今注目したいブロックチェーン関連スタートアップ企業

サトシ・ナカモトが2008年に “Bitcoin: A Peer-to-Peer-Electronic Cash System” という論文を発表し、ブロックチェーンが生まれてから早10年。当初は仮想通貨として注目を集めたブロックチェーンですが、現在ではその活用の幅は非常に広く、農業、生産業、不動産業、アート、ヘルスケア、IoTなど幅広い分野、業界へ活用され、社会に変革を起こしています。ブロックチェーンを利用したサービスの市場規模は、67兆円と予測され、これからますます注目を浴びてくる分野です。今回は、アマテラスに登録しているブロックチェーン関連の国内スタートアップ企業と、世界的に注目を集めている海外企業をご紹介し、ブロックチェーンがどのように活用されているのかを見ていきます。

 

ブロックチェーンでオープンイノベーションな社会へ

ZEROBILLBANK JAPAN株式会社 (ゼロビルバンクジャパン株式会社)

ZEROBILLBANK株式会社は、IBMの元営業マン堀口純一氏が、第二のシリコンバレーと言われるイスラエルで創業されました。ブロックチェーン技術を活用したトークンを発行・管理するプラットフォーム「ZBB CORE API」、トークンを利活用するモバイル・ウォレット「ZBB WALLET」の開発・提供を行っています。働き方改革に繋がるサービスや、企業間の情報共有システムなど、ブロックチェーンを活用した様々なサービスを他社と開発しています。

事業例:沖電気興業株式会社との提携
企業トークン「Yume Coin」これは、モバイル端末の機能と連携させて、“行動や動き”に応じてポイントを付与する仕組みのトークンです。ベネフィット・ワン社とZEROBILLBANK株式会社が共同開発した「インセンティブ・ポイント」を活用しています。具体的には、”定時に退社”や”提出物を期日通りに提出”などの従業員の行動・動きをモバイルやIoT端末を活用して情報収集し、自動的に企業内通貨を付与します。そして、従業員は貯まった企業内通貨を従業員同士でやりとりできるほか、ベネフィット・ワンが提供するレストランの食事券や映画、観劇などのエンターテインメントチケット等、約2万点の商品と交換できます。
他にも、株式会社no new folk studioのスマートフットウェア「ORPHE TRACK」や株式会社Fitbitと提携し、良い歩行をしたり、良い睡眠をとった際に「Yume Coin」を付与することで、歩行や睡眠を改善し、ヘルスケア問題に取り組んでいます。

ブロックチェーンが更に進化

株式会社Scalar (株式会社スカラー) 

株式会社Scalarは、日本オラクル株式会社出身の深津航氏と、日本アイ・ビー・エム株式会社、ヤフー株式会社出身の山田浩之氏が創業。ブロックチェーンと分散データベースを融合した分散型台帳ソフトウェア「Scalar DLT」を開発しています。従来のブロックチェーンでは実現が困難であった高いスケーラビリティ、強い一貫性、確定性を実現しています。
現在は、「Scalar DLT」を活用して、クロステックビジネスの構築を目指す事業者の支援に取り組んでいます。その一環として推進しているのが、契約管理の自動化・高速化を実現するプラットフォームの構築です。”スキー場に着いた瞬間に保険が有効になり、帰る時には解除される”、”車に乗ってエンジンをかけたら課金が発生し、降りる時に課金が止まる”、といったシェアリングサービスにおいての契約の自動化、高速化が期待されています。

ブロックチェーン×アート

株式会社スタートバーン 

多摩美術大学出身の施井泰平氏が創業した株式会社スタートバーンは、新たなアートマーケットとアート体験を創出する「Startbahn.org」を展開しています。Startbahn.orgは、アート作品の登録・売買機能を提供すると同時に、ブロックチェーンの技術を用いて、”改ざんや紛失することなく、永遠に作品の価値が残る”作品証明書発行・来歴証明を可能にしています。従来のように、「いま作品が誰の手に渡っているのかわからない。」「規約を無視した売買が自分たちの知らないところで行われているかもしれない。」などの状況を無くし、生み出された作品が数10年後・数100年後にも価値が残り続ける社会を目指しています。ほかにも、オークションやアート作品の取引を行っている企業と提携することで、アートの価値低減を改善し、正当な取引が行われる社会を実現しています。

仮想通貨を使用した資金調達「ICO」

株式会社メタップス

仮想通貨を使用した資金調達を「ICO」といいます。ICOは詐欺まがいの事件で注目されがちですが、2019年3月に日本仮想通貨ビジネス協会から「新たなICO規制についての提言」が発表されるなど、日本国内でも法整備が進んでいます。企業は通常の資金調達より発行コストが安く、投資家にとっても簡単に売買ができるものとして、これから活用が増えることが予測されます。

株式会社メタップスは、日本を代表する若手起業家の佐藤 航陽氏が20歳で起業。企業が正しくICOを行うためのコンサルティングや、健全な仮想通貨交換所の紹介、上場推薦・上場審査やトークンの売買代理などを行っています。また、ICOプラットフォーム「Metalist」の提供を予定しています。

続いて、世界で注目されているブロックチェーン関連企業のご紹介です。

石油の取引の効率化

BP inイギリス

英国を代表する世界最大のエネルギーグループBP社は、ブロックチェーン技術を用いた石油取引プラットフォームの「VAKT」に初期メンバーとして参加しました。契約や請求のような、従来の紙で行われていた業務を効率化し、リスクやコストを削減、より信頼性のある石油取引サービスを展開しています。

株主の議決権行使をスムーズに

ブロードリッジ inニューヨーク

議決権代理行使と株主コミュニケーションのビジネスを展開しているブロードリッジ株式会社は、ブロックチェーンを用いた議決権代理行使サービスの開発に取り組んでいます。企業の議決案や取締役について、株主が株券を保管している銀行を通さずに、リアルタイムで自らの議決権を行使できるようになります。実際に、日本でも、東京証券取引所の合弁会社ICJ株式会社と、日本における初のブロックチェーンをベースとした議決権行使のPoC(概念実証)を成功させました。

TVマーケティングの効率化とプライバシー保護強化へ

コムキャスト inフィラデルフィア

米ケーブルテレビの最大手コムキャストは、昨年12月、ブロックチェーン基盤のプラットフォーム『ブロックグラフ』のローンチを目指し、競合や広告関連企業と提携しました。メディアや出版社が第3者を通さず、直接マーケティング企業に視聴者の情報を提供できるサービスを目指しています。テレビのマーケティングや広告の効率化を図り、視聴者の個人情報の保護を強化しています。

ブロックチェーン×自動車

ヒューレット・パッカード・エンタープライズ社 inサンノゼ カルフォルニア州 

ITソリューションを提供しているヒューレット・パッカード・エンタープライズ社は、独コンチネンタル社と提携し、ブロックチェーン技術を用いた車両データの共有プラットフォームを立ち上げました。安全なデータ共有機能は、自動車メーカーが”データを収益化し、ブランドを差別化すること”に役立つだけでなく、リアルタイムの警告や利用可能な駐車場の特定など、”ドライバーのためのサービス”にもつながると期待されています。

おわりに

今回ご紹介したfintech、ヘルスケア、アートなどの領域以外にも、IoTや物流、医療など、幅広い分野でブロックチェーンを活用した事業を展開する企業が世界的に増えています。これからも、より多くの業界でブロックチェーンが活用され、ブロックチェーンが中心となる社会も遠くはないでしょう。

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アマテラス編集部

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