2020年5月データから見るスタートアップ転職市況~キーワードは“加速”~

藤岡清高
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スタートアップ転職を考えているあなたに2020年5月末時点のデータをもとに情報提供し、転職活動の指針に役立ててもらえることが本コラムの目的です。2020年4月データを元にしたコラムが好評でしたので、その続編になります。(リンク⇒https://amater.as/article/2020/05/15/covid-19-startup-202004/ )

新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)の拡大が日本のスタートアップ転職市場にどのような影響を与えていて、今後どうなっていくのか、アマテラスサイトに登録している411社のスタートアップと転職者の直近数か月の動きからアマテラスの考えをお伝えします。

※ここで利用しているデータは、あくまでアマテラス登録企業の利用状況です。国内のスタートアップ全体の状況と合致するとは限りませんので、ご承知おき下さい。

【目次】
1.WITHコロナでスタートアップの採用は現状どうなっているのか?
1-1.コロナで積極採用のする業界・企業
1-2.アクティブ企業の採用活動はGWで一旦収束。5月以降はゆるやかに
1-3.成長ステージ別の採用動向
2.コロナによりスタートアップ転職市場はどうなるのか?
2-1.GWを境に買い手市場に
2-2.転職活動が活性化している職種
2-3.ハイクラスなライバル増加で競争はより激化
3.WITHコロナの2020年6月、スタートアップ転職のキーワードは“加速”

1.WITHコロナでスタートアップの採用は現状どうなっているのか?

1-1.コロナで積極採用する業界・企業

アマテラスに登録している企業を業種毎に区分し、2020年2~5月において採用アクティブ企業(=スカウトメッセージを送った企業)数の推移を見てみました。(表1参照)

着目すべきは、WITHコロナ期がスタートした2月から採用ペースが落ちていないカテゴリーが6つあることです。

  • 100⇒150(1.5倍) サステナビリティ(再生エネルギー・EV関連等)
  • 100⇒150(1.5倍) モビリティ・ロボティクス(自動運転・調理ロボット等)
  • 100⇒100(1.0倍) コンサルティング(M&A、大企業とスタートアップのマッチング等)
  • 100⇒100(1.0倍)HRtech・Edtech(オンライン教育、リーガルテック等)
  • 100⇒100(1.0倍)金融・fintech(ビッグデータ・投資等)
  • 100⇒100(1.0倍)新素材・バイオテクノロジー(大学発コアテクノロジー関連)

他方、採用の動きが少なくなっているのは、コロナ直撃業種ともいえるインバウンド・建設・レジャー関連です。

 

〔表1〕2020年2-5月の採用アクティブ企業数を業界別に比較
(2月の利用企業数を100として指数化)

(出所:アマテラスサイト内データ)

1-2. アクティブ企業の採用活動はGWで一旦収束。5月以降はゆるやかに

2月から5月末にかけての大きな動きでいえば、コロナを採用好機と捉えたスタートアップは3-4月に(アマテラスサイト内で)採用活動を積極化。営業活動がスローダウンし、採用に時間やリソースをかけられたことと、リモートワーク・オンライン面談が浸透したことでメールレスポンスや採用プロセスの進行が早まり最終面談までのスピード感は早まりました。

その一方で、最終面談後の内定承諾プロセスの時間軸が長くなりました。3月末にオファーを受け取り、通常なら4月末までには承諾するところ、回答がGW明けになるといった事例が多かったのは慎重姿勢の現われでしょう。

そして、GWを境に潮目が少し変わってきました。

表1が示すようにアマテラス利用企業数は指標ベースで 100(2月)→107(3月)→98(4月)→79(5月)
となっており、2-4月はほぼ同水準で推移したものの5月で約2割ダウンしています。

その主な背景としては以下と考えています。

  • コロナを好機と捉えたスタートアップは3‐4月に積極採用したが、GW前後で一旦収束
  • 5月になってコロナの長期化や大手企業の決算見通しからその影響を懸念し、採用に慎重姿勢が見られる

全体的には5月以降の採用は落ち着きつつありますが、表1で黄色に網掛けした採用アクティブ業種の数値は未だビフォーコロナと同水準もしくは上回っています。

大事なことは採用を全体として見るのではなく、フェーズや業種別にセグメントして分析してみることです。あなたにとって関心のある業種はどうなっているでしょうか?

