edtech(エドテック)が目指す教育格差の是正

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アニメ調で分かりやすく伝える「すららネット」のWEB教材。 値段の安さも魅力的だ。 (画像出典:http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000084.000003287.html)
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 地域格差や所得格差による教育格差を解決しようと世界各地で産まれるEdtechベンチャー。その実態に迫ります。

米国にて増加する教育ベンチャー・背景には教育格差が。

カーン・アカデミーの授業画面。数学や科学といったコースが無料で受けられるのが特徴だ。 (画像出典: http://www.vitruvianway.com/gamification-marketing-lessons-khan-academy-website/)

カーン・アカデミーの授業画面。数学や科学といったコースが無料で受けられるのが特徴だ。(画像出典:http://www.vitruvianway.com/gamification-marketing-lessons-khan-academy-website/)

 皆様はedtech(エドテック)という言葉をご存知でしょうか?これはEducation(教育)とTechnology(技術)を掛け合わせた言葉で、教育系ベンチャー企業/スタートアップを総称して表す言葉です。2000年代後半以降の米国で数多くの企業が現れ、現在世界各地で数多くのベンチャー企業が立ち上がっている注目の分野でもあります。

 その代表例といえるのがカーン・アカデミー財団です。カーン・アカデミーは2006年、サルマン・カーン氏が友人や親戚に向けて教育用のビデオを作成したことから始まります。2007年からは数学・化学・経済学などの約2400ものビデオをYoutube上に無料でアップロードしたことで話題となり、全米に普及しました。現在ではカーン・アカデミーの授業を教材として用いる学校も出始めるなど米国を代表するedtechとなっています。

 教育分野はシリコンバレーの大企業およびその経営者にも高い関心を得ています。例としてアップル(Apple)元CEO・スティーブ・ジョブズは生前教育コストの高さを問題視しており、彼自身のiPad開発の原動力となっていました。またフェイスブック(Facebook)のマーク・ザッカーバーグCEOやマイクロソフト(Microsoft)の創業者・ビル・ゲイツ氏も教育分野へは注目しており、数多くの企業・団体に投資を行っています。ビル・ゲイツ氏は前述したカーン・アカデミー財団の投資者でもあります。

なぜ米国ではedtechが生まれやすいのか?

 米国でedtechが次々と産まれている背景としては、教育格差が挙げられます。多民族国家で様々な人種・文化圏が共存している米国の貧富差は非常に激しく、このことが大学進学率の格差などの教育格差に繋がっています。特にメキシコ系移民やアフリカ系移民の多い南部ほど深刻な問題となっています。また米国は各州の権限が強く、学校や自治体によって教える内容ややり方が自由とされています。そのため学校によって教育の質が全く異なるため、所得の高い地域と低い地域とで卒業後の学力に大きな差が出ているという問題点があります。経済格差と地方分権に伴う教育格差は大変な問題となっています。そこで、米国政府は2009年にコモン・コアという共通の学力基準を設定し教育の地域格差を埋める努力をしています。このため、これまでのやり方や教育内容だと基準に満たない学校や自治体がギャップを埋めるためにテクノロジーを活用しようとしているというのが米国でedtechのベンチャー企業が大量に産まれている背景であるといえます。

途上国でも盛んになりつつあるedtech

インドネシアのオンライン家庭教師事業者・Tutor。途上国でも次々とedtechのベンチャー企業/スタートアップが出ている。 (画像出典:https://www.techinasia.com/education-technology-solutions-indonesia-government-corruption-edtech-tutor-kelas-goesmart-harukaedu/)

インドネシアのオンライン家庭教師事業者・Tutor。途上国でも次々とedtechのベンチャー企業/スタートアップが出ている。(画像出典:https://www.techinasia.com/education-technology-solutions-indonesia-government-corruption-edtech-tutor-kelas-goesmart-harukaedu/)

 edtechは、米国だけでなく世界各地で起こりつつあります。教育分野は国・地域ごとに問題が異なるために、メディア等で話題になっている企業も多数存在します。その中にはモバイル普及が急激に進む途上国・新興国発の企業も目立ちます。例えば教育関係者の汚職や教員陣の修練不足などにより調査機関から「世界で最も劣悪な教育システムの1つ」と言われるくらい教育問題が深刻なインドネシアでは、多数のベンチャー企業関係者が教育分野で起業し、Tech in Asiaなどのメディア機関を騒がせています。

  • Bulletinboard 親と教員とのコミュニケーション不足を防ぐメッセージアプリを開発する企業
  • Tutor オンライン家庭教師を提供する企業
  • Kelase  元インテル従業員が率いる、 デジタル教材や教員向けツールを提供する企業。
  • GoeSmart 教員が生徒から勉強成果などの情報を受け取れるクローズドSNSを提供する企業

