EコマースDXや物流DXのナレッジを軸に、グローバルプラットフォームの世界展開を目指す

株式会社コマースロボティクス代表取締役 伊藤彰弘氏

2000年に入って、多くの業界で「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の重要性が叫ばれるようになりました。DXとは、デジタル技術の浸透により、既存の価値観や枠組みを根底から覆し、人々の生活をより良いものへと変革することを指します。

世界的に見ると、日本のDXは遅れているといわれています。実際に、IMD(国際経営開発研究所)が発表している「世界のデジタル競争ランキング」(2021年)によると日本は28位と、韓国(12位)や中国(15位)と比べても大きな差がついている状態です。

そんな中、日本から世界に向けて、EコマースDXや物流DXで蓄積したナレッジを軸に、企業と人をつなげるどこにもないビジネスプラットフォームを展開しているスタートアップがあります。それが、株式会社コマースロボティクスです。

コマースロボティクス社代表取締役の伊藤彰弘氏は、トヨタ自動車で問題解決手法を学んだ後、商社にて新規事業立ち上げを経験してから、2013年に同社を創業されました。創業当初から受託開発で売上を上げ、堅実に経営を続けてこられた伊藤氏ですが、2期目・3期目には売上が半減し、連続赤字に陥った時期もあったそうです。

創業からの10年を振り返って「資金に余裕がなかったことが逆に良かった」と語る伊藤氏。その生い立ちから創業に至るまでのストーリーや創業後のご苦労、そしてグローバル展開を見据えた今後のビジョンについて伺いました。

伊藤彰弘氏

代表取締役
伊藤彰弘氏

横浜国立大学工学部を卒業後、トヨタ自動車に入社。その後、商社やシンクタンクを経て、2013年に株式会社ECロボ(現、株式会社コマースロボティクス)を創業。EコマースやEC物流を中心に、複数のSaaSサービスやプラットフォームサービスを開発し、各業界の効率化やDX推進に貢献している。

株式会社コマースロボティクス

株式会社コマースロボティクス
https://commerce-robotics.com/top.html

設立
2013年07月
社員数
88名(インドラボ開発Lab8名を除く)

《 Mission 》
商売のデジタル化で企業と人をつなげる
《 事業分野 》
WEB・アプリ
《 事業内容 》
株式会社コマースロボティクスは、先進のEコマースDXや物流DXで蓄積したナレッジをB2Bビジネスに拡大させ、企業と人をつなげるどこにもないビジネスプラットフォームを開発する企業です。ビジネスプラットフォーム「Salesgram(セールスグラム)」、SCM(※)プラットフォーム「Commerce Robo(コマースロボ)」、越境輸入ECサービス 「Airtrade(エアトレード)」をベースに国内・海外向けにビジネス展開しています。
※SCM(サプライチェーンマネジメント):製品やサービスの供給網を効率的に管理する手法

自由な気風の学校で破天荒に過ごした学生時代

アマテラス:

まず、伊藤さんの生い立ちからお伺いします。現在に繋がる原体験のようなものがあれば教えてください。

株式会社コマースロボティクス 代表取締役 伊藤彰弘氏(以下敬称略):

幼少期を思い返すと、朝から晩まで特に勉強もせず、サッカーをしたり野球をしたりと外で遊んでいる子どもだったと思います。父は普通の会社員でしたし、両親ともに私を自由にのびのびと育ててくれたように思います。特に「勉強しろ」と言われたこともありませんでした。

そんな幼少期を経て、高校は自由な気風の都立校に進学しました。高校でも自由に過ごしていたのですが、いざ大学進学を考える段になって「どうせなら東大に行こう」と思い立ちました。そこからの1年半は、人生で初めて、全力で勉強に打ち込む日々でした。

結局1回浪人した後で、東大を断念。進学先を見直し、最終的に横浜国立大学の工学部に入学しました。大学では機械・材料関係を専攻していたのですが、研究室に泊まり込んでは朝までどんちゃん騒ぎするような学生でしたし、割と破天荒に過ごしていたように思います。

大学卒業後は、トヨタ自動車にエンジニアとして就職し、材料の研究や生産設備の開発などをしていました。トヨタ自動車には優秀な人が多く、研修も充実していたので、10年ほどの勤務の中で、本当に様々なことを学ばせてもらいました。実際、現在のコマースロボティクスのビジネスにも当時の学びが数多く生かされてます。

