「ワークライフバランス」の観点から会社を選び、働き方を変えました

公認会計士を目指した理由は大きく3つです。

1つは、大学3回生時、周囲が就職活動を始めた時に感じた違和感です。
当時は企業研究やエントリーシートが主流の時代だったのですが、「この２つをやっても、現実は違うよね…」と思いが強く、かつ、どうしても入りたい会社が特にありませんでした。
「後からキャリアを選べる方法」を考えた時、「『経理』はどこにでもある業務なので、後から会社を選ぶこともできるかな」と思い、会計士を進路として検討し始めました。

２つ目は、当時お付き合いしていた男性から、近い将来に実家に帰りたいという話を聞いていたので、「移動できるキャリアの方がいい」と思い、その点でも会計士がよいと考えました。

もう１つは、自分に自信がなかったので、「面接よりも試験で点数を取れば受かるのは、わかりやすい！」と思いました。

はい。監査法人には計9年程在籍しました。最初の3年は上場を目指している会社の監査を担当しました。ただ、その頃（2010年頃）は不景気でIPOの件数が少なく、自身として成長の時期に十分な業務量がないことに不安がありました。
そこで、新事業として立ち上がったIFRS（国際財務報告基準）のアドバイザリー部門の社内公募に手を挙げ、キャリア変更しました。

異動した部署で尊敬する上司とクライアントに恵まれ、シニア、マネジャーとキャリアを進めました。シニアの段階からクライアントへの主担当を任せて貰えたことで、社内の他部署とのネットワークを築くことも出来ました。当時は本当にハードワークで、終電帰りや土日も勉強するというのが当然と思って働いていました。

忙しくも充実した生活を送っている中、カナダへの駐在が決まり、一年程駐在した後、退社することになりました。

家族の事情と、私自身の価値観の変化です。
夫は日本で働いている外国人で、私のカナダ駐在中は離れて暮らすかたちになりましたが、私個人のキャリアとして大事なチャンスだということを頭では理解しつつ、心情的には理解しづらいようでした。欧米では単身赴任よりも、家族は一緒に暮らす選択の方が一般的で、「会社の業務として駐在しているのだから、定期的に家族と会うための休暇や航空券は会社が準備すべき。なぜ交渉しないの？」と言われました。

当初は夫の主張がピンと来ていなかったのですが、私自身も日本を離れてみて、母国以外で暮らすことの大変さを理解し、また、カナダで一緒に働く同僚が、仕事よりも家族や自分の生活を大事にしているのをみて、夫の主張も理解できるようになりました。

例えば、ある同僚は他国からカナダへ移住してきた理由について、「彼女がカナダでとてもいい仕事のチャンスを得たので、自分もカナダに来た。自分もこれからカナダで新しいキャリアを築きたい！」というような話をしており、他のカナダ人もその話を一般的なことと受け止めている、といったこともありました。

そんな生活を通して、私の中に「短期的にも長期的にもワークライフバランスは大事かも」という価値観が芽生えてきたのです。
「短期的なワークライフバランス」というのは日々遅くまで働かないということで、「長期的なワークライフバランス」というのはライフイベントに応じたキャリアチェンジを意味しています。

そんな中、夫から母国に戻ることを検討したいという話もあり、私は駐在期限前でしたが、一旦日本に帰る決断をしました。しかし、これは会社の意向と異なったため、結局退社することとなりました。

ご自身のキャリアと価値観の変化について語る中澤さん

夫のキャリアが少し変わったこともあり、当面は日本で働くことになりました。
ただ、私は次の就職に前向きな気持ちになれずにいました。本当の意味で、ワークライフバランス（短期も長期も）を考えている会社なんて日本にはないという思い込みと、仮にワークライフバランスを重視するような働き方をしても、監査法人時代に描いていたキャリアには届かない、と思い込んでしまっていて、「無理に働かなくてもいいかな」と思っていました。

そんな折、知人から『ママテラス』（https://mamater.as/　時短勤務等を希望するキャリア女性とベンチャー企業を繋ぐ弊社サービス）を教えられました。そのサイトをみたところ、様々な事情でフルタイムでは働けない方向けの人材紹介サービスということでした。
私はフルタイム可能でしたが、「本気でワークライフバランス（短期も長期も）を真面目に検討してくれる転職コンサルなら、ママテラスにお願いしてみてもいいかな」と思ったのが、ママテラスでの転職のきっかけです。

