とのアライアンス構築の橋渡しなどにも携わっています。

愛知キャピタルがオフィスを構えるSTATIONAi

製造業の課題解決を目指すスタートアップが多い地域

アマテラス:

愛知県・東海エリアのスタートアップの魅力について教えてください。

服部達哉:

東海エリアは自動車産業を中心とした製造業が圧倒的に多く、他の地域と比べて、製造業が抱えている課題を解決するソリューションを提供しているスタートアップが多く誕生しています。

製造業出身の方が、製造業の現場で実際に経験した課題を解決したいという想いを持って起業するケースも多いと感じます。

業界の垣根を超えたコラボレーションが積極的に進んでいる

アマテラス:

愛知県・東海エリアのスタートアップ特有の仕事の進め方や、働き方の環境などに特徴はありますか?

磯部勝雅:

トヨタをはじめとする東海エリアにある優良企業と関係を構築しやすいという、距離的なメリットが挙げられると思います。

従来の東海エリアのビジネスは、同じ業界内の企業とのみ関係を構築するという傾向が非常に多く見られました。

しかし、最近では、急速に高まるEVニーズに対応するため自動車関連の技術が異なる分野で活用される例もあり、東海エリア内では業界の垣根を超えたコラボレーションがクローズアップされることが増えています。こうした状況に関心を持つ優良企業も増えてきており、今後もさまざまな企業連携が期待されます。

服部達哉:

東海エリアの製造業には、それほど知名度が高くないものの、世界では非常に高いシェアを誇っている優良企業も多くあります。東海エリアにあるスタートアップで働いたりこの地域で起業すると、このような製造業の優良企業と接点を持ちやすい点はメリットだと思いますね。

磯部勝雅:

最近では、大府市や東海市など、政令指定都市ではない自治体でもスタートアップに対する支援の動きが活発化しています。スタートアップ支援専門の部署を立ち上げた先行事例から影響を受けて支援を始める自治体も増えており、スタートアップで働くことや起業がしやすい環境が整いつつあります。

愛知スタートアップコンソーシアム「雛の会」が主催するセミナーの様子

子育てや教育環境が良く、ワークライフバランスもとりやすい

アマテラス:

県外から移住してスタートアップで働きたいという人に向けて、愛知県・東海エリアの魅力など、伝えたいメッセージがあればお願いします。

磯部勝雅:

愛知県や東海エリアは、県外から移住してきた方にも住みやすさを感じてもらえる地域だと思います。

例えば、名古屋市の場合、地方都市としてある程度のものは集約されている一方で、自動車で30分から1時間ほど移動すればすぐに行楽地にも行けるので、メリハリのある休日を過ごしやすいと思います。教育の分野でも非常に熱心なエリアですが、かといって詰め込み教育を推進しているわけではないので、「教育に力を入れつつ、のびのびと子育てができる」というバランスの良さが魅力だと思います。

私の周りでも多くの人が県外から単身赴任や家族を帯同してやってきますが、「東海エリアは閉鎖的」というイメージがあり、最初はとても不安に感じていたという声をよく聞きます。しかし、実際に働いて生活してみると、気候も良いし、非常に住みやすいと。いざ離れるとなると「もっといたかった」「また戻ってきたい」という声を多く聞きますね。

服部達哉:

東海エリアは、名古屋大学や名古屋工業大学をはじめ、理系の教育機関や研究機関が多く存在するのも特徴です。一方で、新しい分野の教育にも力を入れていて、例えば金融教育として小中学生が金融機関を訪問して学びを得るという取り組みも積極的に実施されています。寄附講座として、アントレプレナーシップ教育を実施する事例も増えていますね。

磯部勝雅:

不動産価格も決して高いわけではなく、東京の相場と比較すれば安価なこともあり、東海エリアには持ち家志向の人が多くいます。新築・中古を問わず、物件の価格が手頃なので、スタートアップの起業・転職で移住してくる方も、持ち家を購入しやすいと思います。

多方面での支援提供、地元企業・大学・自治体との関係構築をサポート

アマテラス:

愛知キャピタルや愛知銀行の支援先として選定されると、どのようなサポートを受けられますか?