トヨタ自動車で叩き込まれた問題解決手法「カイゼン」

伊藤彰弘:

たとえばトヨタ自動車では、「セールス実習」と「工場実習」という研修がありました。職種問わず、生産と販売を必ず両方とも2ヶ月ずつ経験するのですが、地元ディーラーで車を売った経験と工場の現場で働いた経験は、どちらも得難いものでした。

また、トヨタ自動車で学んだ「問題解決」に対する考え方やそのカイゼン手法は、今日まで経営者としての自分を支える土台になりました。トヨタ自動車に入ると、社員は日々の業務を通じて経営の柱である「カイゼン」手法をレベルアップ出来るようになっています。

代表的な例としては、「A3フォーマット」「A4フォーマット」という手法があります。これは、意思決定権者に判断を仰ぐ際に、必要な情報を集約し、A3やA4の用紙1枚に落とし込んでから提出するというやり方です。

他にも様々なフレームワークがありましたが、いずれも客観的な意思決定を重視し、データ分析に基づいた結論を出すという点や、ムダを排除して効率化する点は共通していました。書類を出す度に指摘を受けて改善するという過程を何百枚と繰り返していけば、自ずと客観性が磨かれますし、解決できる問題のレベルも上がっていきます。

トヨタ自動車では、「自分の仕事は常に悪い状態」であり、「問題意識を持ってカイゼンし続ける」姿勢が当たり前でした。「トヨタの問題解決手法はすごかった」と気づいたのは、10年ほど働いたトヨタ自動車を辞めて、商社に転職してからでした。

シアトル帰りの上司との新規事業を経験し、創業へ

伊藤彰弘:

商社への転職に踏み切ったきっかけは、もっと商売を学びたいという思いからでした。トヨタ自動車で働いているうちに、「独立したい」という思いが強くなっていったので、起業を視野に、違う環境でもビジネス経験を積みたかったのです。

商社での勤務で、私が最も大きな影響を受けたのが当時の上司でした。 彼はシアトルから単身赴任で日本に戻ってきた方で、とても柔軟な思考の持ち主でした。アメリカで数々のベンチャービジネスに触れてきた経験から、彼は私にサラリーマンの常識とは全く異なる起業家の世界を見せてくれました。

私以上に破天荒な気質の彼と共に新規事業に取り組み、ゼロから億単位のマネタイズを成し遂げることができたのは、当時の私にとって非常に意義のあることでした。彼の影響があったからこそ、その後、日本国内の面白そうな起業家に会いに行っては、新しい商売を作っていくという経験ができたのだと思います。

そうして、ついに2013年に独立し、ECロボ(現、コマースロボティクス)を立ち上げました。最初はECサイトやモバイル系アプリといったインターネット関係の受託開発をしていましたが、途中で事業の方向性を切り替えて今に至ります。2期目3期目こそ赤字でしたが、それ以外はずっと黒字で創業10周年を迎えることができました。

インタビューはコマースロボティクス社オフィスにて行った。伊藤氏(右)とインタビュアーの弊社藤岡(左)

受託開発からプラットフォーム型ビジネスへの転換

アマテラス:

インターネット関係の受託開発から現在のビジネスプラットフォームの提供へと切り替えた背景としては、どのような意図がおありだったのでしょうか?

伊藤彰弘:

創業当初から受託開発で売上は確保できていたのですが、このまま続けていくのは厳しいだろうという予想も立っていました。特にモバイル系を中心としたインターネット関係は環境の変化が非常に激しく、若い世代を中心としたトレンドの移り変わりにいずれついていけなくなると感じていたからです。

どうせなら、より長く続けられるインフラビジネスのような事業をしていきたい。そこでEC物流における一連の流れを管理するサプライチェーンマネジメントの分野へと舵を切ることに決めました。

その当時、EC物流の分野は伸びてきていることは知っていましたが、私にとっては未知の領域でした。もう一回ゼロからやり直そうとコツコツ積み重ね、やがて独自の分析のもと、自分なりに組み立てた理論をホームページで発信できるまでに至りました。

EC物流は当時、トレンドの先端でしたから、そこで持論を展開出来るレベルまで学びを深めていた人は決して多くなかったと思います。とはいえ、ホームページでの発信がまさか、トランスコスモスの奥田昌孝会長の目に留まるとは正直、予想だにしていませんでした。

