- 目次 -
- 1 The War for Talent(人材獲得戦争)
- 2 最近人材エージェントから良い人が紹介されなくなってきたが何が原因か?
- 3 超売り手市場。スタートアップが求めるタレント人材は高倍率
- 4 先端スタートアップのエンジニアの競争倍率は30倍近い
- 5 採用は待ちではなく攻めへ 攻めの採用ツールはダイレクトリクルーティング
- 6 エージェントから紹介される人材はベンチャースピリッツに欠ける、という問題
- 7 ダイレクトリクルーティングで採用コスト削減可能
- 8 ダイレクトリクルーティングの運用の手間を解決してくれるのがRPO
- 9 RPOは実際に何をしてくれるのか?
- 10 RPOを活用すべき最大の理由は『採用力が向上する』こと
- 11 まとめ
The War for Talent(人材獲得戦争)
“The War for Talent” 。これが令和時代のスタートアップの採用を表すキーワードになるでしょう。
企業が人を選ぶ時代から人が企業を選ぶ時代へ。いち早くそのことに気付いていた米国マッキンゼー社が2002年に出版した経営者向けの名著の題名です。
出版から約20年経過し、人材流動性が高まってきた令和時代の日本で、この言葉がより意味を持ってきています。
アマテラスはシード・アーリー・ミドルフェーズのスタートアップをメインに幹部候補人材の採用支援をしています。本記事ではこのフェーズのスタートアップに向けて令和の“The War for Talent” をいかに戦うべきかについて書きたいと思います。(メガベンチャーや上場企業の採用にはあまり参考にならない内容かもしれません。)
最近人材エージェントから良い人が紹介されなくなってきたが何が原因か?
スタートアップからこのような相談を受けることが増えましたが、採用を取り巻くマクロ要因やプレーヤーが変わっているにも関わらず、従来型(平成型)の採用スタイルから令和型のスタイルに変化できていない企業側に原因があります。
現時点で採用に影響しているマクロ要因
・少子高齢化(労働人口の縮小)
・売り手市場(有効求人倍率は1.6倍でバブル期超え)
・国内スタートアップの資金調達増(2019年は過去最高の約2,162億円)
今後さらに採用に影響を与えるマクロ要因
・企業のライフサイクルの短縮化(終身雇用の崩壊と人材の流動化増)
・人生100年時代(ビジネスパーソンのキャリアライフ多様化・非正規の増加)
こういった要因から、『企業が人を選ぶ』→『人が企業を選ぶ』という令和のシフトチェンジは今後より鮮明になり、企業の採用も『待ち』から『攻め』への変換が必要です。
では具体的どうすればよいのか?
2020年時点でスタートアップに有効な解決策の1つとして、ダイレクトリクルーティングとRPO(Recruitment Process Outsourcing/採用代行サービス)の活用が有効と考えているのでここに述べていきます。
超売り手市場。スタートアップが求めるタレント人材は高倍率
厚労省が発表している有効求人倍率は2020年2月で1.61倍。つまり求職者1人に対しての求人案件が1.6個ある売り手市場、ということですが、スタートアップの売り手市場はさらに厳しい状況です。成熟した業界では誰かが辞めても同じようなスキル・経験を積んだ人が市場に多くいるため代替人材が見つかり易いのですが、先端領域スタートアップの世界では、そもそも市場が小さく、求めるスキル・経験を積んだ人材が希少(レア)なため、獲得競争が起こるのみならず、待ち行列が出来ているのが現実です。
さらにシード・アーリーフェーズのスタートアップになると、特定スキルのみではなく、マルチロールを期待されるため、0→1経験、マネジメント経験、英語力などの要件まで求められがちでそれらを満たす人材はさらにレア度を増していきます。