 

1-3.成長ステージ別の採用動向

次に、成長ステージ毎の採用状況を見てみます。

シリーズA企業は5月もアクティブですが、シード・アーリー、シリーズB/C以降の会社はダウントレンドになりました。

この背景として、資金調達済みのシリーズA企業は社員数が少なく固定費も抑えられていることもあり、「良い人材がいれば積極的に採用したい」というスタンスを引き続き維持していることがあります。

他方、シード・アーリーステージのスタートアップは収束が見えないコロナの状況から慎重姿勢に転じたようです。3-4月に優秀人材の採用を終え、5月以降は本当に必要なポジションに絞った採用をしています。

そして、採用において最もコロナの影響を受けているのはレーターステージ企業だと言えます。

4月のレポートで既報の通り、レーターステージ企業の多くが元々計画していたアグレッシブな採用計画を大幅縮小し、それに加えてIPO延期や不要不急なプロジェクトの中止等が起こっています。これに伴って関連ポジション(HR,事業開発、PM、エンジニア等)で人材余剰が生じている状況です。

 

〔表2〕2020年2-5月の採用アクティブ企業数を成長ステージ毎に比較
(2月の利用企業数を100として指数化)

(出所:アマテラスサイト内データ)

 

そのような状況下でもスタートアップらしい創意工夫をしている事例もありますのでご紹介します。

アマテラス登録企業のレーターステージ企業アソビュー株式会社(東京都渋谷区、山野智久代表取締役CEO)は、アウトドアスポーツやものづくり体験、遊園地や水族館などの遊びのマーケットプレイスを運営しています。

山野社長のnote によれば、

・緊急事態宣言以降、市場環境が急転直下
・主力サービス「アソビュー!」の流通総額がマイナス95%
・エクイティ・ファイナンスを成長原資とし、内部留保乏しい
・災害影響下の企業に対し、ベンチャーキャピタル各社の判断長期化
・販管費(主に人件費・広告宣伝費)60%超の削減が必須

という厳しい状況になりました。

「人が提供するサービスを作るIT企業のコアコンピタンスは、そこで働く「従業員」と「企業カルチャー」だと思っています。当社はこれらを獲得・醸成していくのに丸9年の歳月を掛けている訳ですが、これを一度ゼロにして、需要の回復期にまた一からやり直すというのは、相応の時間を要します。」

そう考えた山野社長は「災害時雇用維持シェアリングネットワーク」という仕組みを創り、社員はアソビュー社に籍を置いたまま、他社への「在籍出向」を発案。
マザーズ上場のクラウドソーシング企業のランサーズ株式会社(東京都渋谷区、秋好陽介代表取締役社長)が受け入れ企業として名乗りを上げ、既にエンジニアが出向しています。
スタートアップマインドとスキルを持った人材を必要とする企業と雇用維持が難しくなった企業間とでWIN-WINのディールを成立させたのです。

参考記事:
https://note.com/tomohisa0509/n/n3b53be0822ee
https://note.com/ayanonambu/n/nd727e0c3dcd8

 

アソビュー!より引用

 

このように大変な難局にぶつかっても創意工夫で乗り越えていく経営者は本当に素晴らしいと思います。

コロナを理由にして人員解雇をすることは最も考えつきやすい選択肢でしょう。しかし、そうはせずに必死に解決先を探し、そのために行動するスタートアップにこそ未来があると思います。

アマテラスが推薦したいスタートアップとは、まさにこういうマインドを持った企業です。

 

2.コロナによりスタートアップ転職市場はどうなるのか?

2-1. GWを境に買い手市場に

さて、スタートアップ転職者動向についてお伝えしていきます。
アマテラスサイト内の新規登録者数はGW明けから登録者が急増し、5月の登録者数は2月比1.5倍近くなりました。
他方、表1で示したように採用企業全体は縮小傾向となりましたので、GWを境に買い手市場から売り手市場へシフトチェンジしたと言えそうです。

 

〔表3〕2020年2-5月のアマテラスのプレミアム会員*の新規登録者数比較
(2月の新規登録者数を100として指数化)

(出所:アマテラスサイト内データ)
*アマテラスプレミアム会員:アマテラスの審査によりスタートアップで経営幹部候補人材として活躍できると判断された会員

 

人は今回のように外的要因で想定できないネガティブなことが起こると、
困惑する(一部は怒る)⇒状況を受け入れる⇒次に向けた行動する、といいます。
そのプロセスで考えると2-3月には困惑し、4月に受け入れ、5月になって次へ向けて行動を開始したように見えます。

実際、5月に私が面談した方達はコロナの不安に駆られているのではなく、コロナを受け入れ、アフターコロナで定着するであろうニューノーマルやパラダイムシフトを前提にして「早めに動かなければいけない」といったポジティブなマインドの方が多かったと思います。

 

2-2. 転職活動が活性化している職種

職種別の新規登録者推移は表4の通りですが、特に転職活動を活性化させている職種状況についてお伝えします。
※以下の数値は2月と5月の新規登録者数比較です。

  • 100→230(2.3倍):人事総務

多くの企業で採用縮小に伴い人事、特に採用人事の業務が縮小しています。大手人材エージェントのキャリアコンサルタント人材もここに含まれており、こういった人材のサイト登録が急増しています。
現在採用担当者を募集しているスタートアップは少なく、出来ることなら社外よりも社内異動などの道を探すのが得策かと思います。人材エージェント業界への転職は厳しいものの、RPO(採用代行)をしている会社は元気なので狙い目です。

