スタートアップの働き方は、採用と効率を重視した週2日出社のハイブリッドワークが主流

はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大によって半ば強制的に拡がったテレワークを契機に、多くの人や企業の働き方に対する考えが変わったように感じます。
NTTは今年7月から勤務場所は自宅を基本とし、オフィスへの出社は「出張扱い」にする新たなルールを導入しました。グーグルなどアメリカの大手テック企業は全面的な在宅勤務から週数日のオフィス勤務を義務付けるハイブリッドワークに移行しています。

では、このような状況で、日本のスタートアップはどのような働き方となっているのでしょうか?
アマテラスに登録したことがある企業を対象に、スタートアップのリモートワークの現状と理想を明らかにすることを目的としてアンケート調査を行い、34社から回答を得ました(調査実施期間:2022年6月23日~8月2日。オンラインアンケート調査)。

ハイブリッド方式を採用している企業が多く、出社日の平均は週2日

まず、働き方(出社やリモートワーク)のルールについては、半数以上の企業が全社統一ルールを決めており、部署・チーム毎にルール設定している回答も合わせると75%程となりました。組織として働き方のルールを決めている企業が多いようです。

全社で統一している企業の働き方は、週1~4日出社の回答が過半数を占めました。月に1~2日出社も含めると、基本的には出社とリモートワークを組み合わせるハイブリッド方式を運用している企業が大半である、ということがわかります。
次いで、フルリモートと回答した企業が23.5%と全体の4分の1ほどでした。他方、フル出社と回答したのは11.8%となりました。
全体平均では週2.0日出社となりました。

職種別では、エンジニアはリモートワークが多め

部署・チームによる、もしくは個人によると回答した企業では、BizDevとコーポレートは週1~4日出社の回答が多く、平均してどちらも週2.1日出社しています。

一方エンジニアは、フル出社の割合が他職種より多く2割弱となった一方で、週1~2日出社、月1~2回出社が半数以上を占めました。また、フルリモートも2割弱で他職種より多くなっています。平均は週1.6日出社となりました。
ハードウエアに関するエンジニアはフル出社が求められるのに対して、IT系のエンジニアはリモートワークやそれに近い状況が多いようです。

リモートワークは採用に効果あり

コロナ禍をきっかけに拡がったリモートワークについて、企業は以下のようなメリットを感じているようです。

・業務によっては業務効率がよい
・通勤時間が減るなどで社員のワークライフバランスがいい
・場所の制約がなくなることで、採用がしやすい

中でも採用に関しては、地方のスタートアップであったり、エンジニアの採用を重要視している場合はリモートワークのメリットを大きく感じていました。

・リモートを中心としたデジタルワークに移行することで生産性を高めることができるため。(株式会社NOKIOO)

・家が遠い、育児中の場合は出社回数すくなめ。WLBの観点から。(株式会社ライトニックス)

・オンライン商談のため出社しなければならない理由がなく、全国より採用を行っている。(株式会社イノーバ)

・都内近郊者では採用が難しく、地方在住者に採用を拡げた為(ピトン株式会社)

出社のメリットは、コミュニケーションのとりやすさ

半強制的なフルリモート期間等を経て、出社する意味やメリットを改めて考える企業も多く、そのメリットとして以下のようなことが挙げられました。

・コミュニケーションが取りやすい
・他部署とのコラボレーションがしやすい
・企業のカルチャーが醸成しやすい

中でもコミュニケーションに関しては、社員数が多かったり、新入社員の教育を考慮する場合、出社するメリットを高く感じるとの回答が目立ちました。

・リモートワークの方が業務効率は良いが、一方で対面だからこそできる部署を超えたコラボレーションなども必要であるため。(toBeマーケティング株式会社)

・対面でコミュニケーションをする機会を設けることで、より一層チーム内の相互理解を実現出来るから。加えて、新卒メンバーの成長には隣で直ぐにアドバイスやフィードバック出来る体制が重要だと考えているから。(フォースバレー・コンシェルジュ株式会社)

・情報の共有がスムーズにいかなかったこと、様々な温度感も伝わらなかったことから(株式会社トラス)