最近アマテラスに依頼があった実例では、
・iPS細胞の知見を持ち、大学病院と教授と製薬企業を巻き込んで事業開発をしてきた人
・量子コンピューティングの知識があり、医療機関向けにPoCを提案、プロジェクトを回した実績がある人
・AIの知見を持ち、大企業向けにAIプロジェクトを提案し、PMが出来る人
やや極端な例ではありますがこの手の人材ですと出現率が10万分の1人から100万分の1人クラスの人材です。
先端スタートアップのエンジニアの競争倍率は30倍近い
採用困難と言われているエンジニアの採用状況は以下のようになっています。
大雑把に言えば、約10万人いる国内のWEBエンジニアを約7倍の競争で企業が採りあっている状況です。これにスタートアップならではのマルチタスクプレミアムが付きます。複数のプログラム言語の習得やマネジメント経験など、高い要求水準が求められるため、実態の倍率は30倍くらいにはなっていると言えるでしょう。
元リクルートの藤原和博さんが提唱している100万人の1人になるレアキャリア理論(何かの分野で100人の1人の存在になり、その経験・スキルをかけ合わせること(1/100×1/100×1/100=1/100万)でレア人材になり市場価値が高まること)がありますが、先端スタートアップが求める人材の要求も、レアスキル×マネジメント経験×ベンチャーマインドなどコモディティ要件とは違うため、そもそも出現率の低いレア人材を求めることになります。それだけに人材獲得競争はより熾烈になるという認識をすることがまずスタートです。
採用は待ちではなく攻めへ 攻めの採用ツールはダイレクトリクルーティング
さて、このThe War for Talentにスタートアップが資金潤沢な外資系やメガベンチャーなどとのに勝つために、あなたはどちらの行動を取るでしょうか?
1.求人票を出して、応募を待つ
2.自ら口説きに行く
当然、2になるでしょう。採用競合に比して知名度が低く、給与も限定的なスタートアップが人材獲得競争に勝つには行動と工夫をするしかありません。スタートアップが求める競争倍率30倍以上のタレント人材が無名のスタートアップを探して応募してくれるほど令和の売り手市場は甘くありません。
しかし、いまだに多くのスタートアップが平成型の採用スタイルから抜け出せず、人材エージェントに依頼すれば良いと思っています。そして、その多くの会社が最近は以下のように言います。
“以前は人材エージェントに依頼すればそれなりに推薦が上がってきた。だが、最近は馴染みのエージェントからも良い人材の推薦が減った。”
大手人材会社をはじめ人材エージェントのビジネスモデルは企業から想定年収の35%をフィーとしてもらうため、タレント人材を確保したエージェントはより高いフィーを支払ってくれる企業に人材を紹介しようとし、売り手市場ではその傾向がさらに高まります。夢やロマンがあっても、フィーが低いスタートアップへの紹介は優先度が下がるのが現実です。
これは実際にあった話ですが、アマゾンのような外資系やメルカリのようなメガベンチャーとスタートアップがタレント人材の競争をするとどうなるでしょうか?スタートアップがやっとの想いで600万円を提示したあるタレントに外資は3000万円を提示し、メガベンチャーはエージェントに年収の100%の報酬を提示しました。
このようなマネーゲームに突入するよりも、スタートアップは給与面以外で採用する力を付けていくほうが現実的です。欲しい人材はエージェント任せにせず自ら採りに行くと認識することが令和的だと思います。
図5:エージェントを活用するとマネーゲームになる。
同じ人材を紹介した場合でもエージェント報酬は5倍近く変わることも。
では、『攻めの採用』とは何でしょうか?