  • 100→200(2.0倍):マーケティング

企業は不況期になると不要不急の広告支出を減らすため、それを請け負うマーケティング会社の事業が縮小しています。一方でコロナの影響が少ない或いは追い風となった業界もあり、そのような業界・会社ではマーケターニーズは依然強いです。市場ニーズ・市場価値の高い職種なのでネガティブになる必要はなく、アマテラスサイトでも一定のニーズがあります。

  • 100→175(1.75倍):コンサルタント

不況期の企業が真っ先に削減対象とするのがコンサルティング契約です。大企業はコア事業回帰、コスト引き締めに動いており、不要不急と判断されたコンサルティングプロジェクトの打切りや発注停止が起こっています。それに伴い「ポストコンサルではスタートアップでキャリアを」と考えていたコンサル人材が動き出している印象です。
成長スタートアップの経営企画や事業企画人材としてポストコンサルは人気ですが、その枠は多いとはいえず、ライバル急増により競争が激しくなっています。このポジションはクローズするとしばらく空かないので、動くのであれば早い方がよいでしょう。

  • 100→167(1.67倍):財務経理

IPOの延期・中止が増えており、レーターフェーズを中心に管理部門がコストセンターとして判断され縮小モードになりつつあります。とはいえアフターコロナで成長が見込まれる業界やコロナの影響を受けていない会社はありますので、ネガティブになる必要はありません。成長性ある業界のミドルステージ企業では管理部門未構築の会社も多く、転職先候補はあると思います。

  • 100→120(1.2倍):ソフトウェアエンジニア

企業内でプロジェクトの選択と集中が行われた結果、中止となったプロジェクト案件が増加し、転職市場にエンジニア人材が増加しています。ただ、AIを始めアフターコロナで成長性が見込まれる業界・企業は多くあるため、ネガティブに感じることはありません。アマテラスサイト内を見ても、スキル・実績のあるエンジニアの獲得競争が起こっています。成長ポテンシャルのある業界・企業へ目を向ければオポチュニティーは大きいと言えるでしょう。

 

〔表4〕アマテラスのプレミアム会員の新規登録者の職種別推移

(出所:アマテラスサイト内データ)

 

2-3.ハイクラスなライバル増加で競争はより激化

前回の記事でスタートアップ転職市場は、「ポテンシャル採用の減少・即戦力採用中心へ」、「ライバル増加により競争激化」、「ジョブ型雇用へ」とコメントしましたが、やはりその通りのことが起こっている感触です。

6月初旬時点でも転職希望者数の増加傾向は続いています。6月はボーナス月ということもあり月末にかけてスタートアップ転職希望者はより増えることが予想されます。

一方でコロナは第一波が収束を見せているとはいえ、企業の採用活動全体としては縮小トレンドが続きそうです。この流れでいけばスタートアップの買い手市場へのシフトチェンジはより進むと考えられます。

その市場にポストコンサル、ポストCPA等のいわゆる人気ハイクラス人材が目立ち始めています。実際、AIスタートアップの事業開発ポジション(年収800万円程度)を年収大幅ダウン覚悟でマッキンゼーやアクセンチュア在籍者が競っています。ここに日系大企業の30才前後のビジネスパーソンが参戦すると、厳しい戦いになるでしょう。

 

3.WITHコロナの2020年6月、スタートアップ転職のキーワードは“加速”

キーワードは“加速”だと考えています。

2020年5月26日、国内の緊急事態宣言が全面解除されました。これを潮目としてWITHコロナからアフターコロナに向けての戦いが始まりつつあるように思います。

中国はコロナの発生源ですが皮肉にもそのトンネルを世界で最も早く抜け出し、アフターコロナに向けて動き始めました。欧州にマスクを配り、医療スタッフを派遣して距離を縮めています。足が止まったアメリカにとって中国は“加速”しているように見えるでしょう。

同様に、日本のスタートアップも動きはじめた企業は買い手市場の追い風もあって加速し、一気にニューノーマルのリーダーになっていく可能性があります。

自社のことで恐縮ですが、アマテラスはここ数年DX投資をしてきたことで、WITHコロナ期に大きな追い風を受けて通常の倍のスピードで走れている実感を得ています。

自身の成長速度を速めたいと考えているビジネスパーソンにとっても、今は加速させてくれるチャンスがある時期だと言えます。

改革する側のスタートアップに参画することで、あなたのキャリアを加速できる“ゾーン”に入っていきます。この時期がいつまで続くのかわからず、行動を起こせる時間は限られています。

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藤岡清高