服部達哉:

融資やビジネスマッチング、人材の紹介などの支援を行っています。中でも最も中心的なものは金融支援で、プラスアルファとして地域金融機関特有の支援(例:地域ネットワークを活用した販路拡大やアライアンス先の紹介など)を提供しています。スタートアップ企業が地元の大学や自治体などとの取り組み実施を希望する場合は、窓口として関係構築をサポートすることもありますね。

インタビューは愛知銀行 栄本店で行った。愛知銀行の服部氏(左側)、インタビュアーの弊社藤岡(中央)、愛知キャピタルの磯部氏(右側)

ビジネスネットワーク構築のカギは「愛校心・地元愛」への理解

アマテラス:

県外から愛知県・東海エリアに移住してスタートアップで働くデメリットや、想定外に感じやすい点などがあれば教えてください。

磯部勝雅:

愛知県・東海エリアのビジネスの特徴として、横の連携が強い点が挙げられると思います。県外から移住してきた人がこの地域で起業したりスタートアップで働き始める際は、一からの関係構築に苦労することがあるかもしれません。

「高校の同窓ネットワークが強い」という傾向があることも愛知県・東海エリアの特徴の一つで、東京の人から見ると珍しく感じると思います(笑)。その点では、名古屋周辺の高校について関心を持ってもらうと、ビジネスを進めやすいということがあるかもしれません。

地元愛に溢れている人も多くいますので、ビジネスの相手方となる人の地元についての情報を調べたり、興味を持ったりすると、スムーズに関係を構築しやすくなると思います。

とはいえ、愛知県・東海エリアの企業からすれば、県外から新たにビジネスに参加してくる人を大いに歓迎していますので、ポジティブに交流していただければと思います。

広い視野を持った経験豊富な方にはぜひ挑戦してほしい

アマテラス:

後に、愛知県・東海エリアのスタートアップで働くことに迷っている人に向けてメッセージがあればお願いします。

磯部勝雅:

東京都に比べて、愛知県・東海エリアのスタートアップは人材不足の度合いが高いと感じています。その中でも中間管理職に多い40代〜50代の人材不足が深刻なので、例えば県外の大手中堅企業で働いている人などは特に重宝されるはずです。

これまでに多くの経験をして、さまざまな視野を持った方に参画してもらえると、スタートアップ企業の基盤がより強いものとなり、地域の活性化にも繋がると思いますので、ぜひお待ちしております。

アマテラス:

有益なお話をありがとうございました。

この記事を書いた人

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アマテラス編集部

「次の100年を照らす、100社を創出する」アマテラスの編集部です。スタートアップにまつわる情報をお届けします。

愛知キャピタル株式会社

愛知キャピタル株式会社
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愛知キャピタルは、お客さまの事業承継支援、ベンチャー・スタートアップへの育成支援を通じた地域社会への貢献を目的として設立された、愛知銀行の100%出資の投資専門子会社です。
あいちフィナンシャルグループは、地域金融グループとしての役割・責務を果たすため、地域におけるお客さまのさまざまなニーズや課題解決に応え、良質な金融サービスの提供に努めています。

株式会社愛知銀行

株式会社愛知銀行
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≪会社概要≫
愛知銀行は1910年(明治43年)創業の愛知県名古屋市に本店を置く地域金融機関。
2022年10月に中京銀行と経営統合し、両行の持株会社として、株式会社あいちフィナンシャルグループを設立。グループおよび両行の傘下において、クレジットカード業務、リース業務、信用保証業務、金融商品取引業務などの金融サービスにかかる事業、ソフトウエア開発事業等を展開。
2025年1月1日には、愛知銀行と中京銀行が合併し、「あいち銀行」となる