転職先を選ぶにあたり、３つ軸を考えていました。
１つは、過去の経験が活かせること。私の場合、会計、財務、税務の経験を活かすこと。
２つ目は、英語力を向上させたいので、仕事で英語に触れられること。
そして、３つ目が、ポジションなり、業界なりで何か新しい挑戦があることでした。

これらに加え、将来、夫が日本を離れるキャリアを選択する可能性もあるので、10年、20年働けると約束できないという状況がありました。そのため「数年間の勤務になる可能性がある」と伝え、それを受け入れられる企業に絞りました。

そうですね。働く以上はその会社へ誠実にコミットしたい、という気持ちがありました。その気持ちと家庭の事情を理解してくれる会社でないと、転職しても結局上手くいかないと考えていましたね。

そうして絞り込み、実際に受けたのは十社もなかったと思います。

オファーを頂いた中には「週3日出勤でOK」というポジションもあったのですが、今後のキャリアのことも考えて、最後は上場企業子会社のCFOか、自然電力の経理マネジャーかで悩みました。

自然電力は面接の段階から、上司から部下になる方まで皆と会うことが出来、しかも皆「一緒に仕事をしたい」と思える方達で、それは凄いことだと思いました。
また、前職で馴染みのあるエネルギー業界ということもあり、入社を決めました。

ありませんでした。恐らく、夫も働いているということが大きかったと思います。また、どうしても再度転職が必要となった場合には、再び監査法人に就職するという選択肢もあるとも思っていました。

自然電力グループのコーポレートサイト（http://www.shizenenergy.net/）

幅広く、かつ、効率的にという点では、気の合うエージェントを選んで活用することをお勧めします。エージェントをきちんと選べば、自分に合いそうな案件を、自分で探すよりも幅広く提案頂けます。
その反対に、自分達のエージェントフィー本位で、個人の意向とは異なる企業を紹介してくるようなエージェントとは連絡を絶ちました。

そして、今まで一緒に働いた人に相談してみることをお勧めします。
仕事の中で自分のことをよく知ってくれているので、自分に合う案件を紹介してもらえていたと感じます。既に退社を決めて転職活動をしている場合は、オープンに知人等に話した方がいいと思いますよ。

経理マネジャーとして入社して、支払や月次決算がメインの仕事です。会社として様々な新しい事業に取り組んでいるので、会計的なスキームの相談も多いです。
また、短期間で社員が増えている状況で、「サポート部門の人を増やさずにコントロールしていく方法はないか」という業務改善にも積極的に取り組んでいます。

2018年4月からコーポレート部部長となり、今までの業務に、法務と総務が加わりました。
法務の業務としては契約書等のレビューやスキーム相談などがありますが、専門的な部分はチームメンバーに対応頂き、私は全社的な視点でコメントするよう努めています。例えば、専門的なことだけでなく、視野を広げて、「事業のスピードを考えて、もっと前から情報を取りにいっては？」といった提案をしています。

総務も含めて三部門の担当となったのは、サポート部門全体を効率よく回せるよう考えてやって行くように、ということだと思っています。

１つは、私の分野の専門性が求められていて、かつ不足している状況があったかと思います。そこに必要な人材が入ったので、在籍期間に拘わらず、役割を増やそうという会社の考えは柔軟だと感じます。

もう１つ、私が新しいものを吹き込んだとしたら、「ルールがないことが、自由を阻害することもある」ということを主張してきたことです。

現在弊社は約160名の組織となり、創業の頃とは異なります。「仕組やルール等を取り入れていかないと既存業務が効率化されずに手元が詰まってしまい、結果として新しい挑戦をすることが難しくなる」と主張していて、それが経営層にもいくらか納得して貰えたのだと思います。
今回の役割変更は、会社が次のステージを目指すにあたって、より強くコミットしてほしい、という意図だと理解しています。

併せて休暇取得の奨励にも取り組んでいます。例えば、今年のGWには、経理チームが1週間以上の長期休暇を取れるよう調整しました。優秀な人材を獲得するには、休暇を取れる環境も必要です。

「変えた方がよい」と思うことは、きちんと伝えた方がいいと考えています。
ただし、これまでに積み上げてきたものを否定する気持ちは一切なく、「その時点はそれが最善だった」ということをお伝えした上で、「今後を考えると」というお話をしています。

でも、凄いと思うのは、色々と口うるさいことを言ったにもかかわらず、全然嫌がらずに「そうだよね」と言ってくれる経営層です。
この素直さは弊社のカルチャーだと思いますが、急速に成長して社員も増えた中で、そのカルチャーを組織として維持していることが凄いと思います。

