スタートアップ精神で挑む地方移住

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アマテラス・藤岡が2015年8月にウミーベ・カズワタベ社長を訪問した際の写真。この写真を撮影したすぐそばにウミーベのオフィスは存在する。(写真:藤岡撮影)
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 近年盛り上がりを見せる「地方移住」というキーワード。一見すると田舎でのんびりという感じがして、ベンチャー/スタートアップには無縁の世界と言えるかもしれません。しかし実際の成功例を見ると、ベンチャー/スタートアップの精神・就業経験を持つ人が多くいらっしゃり、世界を驚かせるような製品・サービスを輩出する企業も地方発で出始めています。アマテラスでは、このような実態を踏まえ地方移住の新たな形を提案いたします。

地方移住願望が増えるが背景には仕事に対する期待感のなさも。

 最近メディアなどでも「田舎暮らし」・「地方移住」という話題が登ることが増えてきました。ビジネスマンとして第一線で働いている世代においても地方移住を望む人がある程度増えつつあることがわかってきました。内閣府が調査した都市住民の農山漁村への定住願望についての世論調査の結果について2005年と2014年のものを比べると、30代の定住願望が17%から32.7%へ、40代の定住願望は15.9%から35%へと伸びています。

都市住民の農山漁村への定住願望(ある・どちらかというとある

(参考:http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h26/hakusho/h27/html/n1211000.html)

(参考:http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h26/hakusho/h27/html/n1211000.html

 ただ田舎暮らしというと、テレビなどのメディアの影響からかのんびりと過ごすという感じが強いかもしれません。事実国土交通省の「国土交通白書」においても、仕事における満足感や出世志向が2011年から2014年までの3年間で大幅に減少していることから、仕事に対する期待感のなさが地方移住につながっているのではなかろうかと指摘しています。

満足感や充実感のある仕事をしている(年代別)

(参考:http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h26/hakusho/h27/html/n1211000.html)

(参考:http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h26/hakusho/h27/html/n1211000.html)

会社の中での出世を常に目指したい(年代別)

(参考:http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h26/hakusho/h27/html/n1211000.html)

(参考:http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h26/hakusho/h27/html/n1211000.html)

 このデータだけを見ると、「地方移住」が増えている理由として、「東京での仕事に疲れたうえ、出世も難しくやりがいを感じられないから」という後ろ向きの理由で行う場合が多そうです。では実際そのような理由で成功した人というのはいるのでしょうか?成功の定義にもよりますが、転職事業に関わっている我々アマテラスの実感としては、収入が増えたとか、新しいビジネスを立ち上げて黒字化したとか、少なくとも仕事でうまくいったケースがあまり多くないのが現状です。

地方移住で成功する要素にはスタートアップ精神が数多く含まれる

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IT技術を駆使した最先端の栽培方法で、一粒1000円以上もする高級イチゴ栽培を行うことで知られる株式会社GRA(宮城県山元町)。都心でITコンサルティング業務に長年関わってきた岩佐大輝社長の考えが活かされた企業である。 (参考:http://www.migaki-ichigo.jp/)

IT技術を駆使した最先端の栽培方法で、一粒1000円以上もする高級イチゴ栽培を行うことで知られる株式会社GRA(宮城県山元町)。都心でITコンサルティング業務に長年関わってきた岩佐大輝社長の考えが活かされた企業である。(参考:http://www.migaki-ichigo.jp/)

 実際に地方に出て働くとなると、仕事に嫌気がさしてのんびりと過ごしながら、というわけにはいきません。むしろ田舎から東京、はたまた世界に打って出るくらいのビジネスを作り上げていく精神が問われてきています。

 「レバレッジ勉強法」・「ノマドライフ」など最先端の生き方・働き方を提唱する著作で有名な本田直之氏は「脱東京」と題した地方移住の本を書いています。その本では地方移住で成功するのに必要な条件として以下の13個の案件を提案しています。

  1. 発信力がある:SNSやブログなどを通じて独自性溢れる面白いライフスタイルを発信できる
  2. 価値の交換ができる:金銭的以外なもの以外の価値交換を他の人とすることができる
  3. クリエイティブセンスがある:人とは違うものの見方を持ち、地域の面白いものを発掘することができる
  4. モバイル・ポータブルな仕事ができる:WEB業界の新しいテクノロジーを多数使いこなすことができる
  5. ナイスである:人柄が良い、誰かの役に立ちたいという気持ちがある、お金よりも経験を重視できる
  6. 自分でいろいろなモノや価値を創れる:自分で新しいモノ・価値を作ることができる
  7. 人を巻き込める:地域を良くしていきたいという思いを持ち長期的視野に立って考えられる人。地域内にパートナーを多数作ることができる人。
  8. 地域の良さを翻訳・編集できる:地域の良さを見つけ、創造的な形で発信することができる
  9. 何足ものわらじを履ける:収入源を幾つか持つ。
  10. 自分で考える:自分で調べたり、勉強したりして、考えて判断するという癖をつける。
  11. 依存しない:誰にも頼ることなく自分で仕事を作り出して住むことができる
  12. 常に新しいチャレンジができる:いつまでも同じやり方に安住せず、新しいことを次々と仕掛けていく。
  13. 東京や海外での修行経験:人の多い場所で揉まれることで、仕事のノウハウと人のつながりを強化する。