・プロダクトの性質上、密なコミュニケーションが求められるため、必要最低限の顔合わせの機会を設けるため。(AuB株式会社)

リモートワークでは、バーチャルオフィス等のコミュニケ―ションツールを積極導入

現在の働き方を進めるにあたって工夫していることも聞いてみました。
その回答からは、リモートワークと出社、それぞれのメリットを理解して導入しつつ、それぞれの働き方における弱点を補う工夫をしていることがわかりました。

まず、リモートワークを主体としている企業では、
・バーチャルオフィスやSlackなどの活用
・ドキュメントなどによる情報共有
・定例会議を設ける
などリモートワークによって起きるコミュニケーション不足に対する工夫が多く回答されました。

・バーチャルオフィス、月2回の出社日、半年に1回の社員合宿(株式会社Lightblue Technology)

・スケジュールの可視化、定例MTGでコミュニケーションをなるべくとる(株式会社TRULY)

・oVice活用、コアタイム無しのフルフレックス導入、1on1の定例化(ピトン株式会社)

・SaaS導入によるペーパーレス化(LQUOM株式会社)

福利厚生の充実で出社促進

出社のための工夫としては
・アクセスの良い場所にオフィスを構える
・軽食を提供したり、防音ブースを設置するなど、オフィスの設備を整える
・フレックスタイム制度を導入する
といった福利厚生など、社員に対する出社のメリットを打ち出している企業が多く見られました。

・オフィスには防音ブース・スタンディングデスクなどをおき、作業環境を整備している。(株式会社ユーティル)

・頻回にWEB会議をする。たまに立地が至便である投資家のオフィス(東銀座)で会議。(株式会社ライトニックス)

・フレックスタイム制度をいれている。オフィスの場所をよいところにしている。(株式会社トラス)

・入社時研修は3日間出社で、先輩社員との関係性構築を行っている。また、社内のコミュニケーションが途切れないよう、チャットワークやDiscordで話しやすい環境づくりをしている。全社イベントも年数回実施し、リアルでの交流機会を与えている。(株式会社イノーバ)

会社としての理想は、「フルリモート」を減らしたい

最後に、会社としての理想の働き方を伺ってみました。
現状と理想の一番大きい違いは、現状では4分の1が選択していた「フルリモート」が14.7%と大幅減になったことです。その結果、平均出社日数は週2.1日と、理想の方が微増しました。

その理由としては
・一定出社をしたほうがコミュニケーションがとりやすく、業務も円滑になる
・出社をすることで部署を超えたコラボレーションができる
・ハイブリッド方式によって社員の自律性を高められる
といったことが挙げられました。

・対面コミュニケーションの方が新しいビジネスが創りやすい。(株式会社つなげーと)

・自分自身が選択して時間を使えた方が人生の幸福度は上がると思っています。一方で、対面の重要さも理解しているので週1は顔を合わせてコミュニケーションするくらいがバランスが良いと思っています。(フォースバレー・コンシェルジュ株式会社)

・リモートワークの方が業務効率は良いが、一方で対面だからこそできる部署を超えたコラボレーションなども必要であるため。(toBeマーケティング株式会社)

・積み上げる会議はリアルの方が成果が出せると思うから(株式会社TRULY)

まとめ:採用と効率、そして、創造のためのコミュニケーションが求められるスタートアップの働き方

今回の調査から、対面とリモート、それぞれのメリットを活かすべく週2日程の出社を交えたハイブリッドワークが主流となっているスタートアップの働き方が見えてきました。
都内大企業に勤務する方を対象とした調査(野村総合研究所調査。詳細:https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2022/cc/0624_1)の値が平均週2.8日出社でしたので、これと比較するとスタートアップは、採用や効率への配慮からリモートワークがより進んでいると言えそうです。

効率的で採用に有利なリモートワークの導入が進む一方で、新規ビジネスの創出が求められるスタートアップでは創造の為のコラボレーションも必要となります。
創造のためのコミュニケーションの必要性をメンバーが理解するとともに、会社としては効率とコミュニケーションの双方を促す仕組みや工夫が求められています。その実現に向けたスタートアップの働き方の進化が今後も楽しみです。

ライター:河西あすか・柴山望

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アマテラス編集部

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