また、弊社には創業メンバーも中途入社組もいて、外国人もいて、幅広い年齢層がいます。そして、ダイバーシティーに本気で取り組んでいます。まだまだ十分でないところもありますが、より高めるためのトライをし続けているところが素晴らしいと感じます。

人事の竹井さん（写真左）と中澤さん（写真右）。自然電力には女性マネジャーも多い。

いくつかありますが、一番いいところは、セクショナリズムが全くないところです。

代表取締役が3人いますが、派閥等は全くありません。これから始める、決まっていないことに対して、皆で「解決すること」が目標で、「どこの部門に押し付けるか」が目標になっていないのは、「凄い！」と感じます。とても仕事がやりやすいです。

二つ目が、裁量の大きさです。これは「面白い！」と思う方と、「怖い」と思う方の両方があるかも知れません。
多くの決裁が私で完了するため、責任がとても大きいです。自分がきちんとやらないと会社が傾く状況にもなりかねないので、監査法人にいた時とは異なりますね。

重い裁量を持たせて頂いているので、尚更セクショナリズムの無さは助かるし、他部門と話せて決めていける面白さは大きいです。

余談ですが、私は監査法人在籍時に、「何で、こんな高いもの（＝監査法人）にお金を払うのかな」と思っていましたが、現在の立場になって納得しました。自己の責任で決裁をする中、監査法人は自分の判断を強くサポートしてくれる存在なのだと実感しました。

三つ目の魅力として、前職での経験がとても活きるポジションであることです。
私は前職で『会計』という商品を社外に売っていました。『会計』に関する知識そのものも、勿論役に立ちます。

それに加え、前職の「モノを売った経験」もとても有用です。サポート部門はモノを売った経験がない方が多く、特に社内説明については改善の余地があるかなと考えています。自分の視野だけで「必要」と言うだけでは不十分で、周囲からその必要性および緊急性を理解して貰うことが重要なので。

「この部署にはこんなメリットを主に伝えた方がいい」といった、ネゴシエーションスキルやファシリテーションスキルを磨いてきた経験はとても活きています。言い換えれば、サポート部門の方々も、是非身につけるべき力だと思います。

監査法人時代よりはかなり早く帰宅しています。19時半か20時頃には退社していますし、土日は一切仕事をしないと決めています。

一番は、自分の意識を変えることです。
監査法人時代は「置いて行かれたくない」といった強迫観念がありましたが、「何を重視するのか」とよく考えた結果、今の私は「早く帰れる状態で仕事をしたい」ので、「それで部長として不足しているなら、降ろされることも含めて仕方がない」というように考え方を変えました。

今後は、望む人が望む働き方ができる組織を、率先して作っていきたいと考えています。

大企業と比べると、「ルールや自分の役割の定義がない」と感じるかも知れません。「ない」というより急速な成長の中で作る時間もなかったというのが実情だと思います。
それに対して、「何でないのですか？」という質問ではなく、自分で変えていこうとする意識が必要だと思います。とはいえ、気づいた人が全部やると大変なので、周囲を巻き込みつつやっていく。
背負い過ぎなくてもいいけど、見ないふりもしないことが大事です。

自然電力オフィス。社員数が150名を超え、スペースが拡張された

前職に比べ、入社時は一時的に下がりました。今は戻っています。

私には幸い住宅ローン等がなかったので、「この金額がないと生活していけない」という要件はありませんでした。そのため、年収ダウンはプライドの問題だけでした。

大事なことは、その後に描くキャリアプラン、つまり「この会社で何を得たいのか」ということ次第だと思っています。年収が欲しいのであれば、プロフェッショナルファームにいればいい。「そこでは得られないものが欲しい」以上、新しく学ぶものがある以上、一旦年収を落とすことも決してマイナスではないと思います。

サポート業務に着目すると、業務自動化が1年以内にスタートすることを織り込む方がよいと思います。大手企業でも自動化は進みます。そうすると、必要な人材はかなり少なくなると思います。

そして、長期的には組織の形態にも変化が起きると考えています。会社の形態をとらず、何かをやりたい人がいて、その場に各分野の人材が集まり、数年働き、ミッションが完遂したら解散して次、みたいな形が増えていくと思います。

そんな時代に、その場に呼んで貰うにはネットワークと個性が必要です。
業務が自動化したら、残るのは判断業務とネットワーク、後は新しいテクノロジーを使っていく力です。それらを磨くことが、今後求められると思うのです。

今後のキャリアは、「ファームや大企業に残れるスキルが自分にあるのか」等も含めて考えるべきだと思います。自動化後にサポート部門はよりクリエイティブな仕事を求められる、と私は思っています。