優良電力ベンチャーを見抜く3つの方法

エネルギー需要の増加や地球温暖化の対応に迫られる中、太陽光や風力、小水力などの新エネルギー関連、スマートグリッドや電気自動車などのエネルギー使用効率化に関して様々なベンチャー企業/スタートアップが登場してます。これらはcleantech(クリーンテック)と呼ばれ、メディアでも多く取り上げられています。

我が国においても東日本大震災や新エネルギー特別法制定、電力自由化などを追い風に、cleantechが扱う市場が拡大しているのはご存じの方も多いと思います。実際アマテラスに面談に来る方でも、興味を示される方は多くいらっしゃいます。

しかしこの業界は新規設立・参入する企業が多く、製品差別化が難しい業界であることから過当競争に陥りがちでありの業界でもあります。事実かつて太陽電池パネルのシェア世界一を誇っていたドイツのQセルズ(2012年)や中国のサンテック・パワー(2013年倒産)、米国におけるcleantechの代表例として知られオバマ大統領からも高く評価されたソリンドラ(2011年倒産)などある程度大規模になった企業でさえも経営破綻に追い込まれている例が少なくありません。

また多数の企業が参入しているだけに、設立される企業の中にはアマテラスの基準(http://ow.ly/X5zrV)では到底ベンチャー企業/スタートアップとは呼べない企業も含まれている、という残念な問題もありますそのため他の業界以上に優良企業を見抜くことが重要とされる業界でもあります。

そこでアマテラスでは、エネルギーベンチャー/スタートアップに注目している皆様に、優良な企業が見つける3つのポイントを教えていければと思います。

①「販売店」「工務店」ではない企業か

Amateras Onlineに登録している企業の1社であるスマートエナジー株式会社。GHGマネジメント(温室効果ガスの排出量最適化)という新たな概念を示しているという点でこの条件をクリアしている。(https://smart-energy.jp/)

自然エネルギーの場合、エネルギー装置の製造、販売、設置、保守など様々な業務が存在します。そのため市場規模は大きく、これが故に多くの企業が参入しています。しかし、それが故に到底ベンチャー/スタートアップとは言えない企業も多いのが現状です。事実ただの太陽光のパネルを販売する代理店・太陽光パネルを家の屋根に設置する工務店が「太陽光ベンチャー」と名乗っている場合も少なくありません。

これを見抜く方法としては会社のHPを見て、強みが明確に書かれているのを見るのが一番ではないかと思います。特に、「技術」を強調して書かれている場合や「スマートシティ」「新電力」など新たな概念を提案している場合は、「工務店」でも「代理店」でもない新しい付加価値を生み出す企業として注目に価するとアマテラスでは考えています。

②労働集約的でない技術を持つ企業か

環境先進国・ドイツのエネルギーベンチャーの技術を応用した事業を営なむ自然電力グループ。このような独自性ある技術を用いたベンチャーが必要だ。
(出典:http://www.shizenenergy.net/)

先ほど技術をベースにした企業が大事とは言いましたが、それは他者との差別化が十分なものでなければなりません。特に「労働集約」・「低コスト」を売りにしてビジネスを展開している場合は、要注意です。

その典型と言えるのが、太陽光パネルの製造です。構造が単純ゆえに製造しやすいこの装置は、人件費などの諸経費をいかに安く抑えるかが鍵となっています。ゆえに先進国の企業では競争力の薄い産業となってしまいます。前述したドイツ・Qセルズや米国・ソリンドラはいずれも途上国企業とのコストカット競争に敗れたために倒産した典型といえる企業です。また、日本においてもシャープの経営危機をもたらした要因となっています。

では、どのようなベンチャー企業/スタートアップを選べばよいのでしょうか。アマテラスの場合、「強みとしている技術がどのくらい独自性の高いものであるか」ということに注意して転職者の皆様にご紹介できる企業を選んでいます。

例えば起業家対談(http://ow.ly/Xcid4)を行っている自然電力の場合、自然エネルギーの開発・運営に長けたドイツのエネルギー企業・juwiの技術を日本各地の地域事情に合わせた形で提案することを強みにしています。他にも水に浮かべて発電を行う「フロート式水上太陽光発電」を行うスマートエナジーなど独創的な技術を持つ企業を転職者の皆様にご紹介しています。

③物件開発やサービスなどバリューチェーン全体に強みを持っている企業か

みんな電力株式会社。発電する巻物「solamaki(ソラマキ)」から自然エネルギーの啓蒙活動に至るまで様々な活動を実行しているエネルギーベンチャーだ。(http://corp.minden.co.jp/)

前述までに技術の独創性の重要性をお伝えしましたが、単に製造や技術だけを強みにしているだけでは成長は難しいと言えます。製造・技術はどんなに独創的なものであってもいずれは競合に追いつかれる可能性が高いからです。ベンチャー・スタートアップとして成長する上ではそれ以外の要素、例えば発電所を設置する物件開発や保守・メンテナンスなどのサービス部門で儲ける仕組みを作る必要が出てくるでしょう。ただ単に物件開発や保守・メンテナンスをするだけでは①で説明した「工務店」・「代理店」と同じです。

では真に優良なエネルギーベンチャー/スタートアップとはどのようなものでしょうか。それはエネルギーを生成する装置自体の技術についても、物件開発についても、そしてサービスについても、というように自然エネルギーのバリューチェーン全体に強みを持つ企業ではないかと思います。これまでに記述した自然電力やみんな電力、スマートエナジーはいずれも地域事情に合わせた物件開発を行っている企業です。

アマテラスではこのような企業にこそ、多くの人々が活躍できるチャンスがあると考えています。製造から運用・メンテナンスまで関われる場合は技術者から不動産取引に至るまで様々な関係者が関わります。そのため文系・理系問わず多くの人々に活躍の場が見込め、転職者の皆様にとっても大きなメリットがあります。

補足

今回説明した話についてより詳しく説明している本があります。それはPaypalの創業メンバーとして成功を収めたのちFacebookに対し最初に投資したことで知られるアメリカの著名エンジェル(機関投資家)・ピーター・ティールが書いた「ゼロ・トゥ・ワン」です。この本には彼自身が投資する際の方針が定められていますが、最後の章で破綻したソリンドラと電気自動車で成功を収めたテスラ・モーターズの違いを比較しつつ成長するエネルギーベンチャー/スタートアップの条件を検討しています。エネルギー関連に限らず必見の本です。

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アマテラス編集部

「次の100年を照らす、100社を創出する」アマテラスの編集部です。スタートアップにまつわる情報をお届けします。