 その他の国・地域でもその地域ならではの事情から様々な興味深い企業が出ています。主なものを3社ほど紹介いたします。

  • PhilSmile (フィリピン)親が出稼ぎ先からフィリピンにいる子どもの学校に直接教育費を収められるサービス。中東湾岸諸国や香港、アメリカなどへの出稼ぎが多い同国ならではのサービスといえるでしょう。
  • Eneza (ケニア)モバイルを通じてオンライン家庭教師サービスを提供する企業です。タンザニアやガーナなど他のアフリカ国への展開も図っています。学校に通っていないユーザーも3割を占めるなど、公教育の代替機関としても機能しています。
  • Descomplica(ブラジル)ブラジルのオンライン教育サイトを運営する企業です。1400万ドルの資金を調達し、ラテンアメリカで最も成功しているedtechとして知られています。

日本でも学校外学習市場においては、edtechが出始めている

アニメ調で分かりやすく伝える「すららネット」のWEB教材。 値段の安さも魅力的だ。 (画像出典:http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000084.000003287.html)

アニメ調で分かりやすく伝える「すららネット」のWEB教材。値段の安さも魅力的だ。
(画像出典:http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000084.000003287.html)

 

では日本の状況は如何でしょうか。日本の場合、国全体で「学習指導要領」という基準が明確に存在するため、米国のように地域差によって教育内容が極端に異なることはありません。しかし所得格差による学力格差は顕著に現れています。2008年度に実施された全国学力テストにおいては、世帯収入が多い世帯に比べて正答率に約20%の開きが生じていたことが明らかになっています。

 この状況が産まれる要因は学習塾など学校外教育の格差によります。日本の場合学術創生科研の保護者調査によると約半数の親が「教育費は当然、親が負担すべき」と応えるなど、子どもの教育費を家庭が自己負担でやりくりすべきという考えが根強く残っています。そのため教育費の公的支出額がOECD先進国の中で最も低い水準となっており、家庭の経済力なしに高い水準の教育を受けることが難しい国になっています。確かに有名中学・高校・大学進学には学習塾への通塾が不可欠となり、家庭の所得状況により左右される面は大きいと言えるでしょう。

 しかしスマートフォンを始めとするインターネット接続機器の普及もあり、教室を持つことなくWebを用いることで有名学習塾と同等レベルの教育コンテンツを提供できるインフラが整ってきました。そのため、破格の安さで実績を伸ばすedtechが日本でも現れています。代表例としては、入会金10,000円、月額8,000~10,000円で授業を供給しているすららネット、授業の生放送は無料で受けられる葵などが挙げられます。いずれも週3回3教科指導で35,000円から(安塾ドットコム調べ)と言われる塾の相場とくらべて相当に安く、「学習塾のLCC」と言ってもおかしくはない企業であると言えるでしょう。また税込12,400円/月を支払うだけで、東大や慶應などの学生から家庭教師にして授業を受けることの出来るマナボも、有名大学の学生による家庭教師というハイエンド層の市場の相場観で見れば、相当に安い価格で提供している企業として有名です。

スマホ家庭教師マナボの仕組み。チューターを選んで教えてもらえるのが特徴。 (画像出典:https://mana.bo/step/)

スマホ家庭教師マナボの仕組み。チューターを選んで教えてもらえるのが特徴。
(画像出典:https://mana.bo/step/)

edtechで課題とされるのは質の高いコンテンツを作り、それを有効的に伝えること

エンジニアと数学教師が同一空間で働く株式会社葵。edtechにおいてはコンテンツ制作とコンテンツ伝達が如何に大事かがわかる。(画像出典:https://amater.as/companies/78/)

エンジニアと数学教師が同一空間で働く株式会社葵。edtechにおいてはコンテンツ制作とコンテンツ伝達が如何に大事かがわかる。(画像出典:https://amater.as/companies/78/)

 日本におけるedtech企業は、格安の学校外教育を実現できるという点から社会からのニーズも強く、ベンチャー/スタートアップ業界の中でも大変高く評価されている業界の1つです。故に資金調達やピッチイベントで話題になることもしばしばあり、メディアを賑わせています。

 しかし資金調達や知名度は上がっているものの、edtechには大きく分けて2つの課題があります。それは「初回のアクセスを増やす」という新規顧客を確保するという問題と「入った顧客が継続的に利用してもらう」という既存顧客の利用回数を増やす問題に集約されます。これに応えるべく、以下の2つの要素を満たせられる人材が職種問わず求められています。

  • 詰め込み型の学校教育や学習塾チェーンでは提供できない、創造性を鍛えられる教育コンテンツを作られるクリエイティブな人材
  • 作ったコンテンツを子どもたちに分かりやすく伝えられるコミュニケーョン能力に優れた人材

 edtechでも既存の学習塾と同様子どもが定期的に通いたく成るような仕組みが強く求められています。(この内容はフィードバック後削除:故に良質コンテンツを作れる企画系人材・エンジニア・デザイナー、上手く語れる講師陣を育てられる社内教育体制を整えられる総務系の人材が必要な人材となっています。)各企業もまた、講師陣への指導強化などの対応を行っています。例えば株式会社葵ではコンテンツ制作を担うエンジニアと数学や理科など科目別の教員陣が同一の空間で働くことで講師が教え受講者が理解するのに最適な教育コンテンツづくりを行えるようにしています。そのための従業員教育体制を強化している企業こそ、edtechが今後生き残りを図る上で重要な企業であると言えるでしょう。

参考文献

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