資金の余裕がないからこそ実現できた堅実な事業成長

伊藤彰弘:

技術者を集めるにしても、まずは事業を回していく資金がないと始まりません。だからこそ、最初から開発費を大きくつぎ込むのではなく、お客様のニーズありきでプロトタイプを作り、営業力を活かして売上を立てては、ブラッシュアップしていくというやり方で事業の幅を広げてきました。

儲かったら人を入れ、儲かったら人を入れ、「必要な業務に必要な人を入れていく」ことの繰り返しです。当社の場合、運転資金にあまり余裕がない状態からスタートしたことが、逆に良かったのではないかと思います。

最初からお金に余裕があると、「ああでもない、こうでもない」と様々な仮説のもと、プロダクトを作ってしまいがちです。資金がなかったからこそ、今で言うリーンスタートアップ方式で堅実に経営してこれたのだと思います。

EC自動出荷システム「コマースロボ」

2期目・3期目の赤字から得た教訓とSaaSビジネスの理想形

アマテラス:

2期目3期目以外は黒字決算で来られたということですが、赤字だった2期目と3期目についてはどのような背景がおありだったのでしょうか?

伊藤彰弘:

実は、創業1年目から海外市場を見据えて、日本における米国Evernote社のEC運営代行をしていたのですが、ちょうど2年目のタイミングで同社が物販事業から撤退。結果、売上が半減してしまいました。また同時期に進めていたSaaS型サービスの開発も、コストがかさんでいました。

2つの要因が重なっての2期連続赤字で、経営的には厳しいところまで追い込まれました。そこで事業設計を見直し、利益率が低めだった物流ビジネスを減らすことにしました。限られたリソースを集約し、既にリリースしていたグローバルサービスや開発が完了したSaaS型サービスに全力を注ぐと決めたのです。

そうして4期目で黒字に戻し、今も黒字経営を続けているわけですが、この時の経験から大きなマーケットやサービス1つに依存するのではなく、より小さなマーケットに多数の商品を展開していくべき、と学びました。

日本のSaaSビジネスは、「1社に1つのサービス」といった感じがありますが、私の理論ではそれでは商売として発展していかないと考えています。私が考えるSaaSビジネスの理想形は、1社で例えば30とか50とか100とか、数をこなしながら小さめの市場で1番ないし2番のシェアを獲得していくスタイルです。

この事業スタイルの参考にさせてもらったのがキーエンスです。キーエンスは大きな会社ですが、一つひとつの商品のマーケットは比較的小さく、その分、数を出すことで、圧倒的な1位を獲得しています。

キーエンスが行っている商売の原理原則というべきやり方をSaaSビジネスにも取り入れて発展させたい。その発想の元、当社もそれぞれ近い領域でサービスを数出しながら、徐々にテリトリーを広げていくやり方で事業を進めています。

創業初期からグローバルを見据えていた人材採用

アマテラス:

サービスを多数展開していくためには、技術者の採用が欠かせないと思いますが、そのあたりはどのように進めてこられたのでしょうか?

伊藤彰弘:

創業当初からもともと「グローバル市場で商売をしたい」という思いがあり、海外の方を積極的に採用しようとは考えていました。ただ、特に会社の知名度がない初期段階で、ハイレベルな人が来てくれるとは考えていませんでした。

だからこそ、スタートアップマインドのある打たれ強い方に来てほしいという思いはありつつも、最初は人の紹介やハローワーク経由で、基本的には来る者拒まずの採用をしていました。入ってくれる社員がどんな人であれ、経営者である自分が成果を出すのだと覚悟を決めていました。

たまたまハローワークの募集でインド人の社員が来てくれたので、その方を起点に、外国人採用枠でMBAを持つインド人や中国人が採用できたのは幸いでした。あとは初代CFOの出身校がカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)だったので、外国人と違和感なく仕事ができたのも大きかったです。

国内でいうと、あえて首都圏ではなく地方に目を向けて採用を進めました。中部圏の一大IT拠点として建てられた岐阜県の「ソフトピアジャパンセンター」を拠点に採用を行った結果、現CTOの伊藤が参画。彼が主導してくれたおかげで、AWSの導入やインドとの取引が進みました。