2020年時点ではダイレクトリクルーティング(ダイレクトソーシング)の活用することを指します。
転職顕在層・潜在層が登録しているデータベースのことで、企業が個人をサーチし、直接コミュニケーションを取ることができるツールです。米国ではLinkedInやAngellistを始め一般的なサービスですが、日本ではここ数年の間にビズリーチ、Wantedlyを始めとするプレーヤーが登場してきました。ダイレクトリクルーティングのプレーヤーは細分化が進んでおり、求める人材のスペックや特長に合わせて適切なサービスを選び、活用することをオススメします。
採用の業界全体像や主要なダイレクトリクルーティングプレーヤーの特徴などを以下記載します。
■採用を取り巻くにおけるプレーヤー構造
■スタートアップに利用されている主要なダイレクトリクルーティングメディア(総合型)
■主な総合型ダイレクトリクルーティングメディアの登録者数、費用、スカウトの特徴
■スタートアップに利用されている主要なダイレクトリクルーティングメディア(エンジニア系)
ダイレクトリクルーティングのプレーヤーは細分化が進んでおり、求める人材のスペックや特徴に合わせて適切なメディアを選んで運用してほしい。
エージェントから紹介される人材はベンチャースピリッツに欠ける、という問題
SNSに加えダイレクトリクルーティングサービスが発展したことにより、『転職の民主化』が起こりつつあることも令和的です。『求人情報のオープン化』が進み、求職者自らが求人ポストや企業情報を取得でき、関心ある企業にコンタクトが取ることが可能になりました。
「そのような時代に革新的・先端的なスタートアップで活躍していこうという人材がエージェント経由で応募されてくるのであれば以下の可能性が高い」とRPO企業Attack社の村上社長(後述)は言います。
■情報収集力に欠ける。ITリテラシーが低い。
☞スタートアップ/ベンチャー企業の情報が自ら取得できる時代に、自分で探そうとしない。
■主体性に乏しい
☞自分自身のキャリアデザインを他社に頼っている。もしくは自分で企業を探す努力を怠っている。
■志望意欲が高くない
☞最大の志望理由が「エージェントから紹介されたから」。自分自身の応募意志がない。
エージェントから紹介される全ての候補者が上記に当てはまるわけではないですが、その傾向は徐々に高くなっており、スタートアップで革新的な事業をリードする人材として懸念を感じます。
参考:https://note.com/atsushi19771011/n/n141da42d546c
ダイレクトリクルーティングで採用コスト削減可能
主要なダイレクトリクルーティングと人材紹介の採用フィーを比較してみました。
年間10名の採用を行う場合、人材エージェントからダイレクトリクルーティングに切り替えることで削減できるコストはおよそ1000~2500万円。スタートアップにとっては小さな金額ではありません。
ダイレクトリクルーティングの運用の手間を解決してくれるのがRPO
ここまでダイレクトリクルーティングを使うべき理由を述べてきましたが、実際にそれを運用する、となると、
“手間がかかりそう。”
“どう運用したらよいかわからない。”
そんな課題にぶつかります。そこでRPOの登場です。
RPOとは“Recruitment Process Outsourcing”の略で採用代行を行うサービスです。ダイレクトリクルーティングの台頭とともに、その運用負担を解決したいというニーズに応えてここ数年で発展してきました。
人材紹介(エージェント)とRPOの違いについて説明します。
まるごと人事さんのnoteにわかりやすく書かれていたので今社長より承諾を得てそのままコピペします。
■人材紹介(エージェント)とは?
・人材を紹介してもらい、入社が決まったら年収に応じた成果報酬を払うサービス
・大手だと成果報酬は年収の35%が基本(年収600万円の方を採用したら210万円払う)
・人材紹介会社は、色んな転職希望者のキャリア相談にのり、転職先の企業を提案する
・人材紹介会社は、企業に営業して新しい求人情報を獲得していく
・担当者がキャリア相談や求人獲得をするので、エージェント事業とも呼ばれる
■採用代行(RPO)とは?
・採用業務を手伝ってもらい、業務委託費に近い形で月額費用を払うサービス
・月額費用は15〜70万円くらい(まるごと人事は月35万円)
・採用代行会社としては企業内の人事の一員として動くことが多い。採用代行の社名が表に出ることはあまり無い。
・採用代行会社として人材を集めるわけではないので、候補者のキャリア相談にも乗ることは無い
要は企業の中の「人事チームの一員」として採用業務を手伝うのが採用代行ということですね!
ということで、まるごと人事さんのわかりやすい説明はいかがでしたでしょうか?
さて、採用では主に以下のプロセスを実施し、PDCAを回していくことになりますが、RPOはここを伴走してくれますのでとても便利です。ダイレクトリクルーティングの運用のみではなく、採用広報・ツィッター採用などの先端的な取組みもアドバイスしてくれます。
特にシード、アーリーフェーズのスタートアップだと採用担当者が存在せず、CEO,COO,CFOがCHRO(採用責任者)を兼ねているということが少なくありません。スタートアップ経営幹部は採用が重要な経営課題と認識していても採用は専門ではないため心理的に優先度が下がり後回しになりがちです。ベンチャーキャピタル・株主に採用をせっつかれて困った、、という時にRPOが役に立ちます。
RPOは実際に何をしてくれるのか?