 本田氏が提唱する13の特徴は、「自分の手で最先端かつ創造的な仕事やライフスタイルを作り上げる」という言葉に集約されます。これはのんびり過ごすというよくある田舎暮らしの理想像とは全く異なるものです。むしろ東京、はたまたサンフランシスコやシリコンバレーのベンチャー企業/スタートアップに通ずるものが数多く見受けられます。特に6番目の「自分でいろいろなモノや価値を創れる」、10番目の「自分で考える」、11番目の「依存しない」は自ら意識して働かなければ身につかないものであり、我々アマテラスが転職者の皆様に語っていることにつながることでもあります。

 実際、東京から地方に移住し成果を収めている人には、スタートアップ系のキャリアを歩まれた方が多数いるのが特徴です。高知移住で注目された人気ブロガー・イケダハヤト氏や最先端のイチゴ栽培で注目される株式会社GRAの岩佐大輝社長はその代表例といえるでしょう。

場所に囚われず世界を変えていく地方発ベンチャー/スタートアップ

アマテラス・藤岡が2015年8月にウミーベ・カズワタベ社長を訪問した際の写真。この写真を撮影したすぐそばにウミーベのオフィスは存在する。(写真:藤岡撮影)

アマテラス・藤岡が2015年8月にウミーベ・カズワタベ社長を訪問した際の写真。この写真を撮影したすぐそばにウミーベのオフィスは存在する。(写真:藤岡撮影)

 そうは言っても地方に行くとその地域の小さな商圏に合わせた中小企業しかないし、スタートアップ精神を発揮して新しい価値を創造し、広く世界にうってでるようなビジネスは成立しないのでは?と考えている方もいるかもしれません。確かにベンチャー/スタートアップ育成に熱が入らないために、活動が一地域内にとどまる小さな企業ばかりで停滞しているという地域も目立ちます。

 しかし最近では東京から地方移住した人物・あるいは進学・就職のため別の場所に行きUターンした人が創業した、スタートアップも注目を集めています。代表的なものを挙げると、以下のような企業が挙げられます。

YAMAGATA DESIGN株式会社(山形県鶴岡市)
地域社会に役立つ都市開発をやるべく、大手不動産企業を退職し庄内地方に移住した山中大介氏によって設立した企業。鶴岡市内において地域主導のもと、「産業・交流・教育・医療・一次産業」の5つの産業を軸にした「庄内サイエンスパーク」の開発を行っている。

株式会社GRA(宮城県山元町)
東日本大震災で被災した故郷の復興をはかるため、東京都内でITコンサルティング会社を経営していた岩佐大輝氏により2011年に設立した農業生産法人。前職で培ったIT技術を生かした先端施設園芸、特に一粒1000円で売れる高級イチゴ「ミガキイチゴ」を始めとする最先端のイチゴ栽培で注目されている。

ウミーベ株式会社(福岡県福岡市)
東京都心でIT企業を経営していたカズワタベ氏が福岡市に移住して、2014年に設立した企業。釣り情報サイト「釣報[ツリホウ]」や釣果共有カメラアプリ「ツリバカメラ」の開発・運営を行っている。働き方の改革にも熱心な企業で、海の目の前にオフィスを置くという拘りを見せている企業でもある。

株式会社アラタナ(宮崎県宮崎市)
宮崎市にUターンを行った濱渦伸次氏により2007年に設立。ファッション業界を中心にECサイト構築ツールを提供し、宮崎という地方拠点でネット・電話のみで営業を完結するというスタイルを貫きつつシェア1位を獲得したことや「宮崎に1000人の雇用をつくる」という理念を持っているで注目を集めている。2015年にはスタートトゥデイに買収された。

 これらの企業はいずれも地方の商圏相手に小さくという場所に縛られたビジネスではなく、国内外に訴えて幅広いシェアを取っていく・新たな市場を作っていくというビジネススタイルを取っているという特徴が見られます。この事実は、次に世界を変えるかもしれないビジネスを創造する際に、地方にいるということがデメリットにならないことを証明しているといえるでしょう。

地方移住を考えるならスタートアップとしての精神を持て!!

YAMAGATA DESIGN株式会社が推し進める庄内サイエンスパーク。このような事業を行うならスタートアップマインドが間違いなく必要になる。 (参考:http://yamagata-design.com/project)

YAMAGATA DESIGN株式会社が推し進める庄内サイエンスパーク。このような事業を行うならスタートアップマインドが間違いなく必要になる。(参考:http://yamagata-design.com/project)

 以上のことを考えると、地方移住や田舎暮らしには東京でのスタートアップで挑戦するのと同じくらいの気概を持つ必要があり、またそれだからこそ成功すると言えるでしょう。

 地方移住を考えている方はのんびりと過ごすというキャリアとしては後ろ向きの姿ではなく、広く世界に打って出るための地方ベンチャー/スタートアップへの転職および起業を検討してみるのも一理ありかなと思います。

参考文献

  • 内閣府「都市と農山漁村の共生・対流に関する世論調査(2005 年11月)」
  • 内閣府「農山漁村に関する世論調査(2014年6月)」
  • 国土交通省「国土交通白書(2014年)第2章第1節」http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h26/hakusho/h27/html/n1211000.html
  • 三菱総合研究所「生活者情報予測システム」
  • ダイヤモンド・オンライン編集部(2013)「IT insight対面営業はしない! 宮崎から動かずに全国の顧客と取引する、異色のIT開発企業――アラタナ・濱渦伸次社長に聞く」ダイヤモンド・オンライン2013年12月13日http://diamond.jp/articles/-/45786
  • 岩佐大輝オフィシャルサイト http://www.iwasa-hiroki.com
  • 本田直之(2015)「脱東京 仕事と遊びの垣根をなくす、あたらしい移住」毎日新聞出版
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