初期から海外市場を見据えて人材採用と育成に力を入れてきた結果、現在、当社にはインドにカナダ、韓国、台湾、中国と多国籍なメンバーが集まっています。その中には、インド工科大学出身のエンジニアもおり、来年には新卒でさらに3人、インド工科大学出身者をお迎えする予定です。

オフィスでのミーティングの様子

ベトナム・インドとの提携による生産体制確立と今後の課題

アマテラス:

コマースロボティクス社の今後の展望について教えてください。

伊藤彰弘:

会社の目標としてはまず、SaaSビジネスのさらなる拡大に向けて、より多くのサービスを市場に出して行きたいと考えています。前々からそのための準備を進めていたのですが、近年ようやくインドの企業に加えて、ベトナムの大手企業とも契約を結び、海外2社での生産体制を整えることが出来ました。

具体的には、保守開発はインド、製造はベトナムにお願いしています。ベトナムでは20代のエンジニアが数多く働いています。そのため、自社でまずテーラーメイド型のプラットフォームを開発し、その作り方を彼らに教えることで、品質を保ちつつ低コストで量産できるようになったのです。

今後のボトルネックとしては、販売の部分でしょうか。ビジネスモデル上、出来る限りコストを掛けずに、ネット完結で販売を進めたいので、今後はウェブマーケティング等、サイバー上の戦略強化が大きな課題です。

これまではコンサルや広告代理店を入れつつ、外注しながら販売の仕組みを作っていたのですが、今後はそれだと足りなくなっていくでしょう。クリエイティブなスキルと高度な専門知識を併せ持つ人材を社内で育てていく必要があると感じています。

プロフェッショナルを育て、グローバルな活躍機会を提供

伊藤彰弘:

当社は元々、プロとしての専門知識やスキルを社員に身に着けてもらうべく、教育システムの充実に力を入れてきました。年齢を問わず、チャレンジしたいという熱意ある方には教育を提供し、さらに伸びてもらえる環境を用意しています。

もちろん本人のやる気次第ではありますが、お客様と渡り合える専門知識を習得してもらえれば、入社1年目からプロジェクトマネージャーとして活躍することも十分可能です。

大切なのは、「自らの専門性を磨き、どのような価値を社会に出していけるのか」という問いに向き合い続けること。営業にせよマーケティングにせよ、どの分野であってもプロフェッショナルであろうとし続けられる方と、ぜひ一緒に仕事をしたいと考えています。

当社の今後の展開でいうと、今年の11月1日には、受注から物流、発注をワンストップで行えるクラウド型物流プラットフォーム「Cyber Logi (サイバーロジ)」をSBSホールディングスと共同でリリースし、通販ECの新たなインフラ提供を始めました。

また海外で進めてきたオフショア開発の仕組みをプラットフォーム化し、日本の企業様に提供するようなサービスの開発も進めているところです。当社は今後、グローバルなプラットフォーム型ビジネスにより力を入れていきます。日本にとどまらず、アジア圏や欧米のお客様もどんどん開拓していく予定です。

世界を相手にビジネスをしたい方にとって、当社の商売は今後、ますます面白くなっていくと思います。外国人スタッフが半数近いグローバルな環境で、自らの専門性を武器に、ともに世界を目指していけるプロフェッショナルな仲間との出会いを楽しみにしています。

アマテラス:

本日は素敵なお話をありがとうございました。

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多田 ゆりえ

株式会社コマースロボティクス

株式会社コマースロボティクス
https://commerce-robotics.com/top.html

設立
2013年07月
社員数
88名(インドラボ開発Lab8名を除く)

《 Mission 》
商売のデジタル化で企業と人をつなげる
《 事業分野 》
WEB・アプリ
《 事業内容 》
株式会社コマースロボティクスは、先進のEコマースDXや物流DXで蓄積したナレッジをB2Bビジネスに拡大させ、企業と人をつなげるどこにもないビジネスプラットフォームを開発する企業です。ビジネスプラットフォーム「Salesgram(セールスグラム)」、SCM(※)プラットフォーム「Commerce Robo(コマースロボ)」、越境輸入ECサービス 「Airtrade(エアトレード)」をベースに国内・海外向けにビジネス展開しています。
※SCM(サプライチェーンマネジメント):製品やサービスの供給網を効率的に管理する手法