今度はRPOサービスを行うAttack村上社長作成の営業資料をもとに説明します。
■RPOサービスの全体像
採用戦略、採用準備、募集活動、応募管理、選考管理など戦略立案から戦術実行まで企業の採用活動全般をサポート。
■サポート体制:プランナー、コーディネーター、オペレーターを配置し、各ダイレクトリクルーティングからの候補者を一元管理し、選考管理や日程調整などの採用業務をマネジメント。
■サービスの進め方:採用業務を実施し定例ミーティングにてフィードバック。
■KPI管理およびフィードバックイメージ
どのメディアでどれだけのスカウトを打ち、どのように採用に至ったか、KPI分析をして報告。
■採用のPDCA
■アマテラスがお勧めするスタートアップ/ベンチャー企業にお勧めのRPO企業
RPOを活用すべき最大の理由は『採用力が向上する』こと
RPOを活用する最大の価値は『採用力が向上すること』だと思っています。
図16のようにRPOを活用することで自社の採用力を数字で知ることができますが、多くのスタートアップは自社の採用力を把握していません。ダイエットするのに自分のデータ(筋肉量・基礎代謝・脂肪量)を把握せずにただジムに通っても効果は薄いように、採用も自社の能力を数字で認識することがまず第一歩になります。
例えば、財務経理人材を1名採用したいと考えた時に、自社採用力の目安が分かれば行動イメージが沸きます。自社のダイレクトリクルーティングのスカウト返信率が約5%で、初回面談から内定承諾までの確率が10%だという目安が分かっていれば、逆算して、200人にスカウトを打ち、10人と面談し、1人が入社するという方程式が成り立ちます。
そしてRPOとともにPDCAを回すことで、採用プロセスのボトルネックや課題を解消し、スカウト返信率を20%・内定承諾率を30%まで上げることができれば、1人を採用するために20人にスカウトを打てばよいということになり労力はぐっと効率化されます。
従来のように人材エージェントに採用を丸投げしていると、母集団形成、ソーシングのプロセスがブラックボックス化されてしまい、自社の採用力がわからないままでした。採用を人任せではなく自分で手綱を持ち運用していく、そのための伴奏者がRPOです。ある程度採用の勝ちパターンやコツが見えるまでRPOに鍛えてもらったら自走していけばよいのです。RPOはいわばHRのパーソナルトレーナーともいえるでしょう。RPOによっては質は様々ですので、採用プロセスのKPIにコミットしてくれるRPOを選ぶとよいでしょう。
まとめ
・2020年、スタートアップ採用にお勧めはダイレクトリクルーティング×RPO
・令和時代の採用スタイルは『待ち』から『攻め』へシフトチェンジ
・攻めの採用でスタートアップにとって有効なのはダイレクトリクルーティングの活用
・ダイレクトリクルーティングを活用するのは手間がかかるため最初はRPOに伴奏してもらうことがお勧め
・RPOを活用し自社の採用力・採用課題を数字で把握する
・採用のPDCAを回し採用課題を解決
・自走できる採用体制を構築する
このようなことを述べてきましたが、最も伝えたかったことは、
“スタートアップ自ら『採用』の手綱を握り、採用の責任を持つ”
ということです。
企業が人を選んでいた時代から人が企業を選ぶ時代になるのが令和時代。
採用を他人任せにしていたのでは令和のThe War for Talentに勝ち残れません。
採用手法は様々あると思いますが、ダイレクトリクルーティングというツールを活用することで、自ら採用の手綱をさばけるようになったのは大きな時代の変化です。そしてRPOのサポートを得ることで手綱さばきを向上させることができます。
ダイレクトリクルーティングとRPOを活用することで、貴社の採用が一歩前進すれば嬉しいです。